日本新聞: トランプ関税アメリカでは…問い合わせ殺到負担めぐり協議も

アメリカが抱かかえる貿易ぼうえき赤字あかじの削減さくげんや国内こくないへの製造せいぞう業ぎょう回帰かいきに向むけて、次々つぎつぎと関税かんぜい措置そちを打ち出うちだしてきたトランプ政権せいけん。

鉄鋼てっこうなどへの関税かんぜい措置そちが発動はつどうされてから1か月かげつ余あまりとなり、関税かんぜい引き上ひきあげの影響えいきょうがアメリカ国内こくないで出で始はじめています。

その影響えいきょうは、日本にっぽん企業きぎょうの現地げんち法人ほうじんにも…

経験けいけんしたことない数かずの問い合といあわせが

大阪おおさかに本社ほんしゃがある物流ぶつりゅう会社かいしゃ「阪急はんきゅう阪神はんしんエクスプレス」のアメリカの現地げんち法人ほうじんでは、トランプ関税かんぜいの影響えいきょうで業務ぎょうむの繁忙はんぼう感かんが強つよまっているといいます。

この会社かいしゃではシカゴとロサンゼルスに通関つうかん業務ぎょうむの専門せんもんチームを配置はいちしていて、このうちシカゴでは、主おもに日本にっぽんを含ふくむアジアから航空こうくう便びんなどで運はこばれてくる自動車じどうしゃ部品ぶひんや電子でんし部品ぶひんの通関つうかん業務ぎょうむを行おこなっています。

1つ1つの製品せいひんについて適用てきようされる関税かんぜい率りつを確認かくにんしていますが、次々つぎつぎと関税かんぜい率りつが変かわるうえに、導入どうにゅうされるタイミングなど関税かんぜいに関連かんれんするルールも頻繁ひんぱんに変更へんこうされるため、確認かくにん作業さぎょうに追おわれているといいます。

中国ちゅうごくで生産せいさんされた3000ドル相当そうとうの日ひ用品ようひんを輸入ゆにゅうする際さいの書類しょるいでは、中国ちゅうごくに対にたいするあわせて145％の追加ついか関税かんぜいに加くわえ、今いまの政権せいけんより前まえに課かされた別べつの25％の関税かんぜいもかかるため、あわせて170％余あまりの関税かんぜい率りつとなっていました。

その結果けっか、この日ひ用品ようひんの場合ばあい、関税かんぜいだけで5100ドル余あまりがかかることになっていました。

会社かいしゃでは取引とりひき先さきから適用てきようされる関税かんぜい率りつについての問い合といあわせも増ふえているため、今月こんげつからはアメリカ政府せいふやJETRO＝日本にっぽん貿易ぼうえき振興しんこう機構きこうの情報じょうほうをもとに、顧客こきゃくや社内しゃない向むけの「Q＆A集しゅう」を作成さくせいするなど対応たいおうに当あたっています。

作業さぎょう量りょうが増ふえていることから、現在げんざいは従業じゅうぎょう員いんが残業ざんぎょうして対応たいおうに当あたっていますが、こうした状態じょうたいが続つづくのであれば新あらたな人材じんざいを雇やとうことも検討けんとうするとしています。

また、この会社かいしゃの場合ばあいアメリカの海上かいじょう輸送ゆそうの玄関げんかん口ぐちであるロサンゼルス港こうでは、日本にっぽんやアジア各国かっこくからの食品しょくひんや雑貨ざっか、医療いりょう機器ききなどを取り扱とりあつかっているといいます。

トランプ政権せいけんは、すべての国くにや地域ちいきを対象たいしょうにした一律いちりつ10％の関税かんぜいに加くわえて、自動車じどうしゃや鉄鋼てっこう製品せいひんなどにも関税かんぜいを課かし対象たいしょうとなる国くにや製品せいひんが複雑ふくざつになっているため、通関つうかん業務ぎょうむが終おわるまでに最大さいだいで従来じゅうらいの倍ばい以上いじょうの時間じかんがかかるケースもあるということです。

阪急はんきゅう阪神はんしんエクスプレスのアメリカ法人ほうじんの森もり貴洋たかひろさんは「今いままで経験けいけんしたことがないような数かずの問い合といあわせが取引とりひき先さきから寄よせられていて、また、きのうまでの情報じょうほうがきょうになると変かわっているということも多々たたあるので、最新さいしんの情報じょうほうを収集しゅうしゅうして提供ていきょうすることに全力ぜんりょくを挙あげている。

さまざまな種類しゅるいの関税かんぜいがあって複雑ふくざつ化かしていることも混乱こんらんの要因よういんとなっている」と話はなしています。

追加ついか関税かんぜいどこが負担ふたん？

アメリカの自動車じどうしゃ産業さんぎょうの中心ちゅうしん地ちミシガン州しゅうにある自動車じどうしゃ部品ぶひんメーカーでは、輸入ゆにゅうされた製品せいひんの請求せいきゅう書しょにトランプ政権せいけんによる関税かんぜいが実際じっさいに上乗うわのせされ、この負担ふたんをどう分け合わけあうか顧客こきゃくとの間まで協議きょうぎを始はじめています。

中西部ちゅうせいぶミシガン州しゅうのデトロイト郊外こうがいにある1957年ねん創業そうぎょうの自動車じどうしゃ部品ぶひんメーカーは、従業じゅうぎょう員いんおよそ200人にんで、GM＝ゼネラル・モーターズぜねらるも-た-ずやクライスラーのブランドを傘下さんかに持もつステランティスなど大手おおて自動車じどうしゃメーカーに部品ぶひんを供給きょうきゅうしています。

部品ぶひんの製造せいぞうにあたって原はら材料ざいりょうとなる鉄鋼てっこう製品せいひんなどを輸入ゆにゅうしていますが、先月せんげつ発動はつどうしたトランプ政権せいけんの関税かんぜい措置そちによって台湾たいわんから輸入ゆにゅうされた鉄鋼てっこう製品せいひんの請求せいきゅう書しょには25％の追加ついか関税かんぜいが実際じっさいに上乗うわのせされていたということです。

会社かいしゃではこの負担ふたんをどう分け合わけあうか、長年ながねん取り引とりひきをしてきた顧客こきゃくとの間まで協議きょうぎを始はじめています。

さらに、カナダから輸入ゆにゅうしている部品ぶひんについても来月らいげつ4日にち以降いこう、関税かんぜいが免除めんじょされる条件じょうけんが変更へんこうされ25％の関税かんぜいが課かされる可能かのう性せいが高たかいと考かんがえています。

部品ぶひんの調達ちょうたつ先さきをアメリカ国内こくないに切り替きりかえることも検討けんとうしていますが、調達ちょうたつ先さきが生産せいさん体制たいせいを構築こうちくするまでに時間じかんがかかるうえ、人件じんけん費ひの高たかさなどもあり製造せいぞうコストがかえって上昇じょうしょうする懸念けねんもあるということです。

自動車じどうしゃ部品ぶひんメーカーのチャールズ・ダルダス社長しゃちょうは「関税かんぜいは私わたしたちが支払しはらい、購入こうにゅうする製品せいひんに25％が上乗うわのせされることになる。

この業界ぎょうかいの利益りえき率りつはもともと非常ひじょうに薄うすく、関税かんぜいによる負担ふたんの増加ぞうかを吸収きゅうしゅうすることはできない。私わたしたちの会社かいしゃや同おなじ規模きぼの会社かいしゃは存続そんぞくできなくなる」と話はなし、関税かんぜい措置そちの見直みなおしを強つよく求もとめています。

アメリカ経済けいざいへの影響えいきょうは

トランプ政権せいけんは鉄鋼てっこう製品せいひんとアルミニウムに対にたいする25％の関税かんぜい措置そちを先月せんげつ12日にちに発動はつどうしました。

また、自動車じどうしゃへの25％の関税かんぜいは今月こんげつ3日にちから適用てきようされています。

中国ちゅうごくに対にたいしては、薬物やくぶつ問題もんだいを理由りゆうにあわせて20％の追加ついか関税かんぜいを課かしその後そのご、相互そうご関税かんぜいを引き上ひきあげ、すべてをあわせると関税かんぜい率りつは145％となっていて、アメリカへの輸入ゆにゅう品ひんに対にたいして実際じっさいに関税かんぜいが課かされています。

世界一せかいいちの経済けいざい大国たいこくであるアメリカは多おおくのモノを外国がいこくから輸入ゆにゅうし、国内こくないで消費しょうひしてきました。

消費しょうひ者しゃの間までは今後こんご、物価ぶっかが上昇じょうしょうするとの見方みかたが強つよまり、ミシガン大学だいがくの調査ちょうさでは、アメリカの消費しょうひ者しゃが予想よそうする1年ねん後ごの物価ぶっか上昇じょうしょう率りつは6。

7％と、1981年ねん以来いらいの高たかい水準すいじゅんとなっています。

イェール大学だいがくの予算よさん研究所けんきゅうじょが今月こんげつ15日にちに公表こうひょうした試算しさんではアメリカの輸入ゆにゅう品ひんの平均へいきんの関税かんぜい率りつは、トランプ政権せいけん発足ほっそく前まえの2。

4％からおよそ28％に上昇じょうしょうし、1901年ねん以来いらいの水準すいじゅんとなります。

アメリカ経済けいざいへの影響えいきょうについて野村のむら総合そうごう研究所けんきゅうじょの木内きうち登のぼる英えいエグゼクティブ・エコノミストが行おこなった試算しさんでは、相互そうご関税かんぜいの一時いちじ停止ていし後ごも中国ちゅうごくに対にたいして145％、全ぜん世界せかいを対象たいしょうにした一律いちりつ関税かんぜい10％が維持いじされた場合ばあいアメリカのGDP＝国内こくない総そう生産せいさんは2％程度ていど押し下おしさげられる可能かのう性せいがあるとしています。