江藤えとう農相のうしょう “備蓄びちく米まいの活用かつよう検討けんとう” 市場しじょうに安定あんてい供給きょうきゅうなるか

コメの生産せいさんが大幅おおはばに減へった時ときなど限定げんてい的てきだった備蓄びちく米まいのあり方ありかたが変かわる可能かのう性せいが出でてきました。

農林水産省のうりんすいさんしょうによりますと、先月せんげつのコメの相対そうたい取引とりひき価格かかくは前まえの年としの同おなじ月つきより60％上昇じょうしょうし、2006年ねんの調査ちょうさ開始かいし以降いこう、4か月かげつ連続れんぞくで最さい高値たかねを更新こうしんしています。

これについて江藤えとう農林のうりん水産すいさん大臣だいじんは閣議かくぎのあとの会見かいけんで「ことしに入はいってもコメの価格かかくは高たかい状況じょうきょうが続つづくのではないかという予測よそくがあり、農林水産省のうりんすいさんしょうとして安定あんてい的てきに食料しょくりょうを供給きょうきゅうする義務ぎむがある」と述のべ、コメの安定あんてい供給きょうきゅうのために備蓄びちく米まいの活用かつようを検討けんとうする考かんがえを示しめしました。

具体ぐたい的てきにはコメの流通りゅうつうが滞とどこおっていると判断はんだんされる場合ばあいには、国くにが集荷しゅうか業者ぎょうしゃに備蓄びちく米まいの一部いちぶを売り渡うりわたし、市場しじょうへの供給きょうきゅう量りょうを増ふやすことを検討けんとうしているということです。

売り渡うりわたしたコメは流通りゅうつうが安定あんていしたあと、国くにが同おなじ量りょうを買い戻かいもどす考かんがえだということです。

農林水産省のうりんすいさんしょうはこうした方法ほうほうが可能かのうかどうか議論ぎろんを進すすめることにしています。

江藤えとう大臣だいじんは「コメ離ばなれが進すすめば国内こくないの消費しょうひが落おち、生産せいさん者しゃにとってもいいことではない。手てだての準備じゅんびはしっかりやっておく」と述のべました。

法律ほうりつに従にしたがって国くにがコメを備蓄びちくする備蓄びちく米まいの活用かつようはコメの生産せいさんが大幅おおはばに減へった時ときなど限定げんてい的てきでしたが、そのあり方ありかたが変かわる可能かのう性せいが出でています。

専門せんもん家か「放出ほうしゅつの可能かのう性せい 浸透しんとうすれば市場しじょう価格かかくは安定あんてい」

コメの流通りゅうつうなどに詳くわしい日本にっぽん総合そうごう研究所けんきゅうじょの三輪みわ泰史やすしチーフスペシャリストは「もともとの備蓄びちく米まいの役割やくわりからすると異例いれいな対応たいおうだ。備蓄びちく米まいを放出ほうしゅつする可能かのう性せいがあるというメッセージだけでも価格かかくはある程度あるていど沈静ちんせい化かすることはあるだろう。もしその動うごきが鈍にぶければ実際じっさいに放出ほうしゅつすることになるだろう」と話はなしています。

そのうえで、備蓄びちく米まいを活用かつようする効果こうかについて「流通りゅうつうが滞とどこおっている部分ぶぶんや異常いじょうな高値たかねを自然しぜんな状態じょうたいに戻もどし、これ以上いじょう価格かかくが上あがるのを避さけることができる。すぐに店頭てんとうの価格かかくが落ち着おちつくことは難むずかしいが、数すうか月かげつのスパンで見みれば、消費しょうひ者しゃも効果こうかを体験たいけんできると思おもう」と述のべました。

一方いっぽう、今後こんごの政府せいふの対応たいおうについて、「気候きこう変動へんどうの影響えいきょうが毎年まいとし起おきるような状況じょうきょうになるとコメの品薄しなうすや価格かかく高騰こうとうは過去かことは比くらべものにならないハイリスクな状態じょうたいになる。今回こんかいはイレギュラーな緊急きんきゅうの対応たいおうとなったが、一定いってい程度ていど価格かかくが上あがると備蓄びちく米まいを放出ほうしゅつする可能かのう性せいがあるという認識にんしきが浸透しんとうすれば市場しじょう価格かかくは安定あんていする。食料しょくりょう安全あんぜん保障ほしょうの観点かんてんから早期そうきに法ほう改正かいせいを行おこなうべきだ」と指摘してきしました。

コメ販売はんばい店てんも期待きたい「なんとか価格かかく下さげてコメ離はなれ防ふせいで」

都内とないのコメの販売はんばい店てんでは仕入しいれるコメの量りょうが減へっていて、取引とりひき先さきに販売はんばいするために必要ひつような量りょうを確保かくほできていないことから、先行さきゆきを懸念けねんしています。

千代田ちよだ区くにあるコメの販売はんばい店てんでは主おもに飲食いんしょく店てん向むけにコメを販売はんばいしています。

店主てんしゅの福士ふくし修三しゅうぞうさんによりますと、コメの価格かかくは新米しんまいが出回でまわり始はじめたあとも上昇じょうしょうが続つづいているということで、現在げんざいは去年きょねんの秋あきと比くらべて1キロあたり150円えんから200円えんほど値上ねあげしているということです。

さらにこの店みせでは卸売おろしうり業者ぎょうしゃやJAなどからコメを仕入しいれていますが、注文ちゅうもんできる量りょうが制限せいげんされているため、仕入しいれるコメの量りょうが例年れいねんより3割わりから5割わりほど減へっているということです。

福士ふくし修三しゅうぞうさんは「新規しんきの問い合といあわせは毎日まいにちくるが、すべてお断おことわりしていて、売うりたくても売うれない状況じょうきょうだ。業者ぎょうしゃのみなさんも量りょうが確保かくほできるか不安ふあんになっていて、今いままでなら手元てもとにある余分よぶんなコメは売うっていたが、今いまはみなさん手放てばなしたくないので売うる側がわが少すくなくなっている。私わたしの店みせでもこの先さき必要ひつような分ぶんを確保かくほできているかというとまだできておらず、どのように仕入しいれるか頭あたまがいたい」と話はなしていました。

そのうえで、農林水産省のうりんすいさんしょうが備蓄びちく米まいの活用かつようを検討けんとうすると明あきらかにしたことについて、「現状げんじょうを打開だかいするには有効ゆうこうな手段しゅだんかと思おもう。異常いじょうな価格かかく高騰こうとうに対にたいして、取引とりひき価格かかくの抑制よくせいにつながると思おもっているので、期待きたいは大おおきい。一番いちばん、不安ふあんに思おもっているのは消費しょうひ者しゃのコメ離ばなれなので、なんとか価格かかくを下さげてコメ離ばなれを防ふせいでほしい」と話はなしていました。

大手おおてチェーンも「期待きたい」「歓迎かんげい」

大手おおて寿司すしチェーンの「くら寿司すし」は、「店舗てんぽでは収穫しゅうかくから1年ねん以内いないのコメを使つかっているため、備蓄びちく米まいをそのまま使つかうことは考かんがえていないが、備蓄びちく米まいが市場しじょうに出回でまわることでコメの価格かかくが安定あんていすることを期待きたいしたい」と話はなしています。

また大手おおて牛うし丼どんぶりチェーンは、「外食がいしょく企業きぎょうとして、消費しょうひ者しゃに対にたいして安定あんてい的てきに食しょくの供給きょうきゅうを行おこなう責任せきにんがある。安定あんてい的てきな価格かかくで提供ていきょうを続つづける意味いみでも備蓄びちく米まいの放出ほうしゅつは歓迎かんげいする」としています。

備蓄びちく米まいとは

コメの生産せいさん量りょうが大幅おおはばに減へった場合ばあいに備そなえて、国くには法律ほうりつに基もとづいてコメの備蓄びちくを行おこなっています。

きっかけとなったのは1993年ねんの全国ぜんこく的てきなコメ不足ふそくでこのよくとしに成立せいりつした食糧しょくりょう法ほうで政府せいふはコメの不足ふそくに備そなえて必要ひつような数量すうりょうを在庫ざいことして保有ほゆうしておくことが定さだめられました。

備蓄びちくするコメの量りょうは、10年ねんに1度どの深刻しんこくな不作ふさくや、2年ねん連続れんぞくの不作ふさくにも対応たいおうできるよう、100万まんトン程度ていどを適正てきせいな水準すいじゅんとしています。

これは主食しゅしょく用よう米まいの年間ねんかん需要じゅよう量りょうのおよそ7分ぶんの1にあたり、去年きょねん6月つきの時点じてんでは91万まんトンが備蓄びちくされています。

政府せいふは備蓄びちく用ようとして毎年まいとし20万まんトン程度ていどを一般いっぱん競争きょうそう入札にゅうさつで買い入かいいれていて、今いまの仕組しくみでは5年間ねんかん利用りようがなければ家畜かちくの餌えさとして販売はんばいされています。

この仕組しくみになった2011年ねん以降いこう、主食しゅしょく用よう米まいの不足ふそくで備蓄びちく米まいを放出ほうしゅつしたケースはないということです。

備蓄びちく米まいを出だしたケースとしては、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの際さいに被害ひがいを受うけた流通りゅうつう業者ぎょうしゃ向むけに4万まんトン、去年きょねんにはせんべいなどの原料げんりょうになるコメの不足ふそくを受うけて、加工かこう用ようとして1万まんトンがそれぞれ販売はんばいされたということです。

去年きょねん、各地かくちのスーパーでコメが品薄しなうすになった際さいには備蓄びちく米まいの放出ほうしゅつを求もとめる声こえも出でましたが、農林水産省のうりんすいさんしょうはコメの生産せいさん量りょうは減へっていないとして慎重しんちょうな姿勢しせいを示しめしていました。