分譲マンションは通常、土地の所有権もあわせて販売されますが、定期借地権付きマンションは50年間といった期限付きで借りた土地に建設され、その後、建物を解体し土地を持ち主に返還する仕組みとなっています。
マンションの価格が高騰し開発できる宅地も限られる中、割安で買い手がつきやすいことや、土地の所有を続けたい地主のニーズもあり、このところ都心を中心に開発や販売が相次いでいます。
東京 文京区では70年の借地権で大手企業が所有する土地に10階建てのマンションが建設中のほか、東京 台東区では75年の借地権で神社が所有する土地の一部を活用して14階建てのマンションが建設されています。
不動産経済研究所によりますとことし首都圏で供給される定期借地権付きマンションは2000戸に上る可能性があり、2008年のおよそ1200戸を大きく上回って過去最大規模となる見通しです。
一方、定期借地権付きマンションは将来の解体費用となる積立金や地代の負担もあるほか、借地の期限が近づくことで資産価値が下がるリスクもあるとして、専門家は購入にあたっては十分な検討が必要になると指摘しています。
開発や販売が増える背景は
定期借地権付きマンションの開発や販売が増える背景には、地主とデベロッパー、それに購入者それぞれのメリットがあるとされています。
東京 文京区で建設中の定期借地権付きマンションは、大手印刷会社が所有するおよそ1.2ヘクタールの土地に70年の借地権で開発されました。
この土地は会社の創業地となっていて、工場を移転する計画に伴い、土地を手放さずに有効活用できる手段として定期借地権付きマンションの開発を選んだということです。
都心の利便性の高い土地だったことから、マンション建設以外にも学校や住宅展示場などおよそ10件の提案が寄せられていたということです。
「共同印刷」の山田麗子 部長は「創業から事業を行う愛着のある土地だったので簡単には手放せなかった。マンション用地として貸し出すことが会社に最もメリットがあった」と話していました。
一方、デベロッパーにとっては、貴重な開発用地を確保できることになります。
資材価格が上昇する中、高い価格で売れる都心部でマンション開発を進めたいという意向がありますが、地価の高騰もあって土地を取得することは簡単ではありません。
借地であれば企業などが所有する立地条件のいい土地を確保できる可能性が高まります。
開発した「日鉄興和不動産」の井上慎也 再開発推進部長は「お客様の借地への抵抗感は薄くなっている。都心の土地は価格が高騰していて、好立地に事業の機会が創出されることは大変魅力的だった」と話していました。
さらに購入者にとっては比較的、価格を抑えられる利点があります。
このマンションは、1戸当たり9000万円以上という価格設定ですが、周辺の相場に比べると1割ほど低いということで、モデルルームには多くの家族連れが訪れていました。
妻と訪れた30代の男性は「新築も中古もマンションが高くなっている中で、都心の立地で購入価格を少し抑えられることにメリットを感じていて、購入を検討している」と話していました。
専門家「メリット・デメリットを把握して選んでほしい」
定期借地権付きマンションについて、不動産調査会社「東京カンテイ」の高橋雅之 上席主任研究員は「土地を保有し続けたい地主や販売価格を抑えたいデベロッパー側の考えもあり今後もマンション価格の上昇が見込まれる中で、割安な定期借地のマンションは受け皿の1つとして増えていくとみている」と話しています。
一方で、購入にあたっては注意も必要だと指摘し「通常の管理費や修繕積立金に加え、地主に支払う地代や、将来さら地にするための解体積立金などのコストが毎月、追加でかかってくるほか、期限が近づくと住居として住みづらくなるため資産価値が下がるリスクもある。物件の割安さだけにとらわれずメリット・デメリットを把握して選んでほしい」と話していました。