日本新聞: 【気球撃墜】国際法上の気球の扱いは過去の領空めぐる緊張は

【気球ききゅう撃墜げきつい】国際こくさい法ほう上じょうの気球ききゅうの扱あつかいは過去かこの領空りょうくうめぐる緊張きんちょうは

Feb 6, 2023 20:02 3

Furigana

アメリカ本土ほんどなどを横断おうだんしていた中国ちゅうごくの気球ききゅうを、アメリカ軍ぐんの戦闘せんとう機きがサウスカロライナ州しゅうの沖合おきあいで撃墜げきついしたことについて、中国ちゅうごく外務省がいむしょうは謝しゃ鋒ほこさき次官じかんが北京ぺきんにあるアメリカ大使館あめりかたいしかんに厳正げんせいな申し入もうしいれを行おこなったと発表はっぴょうしました。

防衛ぼうえい省しょうによりますと、気球ききゅうは国際こくさい法ほう上じょう、航空こうくう機きに位置いちづけられ、他国たこくの領空りょうくうに侵入しんにゅうするのは国際こくさい法ほうに違反いはんし、領空りょうくう侵犯しんぱんにあたるとされています。過去かこに軍用ぐんよう機きや民間みんかん機きが他国たこくの領空りょうくうに入はいったことで、当事とうじ国こくだけでなく国際こくさい社会しゃかい全体ぜんたいの緊張きんちょうが高たかまったことがあります。

気球ききゅう撃墜げきついアメリカや中国ちゅうごくなどの動うごき【時とき系列けいれつまとめ】

防衛ぼうえい省しょうによりますと、気球ききゅうは国際こくさい法ほう上じょう、航空こうくう機きに位置いちづけられるとしています。

航空こうくう機きが許可きょかなく他国たこくの領空りょうくうに侵入しんにゅうするのは国際こくさい法ほうに違反いはんし、領空りょうくう侵犯しんぱんにあたるとされています。

領空りょうくう侵犯しんぱんした航空こうくう機きには退去たいきょを警告けいこくしたり、最寄もよりの飛行場ひこうじょうへ強制きょうせい着陸ちゃくりくさせたりするのが一般いっぱん的てきで、国際こくさい法ほう上じょう、命令めいれいに従したがわない軍用ぐんよう機きについては必要ひつような措置そちがとれるとされています。

日本にっぽんの場合ばあい、外国がいこくの気球ききゅうが特段とくだんの事情じじょうがないにもかかわらず領空りょうくうに侵入しんにゅうした場合ばあいは、領空りょうくう侵犯しんぱんにあたるとして、必要ひつように応おうじて航空こうくう自衛隊じえいたいによるスクランブル＝緊急きんきゅう発進はっしんなどの対応たいおうを行おこなうとしています。

自衛隊じえいたい機きが領空りょうくう侵犯しんぱんに際にさいして武器ぶきを使用しようできるのは、正当せいとう防衛ぼうえいや緊急きんきゅう避難ひなんの要件ようけんに該当がいとうする場合ばあいとされています。

気球ききゅうを含ふくめた航空こうくう機きについては、全国ぜんこくのレーダーサイトで領空りょうくう侵犯しんぱんのおそれがないか警戒けいかい監視かんしを行おこなっているとしていてこれまでに外国がいこくの気球ききゅうによる領空りょうくう侵犯しんぱんを公表こうひょうしたケースはないとしています。

一方いっぽうで、2020年ねん6月つきに仙台せんだい市しの上空じょうくうなどで目撃もくげきされた白しろい飛行ひこう物体ぶったいについては、分析ぶんせきを進すすめているとしています。また、去年きょねん1月つきには九州きゅうしゅう西方せいほうの公海こうかい上じょうで所属しょぞく不明ふめいの気球ききゅうを確認かくにんしているということです。

国土こくど交通こうつう省しょうによりますと、外国がいこくのものも含ふくめて日本にっぽんで気球ききゅうを飛とばす場合ばあいは、国土こくど交通こうつう省しょうへの通報つうほうや許可きょかが原則げんそくとして必要ひつようだということです。

領空りょうくう侵入しんにゅうで緊張きんちょう高たかまりも

領空りょうくうをめぐっては、過去かこに軍用ぐんよう機きや民間みんかん機きが他国たこくの領空りょうくうに入はいったことで、当事とうじ国こくだけでなく国際こくさい社会しゃかい全体ぜんたいの緊張きんちょうが高たかまったことがあります。

このうち東西とうざい冷戦れいせん期きの1960年ねんには、アメリカのU2偵察ていさつ機きが旧きゅうソビエトの領空りょうくうを飛行ひこう中ちゅうに地ち対空たいくうミサイルで撃墜げきついされました。

これによって両国りょうこくが激はげしく対立たいりつし、予定よていされていた米べいソ首脳しゅのう会談かいだんが中止ちゅうしされただけでなく、その後そのご、ベルリンの壁かべの建設けんせつや、世界せかいが核かく戦争せんそうの危機ききに直面ちょくめんした「キューバ危機きき」が起おきて、国際こくさい社会しゃかい全体ぜんたいの緊張きんちょうが高たかまりました。

また、1983年ねんには、大韓たいかん航空こうくう機きが本来ほんらいのコースを外はずれて旧きゅうソビエトの領空りょうくうを飛行ひこうし、戦闘せんとう機きに撃墜げきついされて乗客じょうきゃく乗員じょういん269人にん全員ぜんいんが死亡しぼうしました。

アメリカなどが撃墜げきついを強つよく非難ひなんした一方いっぽう、旧きゅうソビエトは激はげしく反発はんぱつし、米べいソ関係かんけいが後退こうたいしました。

航空こうくう自衛隊じえいたい元もと空そら将しょう「対話たいわのチャネルを」

アメリカ軍ぐんが撃墜げきついした中国ちゅうごくの気球ききゅうについて、航空こうくう自衛隊じえいたいで戦闘せんとう機きのパイロットを務つとめた元もと空そら将しょうの荒木あらき淳一じゅんいちさんは「アメリカ本土ほんどの上空じょうくうを数すう日間にちかんにわたって飛行ひこうしていることからすると、軍事ぐんじ的てきな偵察ていさつ目的もくてきが主おもな目的もくてきと考かんがえるのが普通ふつうだ。仮かりに気象きしょう観測かんそくが目的もくてきだとしても他国たこくの領空りょうくうを通過つうかするときは事前じぜんに通知つうちをしているはずで、それをしないこと自体じたいが主権しゅけんを侵害しんがいする行為こういにあたる」と指摘してきしています。

今回こんかいのアメリカの対応たいおうについては「主権しゅけんの及およぶ範囲はんいなので、侵入しんにゅうしてきたものに対にたいしては当該とうがい国こくが必要ひつように応おうじて対処たいしょすることになる。高たかい高度こうどを飛行ひこうする気球ききゅうを捕獲ほかくすることはほぼ不可能ふかのうなので、今回こんかい、撃墜げきついをしたのだろう。今後こんごは、回収かいしゅうした機材きざいが気象きしょう観測かんそく用ようのものなのか、それとも軍事ぐんじ目的もくてきに使つかえる電波でんぱや画像がぞうを収集しゅうしゅうできる機能きのうがついているのかどうかが焦点しょうてんになる」と指摘してきしています。

その上うえで「これを機会きかいにアメリカと中国ちゅうごくの対立たいりつが激化げきかすることは避さけないといけない。誤あやまった認識にんしきに基もとづいて不要ふようなエスカレーションを避さけることは大事だいじなので、対話たいわのチャネルを開ひらきつついろいろな情報じょうほうのやり取やりとりをしていく必要ひつようがある」と話はなしています。