日本新聞: 入社2年目の研究員自殺両親がメーカーなどに賠償求め提訴へ

大手おおてメーカーの入社にゅうしゃ2年ねん目めの研究けんきゅう員いんが自殺じさつしたことについて、両親りょうしんが「具体ぐたい的てきな指導しどうがないまま繰くりかえしレポートの書き直かきなおしを命めいじられるなど、厳きびしい指導しどうが原因げんいんだった」として、30日にち、メーカーなどに賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを起おこします。

メーカーは取材しゅざいに対にたいし、「従業じゅうぎょう員いんの相談そうだんに応おうじたり、配置はいち転換てんかんをするなどしてきた。

ご遺族いぞくのお考かんがえは弊社へいしゃとは異ことなる」としています。

東京とうきょうに本社ほんしゃがある大手おおて炭素たんそ製品せいひんメーカー、「日本にっぽんカーボン」の滋賀しが県内けんないにある研究所けんきゅうじょで働はたらいていた25歳さいの研究けんきゅう員いんの男性だんせいが4年ねん前まえの2021年ねん、自殺じさつしたことについて、両親りょうしんは30日にち、会社かいしゃと上司じょうしに9000万まん円えんあまりの賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょに起おこします。

訴状そじょうによりますと、男性だんせいはリチウムイオン電池でんちの研究けんきゅうなどを担当たんとうし、毎月まいつきレポートを提出ていしゅつしていましたが、職場しょくばで隣となりに座すわる上司じょうしから「こんなレポート使つかえない」とか「訳わけ分わからん」などと言いわれ、具体ぐたい的てきな指示しじがないまま何なん度ども書き直かきなおしを命めいじられたとしています。

人事じんじ部門ぶもんに相談そうだんし、入社にゅうしゃ2年ねん目めの11月つきに同おなじ職場しょくば内ないで男性だんせいの配置はいち転換てんかんがなされ、上司じょうしは替かわりました。

しかし席せきは元もとの上司じょうしの隣となりから向むかいに変かわっただけで、毎日まいにち顔がおを合あわせなければならなかったということです。

労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょは去年きょねん4月つき、「達成たっせいが困難こんなんなノルマで、上司じょうしの発言はつげんは強つよい叱責しっせきにあたる」として労災ろうさいと認定にんていしていて、遺族いぞく側がわは「男性だんせいが自殺じさつしたのは会社かいしゃと元もと上司じょうしに原因げんいんがある」と主張しゅちょうしています。

日本にっぽんカーボンはNHKの取材しゅざいに対にたいして、「事実じじつ確認かくにんを行おこなってまいりましたが、上司じょうしがいわゆるパワーハラスメントをした事実じじつは確認かくにんされませんでした。

亡なくなられた従業じゅうぎょう員いんの相談そうだんに応おうじたり、配置はいち転換てんかんをするなどしており、弊社へいしゃに法的ほうてき責任せきにんがあるとのご遺族いぞくのお考かんがえは弊社へいしゃの考かんがえと異ことなると申し上もうしあげざるをえません。訴うったえが提起ていきされた場合ばあいには、真摯しんし（しんし）に対応たいおうして参まいる所存しょぞんです」としています。

労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょの認定にんていは

東あずま近江おうみ労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょの調査ちょうさによりますと、男性だんせいは2019年ねんに「日本にっぽんカーボン」に就職しゅうしょくし、9月つきから滋賀しが県内けんないの研究所けんきゅうじょでリチウムイオン電池でんちに関にかんする研究けんきゅうをしていました。

配属はいぞく当時とうじ、人事じんじ担当たんとう者しゃに送おくったメッセージには「今いまのところ学まなぶことや覚おぼえることがほとんどで、自分じぶんの仕事しごとを持もつようになったらもっと大変たいへんになるのかなと思おもっています」と記しるされていました。

しかし、その年としの12月つきには人事じんじ担当たんとう者しゃに「研究所けんきゅうじょでの仕事しごとが精神せいしん的てきにつらいです。

何なにをどうすればいいのか、全まったく分わかりません」とメッセージを送おくり、翌年よくねんの2020年ねん1月つきには「育そだてると言いうよりは、自分じぶんで考かんがえて行動こうどうして、学まなべって感かんじがします。もちろん、考かんがえて行動こうどうするのは必要ひつようですが、あまりフォローがないのが問題もんだいな気きがします」と疑問ぎもんを投なげかけていました。

3月つきからは原因げんいん不明ふめいの熱ねつや体調たいちょう不良ふりょうに悩なやまされるようになり、11月つきごろ、周囲しゅういに退職たいしょくについて相談そうだんしていたということです。

このころに配置はいち転換てんかんが行おこなわれ、同おなじ職場しょくば内ないで業務ぎょうむや上司じょうしが替かわりました。

年末ねんまつは帰省きせいして学生がくせい時代じだいの友人ゆうじんと食事しょくじに行いくなどしていましたが、年としが明あけて滋賀しが県けんへ戻もどったあとの2021年ねん1月つき、独り暮ひとりぐらしをしていた自宅じたくで自みずから命いのちを絶たちました。

「ごめんなさいもうつらいです。

さようなら」と記しるした遺書いしょが残のこされていました。

労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょは、男性だんせいが亡なくなる2か月かげつ前まえ（2020年ねん11月つき）には精神せいしん障害しょうがいを発症はっしょうしていたとし、「入社にゅうしゃ1年ねん目めや2年ねん目めの社員しゃいんが具体ぐたい的てきな指示しじなく納得なっとくできるレポートを作成さくせいすることは困難こんなんで、心理しんり的てき負荷ふかがあった。

上司じょうしの言動げんどうはことばじりがきつく、厳きびしい指導しどうだった」と認定にんていしました。

一方いっぽう、「パワハラを受うけたとまでは言いえず、業務ぎょうむ指導しどうの範囲はんい内ないでの強つよい指導しどう・叱責しっせきに該当がいとうする」としました。

遺族いぞく「世の中よのなかを多少たしょうなりとも変かえることができれば」

男性だんせいの両親りょうしんがNHKに寄よせた手記しゅきによりますと、子こどものころから好奇こうき心しん旺盛おうせいだったという男性だんせいは、大学だいがくに進学しんがくしてからは陶器とうきやガラスなどのセラミックスの研究けんきゅうに関心かんしんを持もち、大学院だいがくいんで研究けんきゅうに没頭ぼっとうしていたということです。

研究けんきゅうを続つづけたいと就職しゅうしょく活動かつどうを行おこない、日本にっぽんカーボンから内定ないていをもらった時ときはとても喜よろこんでいたといいます。

両親りょうしんは「生いきていれば、今年ことしで30歳さいになる息子むすこと酒さけを酌み交くみかわしながら話はなしがしたい、どんな大人おとなに成長せいちょうしたのか、いずれ孫まごの顔かおだってみたいと思おもっていました。

何なによりもつらいのは、この苦くるしみと悲かなしみはいつか突然とつぜんに消きえるわけではなく、私わたしども夫婦ふうふが命いのち絶たえるまで続つづくということです」とつづっています。

そして訴うったえを起おこした理由りゆうについて、「労災ろうさいは認みとめられましたが、パワハラを認みとめたことにはなっていませんでした。

人手ひとで不足ふそく、働き手はたらきて不足ふそくと叫さけばれる昨今さっこん、ようやく社会しゃかいへ進出しんしゅつし、本来ほんらいなら重宝ちょうほうしなければならない若者わかものを寛容かんように受け入うけいれず、葬ほうむっていい訳わけがありません。世の中よのなかを多少たしょうなりとも変かえることができればと私わたしたちは声こえを上あげました」と記しるしています。

会社かいしゃ側がわのコメント

日本にっぽんカーボンはNHKの取材しゅざいに対にたいして、「従業じゅうぎょう員いんが自じ死しされた事ことは事実じじつであり、大切たいせつな仲間なかまが亡なくなったことに、今いまなお大おおきな悲かなしみとショックを感かんじております」としています。

その上うえで、「事実じじつ確認かくにんを行おこなってまいりましたが、長時間ちょうじかん労働ろうどうの状態じょうたいにあった事実じじつは認みとめられず、上司じょうしが業務ぎょうむ上じょう必要ひつようかつ相当そうとうな範囲はんいを超こえた言動げんどう、いわゆるパワーハラスメントをした事実じじつも確認かくにんされませんでした。

亡なくなられた従業じゅうぎょう員いんの相談そうだんに応おうじたり、希望きぼうを受うけて配置はいち転換てんかんをするなどしており、弊社へいしゃに法的ほうてき責任せきにんがあるとのご遺族いぞくのお考かんがえは弊社へいしゃの考かんがえと異ことなると申し上もうしあげざるを得えません。訴うったえが提起ていきされた場合ばあいには、真摯しんし（しんし）に対応たいおうして参まいる所存しょぞんです」としています。

相談そうだん窓口まどぐち

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは働はたらく人ひとの悩なやみ相談そうだんを受け付うけつけるウェブサイトを設もうけています。