その代表とも言えるのが、女子1500メートルと5000メートルで圧倒的な強さを見せた田中希実選手です。
東京オリンピックで1500メートルの日本記録を更新して、8位入賞を果たし、ことし4月からはプロに転向、海外のトップ選手が所属するアメリカのチームの練習に参加するなど世界のレベルを肌で感じてきました。
1500メートルの決勝では「世界を意識して早めに仕掛けた」と700メートルすぎからスパートする、圧倒的な走りを見せました。
それでも田中選手は「ラストは本当に絞り出せたかというと分からない。世界の本物のライバルたちに勝ちきりたい」と世界ということばを繰り返し、より高みを見据えていました。
東京オリンピックで7位に入り、日本選手として初めて入賞を果たしましたが、去年の世界選手権では予選敗退。 「雪辱を果たしたい」とラスト1000メートルでのロングスパートを磨くため、専門ではない5000メートルのレースにも出場し疲労がたまる中でのスピードの切り替えを意識してきました。 今大会では序盤から先頭に立つと、「自分の走りをやりきる」と磨いてきた残り1000メートルのスパートでさらに後続を引き離し、大会3連覇で世界選手権の代表に内定しました。
体のバネを生かしたハードリングを生かし、13秒04の日本新記録を樹立。 自身の日本記録を0秒02縮め世界選手権の代表に内定しました。 この記録は東京オリンピックでは金メダルに相当するタイムで泉谷選手は「12秒台も狙っていきたい」とさらなる成長を誓いました。 この種目では2位に入った高山峻野選手も世界選手権代表に内定しました。
去年の世界選手権で女子の投てき種目で初めて銅メダルを獲得し、日本の女子陸上界で最も世界に近い存在ですが、本来の力を発揮することはできませんでした。 記録は59メートル92センチと低調で、順位も2位に終わり「1本も自分の思い描いた投てきができなかった。どうしたらいいのかちょっとわからなくなっている」と大粒の涙を流しました。 すでに世界選手権代表に内定していますが、自分の投てきを取り戻すため立て直しが急務です。
女子100メートルハードルは今大会の決勝では、向かい風の中、ほぼ横一線でフィニッシュした4人が12秒台をマークしました。 12秒95で優勝した東京オリンピック代表の寺田明日香選手、同タイムでわずかに及ばなかった2位の青木益未選手、12秒96で3位に入った田中佑美選手、そして、日本記録保持者の福部真子選手が4位でした。 ライバルどうしが記録争いをする先に、世界での活躍につながることを期待させる内容となりました。
8メートル11センチをマークして優勝した、日本記録保持者の城山正太郎選手は、けがに苦しんできましたが「今シーズンは万全」と復活をアピールしました。 東京オリンピックで6位入賞で、日本歴代2位の記録を持つ橋岡優輝選手は3連覇を逃し、「絶賛、迷子中」と苦しい胸のうちを明かしました。 それでも8メートルを超える跳躍で2位に入る意地を見せ、今後の進化に期待がかかります。 10位に終わった吉田弘道選手は、5月の国際大会で8メートル26センチと、日本歴代3位の記録をマークして臨みましたが、ライバルを追いかけるには好不調の波をなくすという課題を突きつけられました。
決勝では9秒97の自己ベストをもつサニブラウン アブデル・ハキーム選手も足がつるアクシデントで本来の走りができませんでした。 優勝した坂井隆一郎選手や、2位に入った※柳田大輝選手といった次の世代の選手たちがどこまで力を伸ばせるかが、今後の焦点です。
女性専用のカメラ席が設けられたり、アスリートと一緒に写真撮影ができるチケットが販売されたりと、コロナ禍を経て観客が戻ってきたことによる交流も再開されました。 また、問題になっているアスリートの盗撮被害を防ぐ啓発活動なども行われ、陸上界全体で前に進もうとする意識が感じられる大会となりました。
男子5000メートル決勝に出場した37歳の上野裕一郎選手が印象的なレースを見せました。 序盤で集団の先頭に立ち、レースを引っ張って見せたのです。 “必要なのは、無難な走りではなく積極的な走り”。 立教大の監督も務める上野選手が、若手に伝えたかった「無難じゃない」ことの大切さ。 大舞台に挑戦するすべての選手に向けた、メッセージのようにも聞こえました。
男子3000m障害 「雪辱を果たしたい」三浦が大会3連覇
男子110mハードル 泉谷 日本記録を0秒02縮める
女子やり投げ 北口 本来の力を発揮できず
女子100mハードル 4人が12秒台をマーク
男子走り幅跳び 優勝の城山「今シーズンは万全」
男子100m 桐生欠場 坂井が初優勝
コロナ禍を経て 陸上界 盗撮被害防ぐ啓発活動も
37歳上野 “無難ではなく積極的に”
