冒頭、安倍総理大臣は、ことしが明治元年から150年にあたることに触れ「明治という新しい時代が育てたあまたの人材が、技術優位の欧米諸国が迫る『国難』とも呼ぶべき危機の中で、わが国が急速に近代化を遂げる原動力となった。今また、日本は少子高齢化という『国難』とも呼ぶべき危機に直面している。もう1度、あらゆる日本人にチャンスを創ることで、少子高齢化も克服できる」と呼びかけました。
《働き方改革》
続いて安倍総理大臣は、具体的な政策課題の最初に「働き方改革」を取り上げ、「戦後の労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革だ。誰もが生きがいを感じて、その能力を思う存分発揮すれば少子高齢化も克服できる」と述べました。
そして、同一労働同一賃金の実現や、時間外労働の上限規制の導入、それに労働時間でなく成果で評価するとして労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の創設などに取り組む考えを強調しました。
《人づくり革命》
次に安倍総理大臣は「人づくり革命」について「現役世代が抱える介護や子育ての不安を解消する」として、待機児童の解消に向けて、2020年度までの32万人分の受け皿整備を目指し、新年度に10万人分以上を整備する方針を示しました。
また、幼児教育の無償化を2020年度を目指して、一気に推進するとしたほか、私立高校も含めた高校の実質無償化や、大学などの授業料の減免措置と給付型奨学金の支給対象の拡大も進める考えを強調しました。
一方、安倍総理大臣は「人づくり革命」などの財源を確保するために消費税の使いみちを見直すことで、政府の財政健全化目標の達成が困難となっていることを踏まえ、ことし夏までに、基礎的財政収支の黒字化の新たな達成時期と、その裏付けとなる具体的な計画を策定する考えを示しました。
《生産性革命》
さらに安倍総理大臣は、雇用などの経済指標が改善した実績を強調したうえで、世界中でロボットや人工知能などの新たな技術革新が次々に生まれていることに触れ「『生産性革命』への流れを先取りすることなくして、日本経済の未来はない。あらゆる政策手段を総動員していく」と述べました。
そのうえで、3%以上の賃上げを行い積極的に投資する企業には、法人税負担を25%まで引き下げるのに対し、収益が拡大しているにもかかわらず投資に消極的な企業には、研究開発減税などの優遇税制の適用を停止する考えを示しました。
《地方創生》
また安倍総理大臣は、地方創生の起爆剤として「観光立国」を位置づけ、IR=統合型リゾート施設を整備するための法案を提出する考えを示し「依存症対策などの課題に対応しながら、世界中から観光客を集める滞在型観光を推進する」と述べました。
また、福島の復興に向け、除染やインフラ整備を着実に進めるとともに、福島県の沖合での風力発電の拡大に向けた新たな制度を整える考えを示しました。
《外交・安全保障》
一方、外交・安全保障政策で安倍総理大臣は、まず北朝鮮への対応を取り上げ「北朝鮮に完全に検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄させ、拉致問題を解決する。北朝鮮に政策を変えさせるためいかなる挑発行動にも屈することなく、きぜんとした外交を展開する」と述べました。
また、3年前に安全保障関連法を成立させたことに触れ、「北朝鮮情勢が緊迫する中、自衛隊は初めて米艦艇と航空機の防護の任務にあたった」と明らかにしました。
そのうえで、地上配備型の新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」や長距離巡航ミサイルの導入などで防衛力を強化し、専守防衛を大前提に、年末に向けて、防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」を見直す考えを示しました。
また、「太平洋からインド洋に至る広大な海を、すべての人に分け隔てなく平和と繁栄をもたらす公共財としなければならない」として、航行の自由や法の支配を基礎とする「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推し進めるとしたうえで、この方向性に沿って中国とも協力し、アジアのインフラ需要に応えていく考えを打ち出しました。
さらに、日韓関係について、慰安婦問題をめぐる日韓合意を含めた両国間の国際約束や信頼関係の積み重ねのうえに、未来志向で協力関係を深める考えを示しました。
《おわりに》
そして安倍総理大臣は演説の結びで、来年の天皇陛下の退位と皇太子さまの即位について「国民の皆様の祝福の中でつつがなく行われるよう全力を尽くす」と述べました。
さらに憲法改正に関連し「あらゆる人にチャンスあふれる日本を、与野党の枠を超えて、ともに作ろうではないか。各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会で議論を深め、前に進めていくことを期待している。今こそ新たな国創りをともに進めていこう」と呼びかけました。