この映画は、第2次世界大戦下のイギリスで首相を務めたウィンストン・チャーチルの実話をもとにした作品です。
この作品で特殊メイクを担当した辻一弘さんは、10代のころから独学で特殊メイクを学び、渡米後、ハリウッドで数多くの映画に携わってきました。アカデミー賞では、2006年と2007年に2年連続でノミネートされ、今回が3回目です。
また、短編アニメーション賞には桑畑かほるさんがアメリカ人の夫とともに共同監督を務める「ネガティブ・スペース」がノミネートされました。この作品は5分余りのコマ撮りアニメーション映画で、父と息子の関係を荷造りの描写を通して描いています。
桑畑監督は東京都出身のアニメーション作家でアメリカ・ニューヨークの大学を卒業後、アメリカを拠点に活動を続け、短編映画やテレビCMなどを数多く手がけています。アカデミー賞ではこれが初めてのノミネートとなります。
今回のアカデミー賞では、メキシコのギレルモ・デル・トロ監督の作品「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞や監督賞、それに主演女優賞など、最多の13部門でノミネートされました。アカデミー賞の発表と授賞式は、3月4日、ハリウッドで行われます。
辻さん「今回は期待が大きい」
辻一弘さんは、一時帰国中の23日、NHKの事前取材に応じ、「今まで関わった映画はコメディーが多くて、ノミネートされても本気で受け取られなかったが、今回はしっかりとした映画なので、その分、期待が大きいです」などと語りました。
辻さんは、主演のゲイリー・オールドマンさんから直接依頼を受け、今回の作品に関わることになったということで、「僕は映画業界から去っていましたが、ゲイリーさんから『あなたがメイクをしないならこの映画はやらない』と言われ、こういうシリアスな映画を本当にやりたかったので、依頼を受けました」といきさつを語りました。
特殊メイクで苦労した点については、「演じる人がチャーチルに似た人であれば楽でしたが、ゲイリーさんが全くチャーチルに似ていないので、どういうふうにバランスよくデザインをして何をどこにつけるのがいいのか考え出すのにかなり時間がかかりました」と振り返りました。
そのうえで、「特殊メイクの最終的なゴールは見ている人がメイクだと気付かないでいることです」とみずからの仕事の難しさ説明し、今回の映画について「自分が関わった映画を見るときはメイクがどうなっているか気になって、話が入ってこないんですが、今回はストーリーと演技がすばらしく、映画にのめり込んでメイクのことを忘れていました。すばらしい映画だと思っています」と話していました。
桑畑さん「今はただただ驚いています」
アカデミー賞の短編アニメーション賞で作品がノミネートされた桑畑かほる監督は、NHKの取材に対して「アカデミー賞は小さい頃から夢の世界の出来事と思ってきたので、ノミネートされて現実のものになり、今はただただ驚いています。今回の作品は本当にすてきなチームに恵まれたと思っています。世界で女性の社会進出が課題となる中で女性監督として、また、日本人というマイノリティーとして引き続き、頑張っていきます」と話していました。