この男性は、19歳だったおととし、ツイッターで知り合った別の大学生から起業スクールへの入会を勧められました。
新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響で居酒屋のアルバイトがなくなり経済的に苦しかったことや、具体的なビジネスの手法が学べると聞いたことから、男性は誘いに乗りおよそ40万円を月2万円余りの月賦払いで支払う契約を結び入会しました。
しかし、講義が始まってみると、その内容は契約前の説明とは大きく異なっていたということです。
男性は講義の内容をノートに記録していましたが、「スクールの主宰者を信じれば夢がかなう」とか「疑う心は排除しろ」といった説明が多く、主宰者の尊敬できるところを10個書かせるなど大半が精神論だったということです。
また、スクールに新たな会員を勧誘するよう求められ、成功した場合、1人につき数十%のマージンを得られると言われたということです。
男性は「そもそも自分でコンテンツを売ってそれをビジネスにする方法を学べるという話だったのに、なぜ、スクールの紹介をさせられるんだろうと、次第に怪しむようになった」と言います。
いわゆるマルチ商法ではないかと疑うようになった男性は「未成年者取消権」を使って解約し、支払った分を全額取り戻しました。
NHKの取材に応じた、かつて詐欺事件で摘発され、悪徳商法に関わったこともある元暴力団員は「ひと言で言えば、大人より若者のほうがだましやすい。若者は勢いがあるだけで、『それはそうじゃないよ、こうだよ』と、順序立てて説明していくと落ちやすい」と明かしました。 そのうえで「人間は欲望が膨らんでくると心に隙が生まれる。若さにあふれた一方、金もなく知識もない若者ほど、欲望が飽和状態になりやすいので、犯罪者はそこを突いてくる。20歳と18歳では、社会での経験値も金銭的な環境も全く異なる。さまざまな犯罪者がその世代に目をつけてくると思う」と話しました。
学習指導要領の改訂で、来年度、高校の家庭科で、株式投資や投資信託など基本的な金融商品の特徴を教える授業が始まります。 東京の都立桜修館中等教育学校ではこの「金融教育」の本格化を前に、家庭科の授業の中で資産形成の必要性などを教えています。 先月の授業では、来月以降、18歳になる高校生を前に、日本では賃金が伸び悩んでいることや「老後におよそ2000万円が必要になる」とした金融庁の審議会の報告書が注目を集めたことが紹介され、生徒一人一人が人生設計のシートを作って、資産形成のための計画を考えていました。 生徒の1人は「投資に興味は無かったですが、『老後2000万円問題』があると聞いて、資産運用を考えていくことは必要だと思いました。ただ、金融の知識がたくさんある訳ではないので、もう少し先の将来の話というイメージもあります」と話していました。 また、別の生徒は「将来に備えて投資をしたいと思っていますが、大学生になったら悪質商法の勧誘が増える危険性があると聞いて驚いています。友達から『だまされやすい』とよく言われるので、人一倍、気をつけないといけない」と話していました。 学校現場での「金融教育」の取り組み。 しかし、教員の間からは、教える側の知識不足や授業時間が限られていることを懸念する声も出ています。 この学校では家庭科だけでなく公民などの授業も活用しようとしていますが、充てられる時間は年間2時間程度にとどまる見通しであるうえ、手口が次々に変化する悪質商法に対応するのは容易ではありません。
高橋客員教授は「20歳になった学生でさえ悪徳商法や投資詐欺に引っ掛かっているのが現状で、金融的な経験や社会経験、知識が全くないなかでいきなり成人として扱われてしまう以上、新成人が金融被害に遭うリスクは高いと思う」と指摘しています。 そのうえで「大学生はコロナ禍で学校に来られず、サークル活動もほぼない孤独な環境にある。もうけ話はSNSで誘われるケースが多いが、若者はSNSを通じたつながりを非常に重要だと考えていてターゲットになりやすい。『数%以上の金利を約束する』などとうたっている商品はリスクも大きく詐欺だったりすることが多く、そのような基本から教えていかないといけない。若者に情報を与えるとともに、大人が若者から相談してもらえるような環境づくりが必要だ」と話しています。
また、法律に関する問い合わせは「日本司法支援センター=法テラス」でも受け付けています。 こちらの番号は0570-078374です。
「大人より若者のほうがだましやすい」
対応に追われる学校現場
コロナ禍で孤立化する若者が巻き込まれるリスク高い
トラブルに巻き込まれたら