自家発電設備持つ企業は電力の供給力積み上げに協力

電力需給ひっ迫警報が出される中、政府と東京電力は、自家用発電機を持っている企業などに対して最大限、発電機を稼働させるよう協力を呼びかけています。
これを受けて、
▽大手鉄鋼メーカーでは、日本製鉄が千葉県君津市と茨城県鹿嶋市の製鉄所にある、自家発電の出力を最も大きい水準に引き上げて東京電力に供給しているということです。
このほか、 ▽製紙メーカーの日本製紙が埼玉県草加市と栃木県足利市の工場で、 ▽化学メーカーの住友化学が千葉県市原市の工場で、 それぞれ自家発電の出力を最大に引き上げて東京電力に供給しています。 一方、 ▽自動車メーカーの日産自動車は栃木県上三川町にある工場で、 ▽通信業界のNTTドコモは、全国の通信システムを監視・制御している「ネットワークオペレーションセンター」で、 それぞれ自家発電設備を稼働させ、外部からの電力使用を減らしているということです。 さらに、電気の熱で鉄くずを溶かし鉄鋼製品をつくっている「東京製鐵」は、東京電力からの要請を受けて、宇都宮市の工場の稼働を22日午後10時から2時間、見合わせることを決めました。 これによって、電力使用をおよそ10万キロワット抑えられるということで、会社は、23日未明以降に工場を稼働させることにしています。
また、共用の廊下の照明を一部、消しているほか、22日午後3時からはエレベーターの運転台数を減らすなど、節電を行います。 東京都の小池知事は22日午前、記者団に対して「意識的に、ほんの少しの電力の消費を削減するということを東京中の方がなさると大きい。都民・事業者の協力をもって何とかこらえていきたい」と述べ、節電への協力を呼びかけました。
庁舎内では「政府から電力需給ひっ迫警報が出されました。空調を停止します」とアナウンスが行われ、職員の中には寒さをしのぐため上着を着て仕事をする人の姿も見られました。 22日は気温が低くなっているため、市では、訪れる市民や職員などの体調を見ながら暖房の停止時間について、検討することにしています。 富士市役所では、日頃から市民が訪れない窓口の電気を消すなどの節電に取り組んでいるということですが、庁舎内では改めて職員に節電を呼びかけるアナウンスも行われていました。 富士市資産経営課の遠藤哲史さんは「年度末の業務が重なっているが、業務に支障がない範囲でできるかぎりの協力をしていきたい」と話していました。 また、市役所を訪れた男性は「家の電気をなるべく切るなどして少しでも節電に協力できればと思います」と話していました。
東京 中央区のデパート「松屋銀座」では、政府が東京電力の管内に「電力需給ひっ迫警報」を出したことを受けて、22日は、店内の空調の稼働を抑えるため設定温度をふだんより3度ほど低いおよそ20度に下げて、営業を行っています。 これに伴い、施設の管理を担当する社員が店内を巡回し、売り場の責任者への聞き取りも行いながら、買い物客の反応などを確認していました。 また、売り場以外の社員の業務スペースでは、より一層の節電を呼びかけ、暖房を切ったり、人がいないスペースの電気を消したりして節電を行っていました。 買い物に訪れていた70代の女性は「冬の装いをしてきたのもあり、店内では肌寒さは感じなかった。これだけ電力が足りなくなっているのでお店でも節電への協力は必要だと思うし、自宅でも節電したい」と話していました。 デパートで施設管理を担当する田中康雅課長は「まん延防止等重点措置の解除に期待をしていたタイミングではあるが、事業者としての責任をしっかり果たしていきたい」と話していました。
このうち、テレビ売り場では200台のテレビを取り扱っていて、ふだんは電源を入れ、映像を映し出したままの状態で陳列しています。 節電の呼びかけを受けて、22日は半分ほどのテレビのスイッチをオフにしていて、電力の消費を抑えています。 いつもは鮮やかな映像を映し出すテレビが並んで明るい売り場ですが、22日は画面が真っ黒のテレビが目立っていました。 店では、テレビの映像を見比べたいといった申し出があった場合に、スイッチを入れることにしているいうことです。 また、この店舗を含め、首都圏などの店舗では、店内の暖房の設定温度を20度以下にしているということです。 ビックカメラ新宿西口店でテレビ売り場を担当する粕谷久幸さんは「商品を確認する際に電源が入っていないと少し不便に感じてしまうと思うが、希望があればテレビをつけるなどして無理のない範囲で対応することにした」と話していました。
到着ロビーでは、担当者が明るさを抑えた場合にどの程度、利用者に影響があるかを確認しながら照明を消していました。 空港内では「電力需給ひっ迫警報の発令に伴い、照明と空調の運転制御をしています」といったアナウンスが流れていました。 国内線のターミナル内では3分の1程度の照明を消すほか、空調の使用をふだんの半分に抑えているほか、事務所や店舗のバックヤードでも照明を消しているということです。
縦3メートル、横6メートルほどの大型ビジョンでは、ふだんはお店の商品の情報や区役所からのお知らせなどを紹介していますが、22日は画面が真っ黒となっています。 この店では、少しでも節電に協力しようと、電源を切ることを決めたということです。 23日以降も節電への呼びかけがあれば、大型ビジョンを消すことを検討するとしています。
横浜市中区のみなとみらい地区にある遊園地「よこはまコスモワールド」の観覧車は毎日、午後4時から翌日の午前0時まで、およそ100万個のLEDライトでライトアップされています。 毎正時から15分ごとに5分間、万華鏡や虹、花火などさまざまな色のイルミネーションを見ることができ、横浜市の夜景のシンボルになっていますが、東京電力からの節電要請を受けて、22日のライトアップは中止するということです。 観覧車を含むアトラクションは、雨の影響で休止するものを除いて通常どおりの運行です。
自家発電の設備は、東日本大震災をきっかけに導入し、これまでも電力需給が高まる夏場などに使用しているということです。 テーマパークを運営するオリエンタルランドは「政府や東京電力の要請に応じて対応していく」としています。
相馬市では22日正午時点で29世帯75人が避難しています。22日の相馬市は低気圧と寒気の影響で日中、0度近くまで気温が低くなり、避難所では避難してきた人たちが電気ストーブなどを使って暖をとっていました。 また、避難所にはスマートフォンを充電できるスペースや、感染対策のための空気清浄機が設置され、電力が避難生活を支えています。 地震の影響による一部の発電所の運転停止や、気温の低下などから東北電力の管内では電力の需給状況が非常に厳しくなり、避難所では停電が起きることへの不安が広がっています。 1週間近く避難している64歳の男性は「家族などと連絡を取り合うのにスマートフォンを使っているので充電が必要です。寒さも厳しく、避難生活中に停電したら本当に困ります」と話していました。 避難所の受付を担当している相馬市健康福祉課の松田早苗課長補佐は「長期間の避難生活に疲れ、体調を崩す人も出ています。停電したら現在避難している人も困りますし、また避難する人が増える可能性もあります。停電だけはやめてほしいです」と話していました。
東京 練馬区の針生惇さん(80)は、難病のALSを患い、3年前から電力で動く人工呼吸器を使って生活しています。 人工呼吸器は、非常時に使うバッテリーが12時間しか持たないため、停電が長引いた場合は使えなくなり、命に危険がおよぶおそれがあります。 妻の若子さん(79)は、22日午後、停電に備えて看護師やヘルパーとともに予備のバッテリーの場所や接続方法を確認していました。 若子さんは、夜間に停電すると、暗いなかでうまくバッテリーを交換できないのではないかと不安に感じていました。 今月16日、宮城県と福島県で震度6強の激しい揺れを観測した地震では、針生さんの家も数時間、停電しました。 このときは停電の時間が短かったため、人工呼吸器のほか、たんを吸引する機械も使うことができましたが、若子さんは停電の怖さを実感したということです。 若子さんは「電気が来なくなってしまったらどうしようと思い、悩んでいます。夫も酸素が送られてこないかもしれないという不安にかられていると思います。停電が発生した場合、長引かないことを祈るとともに、改めて日頃の備えを進めていきたいと思います」と話していました。
資源エネルギー庁などは、次のような節電の方法をホームページで紹介し、改めて節電への協力を呼びかけています。 【暖房・エアコン】 ▽暖房の設定温度を20度に下げる。 ▽暖房の効果を上げるため、ドアの開け閉めは少なくする。 ▽家庭では、床まで届く厚手のカーテンで熱の放出を防ぐと節電に効果的。 ▽エアコンの室外機の吹き出し口に物を置くと電気を余分に消費してしまうため、物はどけておく。 【家電など】 ▽冷蔵庫は開け閉めを少なく、開けている時間を短くする。 ▽熱いものは、冷ましてから冷蔵庫に入れる。 ▽長時間使わないときは、電気ポットのプラグを抜く。 ▽洗濯物は自然乾燥にするか、まとめて乾燥機にかけて回数を減らす。 ▽乾燥機のフィルターが詰まっていると乾燥時間が長くなり、余分に電気を消費するため、掃除しておく。 【家庭やオフィスでは】 ▽トイレは、便座の暖房や洗浄水の温度を下げる。 ▽熱が逃げるのを防ぐため、使わないときは便座のふたを閉める。 ▽オフィスなどで使っていないパソコンやコピー機などは、コンセントを抜いておく。 ▽部屋や廊下、通路で点灯する電気の数を減らす。 ▽近い階の上り下りは、エレベーターを使わないようにする。
東京都庁 暖房の設定温度を下げる
静岡 富士市役所 庁舎内の全暖房を停止
東京都内のデパート 空調の稼働抑え営業も
東京 新宿の家電量販店 商品の電源を切り節電
羽田空港 ターミナルビル内の照明を消す
ディスカウントストアでは大型ビジョンの電源切る
横浜 観覧車のライトアップが中止に
東京ディズニーランドとディズニーシーでは
停電などに不安も
相馬の避難所は
人工呼吸器など使う難病の患者や家族は
節電のために できることは?