【全文ぜんぶん掲載けいさい】「ドライブ・マイ・カー」濱口はまぐち監督かんとく 受賞じゅしょう会見かいけん

Q:アカデミー賞しょう受賞じゅしょうおめでとうございます。まずは今いまの率直そっちょくなお気持きもちは？

「うれしいです。

本当ほんとうにノミネートされるということだけでも、本当ほんとうにすごいことだと思おもっていたので、こうして受賞じゅしょうができるとは本当ほんとうに思おもっていなかったので、本当ほんとうにありがたいことだと思おもっています」

「重おもい、ということを思おもいました。

ポン・ジュノ監督かんとくが2年ねん前まえにとったときすごく片手かたてで軽々かるがるとあげられていたので、意外いがいと軽かるいのかなと思おもっていたらすごく重おもかったので、びっくりしました」

Q:どういう方ほうから、どういうコメントをいただいたのか？

「みんなでエレベーターを待まっていたら、カンバーバッチさんとかスピルバーグ監督かんとくとかに会あって、スピルバーグ監督かんとくは本当ほんとうに『おめでとう』と、『その映画えいがにふさわしいものだ』という風かぜに言いっていただきました。

スピルバーグさん自身じしんも『この映画えいががとても好すきだ』というふうに言いっていただけて、まあ本当ほんとうにすごい日ひだなということを思おもいました」

「きょう、ゴッドファーザー50周年しゅうねんということでコッポラさんとかですね、アル・パチーノさんとか、ロバート・デ・ニーロさん登壇とうだんされていましたけど、3時間じかんの映画えいがというのはそんなに珍めずらしいものではないというところは、まずあると思おもいます。

アメリカの観客かんきゃくはある種たね、厳きびしいところがあって、おもしろいかおもしろくないかで見みていくところがあるんだというふうには思おもっています。

アメリカの観客かんきゃくのある種たね、厳きびしい目線めせんに耐たえるような役者やくしゃさんたちのすばらしい演技えんぎというものがこの映画えいがでは映うつっていて、本当ほんとうにこの役者やくしゃさんたちの感情かんじょうというものを感かんじて、アメリカの観客かんきゃくも、肌はだの色いろもことばも違ちがうけれども同おなじ人間にんげんなんだ、同おなじ弱よわさを抱かかえていたり、同おなじ傷きずを抱かかえていたりする、そういう人間にんげんなんだということをすごく受け止うけとめてもらったんじゃないかなということを思おもいます」

「まずステージから光景こうけいはほとんど何なにも…すごく視野しやが狭せまくなっていたと思おもいますね。

あんまり覚おぼえていない。

ただしここにいらっしゃる役者やくしゃさんの名前なまえをあげて感謝かんしゃしたということは思おもっていたので、役者やくしゃさんのいる位置いちを覚おぼえておいて、その辺あたりにいるはずだと思おもって見みているという感かんじでした。

スピーチに関にかんしては受賞じゅしょうする可能かのう性せいはある訳わけなので、少すこしだけ考かんがえて通訳つうやくの方ほうにこういうことで言いいたいんですけどと言いったら、英語えいごで訳やくしていただいて、それを覚おぼえてやったという感かんじです。

今回こんかい学まなんだのは、サンキューというと終おわらせられるということですね。

（会場かいじょう爆笑ばくしょう）

なので、もしそんな機会きかいが次つぎあったら、ちゃんと淡々たんたんとスタッフの方ほうとか村上むらかみ春樹はるきさんとか、いろいろちゃんと感謝かんしゃをしたかったんですけれども、もう一いち回かいやらせてとはなかなか言いえなかったので、なかなか初心しょしん者しゃには厳きびしい舞台ぶたいでしたけれども、通訳つうやくの方ほうのおかげでうまく終おわれたんじゃないかなと思おもっています」

「そうですね。

でもやっぱりこういう時ときは傷きずつかないように、呼よばれない可能かのう性せいっていうのをちゃんと考かんがえておくものなんですけど、『呼よばれた』っていうことを思おもいましたね。

まさかそんなオスカーの授賞じゅしょう式しきで呼よばれることがあるのかと、端的たんてきに言いうと『マジか』という気持きもちで、立ち上たちあがったという感かんじです。

はい」

Q:アカデミー賞しょう受賞じゅしょうのほかのカンヌを含ふくめていろいろ受賞じゅしょうされているが違ちがいは？

「違ちがい。

なんですかね。

やっぱりせきたてられている感かんじっていうんですかね。

ああいうスピーチの場ばというのはですね、最初さいしょに45秒びょうから1分ふんでいってくれということを言いわれているものなんです。

ただ、皆みなさん、必かならずしも守まもらないので、別べつにいいんだなとは思おもうんですけど、でも早はやく言いわなきゃいけないっていう、その焦あせりが一番いちばん、なんていうんですかね。

その興奮こうふんしている、興奮こうふんしてもいるんですけど、そう見みえるところなんだろうなっていうことは思おもいます。

なので、地ちに足あしがつかないような場所ばしょっていうことはそうなんですけど、ただそれは別べつにカンヌでもそうだったし。

どこに行いってもこういう場ばに行いくと、本当ほんとうに浮き足立うきあしだった気持きもちになるっていうのは、すごく正直しょうじきなところです」

「そうですね。

オスカーが待まっていると思おもったことはないです。

一いち度どもないです。

まあ思おもっているのは、ここが到達とうたつ点てんだったらやだなっていうことでここが通過つうか点てんだといいなということを思おもっています」

「私わたしはもう直近ちょっきんのことで恐縮きょうしゅくなんですけど、まあ休やすみたいと思おもっています、休やすもうと思おもっています。

休やすんでいたら映画えいがが作つくりたくなるんじゃないかなと思おもっているので、そのためにも休やすもうと思おもっています」

「それは今後こんごの皆みなさんが決きめていただければいいというのが、正直しょうじきなところです。

ただ、プロデューサーの方かたたちの尽力じんりょくのおかげもあって、準備じゅんびに時間じかんをかけて作つくることができたということは、とても貴重きちょうなことだったと思おもっています。

いわゆる商業しょうぎょう映画えいがというものをつくって2本ほん目めですけれども、今回こんかいやっぱりすごく皆みなさんが、その準備じゅんびの大切たいせつさというものを理解りかいして、作つくってくださったっていうことは感かんじていて、その準備じゅんびを時間じかんをかけたことによって、こういう結果けっかが得えられているんだということは言いいたいですし、もしそれを参考さんこうにしてやってみたいという方ほうがいてくれたらそれはすごくありがたいことだなということを思おもいます。

この時間じかんかけるっていうことはやっぱりとても大事だいじなことで、時間じかんをかけるっていう意思いしさえあれば、せきたてられるように仕事しごとをしなくても済すむし、お互おたがいをリスペクトするようなそういう環境かんきょうも生うまれやすいということを思おもうので、これは本当ほんとうに映画えいが界かいだけではないと思おもうんです。

時間じかんをかけて本当ほんとうにこのことに価値かちがあるんじゃないかっていうことを、みんなでやるっていうことができたら、それはやっぱり今いまより少すこし幸しあわせなことなんじゃないだろうかと私わたしは思おもうので、一応いちおうそういう実例じつれいだと思おもっているんですけど、そういうふうに捉とらえていただけたらすごくありがたいなと思おもっています」

この中なかで、濱口はまぐち監督かんとくは「作つくっているときには作品さくひんのテーマのことはあまり考かんがえませんでしたが、いろいろな国くにに作品さくひんが届とどき、観客かんきゃくからの反応はんのうによって、この映画えいがが喪失そうしつの物語ものがたりであり、また、人生じんせいをどう生いき直なおすかという話はなしであることに気付きづきました。映画えいがは観客かんきゃくの精神せいしんとつながるものだと感かんじています」と、作品さくひんが国際こくさい的てきな評価ひょうかを得えてきた経緯けいいを振り返ふりかえりました。

また、監督かんとくたちがお互おたがいを批評ひひょうし合あうコーナーでは、濱口はまぐち監督かんとくは、イタリアの監督かんとくから「彼かれの存在そんざいはほかのすべての監督かんとくにとって悪夢あくむのようなものだ。なぜなら彼かれは深ふかい映画えいがを作つくる偉大いだいな監督かんとくだからだ」などと称賛しょうさんされていました。

そのうえで、喪失そうしつと再生さいせいがテーマになっている今回こんかいの作品さくひんについて、「いま、ウクライナの戦争せんそうと新型しんがたコロナウイルス、この2つが大おおきな問題もんだいとしてたくさんの人ひとがもやもやしていると思おもう。そういう時代じだいに、穏おだやかに時間じかんが過すぎて、気付きづいたら3時間じかんがたっているような映画えいがだったことが、プラスに評価ひょうかされたのではないか。アカデミー賞しょうは時代じだいを反映はんえいすると思おもうが、結果けっかとして作品さくひんが時代じだいに合あっていたのでは」と話はなしていました。

また、今回こんかいの受賞じゅしょうには、賞しょうを選えらぶ投票とうひょうに関かかわるアカデミー会員かいいんの人種じんしゅや性別せいべつなどの多様たよう化かも影響えいきょうしているとしていて、「いろんな人種じんしゅの人ひとや、女性じょせいが増ふえてきたことによって、映画えいがの見方みかたが違ちがってくるし、違ちがった考え方かんがえかたを導入どうにゅうすることによって、映画えいがの価値かちもまた上あがったり下さがったりする。その結果けっか、ドライブ・マイ・カーが、アカデミー会員かいいんに共感きょうかんを呼よぶ割合わりあいが高たかくなったのではないか」と話はなしていました。

そして、今回こんかいの受賞じゅしょうが日本にっぽんの映画えいが界かいに与あたえる影響えいきょうについては、「1つの映画えいがが賞しょうを取とるということは、他たに作つくってる人ひとたちにも大おおきな刺激しげきになるし、日本にっぽん映画えいがを海外かいがいに売り込うりこむ際さいにもプラスになる。また、濱口はまぐち監督かんとくにとっても、賞しょうを受賞じゅしょうすることは成長せいちょうにつながることでもあると思おもうので、これを糧かてにまた頑張がんばってほしい」と話はなしていました。

映画えいがのロケ地ちの1つとなった広島ひろしま市し南みなみ区くにあるホテルでは、主演しゅえんの西島にしじま秀俊ひでとしさんと岡田おかだ将すすむ生せいさんがバーで語り合かたりあうシーンなどが撮影さつえいされました。

28日にちはホテルのスタッフなどがアカデミー賞しょうの様子ようすを見守みまもり、国際こくさい長編ちょうへん映画えいが賞しょうの受賞じゅしょうが発表はっぴょうされると大おおきな歓声かんせいを上あげ、くす玉くすだまを割わって喜よろこびました。

撮影さつえいに協力きょうりょくした広島ひろしまフィルム・コミッションの西にし※ザキ智子さとこさんは「とてもうれしいです。監督かんとくに心こころからおめでとうございますと伝つたえたいです。作品さくひん賞しょうなどの受賞じゅしょうも期待きたいしたいです」と話はなしていました。

※ザキは崎さきの「大だい」が「立りつ」

また「グランドプリンスホテル広島ひろしま」の従業じゅうぎょう員いんは「作品さくひんに携たずさわることができて光栄こうえいに思おもいます。この映画えいがをきっかけに多おおくの人ひとに広島ひろしまに来きてもらいたいです」と話はなしていました。

呉くれ市しでは観光かんこう客きゃくなどから喜よろこびの声こえが聞きかれました。

呉くれ市し大崎おおさき下島しもしまの御手洗みたらし地区ちくは江戸えど時代じだいに港町みなとちょうとして栄さかえ、いまも残のこる古ふるい町並まちなみと瀬戸せと内海うちうみの美うつくしい風景ふうけいで知しられています。

映画えいがには、主人公しゅじんこうの西島にしじま秀俊ひでとしさんが滞在たいざいした旅館りょかんや瀬戸せと内海うちうみに架かかる安芸灘あきなだ大橋おおはしでのドライブなど呉くれ市しで撮影さつえいされたシーンが登場とうじょうします。

地元じもとの観光かんこう協会きょうかいの石田いしだ雅恵まさえ事務じむ局長きょくちょうは「受賞じゅしょうをきっかけにもっとたくさんの人ひとに御ご手洗てあらいを訪おとずれてもらい、美うつくしい海うみや空そら、そして独特どくとくの雰囲気ふんいきを味あじわってほしいです。これから観光かんこう客きゃく誘致ゆうちにもつなげたいです」と話はなしていました。

また、観光かんこうで京都きょうとから訪おとずれたという学生がくせいは「受賞じゅしょうを聞きいて驚おどろきました。映画えいがにも出でてきた海沿うみぞいの景色けしきがきれいで、来きてよかったです」と話はなしていました。

28日にち、市内しないの飲食いんしょく店てん「珍ちん来らい」には、ロケ地ちの選定せんていに携たずさわった関係かんけい者しゃなど10人にん余あまりが集あつまり、テレビでアカデミー賞しょうの授賞じゅしょう式しきを見守みまもりました。

午前ごぜん10時半じはんごろに「国際こくさい長編ちょうへん映画えいが賞しょう」の受賞じゅしょうが発表はっぴょうされると、歓声かんせいをあげて拍手はくしゅで喜よろこびを分わかち合あいました。

撮影さつえい中ちゅうは出演しゅつえん者しゃに食事しょくじを提供ていきょうしたということで、店主てんしゅの佐々木ささき康宏やすひろさんは「感動かんどうで震ふるえました。赤平あかびら市しの風景ふうけいを世界中せかいじゅうの人ひとが見みてくれていると思おもうと最高さいこうの気持きもちです」と喜よろこびを語かたりました。

また、ロケ地ちを選えらんだ赤平あかびら市し商工しょうこう労政ろうせい観光かんこう課かの成田なりた博之ひろゆき主幹しゅかんは「すばらしい賞しょうを受賞じゅしょうし、おめでとうと伝つたえたい。これを機きにたくさんの方ほうに赤平あかびらを訪おとずれてほしい」と話はなしていました。