日本新聞: 日銀短観原材料価格高騰が景気の重荷に【現場リポ】

日銀にちぎんが発表はっぴょうした短観たんかん＝企業きぎょう短期たんき経済けいざい観測かんそく調査ちょうさで、大だい企業きぎょうの景気けいき判断はんだんを示しめす指数しすうが製造せいぞう業ぎょう、非ひ製造せいぞう業ぎょうとも7期きぶりに悪化あっかしました。ロシアのウクライナ侵攻しんこうをきっかけとした原材料げんざいりょう価格かかくの一段いちだんの高騰こうとうが、景気けいきの重荷おもにになっていることが浮き彫うきぼりになりました。短観たんかんのデータからは、原材料げんざいりょう価格かかくの高騰こうとうによるコストの大幅おおはばな上昇じょうしょうを、販売はんばい価格かかくに転嫁てんかしきれず、収益しゅうえきが圧迫あっぱくされている企業きぎょうが多おおくなっている状況じょうきょうが見みえてきます。

「仕つかまつ入にゅう価格かかく判断はんだん」は、仕つかまつ入にゅう価格かかくが上昇じょうしょうと答こたえた企業きぎょうの割合わりあいから下落げらくと答こたえた企業きぎょうの割合わりあいを差し引さしひいた指数しすうで、数字すうじが大おおきいほど仕つかまつ入にゅう価格かかくの上昇じょうしょう傾向けいこうが強つよいことを示しめします。

この「仕つかまつ入にゅう価格かかく判断はんだん」が、製造せいぞう業ぎょうと非ひ製造せいぞう業ぎょうのいずれでもいわゆる右肩みぎかた上あがりになっています。

なかでも製造せいぞう業ぎょうでは▽大だい企業きぎょうがプラス58、▽中小ちゅうしょう企業きぎょうがプラス70と、いずれも前回ぜんかいより10ポイント程度ていど高たかくなり、非常ひじょうに高たかい水準すいじゅんとなっています。

この「仕つかまつ入にゅう価格かかく判断はんだん」と、販売はんばい価格かかくの動向どうこうを示しめす「販売はんばい価格かかく判断はんだん」と比較ひかくすると、たとえば製造せいぞう業ぎょうではその差さが▽大だい企業きぎょうで34▽中小ちゅうしょう企業きぎょうで47と大おおきな開ひらきがあり、いずれも前回ぜんかいから差さが広ひろがっています。

これは、企業きぎょうがコストの上昇じょうしょう分ぶんを商品しょうひんやサービスの価格かかくに十分じゅうぶんに転嫁てんかできておらず、企業きぎょうの収益しゅうえきが圧迫あっぱくされる度合どあいが強つよまっていることを示しめしています。

「仕つかまつ入にゅう価格かかく判断はんだん」は、3か月かげつ後ごの見通みとおしでも高こう止とまりすると見込みこまれていて、このまま販売はんばい価格かかくへの転嫁てんかが進すすまなければ、企業きぎょう業績ぎょうせきの悪化あっかにつながることが懸念けねんされます。

バス会社かいしゃ「まん延まんえん防止ぼうし」解除かいじょで需要じゅよう回復かいふく期待きたいも… 高松たかまつ

原材料げんざいりょう価格かかくの高騰こうとうによって、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうから持ち直もちなおしていた企業きぎょうの収益しゅうえきが、圧迫あっぱくされ始はじめています。

およそ30台だいのバスを保有ほゆうする、高松たかまつ市しのバス会社かいしゃは、香川かがわ県けんを含ふくむ各地かくちに出でていたまん延まんえん防止ぼうし等とう重点じゅうてん措置そちが解除かいじょされてから観光かんこう用ようの貸し切かしきりバスの予約よやくが増ふえ始はじめました。天井てんじょう部分ぶぶんが大おおきく開ひらく「オープントップバス」の運行うんこうを計画けいかくするなど業績ぎょうせき回復かいふくに向むけた準備じゅんびを進すすめていますが、さまざまなものの値上ねあがりに直面ちょくめんしています。

燃料ねんりょうの軽油けいゆだけでなく、タイヤやバッテリーなどの価格かかくも上昇じょうしょうしていて、運行うんこうにかかるコストは前まえの年としに比くらべて、すでに1割わり以上いじょう上あがっているということです。

香川かがわ県けんでは今月こんげつ中旬ちゅうじゅんに3年ねんに1度どの現代げんだいアートの祭典さいてん「瀬戸内せとうち国際こくさい芸術げいじゅつ祭さい」が開幕かいまくすることもあり、バスの稼働かどうが増ふえる見通みとおしですが、同時どうじに負担ふたんも増ふえるため経営けいえいの厳きびしさは変かわらないといいます。

マルイ観光かんこうバスの飯間いいま正ただし照あきら社長しゃちょうは「稼働かどう率りつが上あがるとコスト負担ふたんも増ふえるが、走はしらないことには売り上うりあげが回復かいふくしないので、仕事しごとがあるだけありがたいと思おもうしかない。原油げんゆ価格かかくは下さがってほしいが、世界せかいの情勢じょうせいをみていると下さがる要素ようそはあまりなく、しかたがないかなとも思おもっている」と話はなしていました。

金属きんぞく加工かこうメーカーエネルギー価格かかく上昇じょうしょうに加くわえて円えん安やすも長崎ながさき

また、長崎ながさき県けんに本社ほんしゃがある金属きんぞく加工かこうメーカー「滲透しんとう工業こうぎょう」は、鋼管こうかんの製造せいぞうや、金属きんぞくの表面ひょうめん処理しょりなどを手てがけています。

この会社かいしゃでは、表面ひょうめん処理しょりに使用しようする希少きしょう金属きんぞくの「クロム」を、これまで主おもにロシアから輸入ゆにゅうしてきました。

しかし、ウクライナ情勢じょうせいを受うけた供給きょうきゅう不足ふそくへの懸念けねんから価格かかくが高騰こうとうしていて、去年きょねんから3割わり以上いじょう、値上ねあがりしているということです。このほか、仕入しいれる鋼材こうざいや加工かこうに使つかうガスなどの価格かかくも値上ねあがりして、全体ぜんたい的てきにコストが上昇じょうしょうしているといいます。

これまでは取引とりひき先さきに手紙てがみを書かくなどして理解りかいを求もとめ製品せいひん価格かかくへの転嫁てんかを進すすめてきたといいますが、さらなる価格かかく転嫁てんかは難むずかしい状況じょうきょうだとしています。このため、南アフリカみなみあふりかなどロシア以外いがいの産地さんちから調達ちょうたつしようと検討けんとうしているものの、品質ひんしつの面めんで代替だいたいできるか不透明ふとうめいだということで、対応たいおうに頭あたまを悩なやませています。

会社かいしゃでは、ことし3月つき期きの売り上うりあげは感染かんせん拡大かくだい前まえの水準すいじゅんに回復かいふくすると見込みこんでいますが、1日にちから始はじまった新しん年度ねんどは業績ぎょうせきの見通みとおしが立たたないと懸念けねんを強つよめています。

滲透しんとう工業こうぎょうの西にし亮あきら社長しゃちょうは「取引とりひき先さきが価格かかく転嫁てんかを認みとめてくれるかを考かんがえると、非常ひじょうに厳きびしい。鋼材こうざいやエネルギーの価格かかくは一方いっぽう的てきに上あがり続つづけ、円えん安やすもコストを引き上ひきあげていてこのままではやっていけない」と話はなしています。

専門せんもん家か「景気けいき悪化あっかに向むかう可能かのう性せいが示唆しさされた形かたちに」

今回こんかいの日銀にちぎん短観たんかんの結果けっかについて、野村のむら証券しょうけんの美和みわ卓たくチーフエコノミストは「本来ほんらい的てきには感染かんせん症しょうが徐々じょじょに収束しゅうそくし、経済けいざい活動かつどうが回復かいふく方向ほうこうになると見みていたが、原油げんゆなどの原材料げんざいりょう高だか、供給きょうきゅう制約せいやくに加くわえてさらにウクライナ紛争ふんそうという不ふ確実かくじつ性せいが加くわわったことで景気けいきの方向ほうこうが変かわり、悪化あっかに向むかう可能かのう性せいが示唆しさされた形かたちになった」と話はなしています。

原材料げんざいりょう価格かかくが高騰こうとうする中なか、円えん安やすが進すすんでいることについて美和みわ氏しは「企業きぎょうが想定そうていする為替かわせレートと、いまの円えん安やすは大おおきなギャップがあり、想定そうていする値段ねだんで原材料げんざいりょうが調達ちょうたつできなくなって経営けいえいへのダメージが大おおきくなるおそれがある。追加ついか的てきな値上ねあげが生しょうじれば消費しょうひ者しゃに悪あく影響えいきょうがおよぶ一方いっぽう、企業きぎょうがコスト負担ふたんを飲み込のみこもうとすれば企業きぎょうの利益りえきが落おちる形かたちになる」と指摘してきしました。

そのうえで、今後こんごの見通みとおしについては「ウクライナ紛争ふんそうがどこまで長期ちょうき化かするかや、中国ちゅうごくの感染かんせん状況じょうきょうの影響えいきょうも含ふくめて海外かいがいの経済けいざい動向どうこうが今後こんごどう変かわってくるかが大おおきなポイントになってくる。環境かんきょうが悪化あっかしても耐たえられるよう日本にっぽんの基礎きそ体力たいりょくの強化きょうか策さく、いわゆる成長せいちょう戦略せんりゃくに力ちからを入いれることが望のぞましい」と指摘してきしています。