日本新聞: 「本屋大賞」に逢坂冬馬さんの小説「同志少女よ、敵を撃て」

「本屋ほんや大賞たいしょう」に逢坂おうさか冬ふゆ馬ばさんの小説しょうせつ「同志どうし少女しょうじょよ、敵てきを撃うて」

Apr 6, 2022 17:04

Furigana

全国ぜんこくの書店しょてん員いんが「いちばん売うりたい本ほん」を投票とうひょうで選えらぶ、ことしの「本屋ほんや大賞たいしょう」に、逢坂おうさか冬ふゆ馬ばさんの小説しょうせつ「同志どうし少女しょうじょよ、敵てきを撃うて」が選えらばれました。

ことしで19回かい目めとなる「本屋ほんや大賞たいしょう」は、全国ぜんこくの書店しょてん員いんが「いちばん売うりたい本ほん」を投票とうひょうによって選えらぶ賞しょうで、過去かこに受賞じゅしょうした作品さくひんの多おおくがベストセラーとなり、テレビドラマや映画えいが化かもされるなど影響えいきょう力りょくの大おおきい賞しょうとして注目ちゅうもくされています。

6日にち、ことしの授賞じゅしょう式しきが東京とうきょうで開ひらかれ、ノミネートされた10作品さくひんの中なかから、逢坂おうさか冬ふゆ馬ばさんの小説しょうせつ「同志どうし少女しょうじょよ、敵てきを撃うて」が選えらばれました。

この作品さくひんは、旧きゅうソビエトとドイツによる「独どくソ戦せん」のさなか、ドイツ軍ぐんの襲撃しゅうげきで母親ははおやと故郷こきょうを奪うばわれた少女しょうじょが狙撃そげき兵へいとなり、復ふくしゅうを果はたすために女性じょせいだけの狙撃そげき隊たいの一員いちいんとして過酷かこくな戦場せんじょうを生き抜いきぬく姿すがたを描えがいた物語ものがたりです。

性別せいべつや出身しゅっしん、軍ぐんにおける立場たちばの違ちがいなどによる差別さべつが常つねにつきまとう登場とうじょう人物じんぶつたちの悩なやみや苦くるしみを巧たくみに表現ひょうげんし、女性じょせいたちが命いのちの危険きけんと隣合となりあわせの戦場せんじょうで戦たたかい抜ぬく姿すがたを丁寧ていねいに描写びょうしゃしています。

逢坂おうさか冬ふゆ馬ばさんは、埼玉さいたま県けん出身しゅっしんの36歳さい。

大学だいがくを卒業そつぎょう後ご、会社かいしゃ員いんとして働はたらきながら執筆しっぴつ活動かつどうに取り組とりくみ、去年きょねん8月つき、今回こんかいの受賞じゅしょう作さくでもある「同志どうし少女しょうじょよ、敵てきを撃うて」でアガサ・クリスティー賞しょうを受賞じゅしょうしてデビューしました。

デビュー作さくでの本屋ほんや大賞たいしょうの受賞じゅしょうは、2009年ねんの湊みなとかなえさんに続つづいて2人にん目めです。

逢坂おうさかさん「戦争せんそうに反対はんたい平和へいわ構築こうちくのための努力どりょくする」

逢坂おうさかさんは、「この作品さくひんは出版しゅっぱん前まえから多おおくの書店しょてん員いんに愛あいされていると実感じっかんすることが多おおく、このようなすばらしい賞しょうをデビュー作さくにもかかわらず選えらんでいただき、感謝かんしゃの気持きもちで胸むねがいっぱいです」と感謝かんしゃの思おもいを述のべました。

一方いっぽう、ロシアによるウクライナへの軍事ぐんじ侵攻しんこうが続つづいていることを受うけて、「私わたしの心こころはロシアによる軍事ぐんじ侵攻しんこうが始はじまって以降いこう、深ふかい絶望ぜつぼうのふちにあります。私わたしが小説しょうせつの中なかで情熱じょうねつを傾かたむけたロシアに対にたいして、いったい何なにを思おもうべきなのだろうと終始しゅうし考かんがえ続つづけました。その中なかで、プーチン大統領だいとうりょうではないロシアというものが少すこしずつ見みえてきて、国内こくないで戦争せんそうに反対はんたいする人ひとたちもロシアであり、それは小ちいさな声こえであるかもしれないけれど、その声こえに耳みみを傾かたむけ、忘わすれないようにしながら、できるだけ声こえを増幅ぞうふくさせていきたい」と述のべました。

そのうえで、「私わたしが作品さくひんで描えがいた主人公しゅじんこうが、現在げんざいの光景こうけいを見みたならば、悲かなしみはしても絶望ぜつぼうはせず、町まちに出でて自分じぶんが必要ひつようとされていることをするだろうと思おもいます。なので私わたしも絶望ぜつぼうするのはやめて、小説しょうせつを書かくとき、そしてそれ以外いがいの場面ばめんにおいても、戦争せんそうに反対はんたいし、平和へいわ構築こうちくのための努力どりょくをします」と思おもいを述のべました。