日本新聞: 新型コロナ「後遺症」診療報酬加算へ対応強化のねらいは

新型しんがたコロナウイルスの後遺症こういしょうについて、厚生こうせい労働ろうどう省しょうは5類るいへの移行いこう後ごはより多おおくの医療いりょう機関きかんに患者かんじゃの受け入うけいれを促うながすため医療いりょう機関きかんに支払しはらわれる診療しんりょう報酬ほうしゅうを加算かさんするなど、対応たいおうを強化きょうかすることになりました。

かかりつけ医いなど地域ちいきの医療いりょう機関きかんで診療しんりょうする体制たいせいを整備せいびすることなどがねらいです。

一方いっぽう、患者かんじゃを受け入うけいれている医療いりょう機関きかんでは、後遺症こういしょうに悩なやむ人ひとたちへの家族かぞくや周囲しゅういの理解りかいと支援しえんが大切たいせつだと指摘してきしています。

「後遺症こういしょう」周囲しゅういに理解りかいされずに…

愛知あいち医科いか大学だいがくメディカルセンターの馬場ばば研二けんじ医師いしは、2年ねん前まえから後遺症こういしょうの症状しょうじょうを訴うったえる患者かんじゃの診療しんりょうにあたっています。

馬場ばば医師いしがこれまでに対応たいおうした1009人にんの症状しょうじょうなどを分析ぶんせきしたところ、最もっとも多おおかった症状しょうじょうは、「けん怠けんたい感かんとだるさ」で、オミクロン株かぶに感染かんせんした患者かんじゃの半数はんすう以上いじょうが訴うったえていました。

後遺症こういしょうと診断しんだんされた人ひとの年齢ねんれい層そうは20代だいから50代だいまでが多おおく、ほとんどの人ひとはコロナに感染かんせんした当初とうしょの症状しょうじょうは「軽症けいしょう」だったということです。

一方いっぽう、後遺症こういしょうが出でてから回復かいふくまでの期間きかんはオミクロン株かぶの患者かんじゃの場合ばあい、半数はんすう以上いじょうが「5か月かげつ以上いじょう」で、中なかには1年ねん以上いじょう、苦くるしむ人ひともいました。

乗り物のりものに酔ようようになったり物忘ものわすれなど記憶きおくの障害しょうがいに悩なやむなど日常にちじょう生活せいかつに影響えいきょうが出でるケースも少すくなくないということです。

また馬場ばば医師いしは、「後遺症こういしょうがあることが新型しんがたコロナウイルスと季節きせつ性せいインフルエンザの大おおきな違ちがいだ」と指摘してきしていますが、人ひとによってさまざまな症状しょうじょうがある一方いっぽうでそうした実情じつじょうが広ひろく知しられておらず、周囲しゅういに理解りかいされずに苦くるしむ患者かんじゃも少すくなくないということです。

馬場ばば医師いしは「症状しょうじょうのつらさだけではなくて、社会しゃかい生活せいかつができないことに対にたいする焦あせりやせつなさを感かんじている方ほうも少すくなからずいます。いったん後遺症こういしょうになると、治なおるまでに非常ひじょうに時間じかんがかかるということも十分じゅうぶんに理解りかいしてほしい」と述のべ家族かぞくや職場しょくば、学校がっこうなどの理解りかいと支援しえんが大切たいせつだと指摘してきしています。

厚あつ労ろう省しょう「後遺症こういしょう」対応たいおう強化きょうかへ

新型しんがたコロナウイルスへの感染かんせん後ご、けん怠けんたい感かんや集中しゅうちゅう力りょくの低下ていかなどの症状しょうじょうが続つづく「後遺症こういしょう」について、厚生こうせい労働ろうどう省しょうはかかりつけ医いなど地域ちいきの医療いりょう機関きかんで診療しんりょうする体制たいせいの整備せいびを都道とどう府県ふけんに求もとめています。

5類るいへの移行いこう後ごは感染かんせん対策たいさくは個人こじんの判断はんだんに委ゆだねられますが、ウイルスの性質せいしつが変かわっていないことや、流行りゅうこうは今後こんごも続つづくと見込みこまれることから、厚生こうせい労働ろうどう省しょうは後遺症こういしょうへの対応たいおうを強化きょうかする方針ほうしんです。

具体ぐたい的てきには、全国ぜんこく各地かくちで後遺症こういしょうの診療しんりょうにあたる医療いりょう機関きかんのリストを今週こんしゅう中ちゅうにもとりまとめて厚生こうせい労働ろうどう省しょうのホームページなどで見みることができるようにするほか、後遺症こういしょうの患者かんじゃを診療しんりょうした医療いりょう機関きかんに支払しはらわれる診療しんりょう報酬ほうしゅうを5月つき8日にちから加算かさんすることにしています。

また、新型しんがたコロナの後遺症こういしょうについては原因げんいんや治療ちりょう法ほうなどわかっていないことも多おおいため、国内外こくないがいの最新さいしんの研究けんきゅう成果せいかが診療しんりょうに反映はんえいされるよう、医療いりょう機関きかん向むけに随時ずいじ、情報じょうほうを提供ていきょうしていく方針ほうしんです。

新型しんがたコロナの後遺症こういしょうの代表だいひょう的てきな症状しょうじょう

厚生こうせい労働ろうどう省しょうがまとめた医療いりょう機関きかん向むけの診療しんりょうの手引てびきで示しめされている新型しんがたコロナの後遺症こういしょうの代表だいひょう的てきな症状しょうじょうです。

▽疲労ひろう感かん・倦怠けんたい感かん、▽関節かんせつ痛つう、▽筋肉きんにく痛つう、▽せき、▽たん、▽息切いきぎれ、▽胸むねの痛いたみ、▽脱毛だつもう、▽記憶きおく障害しょうがい、▽集中しゅうちゅう力りょく低下ていか、▽頭痛ずつう、▽抑そもそもうつ、▽嗅覚きゅうかく障害しょうがい、▽味覚みかく障害しょうがい、▽どうき、▽下痢げり、▽腹痛はらいた、▽睡眠すいみん障害しょうがい、▽筋力きんりょく低下ていか。

後遺症こういしょうについては原因げんいんなどわかっていないことが多おおく、国内こくない外がいで調査ちょうさや研究けんきゅうが続つづけられています。

5類るい移行いこう後ごの別べつの課題かだい一般いっぱん医療いりょうとの両立りょうりつ

一方いっぽう、後遺症こういしょうのほかにも課題かだいがあります。

患者かんじゃを受け入うけいれる病院びょういんでの一般いっぱんの医療いりょうとの両立りょうりつです。

5類るいへの移行いこう後ご、厚生こうせい労働ろうどう省しょうはコロナ患者かんじゃを受け入うけいれる「コロナ病床びょうしょう」を段階だんかい的てきに廃止はいししながらすべての病院びょういんで入院にゅういん患者かんじゃを受け入うけいれる体制たいせいを目指めざしているからです。

横浜よこはま市し鶴見つるみ区くにある「済生会さいせいかい横浜よこはま市し東部とうぶ病院びょういん」では、最大さいだいで50床しょうの「コロナ病床びょうしょう」を確保かくほし、さらに専用せんようの病棟びょうとうで重症じゅうしょう者しゃや中等ちゅうとう症しょうの患者かんじゃを受け入うけいれてきました。

しかし、医師いしや看護かんご師しが専用せんよう病棟びょうとうに集中しゅうちゅうしほかの病棟びょうとうでコロナ以外いがいの患者かんじゃの入院にゅういんを断ことわるなどの影響えいきょうがあったことや、オミクロン株かぶでは重症じゅうしょう度どが低下ていかした一方いっぽうで、入院にゅういん中ちゅうの高齢こうれいの患者かんじゃが基礎きそ疾患しっかんを悪化あっかさせるなどして亡なくなるケースが多おおかっため、去年きょねん3月つきに、専用せんようの病棟びょうとうを廃止はいししました。

その後そのごは、一般いっぱんの医療いりょうと両立りょうりつするため、腎臓じんぞう内科ないかや循環じゅんかん器き内科ないかなどの病棟びょうとうごとにコロナ患者かんじゃも受け入うけいれられる病室びょうしつを整備せいびし、それぞれの専門医せんもんいが診療しんりょうにあたる体制たいせいをとっています。

この結果けっか、コロナ以外いがいの患者かんじゃの入院にゅういんを断ことわるケースは少すくなくなったといいます。

さらにコロナで入院にゅういんしている高齢こうれい者しゃの体力たいりょくが低下ていかするのを防ふせぐため、医療いりょう用ようマスクや防護ぼうご服ふくを身みにつけた理学りがく療法りょうほう士しがリハビリを行おこなっていて、重症じゅうしょうで寝ねたきりの状態じょうたいから日常にちじょう生活せいかつができるまでに回復かいふくし、退院たいいんした高齢こうれい者しゃも多おおくいるということです。

宮城みやぎ盛もり淳あつし医療いりょう連携れんけいセンター長ちょうは「オミクロン株かぶでは、持病じびょうのある患者かんじゃや高齢こうれいの患者かんじゃが感染かんせんをきっかけに持病じびょうを悪化あっかさせるケースが目立めだった。新型しんがたコロナの患者かんじゃとコロナ以外いがいの患者かんじゃ、両方りょうほうに対応たいおうできる診療しんりょう体制たいせいを常つねに維持いじしていくことが重要じゅうようだ」と話はなしています。

またリハビリテーションセンターの吉田よしだ公一こういち副ふく部長ぶちょうは、「感染かんせん対策たいさくを適切てきせつに行いっていれば急性きゅうせい期き病院びょういんでも在宅ざいたくでもどこの医療いりょう機関きかんでもコロナのリスクを減へらして高齢こうれい者しゃの体力たいりょくを維持いじ向上こうじょうさせることはできると思おもっています。今後こんご、入院にゅういん患者かんじゃの受け入うけいれを始はじめる病院びょういんには積極せっきょく的てきにリハビリを行おこなうことを検討けんとうしてほしい」と訴うったえています。