日本新聞: パーキンソン病患者の脳内に遺伝子投与国内初の治験始まる

パーキンソン病びょう患者かんじゃの脳のう内ないに遺伝子いでんし投与とうよ国内こくない初はつの治験ちけん始はじまる

Oct 17, 2022 22:10 6

Furigana

手足てあしが震ふるえたり、体からだが動うごかなくなったりする難病なんびょう、パーキンソン病びょうの患者かんじゃに対にたいし、遺伝子いでんしを投与とうよすることで脳のうの指令しれいを伝つたえる物質ぶっしつを出だすよう促うながす国内こくないで初はじめての治験ちけんを自治じち医科いか大学だいがくのグループが始はじめ、17日にち、患者かんじゃへの投与とうよが行おこなわれました。グループは安全あんぜん性せいと有効ゆうこう性せいを確認かくにんして、将来しょうらいの治療ちりょうにつなげたいとしています。

パーキンソン病びょうは、脳のう内ないの神経しんけい細胞さいぼうが徐々じょじょに失うしなわれることで神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつの「ドーパミン」が作つくれなくなり、手足てあしが震ふるえたり、体からだが動うごかなくなったりする進行しんこう性せいの難病なんびょうで、厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと患者かんじゃは国内こくないに14万まん人にん余あまりいます。

自治じち医科いか大学だいがく附属ふぞく病院びょういんのグループは、長期ちょうき間かんにわたって症状しょうじょうの改善かいぜんを目指めざそうと、脳のう内ないに遺伝子いでんしを投与とうよすることでドーパミンが出でるように促うながす国内こくないで初はじめての治験ちけんを計画けいかくし、17日にち、50代だいの男性だんせい患者かんじゃに対にたいし、脳のうに直接ちょくせつ投与とうよする手術しゅじゅつを行おこないました。

治験ちけんでは人体じんたいに無害むがいなウイルスを使つかって遺伝子いでんしを狙ねらった場所ばしょに送り込おくりこむということで、グループでは今後こんご、月つきに1人にん程度ていどのペースで患者かんじゃ12人にんに投与とうよし、6か月かげつ間かん、経過けいかを観察かんさつして安全あんぜん性せいと有効ゆうこう性せいを調しらべて、新あらたな治療ちりょう法ほうとしての承認しょうにんを目指めざすとしています。

この治療ちりょうの開発かいはつを進すすめてきた自治じち医科いか大学だいがくの村松むらまつ慎一しんいち特命とくめい教授きょうじゅは「遺伝子いでんしが発現はつげんすれば、1回かいの治療ちりょうで長期ちょうき間かんの効果こうかが期待きたいできる。患者かんじゃさんの苦労くろうを減へらし、生活せいかつの質しつの改善かいぜんにつなげたい」と話はなしています。

遺伝子いでんし治療ちりょう長期ちょうき間かんにわたる効果こうかを期待きたい

パーキンソン病びょうは根本こんぽん的てきな治療ちりょう法ほうがなく、今回こんかいの遺伝子いでんし治療ちりょうの治験ちけんでは長期ちょうき間かんにわたって効果こうかを得えられるようになることが期待きたいされています。

パーキンソン病びょうは手足てあしが震ふるえたり、筋肉きんにくがこわばったりして体からだが動うごかしにくくなる難病なんびょうで、脳のう内ないで体からだを動うごかす指令しれいを送おくる役割やくわりを担になう神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつの「ドーパミン」を作り出つくりだす神経しんけい細胞さいぼうが減少げんしょうすることで発症はっしょうします。

パーキンソン病びょうの治療ちりょうでは、不足ふそくするドーパミンを補おぎなうための薬くすりやドーパミンの作用さようを強つよめる薬くすりが使つかわれていますが、症状しょうじょうを緩和かんわしたり、悪化あっかを遅おくらせたりする効果こうかはあるものの、根本こんぽん的てきな治療ちりょう法ほうは開発かいはつされていません。

今回こんかい、治験ちけんが始はじまったパーキンソン病びょうの遺伝子いでんし治療ちりょうは症状しょうじょうを改善かいぜんさせる効果こうかを継続けいぞくさせることを目指めざしていて、病気びょうきの進行しんこうで薬くすりの効果こうかが弱よわくなった患者かんじゃの前ぜん頭部とうぶに小ちいさな穴あなを開あけ、大脳だいのうの「被ひ殻から」と呼よばれる部分ぶぶんに直接ちょくせつ、遺伝子いでんしを注入ちゅうにゅうします。

遺伝子いでんしを「アデノ随伴ずいはんウイルス」という人体じんたいに無害むがいなウイルスを使つかって、被ひ殻からの中なかにあるドーパミンを受け取うけとる神経しんけい細胞さいぼうに届とどけることで、この細胞さいぼうでドーパミンが継続けいぞく的てきに作つくられるようにするということです。

パーキンソン病びょうの治療ちりょうについては今回こんかいの治験ちけん以外いがいにも根本こんぽん的てきな治療ちりょうを目指めざす研究けんきゅうが国内こくない外がいで進すすめられていて、京都大きょうとだい学がくのグループはヒトのiPS細胞さいぼうから神経しんけい細胞さいぼうの元もととなる細胞さいぼうを作り出つくりだし、患者かんじゃの脳のうに移植いしょくする臨床りんしょう試験しけんを4年ねん前まえから実施じっしし、安全あんぜん性せいや有効ゆうこう性せいの検証けんしょうを進すすめています。

また、患者かんじゃの脳のう内ないの神経しんけい細胞さいぼうに蓄積ちくせきする「αあるふぁシヌクレイン」と呼よばれる異常いじょうなたんぱく質たんぱくしつが神経しんけい細胞さいぼうの減少げんしょうに関係かんけいがあると考かんがえられていることから、欧米おうべいや日本にっぽんの製薬せいやく会社かいしゃはこのたんぱく質たんぱくしつを取り除とりのぞく抗体こうたい医薬いやくなどの開発かいはつを進すすめています。