日本新聞: 「ゼロゼロ融資」受けた企業の倒産が加速物価高に人手不足…

新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうを受うけた中小ちゅうしょう企業きぎょうを支援しえんするための、実質じっしつ無む利子りし、無む担保たんぽのいわゆる「ゼロゼロ融資ゆうし」。その返済へんさいがこの夏なつから本格ほんかく化かする中なか、融資ゆうしを受うけたあとに倒産とうさんした企業きぎょうがことし5月つきまでに236件けん確認かくにんされ、去年きょねんの同おなじ時期じきの1.5倍ばいに増ふえたことがわかりました。

帝国データバンクていこくで-たばんくによりますと、「ゼロゼロ融資ゆうし」を受うけたあと1000万まん円えん以上いじょうの負債ふさいを抱かかえ、法的ほうてき整理せいりの手続てつづきをとった企業きぎょうの数かずはことしに入はいって先月せんげつまでに236件けんと、去年きょねんの同おなじ時期じきより1.5倍ばいに増ふえました。

去年きょねんは平均へいきんして1か月かげつあたり32件けんだったのに対にたいし、ことしは47件けんと加速かそくしています。

「ゼロゼロ融資ゆうし」は無む利子りしの期間きかんが最大さいだい3年間ねんかんで、2020年ねんの4月つきから5月つきにかけて出だされた1回かい目めの緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんのあと、運転うんてん資金しきん確保かくほのために融資ゆうしを受うけたケースが多おおいことから返済へんさいは7月つきから本格ほんかく化かするとみられています。

調査ちょうさ会社かいしゃでは、返済へんさいによる負担ふたんに加くわえて物価ぶっか高だかや人手ひとで不足ふそくなども重荷おもにとなり、経営けいえいの見通みとおしが立たたなくなる企業きぎょうが増ふえていると分析ぶんせきしています。

「ゼロゼロ融資ゆうし」を受うけた企業きぎょうの倒産とうさん件数けんすうは累計るいけいで802件けんで、回収かいしゅうできなかった融資ゆうし額がくは、推計すいけいでおよそ470億おく6000万まん円えんにのぼるということです。

「ゼロゼロ融資ゆうし」とは？

コロナ禍かで影響えいきょうを受うけた中小ちゅうしょう企業きぎょうの資金繰しきんぐりを支援しえんするため、政府せいふは実質じっしつ、無む利子りし・無む担保たんぽで融資ゆうしを受うけられるいわゆる「ゼロゼロ融資ゆうし」の制度せいどを2020年ねん3月つきに設もうけました。

新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで売り上うりあげが減少げんしょうするなど一定いっていの条件じょうけんを満みたした中小ちゅうしょう企業きぎょうや個人こじん事業じぎょう主ぬしを対象たいしょうに、政府せいふ系けい金融きんゆう機関きかんや民間みんかんの金融きんゆう機関きかんが融資ゆうしし、利子りしにあたる金額きんがくを3年間ねんかん、国くにや都道とどう府県ふけんが補填ほてんする仕組しくみです。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうによりますと、申し込もうしこみは去年きょねんの9月末げつまつで終了しゅうりょうし、融資ゆうし総額そうがくはおよそ43兆ちょう円えんにのぼります。仮かりに企業きぎょうが返済へんさいできなくなった場合ばあいは、各地かくちの信用しんよう保証ほしょう協会きょうかいが元本がんぽんを肩代かたがわりしますが、協会きょうかいは国くにの財源ざいげんを裏付うらづけとしているため、最終さいしゅう的てきに回収かいしゅうできないと、融資ゆうし資金しきんの一部いちぶは実質じっしつ的てきには国民こくみん負担ふたんとなります。

融資ゆうしを受うけた企業きぎょうの返済へんさいはこの夏なつから本格ほんかく化かするため、政府せいふは企業きぎょうの新あらたな借り換かりかえを保証ほしょうする制度せいどをことし1月つきに設もうけていて、利用りよう実績じっせきは6月つき9日にちの時点じてんでおよそ1兆ちょう2000億おく円えんとなっています。

「やっとコロナ前まえに戻もどってきたと思おもったら、新あらたな不安ふあん材料ざいりょう」

埼玉さいたま県けん川口かわぐち市しに本店ほんてんがある信用金庫しんようきんこでは、2020年ねん4月つきからおととしの3月つきまでに、製造せいぞう業ぎょうや建設けんせつ業ぎょう、飲食いんしょく業ぎょうなどを中心ちゅうしんに、およそ2600社しゃからいわゆる「ゼロゼロ融資ゆうし」の申し込もうしこみが合あわせて3123件けんありました。このうちおよそ7割わりの企業きぎょうが返済へんさいを開始かいししていますが、残のこりの3割わりの企業きぎょうは7月つき以降いこうに返済へんさいを始はじめる予定よていだということです。

埼玉さいたま県けん川口かわぐち市しにある中小ちゅうしょう企業きぎょうは、上下じょうげ水道すいどうや発電はつでん設備せつびなど、産業さんぎょう機械きかい用ようの木型きがたを製造せいぞうしていますが、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで受注じゅちゅうが減へり、2020年ねんと2021年ねんは売り上うりあげが15％以上いじょう落ち込おちこみました。

15人にんいる従業じゅうぎょう員いんの給料きゅうりょうに充あてる資金しきんが不足ふそくしたため、2020年ねん12月つきに、地元じもとの信用金庫しんようきんこから3000万まん円えんの「ゼロゼロ融資ゆうし」を受うけました。

ことしに入はいり業績ぎょうせきはコロナ前まえの水準すいじゅんまで回復かいふくしたものの、木材もくざいやくぎなどの原材料げんざいりょう費ひが例年れいねんよりも50％から70％ほど高騰こうとうしていて、経費けいひは3割わりほど増ふえました。

融資ゆうしの返済へんさいは年末ねんまつから月々つきづきの分割ぶんかつで始はじまる予定よていですが、今後こんご、原材料げんざいりょう費ひや電気でんき料金りょうきんがさらに上昇じょうしょうする懸念けねんがあるなか、手元てもとの資金しきんが減へっていくことに大おおきな不安ふあんを感かんじているといいます。

遠山とおやま木型きがた製作せいさく所しょの遠山とおやま智さとし士し社長しゃちょうは「融資ゆうしを受うけた当初とうしょの目的もくてきは雇用こよう維持いじのためでしたが、やっとコロナ前まえの業績ぎょうせきに戻もどってきたと思おもったら、現金げんきんで支払しはらう必要ひつようがある電気でんき代だいや原材料げんざいりょう費ひの高騰こうとうが続つづき、新あらたな不安ふあん材料ざいりょうができてしまいました。先行さきゆきがわからない状況じょうきょうで利益りえきを出だして、手元てもとの資金しきんが減へらないようにするのは難むずかしいので、金融きんゆう機関きかんに相談そうだんしながら経営けいえいしていきたいと思おもいます」と話はなしていました。

22日にちは、地元じもとの信用金庫しんようきんこの担当たんとう者しゃが事務所じむしょを訪おとずれ、融資ゆうしの返済へんさいをめぐり、業績ぎょうせきについて聞きき取とりをしたり、分割払ぶんかつばらいの開始かいし時期じきや返済へんさい金額きんがくの確認かくにんなどを行おこなっていました。

担当たんとう者しゃの青木あおき信用金庫しんようきんこの古川ふるかわ勝美かつみさんは、「今後こんごどんな影響えいきょうを受うけるのか見通みとおせないなかで、資金繰しきんぐりに安定あんていをもたらすためにも、返済へんさいに関にかんしてはそのつど考え直かんがえなおしながら進すすめていくことが大事だいじだと思おもうので、継続けいぞくして支援しえんしていきたい」と話はなしていました。

ことしに入はいって信用金庫しんようきんこの担当たんとう者しゃが融資ゆうし先さきの企業きぎょうに聞きき取とりをしたところ、およそ600社しゃが資金繰しきんぐりや返済へんさい期間きかんなどに不安ふあんを感かんじていると回答かいとうしたということです。

遠山とおやま社長しゃちょうは「融資ゆうしの目的もくてきがもともとの名目めいもくとは変かわってきてますけど、こういう返済へんさいの方向ほうこうで行いきましょうと提案ていあんしてもらっているので、できるだけ手元てもとに資金しきんを置おきながら返済へんさいしていきたい」と話はなしていました。

調査ちょうさ会社かいしゃ「返済へんさいの想定そうていが大おおきく崩くずれた」

帝国データバンクていこくで-たばんく情報じょうほう統括とうかつ部ぶの藤井ふじい俊しゅん部長ぶちょうは、「融資ゆうしで資金繰しきんぐりが改善かいぜんし、業績ぎょうせきも上向うわむいて返済へんさいが進すすむだろうという想定そうていが物価ぶっか高だかや原材料げんざいりょう費ひの高騰こうとうなどで大おおきく崩くずれ、借入金かりいれきんの返済へんさいを諦あきらめるケースが増ふえている。原材料げんざいりょう価格かかくの上昇じょうしょうや人手ひとで不足ふそくが解消かいしょうしないかぎり、事業じぎょうの継続けいぞくを諦あきらめる企業きぎょうは確実かくじつに増ふえるのではないか」と話はなしていました。

専門せんもん家か「収益しゅうえき力りょくの改善かいぜん販路はんろ拡大かくだいで売り上うりあげ増ぞうなど工夫くふうを」

金融きんゆう機関きかんの融資ゆうし制度せいどに詳くわしい「大和やまと総研そうけん」金融きんゆう調査ちょうさ部ぶの金本かなもと悠ゆう希まれ主任しゅにん研究けんきゅう員いんは「ゼロゼロ融資ゆうしは、債務さいむの利払りばらいすらまかなえないような企業きぎょうを延命えんめいさせたというマイナス面めんも指摘してきされているが、一時いちじ的てきに資金繰しきんぐりが悪化あっかしただけで、倒産とうさんする必要ひつようのない企業きぎょうが倒産とうさんを回避かいひできたのは大おおきなプラスだった」としました。

そのうえで今後こんご、求もとめられる対応たいおうについて、「融資ゆうしを受うけている事業じぎょう者しゃは、返済へんさいが苦くるしければ返済へんさい猶予ゆうよを金融きんゆう機関きかんにお願おねがいするのが現実げんじつ的てきだが、一時いちじ的てきな時間じかん稼かせぎにすぎないので、その間そのかんに収益しゅうえき力りょくの改善かいぜんや新あたらしい販路はんろの拡大かくだいで売り上うりあげを増ふやすなどの工夫くふうが必要ひつようだ。金融きんゆう機関きかんや政府せいふはそうした事業じぎょう者しゃの収益しゅうえき力りょくの改善かいぜんについて継続けいぞく的てきな支援しえんに取り組とりくむことが求もとめられる」と話はなしていました。