
特に最初の出場種目となった100メートルバタフライは体力的にもっとも負担がかかる種目で、池江選手が練習で本格的に泳ぎ始めたのはことし3月からでしたが、練習量も体力もまだ完全には戻りきっていない中で、闘病を経ても変わらない卓越した水中テクニックと、元来の負けず嫌いな性格で、優勝しました。
100メートルバタフライの決勝で、池江選手がひとかきごとに進む距離を示す“ストローク長”という数値は、15メートルから85メートルまでの平均が「1メートル92センチ」でした。 これは、2018年の決勝のレースの数値「1メートル90センチ」とほぼ変わらず、体の状態が違っていても持ち前の伸びやかな泳ぎは失われていなかったことを示していました。 レース後のインタビューでは「頭の片隅にはちょっと優勝したい気持ちもあった」と話し、日本選手権という舞台に立ち勝ちたいという勝負師としての欲が芽生えていたことも明かしました。
2024年のパリ大会を目標に掲げる池江選手にとって、東京大会はあくまでその途上ですが「決まったからには自分の使命を果たさないといけないと思っている。あと数か月あるので、さらに体力はつくと思うし、しっかりチームに貢献したい」と力強く話していました。
1発勝負の代表選考会という大きな重圧がかかるなかで、世界トップクラスのタイムも生まれました。
これは、松元選手が銀メダルを獲得した、おととしの世界選手権で金メダルに相当するタイムです。
平井ヘッドコーチも「レベルの高い記録で期待ができる内容だった。世界でも十分戦える」と評価しました。
最年長は4大会連続となる31歳の入江陵介選手、最年少は高校3年生の谷川亜華葉選手と柳本幸之介選手でした。 一方で、男子200メートル平泳ぎの前の世界記録保持者の渡辺一平選手や長年、日本の自由形を引っ張ってきた塩浦慎理選手などの実力者が代表を逃しました。 平井ヘッドコーチは「惜しくも代表に入れなかった選手もいるので、予定どおりとは言えないが、なかなか満足できる内容になったと思う」と8日間にわたる戦いを総括しました。
また、オリンピック本番に向けては、決勝が午前中に行われることをポイントの1つにあげ「朝に決勝レースが行われるのは2008年の北京オリンピックと同じだ。調整のしかたがふだんとは違うので対策が必要となる。北京大会に出場した入江選手などの力を借りながら経験を伝えていきたい」と話し、日本チームとして対応していく考えを示しました。
その時、今回の厳しい選考をくぐり抜けた選手たちがこの経験を糧にさらに成長し、みずからの目標をつかむことを願ってやみません。
金メダルへの期待
“なかなか満足できる内容”