さらに災害時の対応力を強化するため、全国1741の自治体を対象に防災担当部署の女性職員の割合を初めて調査し、27日結果を公表しました。
その結果、全体の61.9%(1078自治体)で防災担当の部署に女性の職員が「ゼロ」。つまり、1人もいないという結果が明らかになりました。
▽長野県が87%、 ▽富山県が86.7%、 ▽岩手県が81.8%、 ▽長崎県が81%、 ▽宮崎県が80.8%でした。 一方、女性職員ゼロの自治体が少ない都道府県は ▽東京都が27.4%、 ▽静岡県が31.4%、 ▽大阪府が34.9%、 ▽福井県が41.2%、 ▽神奈川県が42.4%でした。 また、東京23区ではすべての区で防災担当の女性職員が配置されていました。 (※すべての都道府県のデータは記事の最後に掲載しています)
平成30年度時点での一般行政職の地方公務員全体の割合(31%)と比較すると、女性の配置が遅れている状況が分かりました。 さらに、防災担当部署の女性の割合が10%以上の自治体と避難所の備蓄品を比較したところ、女性職員がいない自治体では「女性用の下着」や「生理用品」「哺乳瓶やおむつ」「簡易トイレ」などの項目で備蓄が進んでいない傾向が見られたということです。
女性の困りごとやニーズは男性より女性の方が気づきやすく、池田教授は「被災した人の体調の悪化や精神的な負担を防ぐためにも自治体には重く受け止めて対策を考えるべきだ」と指摘しています。 また東日本大震災以降、地域の防災力の担い手に女性を活用する動きが進んでいることをふまえ「女性の参加を呼びかける自治体が女性職員ゼロの状況では、全く説得力がない」と話していました。
そのうえで「託児ケアを充実させるなどして女性職員の配置を増やすほか、すぐに女性を配置できない場合は、避難所の運営や備蓄などを検討する際にほかの部署の女性職員や地域の女性団体に参加してもらうなどいろいろな方法がある。今後、それぞれの自治体でできる対策を検討していく必要がある」と話していました。
また二之湯防災担当大臣は27日の会見で「被災者の半分は女性なので、自治体においても、防災にもっと女性が登場すべきで、理想的には半数程度いることが望ましい。できるだけ多くの女性の方が災害時の対応に参加できるよう内閣府防災担当としても自治体のよい事例があれば積極的に紹介して女性の増員に取り組んでいきたい」と述べました。
このため、防災専門の女性職員がいない自治体の中には、住民と協力して必要な災害対策を検討しているところもあります。 職員約250人の山梨県都留市では総務課の危機管理担当が防災対策を担っています。 2年前は女性の担当者が1人いましたが、去年とことしは配置されず、現在は3人全員が男性です。 災害時の避難などの際にどのような対応が必要か、女性の視点をふまえて検討しようと市役所の職員や地元の女性団体などから意見を聞く取り組みを進めています。
また、住民自身も備えを進めるよう、市として呼びかける必要があるとして、例えば、繰り返し使える布ナプキンの作り方を学べる講座を開くなどのアドバイスをしていました。団体の担当者は「女性どうしでなければ理解しあえない部分が当然あると思う。女性の防災担当者がいることは重要だと思います」と話していました。 このほか、市では女性の意見などをもとに緊急時のために準備しておくべきものなどを明記した防災ハンドブックを今年度中に作成して各家庭に配布することにしています。 都留市危機管理担当の河野淳さんは「女性の意見などを取り入れながら災害時に極力ストレスなく避難できる環境を作れるよう態勢をとっていきたい」と話しています。
長崎県諫早市で防災を担当する危機管理の部署にはこれまで女性職員が配置されたことがなく、男性職員だけで避難所のレイアウトや備蓄品の整備などを進めてきました。 おととし9月の台風10号で市が開設した避難所にはおよそ4000人が避難しましたが、その後、市内の女性から「避難したかったが利用しづらくてできなかった」という意見が寄せられました。 意見は人づてに寄せられていたため市は具体的な理由を確認することができず、男性職員たちで話し合いを重ねましたが、結局、何を改善すべきかがわからなかったということです。
松山厚子さん(53)は3人の子どもがいますが、いずれも成人していて災害時の呼び出しや泊まり勤務にも柔軟に対応できるということです。
諫早市危機管理課の吉田賢一郎課長補佐は「去年までは担当が男性だけだったので避難所運営や備蓄品の整備などで私たちだけでは判断が難しい部分があった。そういった部分をこれから再検証することで女性が避難をしても不安な思いをしないようにしていきたい」と話しています。
地方公務員(一般行政職)全体の割合と比べると?
なぜ女性職員の配置が大事なの?
どうして女性配置が進んでいないの?
国の受け止めは?
限られた人数でニーズをどう把握?
男性職員だけで話し合いを重ねるも…
都道府県別のデータ一覧
内閣府男女共同参画局「ガイドラインに基づく地方公共団体の取組状況調査(令和3年)」