日本の
先端技術の
流出をめぐる
事件は
ここ数年、
相次いでいます。
おととし2月には通信大手ソフトバンクの元社員が会社のサーバーにアクセスし、電話の基地局など通信設備に関する機密情報を不正に取得したとして不正競争防止法違反の罪で起訴され、その後有罪判決を受けました。
当時の知人で、在日ロシア通商代表部の元代表代理から依頼を受け、情報を渡していたということです。元代表代理はロシアの情報機関の1つ、SVR=対外情報庁に所属していたとみられています。
また、同じ年の10月には、大阪に本社がある積水化学工業の元社員が、スマートフォンの画面に関する研究内容を中国の通信機器関連会社に漏らしたとして書類送検され、去年、有罪判決を受けました。
ビジネス向け交流サイトを通じて会社側からコンタクトがあり、元社員は中国を訪れるなどしてやり取りしたうえで、機密情報をメールで伝えていたということです。
さらに、2019年にも京都市の電子部品メーカー「NISSHA」の元社員が、主力製品の技術情報に関するデータなどをコピーして持ち出し、一部を転職先の中国企業の技術者に送信したなどとして逮捕・起訴され、有罪判決を受けています。
このほか、サイバー攻撃によって日本の機密情報をねらったとみられる事件も明らかになっています。
去年4月には、JAXA=宇宙航空研究開発機構や防衛関連の企業などおよそ200に上る研究機関や会社が大規模なサイバー攻撃を受けました。捜査関係者によりますと、中国人民解放軍の指示を受けたハッカー集団によるものとみられることが分かったということです。
ロシア組織元幹部の“スパイ活動” とは
おととし、ソフトバンクの
元社員が
機密情報を
不正に
取得した
罪で
有罪判決を
受けた
事件では、
在日ロシア
通商代表部の
元幹部によるスパイ
活動とみられる
手口の
詳細が
警視庁の
捜査で
明らかになりました。
捜査関係者によりますと、在日ロシア通商代表部は貿易関連の業務を担うロシア大使館の組織で、元幹部は当時、ナンバー2の代表代理という立場でした。しかし、実際にはロシアの情報機関の1つ、「SVR」=対外情報庁に所属していたとみられています。
事件のきっかけは、5年前の2017年、ソフトバンクの元社員と元幹部の前任者が東京 港区新橋の繁華街で出会ったことでした。
前任者が「
このあたりにいい
飲食店はありませんか」と
日本語で
話しかけてきたということで、
元社員に
事前に
目を
付けたうえで
偶然を
装って
近づいたとみられています。
この時、1
人でいた
元社員は
前任者とそのまま
近くの
飲食店に
入り、
その後も
たびたび会食するようになります。
そして数か月後、前任者が帰国することになり、「後任のロシア人にも日本語を教えてあげてほしい」と元幹部を紹介されたということです。
それから2人はおよそ2か月に1度のペースで会食を繰り返しました。場所は東京や周辺の県の飲食店で、いずれも元幹部が指定し、同じ店を使うことはなかったといいます。携帯電話の番号なども教えず、会食のたびに次の日時や場所を伝えてきたということです。
また、飲食店で直接会うのではなく、必ず周辺の人目につきにくい場所で待ち合わせたうえで店に向かっていたということで、警視庁は誰かに監視されていないか、事前に確認するねらいがあったとみています。会食の話題は食べ物から国際情勢まで幅広く、元社員が仕事の悩みを聞いてもらうこともあったということです。
こうして関係を深めていくうちに、元幹部は会社が持つ技術に関する情報を求めるようになります。
はじめのうちは会社がホームページなどで公開している情報にとどまっていましたが、要求は次第に機密情報にまでおよび、元社員は渡す資料の内容に応じて数万円から20万円の謝礼を受け取っていたということです。
一方、元社員が要求を断ろうとすると、元幹部は「あなたの住んでいるマンションを知っている」などと脅すようなことばをかけてくることもあったといいます。
警視庁公安部「極めて巧妙で洗練された手口」
捜査関係者によりますと、
機密情報を
渡す際の
具体的な
手順も
元幹部が
指示していました。
情報をパソコン画面に表示させたうえでそれをデジタルカメラで撮影し、SDカードに記録する方法です。その際、元社員は数十桁におよぶパスワードを設定し、記録したデータをいったん削除したうえでSDカードを渡すよう指示されたということです。
警視庁は元幹部が情報を不正に取得した証拠を残さないようにしたうえで、受け取ったカードからデータを復元していたとみています。
おととし開かれた裁判で、元社員は2019年に会社のサーバーから通信設備に関する機密情報を不正に取得した罪に問われ、起訴された内容を認めて懲役2年、執行猶予4年、罰金80万円の有罪判決を受けました。
一方、元幹部は警視庁の出頭要請に応じずロシアに帰国し、その後、元社員をそそのかしたとして書類送検され、起訴猶予となっています。
警視庁公安部の
増田美希子参事官は「ロシアによる
諜報活動の
主体は
プロのスパイであり、
協力者として
好ましい人物を
調べ
上げたうえで、
卓越した
コミュニケーション能力で
近づいてくる。
そして人間的な
魅力などで
相手を
引きつけながら、
弱みに
つけ込んで
心理を
操ろうとする。
極めて巧妙で
洗練された
手口だ」と
話していました。
“顧問に迎える”SNS通じ狙われるケースも
スパイ
活動やサイバー
攻撃だけでなく、
最近ではSNSを
入り口にして
機密情報がねらわれるケースも
相次いでいるとみられています。
都内の研究機関に勤める30代の男性がNHKの取材に応じ、中国の企業への転職を勧めるメッセージなどがたびたび届いている現状を明らかにしました。
この男性は、AI=人工知能をものづくりの分野に活用する研究が専門で、研究機関のほか、メーカーに勤めていたこともあります。アメリカの会社が運営するビジネス向け交流サイトを利用し、みずからの職歴や専門分野などを公開しているということです。
男性のもとには、3年ほど前から中国のエージェントや「アジアを拠点とする企業から依頼を受けた」という会社などからメッセージが届くようになりました。このうちの1つは、中国の通信機器大手への転職のオファーでした。
当時は、先端技術をめぐる米中の対立が激化した頃で、男性は「半導体などの技術に詳しい人材を自国で獲得する必要が出てきたので、オファーをたくさん出していたのだと思う」と話しています。
中国で働くことに魅力を感じなかった男性はそのオファーを断ったということですが、警察当局はこうした形で技術者や研究者が転職することなどによって機密情報が流出するおそれがあるとしています。
実際、積水化学工業の元社員が機密情報を漏らしたとして去年、有罪判決を受けた事件では、同じビジネス向け交流サイトを通じて接触があった中国の企業から「技術顧問に迎える」などと持ちかけられていたことが分かっています。
日本の技術者の待遇の低さも背景に
一方、
取材に
応じた
男性のもとには、
報酬と
引き換えに
専門分野の
技術について
電話インタビューをしたい、という
内容の
メッセージも
複数届いています。
時間は1時間程度で、報酬は3万円から4万円ほど。中には「金額はご自身でご自由に設定いただけます」とするものもありました。
これまで依頼に応じたことはなく、どんな情報を聞かれるかは分からないということですが、男性はこうしたメッセージも機密情報の流出につながるおそれがあると感じています。
その背景として挙げたのが、日本の技術者や研究者の待遇が海外の企業に比べて低い傾向にあることです。
男性は「その弱みにつけ込まれ、報酬と引き換えに情報を渡してしまうことは十分に起こりうると思う。一度応じてしまえば、さらに高い報酬を得たいと感じ、人によってはどんどん重要な情報を漏らしてしまうおそれもある。特に、みずからの能力に比べて報酬が足りないという不満を日常的に抱いている人なら、こうした行為を正当化しやすいのではないか」と話しています。
また、SNSを通じたやり取りは依頼する側にとっても人材を獲得したり情報を入手したりするのに非常に効率的な手段だとしたうえで「日本の企業が情報セキュリティーを厳しくしたとしても、こうした依頼が魅力的だと感じる状況が続くかぎり、機密情報の漏えいを防ぐ抜本的な対策にはならないのではないかと思う」と話していました。
専門家「意識を変えていく必要がある」
日本の
先端技術がねらわれている
現状について、
経済安全保障に
詳しい東京大学の
玉井克哉教授は「
高度な
先端技術の
ほとんどは
軍事転用が
可能だ。
海外では
それをまず
先に
考える国も
多く、
一企業からの
流出が
安全保障上の
大きな脅威と
なるおそれが
ある。
日本では
技術の
流出が
ビジネスだけでなく
安全保障にも
影響するという
意識がまだまだ
低いのが
実情で、
業種にかかわらず
その意識を
変えていく必要が
ある」と
指摘しています。
また、最近はSNSなどを通じて技術者や研究者に直接アプローチできるようになり、流出のおそれがさらに高まっているとしたうえで「機密情報を漏らしてしまう技術者などは、社内での評価や待遇に不満を持っているケースが多い。流出を防ぐには、情報の管理を強化するだけでなく、国が必要な戦略分野を認定し、それに従事する技術者などを思い切って優遇したり、安心して研究に取り組める環境を整備したりすることも重要だ。今の国会で経済安全保障推進法が成立し、政府として本気で経済安全保障に取り組む枠組みを作ったことは意義がある。今後、実効性のある対策につなげていけるのか、注目したい」と話していました。
ロシア カムチャッカ半島の一部で3~4mの津波観測 怪我人も
ロイター通信は、ロシア極東のカムチャツカ半島の一部で3メートルから4メートルの津波が観測されたと、地元の災害担当の当局者が明らかにしたと伝えています。また、ロシア国営のタス通信が伝えた内容として、この地震により地元の空港などで数人が軽いけがをしたと報じています。
N2
Source: NHK
365
Jul 30, 2025 11:07
専門家 “今回の津波は後から来る津波が大きく 注意が必要”
今回の津波の特徴について、津波のメカニズムに詳しい東北大学災害科学国際研究所の今村文彦教授は「カムチャツカ半島では過去も大きな地震があり、最も大きなのものが1952年で、同じような規模で起きている。その時には日本にも3メートルの津波が押し寄せた。今回も同じような規模になるおそれがある」と指摘しました。
N1
Source: NHK
91
Jul 30, 2025 15:07
【津波警報石破首相「高台や避難ビル 安全な場所に避難を」
石破総理大臣は午前10時20分ごろ総理大臣官邸で記者団に対し「きょう午前8時25分ごろ、カムチャッカ半島付近を震源とするマグニチュード8.7の地震が発生し、この地震に伴い北海道から和歌山県の太平洋側沿岸に津波警報が発表され、高いところで3メートル程度の津波が予測されている」と述べました。
N2
Source: NHK
73
Jul 30, 2025 11:07
参議院選挙 自民・公明 過半数割れ【各党の獲得議席 全確定】
20日に投票が行われた第27回参議院選挙。125の議席をめぐって争われ、各党の獲得議席が決まりました。自民・公明両党は過半数の議席を維持できず衆議院に続き参議院でも少数与党となりました。石破総理大臣は比較第1党としての責任は重いとして総理大臣を続投する意向で21日に正式に表明する見通しです。
N2
Source: NHK
1
Jul 21, 2025 09:07
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