日本新闻: 古墳の濠に“太鼓”の埴輪ほぼ完全な形で発見奈良田原本町

古墳こふんの濠ほりに“太鼓たいこ”の埴輪はにわほぼ完全かんぜんな形かたちで発見はっけん奈良なら田原本たわらもと町まち

May 30, 2022 17:05

Furigana

奈良なら県けん田原本たわらもと町まちの6世紀せいき前半ぜんはんごろの古墳こふんの濠ほり（ほり）から太鼓たいこをかたどったとみられる埴輪はにわがほぼ完全かんぜんな形かたちで見みつかったと町まちの教育きょういく委員いいん会かいが発表はっぴょうしました。現在げんざいの和わ太鼓たいこをそのまま小ちいさくしたような姿すがたで、専門せんもん家かからは、楽器がっきの歴史れきしを考かんがえるうえで貴重きちょうな資料しりょうだとする声こえが上あがっています。

奈良なら県けん田原本たわらもと町まちの教育きょういく委員いいん会かいが建設けんせつ工事こうじに伴ともなって発掘はっくつ調査ちょうさを行おこなったところ、去年きょねん、6世紀せいき前半ぜんはんごろの古墳こふんが確認かくにんされ、4月つきになって濠ほりの中なかから、太鼓たいこのような珍めずらしい形かたちをした埴輪はにわが出土しゅつどしました。

長ながさおよそ30センチ、胴どうのいちばん太ふとい部分ぶぶんの直径ちょっけいが25センチほどで、両端りょうたんに皮かわを張はって鋲びょう（びょう）で留とめた様子ようすが再現さいげんされ、今いまの和わ太鼓たいこをそのまま小ちいさくしたような姿すがたをしています。

教育きょういく委員いいん会かいによりますと、太鼓たいこをかたどったとみられる埴輪はにわは、継つぎ体たい天皇てんのうの墓はかという説せつのある大阪おおさか高槻たかつき市しの今こん城塚じょうづか古墳こふんなどで見みつかっていますが、今回こんかいのように、割われていないものは初はじめてだということです。

古墳こふん時代じだいの歴史れきしに詳くわしい同志どうし社しゃ大学だいがくの元もと教授きょうじゅの辰巳たつみ和弘かずひろさんは、「太鼓たいこだということが一目いちもく瞭然りょうぜんで多少たしょう、興奮こうふんしている。楽器がっきの歴史れきしの中なかに、確実かくじつにこういうものがあったということを示しめす貴重きちょうな資料しりょうだ」と話はなしています。

日本書紀にほんしょきにも“太鼓たいこ”に関連かんれんするとみられる記述きじゅつ複数ふくすう

古代こだいの歴史れきし書しょ＝「日本書紀にほんしょき」には、太鼓たいこに関連かんれんするとみられる記述きじゅつが複数ふくすう、存在そんざいし、漢字かんじでは「鼓つづみ」の文字もじが使つかわれています。

この「鼓つづみ」という文字もじを太鼓たいこのことだとした場合ばあい、まずは軍事ぐんじとの関かかわりが注目ちゅうもくされます。

6世紀せいき前半ぜんはんごろの継つぎ体たい天皇てんのうについての記述きじゅつでは、九州きゅうしゅうの豪族ごうぞくによる「磐井いわいの乱らん」が起おきたとき、戦たたかいの場ばで両りょう軍ぐんの旗はたと太鼓たいこが相対そうたいしたと記しるされています。

また、それに先立さきだつ神功しんこう皇后こうごうについての記述きじゅつでは、かねや太鼓たいこの音おと、軍ぐんの旗はたが乱みだれては統率とうそつが取とれないと兵士へいしたちに注意ちゅういを与あたえた場面ばめんが描えがかれています。

埴輪はにわに詳くわしい大正たいしょう大学だいがくの塚田つかだ良りょう道どう教授きょうじゅは、「今回こんかいの太鼓たいこの埴輪はにわは、盾たてや刀かたななど武器ぶきを表あらわしたものと一緒いっしょに出土しゅつどしている。軍隊ぐんたいを指揮しきする『軍楽ぐんがく器き』を表現ひょうげんした可能かのう性せいがある」と指摘してきしています。

一方いっぽう、葬送そうそうの際さいに行おこなわれる儀礼ぎれいに詳くわしい同志どうし社しゃ大学だいがくの元もと教授きょうじゅの辰巳たつみ和弘かずひろさんは、人ひとを葬ほうむる古墳こふんに太鼓たいこの埴輪はにわが置おかれたことに注目ちゅうもくしています。

辰巳たつみさんは、「葬送そうそうの場面ばめんで楽器がっきを鳴ならし、その音おとで死者ししゃの霊魂れいこんを来世らいせに向むけて送り出おくりだして再生さいせいさせる。こちらの世界せかいとあちらの世界せかいを音おとがつないでくれるという意味いみで、太鼓たいこの響ひびきが重要じゅうような意味いみを持もっていたのかもしれない」と話はなしています。