일본어 뉴스: 岡本太郎若き日にパリで描いた作品か 3点の絵画が発見

「太陽たいようの塔とう」や「明日あしたの神話しんわ」で知しられる日本にっぽんを代表だいひょうする芸術げいじゅつ家か、岡本おかもと太郎たろうが若わかき日ひにパリで描えがいたとみられる3点てんの絵画かいがが残のこされていたことが、太郎たろうについての研究けんきゅうを行おこなう財団ざいだんなどの調査ちょうさで分わかりました。いずれも、その存在そんざいを知しられていなかった作品さくひんで、専門せんもん家かは、太郎たろうの原点げんてんを示しめす極きわめて貴重きちょうな発見はっけんだとしています。

18歳さいから29歳さいまでをパリで過すごした太郎たろうは、ドイツの侵攻しんこうを受うけて帰国きこくしたあと、中国ちゅうごくへ出征しゅっせいしていたときに東京とうきょうの自宅じたくが空襲くうしゅうを受うけ、保管ほかんしていた作品さくひんはすべて失うしなわれたと考かんがえられていました。

ところが、パリ在住ざいじゅうのフランス人じん男性だんせいから、ひらひらとしたり、煙けむりのように見みえたりするものが描えがかれた3点てんの抽象ちゅうしょう画がの1点てんに「岡本おかもと太郎たろう」の漢字かんじの署名しょめいがあるという連絡れんらくが寄よせられ、ことし2月つき、太郎たろうについての資料しりょう収集しゅうしゅうや研究けんきゅうを行おこなっている「岡本おかもと太郎たろう記念きねん現代げんだい芸術げいじゅつ振興しんこう財団ざいだん」などが作品さくひんを取り寄とりよせて、詳くわしい調査ちょうさを進すすめることになりました。

調査ちょうさでは「署名しょめいの筆跡ひっせき鑑定かんてい」や「絵の具えのぐの成分せいぶん分析ぶんせき」が実施じっしされ、それらを踏ふまえて太郎たろうに詳くわしい5人にんの専門せんもん家かが、ほかの作品さくひんとの類似るいじ点てんや技法ぎほうなどを検討けんとうした結果けっか、太郎たろう本人ほんにんが描えがいた可能かのう性せいが極きわめて高たかいと結論けつろんづけました。

3点てんの絵画かいがは太郎たろうの最初さいしょの画集がしゅう「OKAMOTO」に掲載けいさいされた初期しょきの作品さくひんと似にているものの、線せんの描えがき方かたなどはつたないということで、財団ざいだんは、20代だいの初はじめに描えがかれた習作しゅうさくではないかとみています。

5人にんの専門せんもん家かのうち、岡本おかもと太郎たろう記念きねん館かんの平野ひらの暁あきら臣しん館長かんちょうは「今回こんかいの作品さくひんは、太郎たろうの出発しゅっぱつ点てんであり、源流げんりゅうである。そうした意味いみで非常ひじょうに重要じゅうようで、太郎たろうの歴史れきしを塗り替ぬりかえる大だい発見はっけんになる」と話はなしています。

今回こんかい見みつかった作品さくひんは、今月こんげつ23日にちから開ひらかれる展覧てんらん会かい「岡本おかもと太郎たろう」で一般いっぱんにも公開こうかいされます。

“本当ほんとうに「岡本おかもと太郎たろう」が描えがいたものなのか”

今回こんかいの作品さくひんは、本当ほんとうに岡本おかもと太郎たろうが描えがいたものなのか。

まず、3点てんの作品さくひんについての科学かがく的てきな分析ぶんせきが行おこなわれました。

東京とうきょう電機でんき大学だいがくの阿部あべ善よし也助じょ教きょうは、蛍光けいこうX線せん分析ぶんせきという技術ぎじゅつで、作品さくひんに使つかわれた絵の具えのぐの成分せいぶんを分析ぶんせきしました。

その結果けっか、3点てんの作品さくひんに使つかわれている「青あお」や「黒くろ」「クリーム色しょく」の成分せいぶんがほぼ共通きょうつうし、同おなじ作者さくしゃが、同おなじような絵の具えのぐを使つかって描えがいた可能かのう性せいのあることが分わかりました。

ただ、パリ時代じだいのほかの作品さくひんが焼失しょうしつしているため、直接ちょくせつの比較ひかくはできなかったということです。

さらに、3点てんのうち1点てんに残のこされていた「岡本おかもと太郎たろう」という漢字かんじの署名しょめいの筆跡ひっせき鑑定かんていが行おこなわれました。

若わかいころの太郎たろうの文字もじは、多おおくは残のこされていませんが、民間みんかんの検査けんさ会社かいしゃが10代だいのころや60代だいのころのものなどと比較ひかくした結果けっか、同一どういつの筆者ひっしゃ、つまり、太郎たろうによって書かかれた可能かのう性せいが高たかいと推定すいていできるという結果けっかが出でました。

こうした調査ちょうさ結果けっかを基もとに、最終さいしゅう的てきには、太郎たろうに詳くわしい専門せんもん家かが検討けんとうを行おこないました。

6月つき4日にち、岡本おかもと太郎たろう記念きねん館かんに集あつまったのは、記念きねん館かんの平野ひらの暁あきら臣しん館長かんちょう、「明日あしたの神話しんわ」などの修復しゅうふくも担当たんとうした絵画かいが修復しゅうふく家かの吉村よしむら絵美えみ留とめさん、ワタリウム美術館びじゅつかんの和わ多利たり浩一こういちCEO、多摩たま美術びじゅつ大学だいがくの椹さわら木野この衣ころも教授きょうじゅ、そして、明治めいじ学院がくいん大学だいがくの山下やました裕二ゆうじ教授きょうじゅです。

検討けんとうの中なかで5人にんから出だされたのは、次つぎのような意見いけんでした。

▽今回こんかいの3点てんと、太郎たろうが1934年ねんごろにパリで描えがき、太郎たろうの画集がしゅうにも収おさめられている「空間くうかん」という作品さくひんは、絵えの構図こうずや雰囲気ふんいきがよく似にている。

▽描えがかれている曲線きょくせんや波打なみうつようなヒラヒラとした表現ひょうげん方法ほうほうは、太郎たろうの別べつの作品さくひんにも見みられる。

そのうえで、吉村よしむらさんは「デジタル顕微けんび鏡きょうで拡大かくだいすると、3点てんは同おなじようなキャンバスを使つかって描えがかれていることが分わかる。さらに、3点てんの作品さくひんの絵の具えのぐにも共通きょうつう点てんがあり、同おなじ作者さくしゃが描えがいた可能かのう性せいが高たかい。そのうちの1枚まいには『岡本おかもと太郎たろう』の署名しょめいがある」と話はなしました。

椹さわら木き教授きょうじゅは「見みつかった作品さくひんには、自信じしんのなさのようなものが感じ取かんじとれ、太郎たろうのほかの作品さくひんと比くらべてクオリティーも劣おとるが、『空間くうかん』などの作品さくひんへと続つづく、極きわめて重要じゅうようなプロセスだったのだろうということは言いえる。太郎たろうには、パリで腕うでを競きそう画家がかたちの中なかで、オリジナルの作品さくひんを作り上つくりあげなければならないという強つよいプレッシャーや悩なやみがあったと思おもうので、それが作品さくひんに表あらわれているのかもしれない」と指摘してきしました。

和わ多利たりCEOは「3点てんの作品さくひんを見みたときに、作品さくひんとの対たいじのしかたが直感ちょっかん的てきに太郎たろうさんのものだと思おもった。細こまかいことを言いえば、線せんにたどたどしいところはあるが、ポイントは描えがかれているテーマと手法しゅほう。ヒラヒラしたものを描えがいていたり、空間くうかんが2つに分わかれていたりするところから、岡本おかもと太郎たろうの作品さくひんだと感かんじた」と積極せっきょく的てきな意見いけんを述のべました。

山下やました教授きょうじゅは「悩なやめる若わかき岡本おかもと太郎たろうの姿すがたが見みえてくる。そういう意味いみでも重要じゅうような発見はっけんだと思おもう。太郎たろうの絵えには描えがいているときの“身みぶり”が見みえてくるような、独特どくとくの曲線きょくせんがある。僕ぼくの中なかでは、もう100％だなと思おもっている」と話はなしました。

そして、5人にんは総合そうごう的てきに検討けんとうした結果けっか、「岡本おかもと太郎たろうの作品さくひんである可能かのう性せいが極きわめて高たかい」という結論けつろんでまとまりました。

そのうえで、筆遣ふでづかいに迷まよいがあり、完成かんせい度どが低ひくいことなどから、「空間くうかん」を完成かんせいさせる前まえに描えがかれた習作しゅうさくと考かんがえられるとしています。

パリ時代じだい “ピカソに衝撃しょうげき”

岡本おかもと太郎たろうは1929年ねん、18歳さいのときに両親りょうしんと共とともにフランスに渡わたり、2人にんが帰国きこくしたあともパリに残のこって絵画かいがを学まなびました。

その際さいに出会であったのが、20世紀せいきを代表だいひょうする画家がか＝パブロ・ピカソの抽象ちゅうしょう画がで、涙なみだが出でるほどの衝撃しょうげきを受うけ、みずからも抽象ちゅうしょう的てきな表現ひょうげんを志こころざしたといいます。

太郎たろうは、そのときの状況じょうきょうについて、NHKのインタビューにこたえ「興奮こうふんした、涙なみだが出でるほどね。感動かんどうした以上いじょうは『あれを乗り越のりこえる、あれと全まったく違ちがった、そして乗り越のりこえる仕事しごとをしてやる』と、そこで決意けついしたわけです。それで僕ぼくは抽象ちゅうしょうへどんどん入はいったわけです」と振り返ふりかえっています。

岡本おかもと太郎たろう記念きねん館かんの平野ひらの暁あきら臣しん館長かんちょうは、今回こんかい、新あらたに確認かくにんされた3点てんは太郎たろうが描えがいた初期しょきの作品さくひんだとみています。

平野ひらのさんは、今回こんかいの3点てんについて「完成かんせい度どはやや低ひくいし、はっきりと言いえば、やや稚拙ちせつです。迷まよいながら恐る恐おそるおそる、いろんなことを考かんがえて、悩なやみながら取り組とりくんでいった様子ようすが見て取みてとれます」と話はなしています。

その後そのご、次々つぎつぎと抽象ちゅうしょう画がに取り組とりくんだ太郎たろうですが、挑戦ちょうせんは続つづいていきます。

太郎たろうは、パリにいたころのことについて、著作ちょさく「自分じぶんの中なかに毒どくを持もて」の中なかで「迷まよいつづけていた。自分じぶんはいったい何なになのか、生いきるということはどういうことか」と記しるしています。

そのうえで、「いのちを投げ出なげだす気持きもちで、自みずからに誓ちかった」「運命うんめいを爆発ばくはつさせるのだ」として、新あらたな自分じぶんの作品さくひんを生み出うみだす決意けついを示しめしています。

こうした中なか、太郎たろうは25歳さいのときに「傷きずましき腕うで」という作品さくひんを生み出うみだします。

浮遊ふゆうしているような大おおきな赤あかいリボンという表現ひょうげんに、固かたく握にぎりしめた傷きずついた腕うでという表現ひょうげんを組み合くみあわせ、抽象ちゅうしょうと具象ぐしょうの双方そうほうを取り入とりいれたとも言いえる個性こせい的てきな作品さくひんで、パリの画壇がだんで高たかい評価ひょうかを受うけました。

岡本おかもと太郎たろう記念きねん館かんの平野ひらの暁あきら臣しん館長かんちょうは「抽象ちゅうしょう画がには本来ほんらい、具体ぐたい的てきなものは描えがかないが、『傷きずましき腕うで』には、はっきりと腕うでが描えがいてあり、生々なまなましい傷きずが描えがいてあって、明あきらかに抽象ちゅうしょう表現ひょうげんからは逸脱いつだつしている。命いのちの躍動やくどう感かんのようなものを表現ひょうげんしようとすると、やはり抽象ちゅうしょう的てきな要素ようそだけでは足たりないと思おもったのではないか。太郎たろうは、どうすれば自分じぶんの表現ひょうげんを獲得かくとくできるか苦闘くとうし、それを乗り越のりこえて自分じぶんの表現ひょうげんをつかんだ」と話はなしています。

その後そのご、太郎たろうは抽象ちゅうしょうと具象ぐしょうを組み合くみあわせた作品さくひんを次々つぎつぎと生み出うみだし、そうした試こころみは「太陽たいようの塔とう」や「明日あしたの神話しんわ」など、圧倒的あっとうてきな力ちからで多おおくの人ひとに驚おどろきを与あたえる代表だいひょう作さくへとつながっていきました。

岡本おかもと太郎たろうと代表だいひょう作さく

岡本おかもと太郎たろうは1911年ねん、現在げんざいの川崎かわさき市しで生うまれました。

父親ちちおやは漫画まんが家かの岡本おかもと一平いっぺい、母親ははおやは歌人かじんで小説しょうせつ家かの岡本おかもとかの子かのこです。

18歳さいのときに、両親りょうしんとともにフランスに渡わたった太郎たろうは、その後そのご、1人にんでパリに残のこって自分じぶんの芸術げいじゅつ表現ひょうげんを追求ついきゅうし、試行しこう錯誤さくごをするなかで「傷きずましき腕うで」といった個性こせい的てきな作品さくひんを生み出うみだすようになります。

1940年ねんには、ドイツのフランス侵攻しんこうを受うけて日本にっぽんに戻もどりましたが、このときに持ち帰もちかえったパリ時代じだいの作品さくひんは、空襲くうしゅうによってすべて焼失しょうしつしました。

終戦しゅうせん後ご、出征しゅっせい先さきの中国ちゅうごくから帰国きこくして創作そうさく活動かつどうを再開さいかいした太郎たろうは、絵画かいがだけではなく、彫刻ちょうこくや家具かぐなど、さまざまな分野ぶんやに対象たいしょうを広ひろげ、独自どくじの表現ひょうげんを行おこなっていきました。

代表だいひょう作さくは、

▽1970年ねんに大阪おおさかで開ひらかれた万博ばんぱくのシンボルとして制作せいさくされた「太陽たいようの塔とう」と、

▽メキシコで制作せいさくされ、原爆げんばくがさく裂さくれつした瞬間しゅんかんをイメージして描えがかれた「明日あしたの神話しんわ」です。

今いまも大阪おおさか吹田すいた市しの万博ばんぱく記念きねん公園こうえんにそびえる太陽たいようの塔とうは、高たかさおよそ70メートルで、塔とうの中央ちゅうおう、上うえ、そして背面はいめんに付つけられた3つの「顔かお」が特徴とくちょうです。

また、塔とうの内部ないぶには生物せいぶつの進化しんかの様子ようすを表現ひょうげんした「生命せいめいの樹き」が作つくられています。

ほぼ同どう時期じきに制作せいさくが進すすめられた「明日あしたの神話しんわ」は、高たかさ5.5メートル、幅はば30メートルの巨大きょだい壁画へきがです。

燃え上もえあがる骸骨がいこつや第だい五ご福竜丸ふくりゅうまるなどを描えがき、核兵器かくへいきの恐怖きょうふや悲惨ひさんさを表現ひょうげんするとともに、不思議ふしぎな生命せいめい力りょくも感かんじさせます。

制作せいさく後ご、行方ゆくえが分わからなくなっていましたが、メキシコシティーの倉庫そうこで発見はっけんされて修復しゅうふくが行おこなわれ、現在げんざいは東京とうきょう渋谷しぶや駅えきの連絡れんらく通路つうろに常設じょうせつ展示てんじされています。

太郎たろうは、こうした作品さくひんを制作せいさくしたあとも、著作ちょさくやテレビ出演しゅつえんなどを通をつうじて、生いきることのすばらしさを伝つたえ続つづけ「芸術げいじゅつは爆発ばくはつだ！」ということばに代表だいひょうされる圧倒的あっとうてきなエネルギーは、今いまも多おおくの人ひとに影響えいきょうを与あたえています。