乳にゅうがん 検診けんしんや治療ちりょう法ほう…不確ふたしかな情報じょうほうに注意ちゅうい！見分みわけ方かたは

SNSやインターネットでは治療ちりょうなどについて正確せいかくではない情報じょうほうがあふれています。

今月こんげつ、10月つきは「ピンクリボン月間げっかん」。世界せかい各地かくちで乳にゅうがんの正ただしい知識ちしきや検診けんしんに対にたいする意識いしきへの啓発けいはつが行おこなわれています。

ご自身じしんのからだのことについて考かんがえてみませんか？

SNSで広ひろがる情報じょうほうは本当ほんとう？

がんに効きく、効きかない。治療ちりょう法ほうや検診けんしん、予防よぼうや原因げんいん、乳にゅうがんに関にかんする不確ふたしかな情報じょうほうがSNSで多おおく出回でまわっています。

例たとえば、乳房ちぶさのX線せん検査けんさを行おこなうマンモグラフィーについて「がん発生はっせい装置そうち」などとして、中なかには医師いしを名乗なのる人物じんぶつが検査けんさを受うけないよう訴うったえるものも。

こうした動画どうがはXであわせて少すくなくとも1000万まん回かい以上いじょう（10月つき11日にち午後ごご3時じ時点じてん）閲覧えつらんされていました。

乳にゅうがんに詳くわしい国立こくりつ国際こくさい医療いりょう研究けんきゅうセンター病院びょういんの清水しみず千佳子ちかこ医師いしは、この情報じょうほうについて、デメリットだけを強調きょうちょうした不ふ正確せいかくなものだと指摘してきしています。

国くには乳にゅうがんの検診けんしんについて、40歳さい以上いじょうの女性じょせいに対にたいし、2年ねんに1度どの問診もんしんとマンモグラフィー検査けんさを受うけるよう推奨すいしょうしています。

清水しみず医師いし「メリットとデメリットを比較ひかくする必要ひつようがあります。デメリットとしては放射線ほうしゃせんによる被ひばくの問題もんだいがあり、がん検診けんしんの対象たいしょうになっていない世代せだいが何なん度ども何なん度ども繰り返くりかえし受うけると、がんになるリスクが高たかくなるということはあります。一方いっぽうで、40代だいや50代だいの乳にゅうがんになりやすい年代ねんだいになってくると、早期そうきに乳にゅうがんが見みつかって治療ちりょうにつながるというメリットのほうが上回うわまわります」

国立こくりつがん研究けんきゅうセンターなどによりますと「検診けんしんで受うける放射線ほうしゃせんの量りょうは胸むねのレントゲンより多おおいものの、通常つうじょうの検査けんさの範囲はんい内ないであれば健康けんこうへの影響えいきょうの心配しんぱいはない」ということです。

「抗こうがん剤ざいは…」「イベルメクチンが…」

また、「抗こうがん剤ざいは2次じ的てきながんを発生はっせいさせる」といったものや「イベルメクチンが乳にゅうがんに効きく」といった投稿とうこうも、Xでそれぞれ数すう万まん回かい閲覧えつらんされています。

同様どうようの情報じょうほうはXに限かぎらず、TikTokやInstagram、Threads（スレッズ）などさまざまなSNSで広ひろがっていました。

これらの情報じょうほうについても、清水しみず医師いしは不ふ正確せいかくな情報じょうほうや科学かがく的てき根拠こんきょがないものだと指摘してきします。

清水しみず医師いし「乳にゅうがんはタモキシフェンいう薬くすりがホルモン療法りょうほうとしてよく使つかわれますが、50歳さい以上いじょうの人ひとが長期ちょうきにわたって服用ふくようした場合ばあいに子宮しきゅう体たいがんになるリスクが上あがると言いわれてます。実際じっさいに子宮しきゅう体たいがんになるリスクは1％に満みたないぐらいです。一方いっぽうで、薬くすりによって乳にゅうがんの再発さいはつを抑おさえられる効果こうかは確たしかめられているので、効果こうかのほうが子宮しきゅう体たいがんになるリスクを上回うわまわります」

「少すくなくとも私わたしたち、乳にゅうがんの薬くすりの治療ちりょうを専門せんもんとしている医師いしの間まで、イベルメクチンが乳にゅうがんに効きくという情報じょうほうはどこにもないです。仮かりに試験管しけんかんでの実験じっけんなどでイベルメクチンが有望ゆうぼうだという情報じょうほうがあるのであれば、患者かんじゃさんで効きいたという根拠こんきょまであるかどうかを確たしかめてもらいたいです」

「検索けんさく」にも注意ちゅういを

SNSだけでなく、インターネットの「検索けんさく」でも注意ちゅういが必要ひつようです。

例たとえば、グーグルやヤフーなどの検索けんさくエンジンで「乳にゅうがん ステージ4」などと検索けんさくすると、自由じゆう診療しんりょうで「免疫めんえき療法りょうほう」や「遺伝子いでんし治療ちりょう」を行おこなっているとする医療いりょう機関きかんなどのウェブサイトが上位じょういに表示ひょうじされます。

しかし…

自由じゆう診療しんりょうは、科学かがく的てきに安全あんぜん性せいや有効ゆうこう性せいが確立かくりつしていると認みとめられていないために保険ほけんが適用てきようされていない治療ちりょうで、費用ひようは全額ぜんがく自己じこ負担ふたん。数かず百ひゃく万まん円えんかかるものも少すくなくありません。

そして、こうした自由じゆう診療しんりょうを行おこなう医療いりょう機関きかんが科学かがく的てき根拠こんきょに基もとづいた情報じょうほうを出だしているとは限かぎらないと、がんの情報じょうほうに詳くわしい国立こくりつがん研究けんきゅうセンターの若尾わかお文彦ふみひこ医師いしは指摘してきします。

若尾わかお医師いし「インターネット上じょうには科学かがく的てきな根拠こんきょに基もとづかない情報じょうほうがあふれていて、医療いりょう機関きかんが出だしているから、医師いしが出だしているから、必かならず信用しんようできるというわけではありません」

「まずは保険ほけんが効きくか、保険ほけんが効きかない自由じゆう診療しんりょうかを見みてほしい。保険ほけんが効きくということは、よほど古ふるいものでなければ、科学かがく的てきな手法しゅほうで安全あんぜん・有効ゆうこうであると確認かくにんされた最もっとも良よい治療ちりょう、“標準ひょうじゅん治療ちりょう”が提供ていきょうされていますので、保険ほけんが効きかない自由じゆう診療しんりょうは選えらばないようにしてほしい」

また、「がん」に関連かんれんして検索けんさくをすると、「広告こうこく」や「スポンサー」などと表記ひょうきされた形かたちで、科学かがく的てきな根拠こんきょに基もとづかない治療ちりょうを提供ていきょうする医療いりょう機関きかんなどのウェブサイトが表示ひょうじされることもあるため、注意ちゅういが必要ひつようです。

若尾わかお医師いし「広告こうこくやスポンサーというのは、お金おかねを出だして場所ばしょを買かっているので、検索けんさく画面がめんの上位じょういに表示ひょうじされているから優すぐれた情報じょうほうというわけではありません。すべての広告こうこくに問題もんだいがあるわけではないが、基本きほん的てきに開ひらかないほうがいいです」

患者かんじゃは“新あたらしい情報じょうほうに乗り遅のりおくれたくない”

乳にゅうがんの患者かんじゃはどのような思おもいで治療ちりょうなどの情報じょうほうを集あつめるのか。

自身じしんも乳にゅうがんを経験けいけんし、いまはがん患者かんじゃを支援しえんする一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん「CSRプロジェクト」の代表だいひょう理事りじをつとめる桜井さくらいなおみさんは、がんと診断しんだんされた当時とうじのことをこう振り返ふりかえります。

桜井さくらいさん「パニック状態じょうたいでしたし、どれが正ただしい情報じょうほうかとか、そんなことも分わからないところからスタートするんです。新あたらしい情報じょうほうに乗り遅のりおくれたくないという気持きもちからすごく焦あせるんですよね。医師いしと話はなすことができる診察しんさつ時間じかんも短みじかいので、それ以外いがいの時間じかんは不安ふあんな気持きもちからいろいろなことばを入いれて検索けんさくしまくる。そして情報じょうほうの渦うずの中なかに巻き込まきこまれてしまう感かんじになるんです。自分じぶんに都合つごうのいいところだけをつまみ食つまみぐいして、自分じぶんが嫌いやで避さけたいものをより避さけていく、そういう面めんが強つよくなっていくと思おもいます」

そのうえで、患者かんじゃの役に立やくにたつ正ただしい情報じょうほうが目めに入はいりやすいところに表示ひょうじされるようになることが必要ひつようだと訴うったえます。

桜井さくらいさん「命いのちに関かかわることなので、検索けんさくした際さいにはスポンサーがついているページではなくて、公的こうてき機関きかんであるとか、正ただしい情報じょうほうが上うえにくるようなシステムになってほしいと思おもいますし、誤あやま情報じょうほうを発信はっしんしたらだめだという罰則ばっそくのようなものも必要ひつようになってくるのではないかと思おもいます」

“怪あやしい”サイト 見分みわけ方かたは？

では、科学かがく的てきな根拠こんきょに基もとづく医療いりょう機関きかんかどうか、ウェブサイトからどう見分みわけるか。

こちらは、実際じっさいにあった例れいをもとに、注意ちゅういする点てんをまとめた“典型てんけい的てきなサイト”です。国立こくりつがん研究けんきゅうセンターの若尾わかお医師いしの監修かんしゅうを受うけて作成さくせいしました。

具体ぐたい的てきに、注意ちゅういが必要ひつような点てんとは…。

《ほぼすべてのがんに対応たいおう》

がんは遺伝子いでんしの変異へんいにより発生はっせいする病気びょうきで、がんによって変異へんいする遺伝子いでんしが異ことなる。すべてのがんに効きくというのは今いまの科学かがくではありえない。

《標準ひょうじゅん治療ちりょうと併用へいよう可か》

健康けんこう保険ほけんの適用てきようとなる「標準ひょうじゅん治療ちりょう」と保険ほけんの効きかない「自由じゆう診療しんりょう」を併用へいようした場合ばあい、混合こんごう診療しんりょうとなるため、「標準ひょうじゅん治療ちりょう」にも保険ほけんが使つかえなくなる。

《他たでは受うけられない独自どくじ開発かいはつの治療ちりょう》

本当ほんとうに効果こうかのある治療ちりょう法ほうであれば、その医療いりょう機関きかんだけで提供ていきょうするのではなく、臨床りんしょう試験しけん・承認しょうにんをへて、全国ぜんこく・全ぜん世界せかいに広ひろめるべきもの。そうではないということは、それができない理由りゆうがある。

《国際こくさい科学かがく雑誌ざっしに多数たすう掲載けいさいされた科学かがく的てき根拠こんきょに基もとづく治療ちりょう》

実際じっさいは科学かがく的てき根拠こんきょがなくても、お金おかねさえ払はらえば掲載けいさいされる「国際こくさい科学かがく雑誌ざっし」も存在そんざいする。なかには、がんに関係かんけいのない論文ろんぶんもある。

若尾わかお医師いし「つらい思おもいに寄り添よりそうようなことばがあったり、非常ひじょうに効果こうかがあるという形かたちで情報じょうほうを出だしたりしていますので、患者かんじゃさんやご家族かぞくなどが魅力みりょくを感かんじることは当然とうぜんだと思おもいます」

「新あたらしい治療ちりょう法ほうができたら、臨床りんしょう試験しけんという形かたちで患者かんじゃさんに投与とうよして安全あんぜん性せいや効果こうかを確認かくにんする。その結果けっか、安全あんぜん性せいや効果こうかが認みとめられたら、それが標準ひょうじゅん治療ちりょうになって保険ほけんが適用てきようされる。研究けんきゅうや臨床りんしょう試験しけんもしないで言い値いいねで治療ちりょうを提供ていきょうしているということはやはり効きく可能かのう性せいが低ひくいですし、自由じゆう診療しんりょうは注意ちゅういが必要ひつようです」

正確せいかくな情報じょうほうを見極みきわめるポイント。その覚おぼえ方かたは、「か・ち・も・な・い」です。

信頼しんらいできる情報じょうほうはどこに？

自分じぶんや家族かぞく、大切たいせつな人ひとの治療ちりょうに役立やくだつ情報じょうほうを集あつめたいときにはどうすればいいのか。

若尾わかお医師いしは、気きになる情報じょうほうを見みつけたら、1人にんで判断はんだんせずに、まずは主治医しゅじいに相談そうだんをしてほしいとしています。

そのうえで、参考さんこうにしてほしいウェブサイトとして、国立こくりつがん研究けんきゅうセンターが運営うんえいしている「がん情報じょうほうサービス」（ganjoho.jp）を挙あげています。

がんについて知しりたい情報じょうほうがある場合ばあいには、このサイトの中なかで検索けんさくをすることも1つの手てだとしています。

また、行政ぎょうせいや公的こうてき機関きかん、「日本にっぽん乳癌にゅうがん学会がっかい」（jbcs.gr.jp）など、がん関連かんれんの学会がっかいや大手おおて製薬せいやく会社かいしゃのサイトも参考さんこうになるとしています。

（日本にっぽん乳癌にゅうがん学会がっかいのサイトには、患者かんじゃのためのガイドラインも掲載けいさいされています）

実際じっさいに相談そうだんしたいときには、全国ぜんこくに461か所かしょある、がん診療しんりょう連携れんけい拠点きょてん病院びょういんなどにある「がん相談そうだん支援しえんセンター」を利用りようできます。面談めんだんや電話でんわで無料むりょうで相談そうだんでき、匿名とくめいでも可能かのうです。

電話でんわの場合ばあい、「がん情報じょうほうサービスサポートセンター」（0570-02-3410）でも相談そうだん先さきを探さがすサポートを受うけられます。(平日へいじつ10時じから15時じ)

自分じぶんで試ためす「セルフチェック」も

乳にゅうがんに詳くわしい、国立こくりつ国際こくさい医療いりょう研究けんきゅうセンター病院びょういんの清水しみず千佳子ちかこ医師いしは、早期そうきの発見はっけんにはセルフチェックの習慣しゅうかん化か＝「ブレスト・アウェアネス」も重要じゅうようだと指摘してきしています。

清水しみず医師いしによりますと、生理せいりが終おわったタイミングで指ゆびをそろえて面めんにして乳房ちぶさを触さわり、小石こいしのような固かたいものがないか、両手りょうてをあげて乳房ちぶさにくぼみやひきつり、左右さゆう差さがないか、それに乳頭にゅうとうから出血しゅっけつがないかなどについて確認かくにんするといいとしています。

清水しみず医師いし「一いち度ど、ご自身じしんで触さわって確認かくにんをしてみてほしいです。このピンクリボン月間げっかんで乳にゅうがんについて知しって自身じしんの体からだについて意識いしきを向むけるきっかけにしてください」

（機動きどう展開てんかいプロジェクト 金澤かなざわ志こころざし江こう・籏智広ともひろ太ふとし、経済けいざい部ぶ 岡谷おかや宏ひろし基もと）