現在の
大学入試センター試験に
代わり
平成33年1月から
実施されるテストの
最終案を
文部科学省はまとめました。
新たなテストは「
大学入学共通テスト」という名称になる
予定で、
従来の
マークシート方式に
加えて
記述式の
問題が
導入されるほか、
英語の
試験は
行わず
英検など
民間の
検定試験を
活用する
方針です。
文部科学省は
毎年1月におよそ
50万人が
受験する
大学入試センター試験に
代わり、
平成33年1月から
実施されるテストの
最終案をまとめました。
それによりますと、新たなテストは「大学入学共通テスト」という名称になる予定で、実施される時期は今と変わらず1月中旬に2日間実施されます。
このうち国語と数学の試験には、思考力や判断力を問うため従来のマークシート方式に加えて長いもので120字までの記述式の問題が出されます。試験時間も今より国語が20分、数学が10分それぞれ長くなり、採点は民間業者が実施する予定です。この記述式の問題は、平成37年1月からは地歴公民や理科にも導入が検討されています。
また、英語のテストでは、実践的なコミュニケーション力を身につけさせるため、これまでの「読む・聞く」力に加えて「書く・話す」力も測定します。このため大学入試センターの試験は廃止し、英検やTOEFLなどの文部科学省が認定した民間の検定試験を活用するとしています。受験生はこれらの検定試験を高校3年になると2回まで受験でき、その結果は大学入試センターに送付されます。そして、大学入試センターは受験生が志望する大学の求めに応じて、結果を伝えるということです。一方で、英語のテストは大幅な変更となるため、文部科学省は共通テストを始めてから4年間は検定試験に加えて、今の試験を続けることも検討しています。
文部科学省はこの最終案をもとに高校や大学と協議して、来月結論をまとめることにしています。
松野文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、「共通テストにおける記述式の導入や、英語の『読む・聞く・書く・話す』の4つの力の評価などによって、生徒の学力を多面的・総合的に評価する入試に転換したい」と述べました。そのうえで、松野大臣は、英語のテストに民間の検定試験を活用することに関連して、「家庭の経済状況や居住地に関係なく、同じ受検の機会を得られることが重要であり、受験料の値下げや全都道府県での試験の実施をお願いしていきたい」と述べました。
専門家 変化や影響を見極めて慎重に議論を
文部科学省がまとめた新たなテストの最終案について、有識者会議の委員を務めた東京大学高大接続研究開発センター長の南風原朝和教授は、入試改革の必要性については認めたうえで、「今後は、たくさんある課題を一つ一つクリアする必要がある」と指摘しています。
特に、英語で民間の検定試験を活用することについては、「複数の民間の試験を認定して、どれを受けてもよいというのは、測定の観点でもどうやって比較するのか確立されておらず乱暴な議論だと思う」と述べています。そのうえで、「期限を決めて性急に実施方針を決めるのではなく、現場にどんな変化や影響があるのかをじっくりと見極めて慎重に議論するべきだ」としています。
戦後の入試改革
統一的な大学入試が本格的に始まったのは昭和54年度に導入された共通一次試験からです。それまでは各大学が個別に入試を行っていましたが、難問や奇問が多く、受験戦争を助長しているという批判に応えるためでした。
共通一次は、国公立大学の受験生を対象に、5教科7科目をすべて受験する方式で実施され、マークシートも導入されました。平成2年度には現在の大学入試センター試験が導入されます。共通一次と違い、少数の試験科目でも受験できるようになり、私立大学も参加するようになりました。
センター試験だけで合否を判断する大学も増え、受験者は平成2年度の40万8000人余りから、ことし1月には54万7000人余りにまで増加しました。一方で、マークシートだけでは思考力や判断力を測定するのは難しいといった声や、一点刻みで合否を判定することの弊害を指摘する声も上がるようになりました。そして、有識者会議などで議論を重ねた結果、平成33年1月に記述式の問題などが導入された新たな共通テストが実施されることになりました。