沖縄おきなわ「対馬つしま丸まる」米べい軍ぐんによる撃沈げきちんから80年ねん 那覇なは市しで慰霊いれい祭さい

那覇なは市しでは慰霊いれい祭さいが行おこなわれ、生存せいぞん者しゃや遺族いぞくたちが黙もくとうをささげました。

80年ねん前まえの1944年ねん8月つき22日にち、沖縄おきなわから疎開そかいする子こどもたちなどを乗のせて九州きゅうしゅうに向むかっていた疎開そかい船せん「対馬つしま丸まる」は、鹿児島かごしま県けんの悪石島あくせきじまの沖合おきあいでアメリカ軍ぐんの潜水せんすい艦かんに撃沈げきちんされ、784人にんの子こどもを含ふくむ1484人にんが犠牲ぎせいになりました。

22日にち、那覇なは市しで慰霊いれい祭さいが行おこなわれ、生存せいぞん者しゃや遺族いぞく、自じ見み沖縄おきなわ・北方ほっぽう担当たんとう大臣だいじんなどおよそ400人にんが参列さんれつしました。

参列さんれつ者しゃは船ふねの汽笛きてきの音おとに合あわせて「対馬つしま丸まる」の犠牲ぎせい者しゃに全員ぜんいんで黙もくとうをささげました。

このあと、遺族いぞくなどでつくる「対馬つしま丸まる記念きねん会かい」の代表だいひょう理事りじで、両親りょうしんときょうだい、あわせて9人にんを失うしなった高良こうら政勝まさかつさん（84）が「海底かいてい深ふかく眠ねむっている犠牲ぎせい者しゃ、帰かえりを待まちわびていたご遺族いぞくのお気持きもちを考かんがえると、長ながすぎる時間じかんが過すぎてしまいました。世界せかいから報復ほうふくの連鎖れんさが断ち切たちきられることを願ねがい、これを対馬つしま丸まるの子こどもたちからのメッセージとして平和へいわの尊とうとさを伝つたえていきたい」と述のべました。

慰霊いれい祭さいのあと、高こう良りょうさんは「もう80年ねんもの長ながい時間じかんがたってしまったと実感じっかんします。戦争せんそうがない、みんなが仲なかよく暮くらせることが平和へいわだと思おもう。戦争せんそうがない時代じだいが100年ねん、200年ねんと続つづいていってくれればと思おもう」と話はなしていました。

鹿児島かごしま県けん 悪石島あくせきじまや奄美あまみ大島おおしま 宇検うけん村むらからも生徒せいとや児童じどうが参列さんれつ

慰霊いれい祭さいには、対馬つしま丸まるが撃沈げきちんされた場所ばしょの近ちかくにある鹿児島かごしま県けんの悪石島あくせきじまの中学生ちゅうがくせいのほか、生存せいぞん者しゃや多おおくの遺体いたいが流れ着ながれついた奄美あまみ大島おおしまの宇検うけん村むらの小学生しょうがくせいが招まねかれました。

生徒せいとや児童じどうたちは、船ふねの汽笛きてきの音おとに合あわせて「対馬つしま丸まる」の犠牲ぎせい者しゃに黙もくとうをささげました。

悪石島あくせきじまの子こどもたちは、1962年ねんに島しまに建立こんりゅうされた慰霊いれい碑ひを月つきに一いち度ど、学校がっこうの全員ぜんいんで掃除そうじする「あおぞら活動かつどう」に取り組とりくんでいて、悪石島あくせきじまでの慰霊いれいの活動かつどうは60年ねんあまり続つづいています。

十島としま村立そんりつ悪石島あくせきじま学園がくえんの中学ちゅうがく3年生ねんせい、熊くま江こう律ただしさん（15）は「戦争せんそうはあってはいけないと改あらためて思おもった。亡なくなった子こどもたち、そして遺族いぞくの方々かたがたの気持きもちを感かんじながら、これからも慰霊いれい碑ひの清掃せいそうを続つづけたい」と話はなしていました。

また宇検うけん村立そんりつ久志くし小中こなか学校がっこうの小学しょうがく5年生ねんせい、植田うえだ文ぶん大だいさん（10）は「戦争せんそうのない、平和へいわな世の中よのなかになってほしい」と話はなしていました。

《参列さんれつ者しゃは》

母ははやきょうだい、あわせて5人にんを亡なくした沖縄おきなわ県けん金武かなたけ町まち出身しゅっしんの宜むべ志こころざし富とみ紹心しんさん（91）

「殺し合ころしあいの中なかで亡なくなった家族かぞくのことを考かんがえると、何なんとも言いえない気持きもちです。甲板かんぱんの上うえで魚雷ぎょらいがこちらに向むかって攻撃こうげきして来きた時とき、波なみが赤あかくなったのを見みて、沈しずむとは知しらずに眺ながめていました。しかし、そのあと、いかだにつかまっている時ときに見みた、男おとこの人ひとが子こどもを押おしのけていかだにつかまる様子ようす、腰こしから下したをサメに食たべられて負傷ふしょうした人ひとなど、今いまでも覚おぼえています」

孫まごの沖縄おきなわ県けん西原にしばら町まち出身しゅっしんの宜むべ志こころざし富とみ厚あつ哉さん（25）

「毎年まいとし、祖父そふと来きています。これまでに聞きいた祖父そふの証言しょうげんをノートにまとめて残のこすようにしています。祖父そふが生いきてきた歴史れきしを、子こや孫まごが引き継ひきついで、将来しょうらいに残のこしていくのは私わたしたちの責任せきにんだと思おもいます」

当時とうじ12歳さいの姉あねを亡なくした那覇なは市し出身しゅっしんの津波古つはこ敏子としこさん（90）

「私わたしの母ははは96歳さいで亡なくなるまで、毎年まいとし8月つきになると涙なみだを流ながしていました。母ははの思おもいを引き継ひきつぐために参列さんれつしました。

今いまの現状げんじょうを見みるととても悔くやしいです。沖縄おきなわ戦せんを体験たいけんした人ひとから見みると戦争せんそう準備じゅんびが始はじまっているようで、気きにかけています。孫まごや子孫しそんに、同おなじ思おもいをさせたくないです。お互おたがいに許ゆるしあい、助け合たすけあえば平和へいわに暮くらせると思おもいます」

祖母そぼと叔父おじ、叔母おばを亡なくした沖縄おきなわ県けんうるま市し出身しゅっしんの高屋たかや登美子とみこさん（87）

「初はじめて慰霊いれい祭さいに参列さんれつしました。対馬つしま丸まるで亡なくなった家族かぞくには、千せんの風かぜになって、子こや孫まごを見守みまもっていてほしいと思おもいます。今いまもイスラエルなど世界せかいでは戦争せんそうが起おきていますが、欲張よくばらずに、話し合はなしあいを持もって、みんなが同おなじような平和へいわな気持きもちになってほしいなと思おもいます」

夫おっとの2人にんの弟おとうとを亡なくした大阪おおさか市し西成にしなり区くの玉城たまき博江ひろえさん（84）

「主人しゅじんと結婚けっこんして対馬つしま丸まる事件じけんのことを知しりました。主人しゅじんは18年ねん前まえに亡なくなりましたが、私わたしが代かわりに毎年まいとし来きています。今回こんかいは日帰ひがえりで来きてとんぼ返かえりですが、それだけ慰霊いれい祭さいに出席しゅっせきしなければという気持きもちがあります。それが自分じぶんの使命しめいだと思おもっています」

当時とうじ9歳さいの姉あねを亡なくした沖縄おきなわ県けん宜野湾ぎのわん市し出身しゅっしんの外間ほかま実じつ男おとこさん（82）

「これまでは慰霊いれい祭さいの翌日よくじつに来きていましたが、きょうは孫まごに一いち度どは見みてもらおうと思おもい、当日とうじつに来きました。体からだが元気げんきな限かぎりは来きたいです。生いきている人間にんげんは1日にちを大切たいせつにして、いい人生じんせいを送おくることが大事だいじなことだと思おもいます」

孫まごの鹿川かのかわ夏なつ音おんさん（22）

「足あしを運はこんだことはなかったので、おじいちゃんの後のちを継つげるように、いろいろ学まなび、いろんなことを感かんじて次つぎにつなげて行いきたいと思おもいます」

おじの一家いっかなど、子こども6人にんを含ふくむ9人にんの親族しんぞくを亡なくした那覇なは市しの岸本きしもと幸秀ゆきひでさん（85）

「対馬つしま丸まるはかなり深ふかいところに沈しずんでいて、難むずかしいと思おもいますが、引き揚ひきあげに期待きたいしています。やっぱり遺骨いこつなどの魂たましいはちゃんと引き揚ひきあげてあげたいという気持きもちです。

戦争せんそうが続つづき住民じゅうみんが避難ひなんしているウクライナや中東ちゅうとうを見みていると、まさに似にたような状況じょうきょうが対馬つしま丸まるの疎開そかいで、先さきの戦争せんそうのことを思い出おもいだしてしまいます」

沖縄おきなわ・北方ほっぽう担当たんとう相しょう “船体せんたいの再さい調査ちょうさへ必要ひつような費用ひようを盛り込もりこむ方向ほうこう”

「対馬つしま丸まる記念きねん館かん」で開ひらかれた式典しきてんに出席しゅっせきした自じ見み 沖縄おきなわ・北方ほっぽう担当たんとう大臣だいじんは、遺族いぞくなどから要望ようぼうが出でている船体せんたいの再さい調査ちょうさについて「対馬つしま丸まるの現在げんざいの姿すがたの撮影さつえいや遺品いひんの収集しゅうしゅうができれば対馬つしま丸まる記念きねん館かんの質しつを高たかめることにつながる。沖縄おきなわ戦せんの悲劇ひげきの象徴しょうちょうである対馬つしま丸まる事件じけんの記憶きおくを風化ふうかさせることなく次世代じせだいにしっかりと継承けいしょうするともに、遭難そうなん学童がくどうなどへの哀悼あいとうや世界せかいの恒久こうきゅう平和へいわの願ねがいを発信はっしんしつづけることは非常ひじょうに重要じゅうようなことだ」と述のべました。

その上うえで、再さい調査ちょうさに向むけて必要ひつような費用ひようを来年度らいねんど予算よさん案あんの概算がいさん要求ようきゅうに盛り込もりこむ方向ほうこうで最終さいしゅう調整ちょうせいを進すすめていることを明あきらかにしました。

対馬つしま丸まるをめぐって国くには27年ねん前まえに海中かいちゅう調査ちょうさを行おこない、悪石島あくせきじまの北西ほくせいおよそ10キロのおよそ870メートルの深海しんかいで船体せんたいを確認かくにんしましたが、詳くわしい状態じょうたいは分わかっていません。

遺族いぞくなどでつくる「対馬つしま丸まる記念きねん会かい」は、撃沈げきちんから80年ねんが経過けいかし技術ぎじゅつが発展はってんしていることなどを踏ふまえ、来年度らいねんどに船体せんたいの再さい調査ちょうさを行おこなうことや海底かいていからの遺品いひんの収集しゅうしゅうなどを行おこなうよう国こくに求もとめていました。

遺族いぞくなどでつくる「対馬つしま丸まる記念きねん会かい」の代表だいひょう理事りじで、船体せんたいの再さい調査ちょうさを要望ようぼうしてきた高良こうら政勝まさかつさんは記者きしゃ団だんに対にたいして「正直しょうじきいって、そんなに簡単かんたんにいかないのではないかと諦あきらめていたのでびっくりした。非常ひじょうに大おおきな一いち歩ほだ。船ふねの引き揚ひきあげは無理むりだとわかっているが、周囲しゅういがどうなってるか、船ふねは腐食ふしょくしているだろうが、どんな状態じょうたいなのか、調査ちょうさしてもらえればいいと思おもう。非常ひじょうに期待きたいしている」と話はなしていました。