体の異変を感じたのはことし4月23日。
37度台後半の発熱があったため、翌日、近くの病院で検査を受けたところ、コロナの陽性反応が確認されました。
石井正則さん
「なんか体が変な感じするなって気はしていました。普通のかぜとは違う違和感で、味わったことのないような変な感じでした」
その後、自宅で療養することになった石井さん。
回復後に自身の病状の経過を伝えられるように、日々の様子を映像で記録することにしました。
たとえば4月26日の記録を見ると ▼ 6時31分 38.6度 ▼10時 1分 36.8度 ▼11時17分 38.0度 ▼16時24分 38.9度 ▼16時42分 37.8度 ▼19時18分 38.2度 ▼21時11分 38.7度 平熱まで下がり、回復の兆しが見えたかと思ったらすぐに高熱が出る、という繰り返し。 それでも石井さんは、こうした状況を深刻には捉えていなかったといいます。 石井正則さん 「その時はそんなに苦しいと思ってなかったんですよね。当時の自分はたぶんもうすぐ治るなってずっと思っているんですよ。状況はどんどん悪化して、でも本人は客観的な目線がもうなくなっているので楽観視している。孤立せざるをえない状況が作られて、正常な判断をさせない揺さぶりをかけてくる。あの怖さは今までにないですね」
石井さんが撮影した映像の中には、カメラが回っていることに気づかず、激しく咳き込む場面も残されていました。 ところがこの段階でも、症状が悪化しているという自覚はなかったといいます。 症状が長期化する中、1人暮らしで第三者の目もなく、冷静な自己判断ができなくなっていたのです。
体内に酸素をどの程度取り込めているかを示す「酸素飽和度」を測る機器で、96%以上が正常値、93%以下では酸素吸入が必要とされています。 体調の変化を把握する手段の一つとして用いられているもので、石井さんの場合、それまで95%前後を維持していましたが、9日目に86%に。 その結果を保健所の担当者に電話で伝えたところ、すぐに入院するよう指示されたのです。
また、あわせて、イギリスで確認された変異ウイルス「アルファ株」に感染していることも告げられました。 石井正則さん 「病院の先生に聞くと、連絡があと1日遅かったら(酸素飽和度が)もっと下がっていた可能性があって、かなり危険な数値になってしまっていたと思うと言われました。自分としてはまだ大丈夫だと思っていても、家で1人で気を失うような状態になっていた可能性もあったみたいです。なのでとにかく、これ(パルスオキシメーター)がなかったら分からなかった。やっぱり客観的な数字っていうのは大事なんだなあっていうふうに思いましたね」
自身の経験を多くの人に知ってもらいたいと、療養期間中に記録した映像を動画投稿サイトに公開したところ、多くの反響が寄せられました。 新たな変異ウイルスが次々と出現する中で、石井さんは、既存の知識や情報にとらわれず警戒心を持ち続けていくことが必要だと訴えます。 石井正則さん 「違う病気の名前つけてもいいのかなと思うぐらいですね。前までの新型コロナウイルスとアルファ株は全く別物だと思ったほうがいい。これまでの情報を1回リセットしないといけないし、それくらいに思わないと自分の警戒心が緩んでしまうと思います。以前の考えにとらわれてしまうと判断を見誤ってしまいそうになるので、いろいろなことを正しく恐れる、これをもう一度考えてもらいたいです」 (取材:科学文化部 富田良)
めまぐるしい体温の変化
激しく咳き込むも 冷静な自己判断できず
異常に気づけたのは「パルスオキシメーター」
重度の肺炎「あと1日遅かったらかなり危険」
「変異ウイルスは全く別物 違う名前でもいいくらい」