感染拡大の第3波のさなかでしたが周囲に感染した人はおらず、対策もとっていたので、なぜ自分が感染したのかわかりませんでした。
元患者の男性
「自分がかかるという認識はありませんでした。かかるわけないとも思っていました。マスクをしていたので正直なんでかなと思いました。東京に出張するときも、空港から目的地にはタクシーで行って公共交通機関に乗らないように注意していたのに…」
入院してから1週間ほどは熱やせきといった症状だけで、数日後には退院できると思っていました。 ところが、容体は急激に悪化しました。 入院から8日目、男性は突然、意識不明となり、より高度な治療が受けられる病院に救急搬送されました。 そのままICU=集中治療室に入り、人工呼吸器を装着され治療を受けました。 当時は意識を失っていて、症状が悪化した様子やどのような治療を受けたのかも覚えていません。
「病院のICUの入り口をうっすら覚えているだけです。自分がどうなるのかということすら考える余裕はありませんでした。あっという間に悪くなるという感じでした」 治療の結果、なんとか一命を取り留め、最初の入院から27日目にようやく退院しました。 しかし、それで終わりではありませんでした。
呼吸の苦しさ、関節の痛み… 退院した男性を襲ったのは後遺症でした。 元患者の男性 「新型コロナの後遺症の中に節々が痛むっていうのがあって、私も咳が終わったら次はそれでした。節々が痛いという状況でリューマチのような症状がでてきて、関節の痛みで夜中に目が覚める状況が続いています」 医師からはリューマチではなく、治療法はないといわれました。 痛み止めの薬などを飲んでなんとかしのいでいますが根本的な症状は改善していません。 痛みでぐっすりと眠ることができず、膝の痛みであぐらもかけなくなりました。 後遺症は、感染から5か月以上たったいまも男性を苦しめています。
感染のおそろしさを、あらためて知ってもらいたいという思いからです。 感染する前は、テレビで新型コロナのニュースを見てもどこかひと事でした。 たとえ感染してもホテルで何日間か過ごせば良いぐらいだろうと安易に考えていました。 しかし、感染で命の危険を感じ、さらに長引く後遺症にいまも苦しんでいる自分だからこそ、伝えられることがあると思っています。 元患者の男性 「私がかかる前にはひと事だったように、みなさんもたぶんひと事だと思います。身近にこういう人間がいるんだぞということを伝えたいです。いまはどこでもだれでもかかります。なめちゃいかんと。コロナはそんなに甘い感染症じゃないです」 (取材:広島拠点放送局 記者 諸田絢香)
「あっという間に悪くなった」
退院後に襲われた後遺症「治療法はない」
「コロナをなめちゃいかん」