ことし9月までの3か月間に日本を訪れた外国人が国内で消費した金額は、およそ1兆3900億円となり、3か月間の消費額としてはコロナ禍前を上回って過去最高となりました。
観光庁の発表によりますと、ことし7月から9月までの3か月間に日本を訪れた外国人が国内で消費した金額は、速報値で1兆3904億円でした。3か月間の消費額がこれまでで最も多かったのはコロナ禍前の2019年4月から6月までの1兆2673億円でしたが、これを上回って過去最高となりました。
背景には、日本を訪れる外国人の数の急速な回復や、このところ進んでいる円安などがあると見られ、1人あたりの消費額は平均で21万1000円となっています。
国や地域別で消費額の伸びが大きかったのは、フィリピンが2019年の同じ時期の2.18倍、韓国が2.09倍、シンガポールが2倍などでした。
一方、中国はことし8月に団体旅行が解禁されたものの、2019年の同じ時期を40%下回っていて、回復の鈍さが目立っています。
これにより、ことし1月から9月までの外国人の消費額はおよそ3兆6000億円となり、今後、政府が目標とする年間5兆円を上回るかが焦点となります。
また、日本政府観光局の発表によりますと先月、日本を訪れた外国人旅行者は推計で218万4300人とコロナ禍前の2019年の同じ月の96%まで回復しました。
包丁が人気「品質が高い」
日本を訪れる外国人観光客に最近、人気なのが包丁などの刃物で、品質の高さや日本食ブームなどが背景にあると見られます。
東京 台東区にある老舗の包丁専門店は、買い物客の9割程度が欧米や東南アジアなどの外国人だといいます。1日平均で100組以上が訪れ、店の売上げは新型コロナの感染拡大前の2019年と比べて1.5倍ほどになっているといいます。
店によりますと、外国人観光客は単価が高い商品を購入する傾向が強く、1本2万円程度の包丁を家族や友人の分も含めて複数、買う人が多いということです。店では購入した刃物に名前や買った年などをカタカナや漢数字で刻印するサービスを無料で行っていて、人気を集めているということです。
包丁6本を購入したオーストラリアから訪れた30代の女性は「日本の刃物は品質が高いと感じます。今は円安なので買い物をする上ではメリットで多少高くても買えそうです」と話していました。
かまた刃研社の鎌田晴一 代表取締役は「ことしで創業から100年ですが、創業以来の売り上げになっています。コロナ禍はなかなか大変でしたが、急激によくなっている実感です。これが続いてほしいです」と話していました。
専門家「この勢いはしばらく続く」
観光政策に詳しい城西国際大学観光学部の佐滝剛弘 教授は、外国人旅行者の消費額が過去最高となった背景について、「日本の文化に関心を持つ外国人は多いが、新型コロナで数年間、日本に行けなかった反動もあるのか関連のグッズなどを買いに一気に日本に来ている。物価高であっても、円安の影響で外国人にとっては買い物がしやすく、結果として買い物の量が増え、消費額が伸びているのではないか」と分析しています。
その上で、今後の見通しについて「中国の旅行客はまだ十分戻っていないが、他の国の購買力も高まっているので円安が続く中、この勢いはしばらく続くのではないか」と話していました。
一方で「富裕層向けのホテルの多くは外資系であることなどを考えると、日本の経済が実際どれだけ潤っているかは冷静にみていく必要がある。また、ホテルの価格が全体的に上がり日本人が利用しづらくなっていて、ただ消費額を増やせばいいという視点にとらわれないことが重要だ」と指摘しています。