日本新聞: JR福知山線脱線事故から16年遺族たちが犠牲者を追悼

107人にんが死亡しぼうした兵庫ひょうご県けん尼崎あまがさき市しのJR福知山ふくちやま線せんの脱線だっせん事故じこから25日にちで16年ねんです。新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいで追悼ついとう慰霊いれい式しきは2年ねん連続れんぞくで中止ちゅうしされ、遺族いぞくたちが現場げんばや自宅じたくなどで犠牲ぎせい者しゃに祈いのりをささげました。

平成へいせい17年ねん4月つき25日にち、尼崎あまがさき市しでJR福知山ふくちやま線せん、通称つうしょう、宝塚たからづか線せんの快速かいそく電車でんしゃが、カーブを曲まがり切きれずに脱線だっせんして線路せんろ脇わきのマンションに衝突しょうとつし、乗客じょうきゃくら107人にんが死亡しぼう、562人にんがけがをしました。

例年れいねん、JR西日本にしにほんが主催しゅさいして行おこなわれてきた追悼ついとう慰霊いれい式しきは、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせんが拡大かくだいし兵庫ひょうご県けんに緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんが出だされる中なか、2年ねん連続れんぞくで中止ちゅうしとなりました。

現場げんばにある追悼ついとう施設しせつには献花けんか台だいが設もうけられ、事故じこが起おきた午前ごぜん9時じ18分ふんに訪おとずれた遺族いぞくたちが犠牲ぎせい者しゃに黙もくとうをささげました。

当時とうじ18歳さいだった兄あにを亡なくした上田うえだ篤史あつしさん（31）は「もう16年ねんたつが、『兄にいちゃんが生いきてたらな』という気持きもちは変かわらない。『がんばって生いきてるよ、これからもそばで見守みまもってね』と報告ほうこくした。コロナの中なかでも現場げんばに来きたられてよかったと思おもう」と話はなしていました。

事故じこから16年ねんとなり、新型しんがたコロナの影響えいきょうで事故じこを伝つたえる機会きかいが縮小しゅくしょうや中止ちゅうしを余儀よぎなくされる中なかで、記憶きおくや教訓きょうくんをどう継承けいしょうしていくかが課題かだいとなっています。

ほぼ同おなじ時刻じこくに電車でんしゃが通過つうか

現場げんばでは、脱線だっせん事故じこが発生はっせいした午前ごぜん9時じ18分ふんとほぼ同おなじ時刻じこくに快速かいそく電車でんしゃが、速度そくどを落おとしながら現場げんばを通過つうかしました。

線路せんろ沿ぞいの道路どうろでは、近所きんじょの人ひとなどが立ち止たちどまって、黙もくとうをささげていました。

一方いっぽう、おととしまでは、電車でんしゃが現場げんばを通過つうかする際さいに、警笛けいてきを鳴ならし、亡なくなった人ひとたちへの哀悼あいとうの意いを表あらわしてきましたが、去年きょねんに続つづき警笛けいてきを鳴ならしませんでした。

これについてJR西日本にしにほんは、「厳粛げんしゅくに追悼ついとうする環境かんきょうを作つくるため」としています。

通過つうかした電車でんしゃの車内しゃないでは黙もくとう

通過つうかした電車でんしゃの車内しゃないでは、事故じこ現場げんばにさしかかる前まえに、「本日ほんじつで福知山ふくちやま線せん列車れっしゃ事故じこから16年ねんを迎むかえます。お亡なくなりになられたお客様おきゃくさまのご冥福めいふくをお祈おいのりするとともに、ご遺族いぞく、けがをされた方ほうとご家族かぞくに深ふかくおわび申し上もうしあげます。この事故じこを心こころに刻きざみ安全あんぜん運行うんこうに努つとめ、安心あんしんしてご利用りようしていただけるよう全力ぜんりょくをあげて取り組とりくんでまいります」とのアナウンスが流ながされました。

そして、電車でんしゃが現場げんば付近ふきんに近ちかづくと速度そくどが落おとされた車内しゃないでは、乗客じょうきゃくたちが静しずかに手てを合あわせていました。

現場げんばで追悼ついとうした遺族いぞくの上田うえだ弘志ひろしさんは…

当時とうじ18歳さいだった、次男じなんの昌あきら毅あつしさんを亡なくした上田うえだ弘志ひろしさん（66）は、現場げんばで献花けんかして祈いのりをささげたあと「JR西日本にしにほんの社長しゃちょうの慰霊いれいのことばは今いままでと同おなじで、きれいなことを言いうが、それをいかに実行じっこうするかということが欠かけている。きれいなことばを並ならべるのではなく、しっかりと行動こうどうを起おこしてほしい」と話はなしていました。

また、昌あきら毅あつしさんの弟おとうとの篤史あつしさん（31）は「もう16年ねんたつが、『兄にいちゃんが生いきてたらな』という気持きもちは変かわらない。『がんばって生いきてるよ、これからもそばで見守みまもってね』と報告ほうこくした。コロナの中なかでも現場げんばに来きたられてよかったと思おもう」と話はなしていました。

事故じこ現場げんば近ちかくに住すむ人ひとも祈いのりささげる

事故じこが起おきた現場げんば周辺しゅうへんでは、静しずかに手てを合あわせて祈いのりをささげる人ひとたちの姿すがたが見みられました。

近所きんじょに住すむ46歳さいの男性だんせいは、妻つまや子こども3人にんと献花けんかに訪おとずれ、「事故じこ当時とうじから近ちかくに住すんでいて、とてもショックを受うけたことを覚おぼえています。私わたしは事故じこの当事者とうじしゃではないのでこれまでは来きてもいいのかなと思おもっていましたが、子こどもが中ちゅう学校がっこうで事故じこのことを学まなんで、自分じぶんも遺族いぞくの方ほうの手紙てがみを読よむ機会きかいがあり、きょう献花けんかに来くるきっかけとなりました。亡なくなられた方ほうの分ぶんも私わたしたちが精せいいっぱい毎日まいにち、生いきなければいけないと思おもいながら、祈いのりをささげました」と話はなしていました。

自宅じたくで追悼ついとうの祈いのりささげる遺族いぞく

事故じこで、当時とうじ44歳さいだった長男ちょうなんの英也ひでやさんを亡なくした、兵庫ひょうご県けん川西かわにし市しの植木うえき安やすしさん（90）と登のぼり喜子のぶこさん（86）夫妻ふさいは、新型しんがたコロナの感染かんせん防止ぼうしのため、自宅じたくで祈いのりをささげました。

安あんさんは「息子むすこを思おもう気持きもちは16年ねん変かわっていません。1年ねん1年ねん、老おいることにはあらがいがたく、私わたしもいつ亡なくなるか分わかりませんが事故じこのことを語り継かたりついでいってほしい」と話はなしていました。

また、登のぼり喜子のぶこさんは、「英也ひでやのことは常つねに忘わすれていません。たまに『いってくるよ』とか、ことばをかけたりもしています。JR西日本にしにほんの社員しゃいんは事故じこを胸むねにおさめて、研修けんしゅうに生いかしてほしい」と話はなしていました。

長女ちょうじょを亡なくした藤崎ふじさき光子みつこさん

脱線だっせん事故じこで当時とうじ40歳さいだった長女ちょうじょを亡なくした藤崎ふじさき光子みつこさん（81）は、自宅じたく近ちかくで取材しゅざいに応おうじ「『年月としつきが悲かなしみを癒やす』というのはうそだ。年月としつきがたてばたつほどつらさは増まし、悲かなしい思おもいの中なかで生いきていくのが事故じこのあとの人生じんせいだ。今いまでも、娘むすめの『なぜ私わたしは殺ころされたの』という声こえが聞きこえる。食事しょくじをしていても、『なぜ私わたしはそこにいないの』という声こえが聞きこえる。JR西日本にしにほんには、安全あんぜんな会社かいしゃになってほしい。私わたしのような遺族いぞくを生うまないでほしい」と話はなしていました。

次女じじょが大だいけが三井みついハルコさん

「負傷ふしょう者しゃと家族かぞく等とうの会かい」のメンバーで、次女じじょが大だいけがをした兵庫ひょうご県けん川西かわにし市しの三井みついハルコさん（65）は、「遺族いぞくや負傷ふしょう者しゃ、家族かぞくにとって『事故じこから何なん年ねん』という区切くぎりはありませんが、時間じかんが過すぎるにつれて事故じこの風化ふうかは加速かそくしてしまうと思おもいます。コロナの感染かんせん拡大かくだいは永遠えいえんに続つづくことはないので、事故じこを風化ふうかさせないためにこれからもこつこつとできることをしていきたい」と話はなしていました。

またJR西日本にしにほんに対にたいして、「新型しんがたコロナの感染かんせんで経営けいえい的てきに大変たいへんな局面きょくめんを迎むかえる中なか、再発さいはつ防止ぼうしのためにどのように安全あんぜん性せいを保たもつかなど事故じこの被害ひがい者しゃと一緒いっしょになって考かんがえていってほしい」と要望ようぼうしました。

兵庫ひょうご伊丹いたみ駅えきの前まえでは風船ふうせん飛とばし犠牲ぎせい者しゃを追悼ついとう

兵庫ひょうご県けん伊丹いたみ市しでは脱線だっせん事故じこでけがをした人ひとが、駅前えきまえの広場ひろばで追悼ついとうのメッセージを書かいた風船ふうせんを飛とばし、犠牲ぎせい者しゃを追悼ついとうしました。

事故じこで大だいけがをした伊丹いたみ市しの増田ますだ和代かずよさん（51）は去年きょねんに続つづいて新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで慰霊いれい式しきなどの追悼ついとう行事ぎょうじが中止ちゅうしされるなか、事故じこの記憶きおくを風化ふうかさせたくないとことしも独自どくじで行事ぎょうじを行おこなうことにしました。