兵庫県の元西播磨県民局長は、ことし3月、斎藤知事にパワハラの疑いがあるなどとする文書を作成して、報道機関や県議会の関係者などに送り、その後の内部調査の結果、「文書の核心的な部分が事実ではない」として、停職3か月の懲戒処分を受けました。
これについて、中立性と客観性を担保して再調査を行うよう県議会から要請されたことを踏まえ、県は、第三者機関の設置を決めたほか、元局長は県議会が設置した百条委員会に証人として出席し質疑に応じることになっていましたが、7月7日に姫路市内で死亡しているのが見つかり、警察は状況から、自殺した可能性があるとみて調べています。
こうした状況を受けて、県職員の労働組合の幹部が10日、片山副知事と会談し、知事に宛てた申し入れ書を手渡しました。
申し入れ書では「告発をした職員を守ることができなかったことは痛恨の極みだ。文書問題の発生以来、現場の業務遂行には大きな支障が生じている状況であり、県政が停滞し、もはや県民の信頼回復が望めない状況になっている。知事として責任ある対応を求める」として、辞職を含めた対応を求めています。
これに対し、片山副知事は「職員を代表する団体からの申し入れを重く受け止め、知事に伝える」と述べました。
このあと、兵庫県職員労働組合の土取節夫中央執行委員長は記者団に対し「県政を一新して、職員が安心して働ける職場づくりをしてほしい。斎藤知事には最大限の責任を取ってほしい。『最大限』というと辞職も入り、知事が判断すればいい」と述べました。
斎藤知事「問題への対応と並行し 職員との信頼関係の再構築を」
斎藤知事は記者会見で、県職員の労働組合が辞職を含めた対応を求めたことについて、「大変重く受け止めている。『百条委員会』や第三者機関における調査を通じて、文書問題への対応をしっかりとやっていくことが大事だと考えている。並行して、時間はかかるかもしれないが、職員との信頼関係の再構築を一歩ずつ進めていくことが大事だ」と述べました。
そのうえで「辞職することはないということか」という質問に対し、「私自身が生まれ変わって、県職員や県民とともに、よい県政を進めていく環境づくりに全力で取り組んでいくことが、私に課せられた果たすべき役割だと考えている」と述べました。
“知事にパワハラ疑い”文書の問題の経緯
問題の発端は、ことし3月。
兵庫県の当時の西播磨県民局長が、斎藤知事にパワハラの疑いがあるなどとする文書を作成し、報道機関や県議会の関係者などに送りました。
県は局長を解任し、予定していた退職をいったん保留して班長級とする人事を発表しました。
斎藤知事は記者会見で、「事実無根の内容が多々含まれている」とか「うそ八百含めて文書を作って流す行為は公務員としては失格」などと述べました。
これ対し、元局長は「何の根拠もなく事実無根と公言した」などとする文書を発表しました。
その後、県は「文書の核心的な部分が事実ではない」などとして、元局長を停職3か月の懲戒処分にしましたが、県議会は「県民などから、独立した第三者による調査の必要性を指摘する意見が寄せられている」として、第三者機関を設置し、再調査を行うよう県に要請しました。
これを踏まえ、斎藤知事は、第三者機関を設置する考えを示しました。
こうした中、6月の定例議会では、“文書問題”をめぐって複数の会派から質問が相次ぎ、斎藤知事が「うそ八百」などのみずからの発言について「表現が行き過ぎた」と陳謝する一幕もありました。
定例議会の最終日、県議会は強い調査権を持つ「百条委員会」の設置を決め、7月19日に開く委員会では、元局長を証人として呼び、文書で指摘した内容について質疑を行う予定でした。
また、第三者機関の立ち上げに向けた準備会の初会合も開かれ、8月をめどに複数の弁護士からなる第三者機関を立ち上げ、おおむね6か月で調査するよう求めることが確認されました。
こうした中、7月7日、元局長が姫路市内で死亡しているのが見つかり、警察は状況から自殺した可能性があるとみて調べています。