Japanese News: 大川原化工機えん罪事件民事裁判 2審も都と国に賠償命じる

横浜よこはま市しの化学かがく機械きかいメーカー「大川原おおかわら化工かこう機き」の社長しゃちょうら3人にんが警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶに不正ふせい輸出ゆしゅつの疑うたがいで逮捕たいほされ、その後そのご、無実むじつが明あきらかになったえん罪えんざい事件じけんをめぐる民事みんじ裁判さいばんの2審しんで、東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょは1審しんに続つづいて警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶと検察けんさつの捜査そうさの違法いほう性せいを認みとめ、都とと国くににあわせて1億おく6600万まん円えん余あまりの賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつを言い渡いいわたしました。

横浜よこはま市しの化学かがく機械きかいメーカー「大川原おおかわら化工かこう機き」の大川原おおかわら正明まさあき社長しゃちょうなど幹部かんぶ3人にんは5年ねん前まえの2020年ねん、軍事ぐんじ転用てんようが可能かのうな機械きかいを中国ちゅうごくなどに不正ふせいに輸出ゆしゅつした疑うたがいで逮捕たいほ、起訴きそされましたが、その後そのご、起訴きそが取り消とりけされ、無実むじつが明あきらかになりました。

社長しゃちょうらは「違法いほうな捜査そうさで苦痛くつうを受うけた」と訴うったえを起おこし、1審しんの東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょは都とと国くにに賠償ばいしょうを命めいじ、双方そうほうが控訴こうそしていました。

28日にちの2審しんの判決はんけつで東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょの太田おおた晃あきら詳裁判さいばん長ちょうは、警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶの捜査そうさについて「輸出ゆしゅつ規制きせいの要件ようけんについての警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶの解釈かいしゃくは国際こくさい的てきな合意ごういと異ことなり、合理ごうり性せいを欠かいていた。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうの担当たんとう部署ぶしょから問題もんだい点てんを指摘してきされたのに再考さいこうすることなく、逮捕たいほに踏み切ふみきった判断はんだんには基本きほん的てきな問題もんだいがあった」と指摘してきし、違法いほうだったと認定にんていしました。

逮捕たいほされた元もと取締役とりしまりやくの島田しまだ順じゅん司つかささんへの取り調とりしらべについても「欺あざむくような方法ほうほうで捜査そうさ機関きかんの見立みたてに沿そった調書ちょうしょに署名しょめいさせた」と指摘してきし、違法いほうと判断はんだんしました。

検察けんさつの捜査そうさについても「通常つうじょう要求ようきゅうされる捜査そうさをしていれば、輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうに当あたらない証拠しょうこを得えることができた。

起訴きその判断はんだんは、合理ごうり的てきな根拠こんきょを欠かいていた」として違法いほうと指摘してきしました。

その上うえで、1審しんよりも逮捕たいほされた3人にんの慰謝いしゃ料りょうなどをおよそ400万まん円えん増額ぞうがくし、都とと国くににあわせて1億おく6600万まん円えん余あまりの賠償ばいしょうを命めいじました。

大川原おおかわら社長しゃちょう「深ふかく吟味ぎんみし判決はんけつ出だしていただいた」

判決はんけつが言い渡いいわたされたあと、東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょの前まえで原告げんこくや弁護士べんごしたちは「違法いほう捜査そうさを認定にんてい」や「全面ぜんめん勝訴しょうそ」などと書かかれた紙かみを掲かかげました。

集あつまった人ひとたちからは拍手はくしゅが起おこり、原告げんこくの1人にん、「大川原おおかわら化工かこう機き」の大川原おおかわら正明まさあき社長しゃちょうは、「おめでとうございます」という呼よびかけに対にたいして、「ありがとうございます」と答こたえていました。

大川原おおかわら社長しゃちょうは、取材しゅざい陣じんに対にたいし、「判決はんけつを聞きいて安心あんしんしました。

1審しんよりも深ふかく吟味ぎんみして判決はんけつを出だしていただいたと思おもっています」と話はなしました。また、勾留こうりゅう中ちゅうにがんが見みつかり、起訴きそが取り消とりけされる前まえに亡なくなった相嶋あいじま静夫しずおさんについて「まずはこの結果けっかを相嶋あいじまさんにきっちり報告ほうこくしたいと思おもいます。警察けいさつや検察けんさつは同おなじようなことがないように検証けんしょうしていただきたい」と話はなしていました。

警視庁けいしちょう「判決はんけつ内容ないようを精査せいさし対応たいおうを検討けんとう」

2審しんの判決はんけつについて、警視庁けいしちょうは「判決はんけつ内容ないようを精査せいさした上うえで、今後こんごの対応たいおうを検討けんとうしてまいります」とコメントしています。

事件じけんの経緯けいい

2020年ねん3月つき、横浜よこはま市しの化学かがく機械きかいメーカー「大川原おおかわら化工かこう機き」の大川原おおかわら正明まさあき社長しゃちょう、海外かいがい営業えいぎょう担当たんとうの取締役とりしまりやくだった島田しまだ順じゅん司つかささん、それに顧問こもんだった相嶋あいじま静夫しずおさんの3人にんが警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶに逮捕たいほされました。

会社かいしゃの主力しゅりょく商品しょうひんだった「噴霧ふんむ乾燥かんそう機き」を、国くにの許可きょかを受うけずに中国ちゅうごくに不正ふせいに輸出ゆしゅつしたという容疑ようぎでした。

この機械きかいは熱風ねっぷうで液体えきたいを急速きゅうそくに乾燥かんそうさせて粉こな状じょうに加工かこうするもので、医薬品いやくひんやインスタントコーヒー、粉ミルクこなみるくなどの製造せいぞうに使つかわれます。

警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶは、生物せいぶつ兵器へいきの製造せいぞうなど軍事ぐんじ目的もくてきに転用てんようされるおそれがあるとして、輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうにあたるとしました。

3人にんは「生物せいぶつ兵器へいきを作つくることはできず、規制きせいの対象たいしょうにあたらない」と主張しゅちょうしましたが、その結果けっか、大川原おおかわら社長しゃちょうと島田しまださんは「口裏くちうら合あわせをする疑うたがいがある」などとして1年ねん近ちかく勾留こうりゅうされ、会社かいしゃの顧問こもんだった相嶋あいじまさんは勾留こうりゅう中ちゅうにがんが見みつかっても保釈ほしゃくが認みとめられず、無実むじつが証明しょうめいされる前まえに亡なくなりました。

起訴きそされた後のちの再さい捜査そうさで機械きかいが規制きせいの対象たいしょうに当あたらない可能かのう性せいが浮上ふじょうし、検察けんさつは初はつ公判こうはんを4日にち後ごに控ひかえた2021年ねん7月つき、一転いってんして起訴きそを取り消とりけすという異例いれいの対応たいおうを取とりました。

起訴きその取り消とりけしを受うけて東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょは「仮かりに起訴きそされた内容ないようで審理しんりが続つづいても無罪むざいだった」と判断はんだんし、大川原おおかわら社長しゃちょうなどに刑事けいじ補償ほしょうとしてあわせて1100万まん円えん余あまりの支払しはらいを決定けっていしました。

裁判さいばんの経緯けいい

【『不当ふとうな捜査そうさ』と提訴ていそ】

大川原おおかわら社長しゃちょうと島田しまださん、それに相嶋あいじまさんの遺族いぞくは、2021年ねん9月つき、「不当ふとうな捜査そうさで逮捕たいほ・起訴きそされた」として、国くにと都とに賠償ばいしょうを求もとめる裁判さいばんを起おこしました。

1審しんでは、警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶで捜査そうさに携たずさわった現職げんしょくの警察官けいさつかんが証人しょうにんとして出廷しゅっていし、事件じけんについて「まあ、ねつ造ねつぞうですね」と証言しょうげんした上うえで、「輸出ゆしゅつ自体じたいは問題もんだいなく立件りっけんしなければならないような卑劣ひれつな客観きゃっかん的てき事実じじつがあったわけではなかった。

捜査そうさ幹部かんぶの個人こじん的てきな欲よくから立件りっけんしていくことになったのではないか」と述のべました。

【1審しん国くにと都とに賠償ばいしょう命めいじる】

東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょは2023年ねん12月つき、「検察けんさつと警視庁けいしちょうの捜査そうさは違法いほうだった」として、国くにと都とにあわせて1億おく6200万まん円えん余あまりの賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつを言い渡いいわたしました。

判決はんけつでは、警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶが機械きかいを輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうと判断はんだんし、逮捕たいほに踏み切ふみきったことなどについて、「根拠こんきょに欠かけていた」と指摘してきしたほか、違法いほうな取り調とりしらべがあったことも認定にんていしました。

また、検察けんさつについても「必要ひつような捜査そうさを尽つくすことなく起訴きそした」として、違法いほうな起訴きそだったと判断はんだんしました。

一方いっぽう、「ねつ造ねつぞう」と話はなした警察官けいさつかんの証言しょうげんには触ふれず、国くにと都と、メーカーのそれぞれが控訴こうそしました。

【争点そうてん1 輸出ゆしゅつ規制きせいに関にかんする省令しょうれいの解釈かいしゃく】

2審しんの争点そうてんのひとつは、警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶによる輸出ゆしゅつ規制きせいに関にかんする省令しょうれいの解釈かいしゃくが合理ごうり的てきだったかどうかです。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうの省令しょうれいでは、噴霧ふんむ乾燥かんそう機きの内部ないぶを「滅菌めっきん」または「殺菌さっきん」できる能力のうりょくがあるものを輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうとしています。

警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶは、熱ねつによる殺菌さっきんも含ふくまれ、省令しょうれいで挙あげた細菌さいきんのうち、1種類しゅるいでも死滅しめつさせればよいと解釈かいしゃくし、捜査そうさを進すすめました。

2審しんでメーカー側がわは、警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶと経済けいざい産業さんぎょう省しょうとの打ち合うちあわせ内容ないようが記しるされた捜査そうさメモなどを新あらたな証拠しょうことして提出ていしゅつしました。

捜査そうさメモには、経済けいざい産業さんぎょう省しょうが当初とうしょ、輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうには当あたらないという見解けんかいを示しめしていたことや、打ち合うちあわせを重かさねると、警視庁けいしちょう公安こうあん部長ぶちょうの働はたらきかけがあり、会社かいしゃの捜索そうさくを容認ようにんするように方針ほうしん転換てんかんされたことが示唆しさされています。

これについて、打ち合うちあわせに参加さんかした現職げんしょくの警察官けいさつかんが証人しょうにんとして出廷しゅっていし、警視庁けいしちょう上層じょうそう部ぶが経済けいざい産業さんぎょう省しょうに働はたらきかけたと述のべた上うえで、当時とうじの捜査そうさについて「問題もんだいがあった。

決定けってい権けんを持もっている人ひとの欲よくで立件りっけんしたと思おもう」と証言しょうげんしました。こうした証拠しょうこや証言しょうげんからメーカー側がわは、「警視庁けいしちょうは経済けいざい産業さんぎょう省しょうをだまして解釈かいしゃくをねじ曲ねじまげさせ、会社かいしゃの捜索そうさく、差し押さしおさえを容認ようにんする方針ほうしんに転換てんかんさせた」と主張しゅちょうしています。

一方いっぽう、都と側がわは「公安こうあん部長ぶちょうが働はたらきかけたり、経済けいざい産業さんぎょう省しょう側がわが姿勢しせいを一変いっぺんさせたりしたことはない。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうの公式こうしき見解けんかいは一貫いっかんしている」と主張しゅちょうしています。

【争点そうてん2 温度おんど測定そくてい実験じっけんの結果けっか】

争点そうてんの2つ目めは、噴霧ふんむ乾燥かんそう機きの殺菌さっきん能力のうりょくを調しらべるため、温度おんどがどこまで上あがるか警視庁けいしちょうが実験じっけんした結果けっかについてです。

2審しんでメーカー側がわは、警視庁けいしちょうが強制きょうせい捜査そうさの前まえから温度おんどが上あがらない場所ばしょがあることを認識にんしきしていたことを示しめす当時とうじの実験じっけん結果けっかのメモを新あらたな証拠しょうことして提出ていしゅつし、「捜査そうさに不利ふりに動うごく実験じっけん結果けっかを握にぎりつぶした」と主張しゅちょうしています。

一方いっぽう、都とは、「不利ふりな証拠しょうこを無視むしした事実じじつはなく、温度おんど測定そくていの実験じっけんは適切てきせつに行おこなわれた」と主張しゅちょうしています。また国くには、「通常つうじょう要求ようきゅうされる捜査そうさは行おこなっていて、当時とうじの証拠しょうこから起訴きそした判断はんだんは合理ごうり的てきだった」と主張しゅちょうしています。