皇室こうしつゆかりの貴重きちょうな美術びじゅつ品ひんなど収蔵しゅうぞう「三の丸さんのまる尚なお蔵館くらだて」が開館かいかん

30年ねん前まえの平成へいせい5年ねん11月つき3日にちに開館かいかんした皇居こうきょ・東ひがし御苑ぎょえんにある「三の丸さんのまる尚なお蔵館くらだて」は、皇室こうしつから国くにに寄贈きぞうされた古代こだいから近代きんだいまでの貴重きちょうな美術びじゅつ工芸こうげい品ひんの保存ほぞんと公開こうかいを行おこなう施設しせつです。

展示てんじや収蔵しゅうぞうのスペースを拡充かくじゅうするため令りょう和わ元年がんねんから建て替たてかえ工事こうじが進すすめられ、10月つきには管理かんり・運営うんえいが宮内庁くないちょうから国立こくりつ博物館はくぶつかんなどを運営うんえいする独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじんに移管いかんされていて、名称めいしょうを「皇居こうきょ三さんの丸まる尚なお蔵館くらだて」としたうえで3日にち午前ごぜん、先さきに完成かんせいした部分ぶぶんが開館かいかんしました。

およそ6100件けん、2万まん点てんにのぼる収蔵しゅうぞう品ひんの中なかには、歴史れきしの教科書きょうかしょなどにも登場とうじょうする知名ちめい度どの高たかい作品さくひんが数多かずおおくあり、来年らいねん6月つきまで4期きに分わけて開ひらかれる開館かいかん記念きねん展てんでは、鎌倉かまくら時代じだいの軍記ぐんき絵え「蒙こうむ古こ襲来しゅうらい絵詞えことば」や、江戸えど時代じだいに活躍かつやくした絵師えし伊藤いとう若冲じゃくちゅうの代表だいひょう作さく「動どう植うえ綵絵え」など、収蔵しゅうぞうされている国宝こくほう8件けんのうち6件けんが段階だんかい的てきに展示てんじされます。

また、即位そくい5年ねんと天皇てんのう皇后こうごう両りょう陛下へいかの結婚けっこん30年ねんを記念きねんする特別とくべつ展てんも来月らいげつ24日にちまで開催かいさいされ、即位そくいや結婚けっこんの儀式ぎしきで身みにつけられた装束しょうぞくなどが展示てんじされています。

訪おとずれた人ひとたちは、国宝こくほうに指定していされている文化財ぶんかざいをじっくり眺ながめたり写真しゃしんに収おさめたりして、新あたらしい展示てんじを楽たのしんでいました。

静岡しずおか県けんから来きた40代だいの男性だんせいは「伊藤いとう若冲じゃくちゅうの動どう植うえ綵絵えを見みたくて来きました。感動かんどうする作品さくひんで、新あたらしい発見はっけんもありました」と話はなしていました。

また都内とないの女子じょし高校生こうこうせいは「前まえの施設しせつは規模きぼが小ちいさかったですが、今回こんかいは広ひろくなって見みやすかったです。平安へいあん時代じだいの小しょう野道のみち風ふうの書しょは、書かかれた時代じだいに触ふれられた気きがして印象いんしょうに残のこりました。時間じかんを見みつけてまた来きたいです」と話はなしていました。

観覧かんらんにはオンライン予約よやくが必要ひつようで、年齢ねんれいなどに応おうじて最大さいだい1000円えんの入館にゅうかん料りょうがかかります。

三の丸さんのまる尚なお蔵館くらだてとは

皇室こうしつには古ふるくから国内外こくないがいの優すぐれた美術びじゅつ工芸こうげい品ひんが集あつまり、「御物ぎょぶつ」と呼よばれ代々だいだい受け継うけつがれてきました。

これらの品々しなじなは、身近みぢかで使つかわれたり宮殿きゅうでんなど公式こうしきの場ばの装飾そうしょく品ひんとして使つかわれたりしていましたが、戦後せんご、多おおくが国有こくゆう化かされ、国立こくりつ博物館はくぶつかんに移管いかんされたり宮内庁くないちょうで管理かんりされたりするなど整理せいりが図はかられました。

さらに平成へいせい元年がんねんには、上皇じょうこうさまと昭和しょうわ天皇てんのうの后きさきの香こう淳じゅん皇后こうごうがおよそ6000点てんの美術びじゅつ工芸こうげい品ひんを国くにに寄贈きぞうされ、これをきっかけに、作品さくひんを保存ほぞん・管理かんりするとともに一般いっぱんに公開こうかいする施設しせつとして、皇居こうきょ・東ひがし御苑ぎょえんの旧きゅう江戸城えどじょう三の丸さんのまるに「三の丸さんのまる尚なお蔵館くらだて」が設置せっちされました。

平成へいせい5年ねんに開館かいかんした施設しせつは入場にゅうじょう無料むりょうで、2年ねん前まえに休館きゅうかんするまでの28年間ねんかんで100回かいを超こえる企画きかく展てんが開ひらかれ、およそ740万まん人にんが来館らいかんしましたが、皇族こうぞく方かたからの寄贈きぞうが続つづき収蔵しゅうぞう品ひんの増加ぞうかが見込みこまれるうえ、展示てんじスペースが手狭てぜまなことから、建物たてものを取り壊とりこわして収蔵しゅうぞうや展示てんじの機能きのうを一体いったい化かした新あらたな施設しせつが整備せいびされることになりました。

貴重きちょうな収蔵しゅうぞう品ひんの数々かずかず

およそ6100件けん、2万まん点てんにのぼる「皇居こうきょ三さんの丸まる尚なお蔵館くらだて」の収蔵しゅうぞう品ひんの中なかには、歴史れきしの教科書きょうかしょなどにも登場とうじょうする知名ちめい度どの高たかい作品さくひんが数多かずおおく見みられ、近年きんねん、このうち8件けんが国宝こくほうに、3件けんが重要じゅうよう文化財ぶんかざいに指定していされました。

来年らいねん6月つきまで4期きに分わけて開ひらかれる開館かいかん記念きねん展てんには、このうち6件けんの国宝こくほうが展示てんじされます。

▽平安へいあん時代じだいの書家しょか、小しょう野道のみち風ふうの書しょ、「屏風びょうぶ土代どだい」は、屏風びょうぶに漢詩かんしを清書せいしょするための試ためし書がきで、書道しょどうの歴史れきし上じょうの代表だいひょう作さくとされています。

▽鎌倉かまくら時代じだいの軍記ぐんき絵え「蒙こうむ古こ襲来しゅうらい絵詞えことば」は、元もと寇に参戦さんせんした御家人ごけにんのてんまつが描えがかれていて、モンゴル帝国ていこくが拡大かくだいした時期じきの歴史れきし的てきな資料しりょうとしても貴重きちょうなものです。

▽「更級さらしな日記にっき」は、鎌倉かまくら時代じだいの歌人かじん、藤原ふじわら定家さだいえが書写しょしゃしたものです。

▽「春日かすが権現ごんげん験けん記き絵え」は、鎌倉かまくら時代じだいに描えがかれた全ぜん20巻かんからなる絵巻物えまきもので、中世ちゅうせいの人々ひとびとの信仰しんこうや生活せいかつが生き生いきいきと描えがかれています。

▽桃山ももやま時代じだいから江戸えど時代じだいにかけて狩野かの永ひさし徳とくらが描えがいた屏風びょうぶ絵え「唐獅子からじし図ず屏風びょうぶ」は、金色きんいろの雲くもがたなびく山やまあいに2頭とうの唐とう獅子じしが悠然ゆうぜんと歩あるく様子ようすが描えがかれた、この時代じだいを代表だいひょうする作品さくひんです。

▽「動どう植うえ綵絵え」は、伊藤いとう若冲じゃくちゅうが10年ねんほどかけて描えがいた連作れんさくの花鳥かちょう画がで、江戸えど時代じだい中ちゅう後期こうきの京都きょうとを代表だいひょうする作例さくれいとして高たかく評価ひょうかされています。

また、重要じゅうよう文化財ぶんかざいに指定していされている

▽近代きんだいの彫金ちょうきん家か、海野うみの勝まさる※ミンの代表だいひょう作さく「蘭らん陵りょう王おう置物おきもの」と

▽南蛮なんばん貿易ぼうえきや宣教師せんきょうしの渡来とらいでもたらされたと考かんがえられる西洋せいようの地図ちずなどをもとに制作せいさくされた初期しょきの洋風ようふう画が「萬よろず国こく絵図えず屏風びょうぶ」も展示てんじされます。

※「ミン」は、泯のさんずいを「王おう」にした字じ。

このほか

▽狩野かの永ひさし徳とくが描えがいたと伝つたわる「源氏げんじ物語ものがたり図ず屏風びょうぶ」

▽近代きんだい日本にっぽん画がの巨匠きょしょう、横山よこやま大観たいかんが富士山ふじさんを描えがいた「日にち出処しゅっしょ日本にっぽん」などの名品めいひんも展示てんじされます。

建て替たてかえで何なにが変かわった？

3日にち開館かいかんしたのは、地上ちじょう3階かい、地下ちか1階かいの建物たてもので、2階かいと3階かいには収蔵しゅうぞう庫こと収蔵しゅうぞう品ひんを修復しゅうふくする作業さぎょう室しつなどがあり、1階かいには展示てんじ室しつが2つあります。

かつては、展示てんじスペースが施設しせつ全体ぜんたいの10分ぶんの1以下いかしかなく、公開こうかいできる作品さくひんが限かぎられてしまうのが大おおきな課題かだいでしたが、今回こんかい、展示てんじ室しつの広ひろさがあわせて690平方メートルへいほうめ-とるとおよそ4倍ばいに拡充かくじゅうされ、一いち度どに展示てんじできる作品さくひんの数かずが大幅おおはばに増ふえました。

一方いっぽう、施設しせつの管理かんり・運営うんえいが宮内庁くないちょうから文化庁ぶんかちょう所管しょかんの独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん「国立こくりつ文化財ぶんかざい機構きこう」に移管いかんされ、国立こくりつ博物館はくぶつかんの1つと位置いちづけられたことに伴ともなって、利用りようのあり方ありかたも変かわります。

これまでは、皇居こうきょ・東ひがし御苑ぎょえんを訪おとずれた人ひとは誰だれでも無料むりょうで入館にゅうかんできましたが、新あたらしい施設しせつはオンライン予約よやくが必要ひつようで、一般いっぱんは1000円えん、大学生だいがくせいは500円えんなど年齢ねんれいなどに応おうじて入館にゅうかん料りょうがかかります。

学芸がくげい員いんは

皇居こうきょ三さんの丸まる尚なお蔵館くらだて学芸がくげい部ぶの五味ごみ聖きよし管理かんり・情報じょうほう課長かちょうは、平成へいせい11年ねんからこの施設しせつで学芸がくげい員いんを務つとめ、来館らいかんされた上皇じょうこうご夫妻ふさいや皇族こうぞく方かたへの説明せつめいも担当たんとうしてきました。

五味ごみ課長かちょうは「すべての収蔵しゅうぞう品ひんが皇室こうしつから受け継うけついだものという意味いみで、三の丸さんのまる尚なお蔵館くらだては唯一ゆいいつ無二むにの施設しせつだと思おもいます。名品めいひんとして知しられるものがたくさんあるほか、皇族こうぞく方かたが国際こくさい交流こうりゅうの中なかで外国がいこくから受け取うけとられた品しなが全体ぜんたいの4分ぶんの1以上いじょうを占しめています。こうした皇室こうしつから伝つたえられた貴重きちょうな品しなを後ごの世よに大切たいせつに守まもり伝つたえていき、皇室こうしつと文化ぶんかの関かかわりについて作品さくひんを通をとおして情報じょうほう発信はっしんしていくことが、私わたしたちの使命しめいだと考かんがえています」と話はなしていました。

そのうえで「宮内庁くないちょう時代じだいの三の丸さんのまる尚なお蔵館くらだては展示てんじ室しつが狭せまかったので、同おなじものを長期ちょうき間かん展示てんじする常設じょうせつ展てんではなく、年とし4回かいの企画きかく展てんを中心ちゅうしんに展覧てんらん会かいを開催かいさいしてきましたが、新あたらしい施設しせつは展示てんじ室しつが広ひろくなりケースも見みやすくなったので、より展示てんじを楽たのしんでもらえると思おもいます。高こう精細せいさいの画像がぞうなどいろいろなものがインターネットを通をつうじて見みられる時代じだいですが、作品さくひんが持もつ力ちからというは実際じっさいに間近まぢかで見みなければ体験たいけんできないものだと思おもうので、ぜひ皇居こうきょ・東ひがし御苑ぎょえんに来きて、皇室こうしつゆかりの品しなを見みてもらいたいです」と話はなしていました。

今後こんごの整備せいび計画けいかく

令りょう和わ8年度ねんどに新あらたな建物たてものがすべて完成かんせいすると、収蔵しゅうぞうスペースはこれまでのおよそ4倍ばいの4000平方メートルへいほうめ-とる程度ていどに、展示てんじスペースはおよそ8倍ばいの1300平方メートルへいほうめ-とる程度ていどになります。

これによって、全ぜん30幅はばの連作れんさくの「動どう植うえ綵絵え」を一堂いちどうに展示てんじするなど、これまでできなかった見みせ方かたができるようになるということです。

皇居こうきょ・東ひがし御苑ぎょえんには、全面ぜんめん開館かいかんに間に合まにあうよう、およそ3000平方メートルへいほうめ-とるの休憩きゅうけい所しょが整備せいびされる予定よていです。

皇居こうきょ内ないでは初はじめてとなるカフェのほか、売店ばいてんやオープンテラスなどが併設へいせつされ、皇室こうしつの活動かつどうや皇居こうきょについて紹介しょうかいするコーナーも設もうけられるということです。

政府せいふが国くにの施設しせつを観光かんこう資源しげんとして活用かつようする方針ほうしんを掲かかげる中なか、「皇居こうきょ三さんの丸まる尚なお蔵館くらだて」は、日本にっぽんの文化ぶんかを国内外こくないがいに広ひろく発信はっしんする役割やくわりを担になうことになりそうです。