ノルウェー王室を揺るがす前例なき事態
ノルウェー王室はこれまで、国民から高い信頼と敬愛を集め、安定したイメージを維持してきた。しかし、最近公開された米国の「エプスタイン事件」関連文書に、メッテ・マリット皇太子妃と故ジェフリー・エプスタイン氏とのメールのやり取りが含まれていたこと、さらに皇太子妃の長男マリウス・ボルグ・ホイビー被告がレイプなどの重大な罪に問われている裁判が開始されたことにより、王室にはかつてないほど厳しい視線が注がれている。
ホイビー被告は、元交際相手に対する強姦や継続的な暴力など、計38件の罪に問われている。起訴状によれば、顔面への度重なる暴行、首を絞める行為、脅迫、所有物の破壊など、極めて悪質な内容が含まれているという。ノルウェーの公共放送NRKによると、有罪となった場合、10年以上の禁錮刑が科される可能性があるとされている。
ホイビー被告の弁護人は、昨年の起訴時点で「性的虐待に関する全ての容疑および暴力に関する大半の容疑を否認している」と述べており、被告自身も法廷において詳細な主張を展開する意向を示している。CNNはさらなるコメントを求めて弁護人に連絡を取っているが、現時点で追加の声明は発表されていない。
ホイビー被告はホーコン皇太子の継子であるが、メッテ・マリット皇太子妃が2001年に皇太子と結婚する以前に誕生しているため、王位継承権は有していない。今回の裁判は、3日からオスロ地裁で開廷し、約7週間にわたって審理が行われる見通しである。専門家は、王室がこれほど深刻な刑事事件に直接関与する事態は前例がないと指摘している。
さらに、裁判開始直前の1日夜、ホイビー被告は刃物を用いた脅迫や接近禁止命令違反など、新たな容疑で逮捕されたことが当局により明らかにされた。このような一連の事件を受け、ノルウェー国民は王室全体の将来に対する不安を抱きつつも、冷静に裁判の行方を見守っているとされる。ハーラル国王をはじめ、王室は国民から「祖父的存在」として親しまれており、依然として高い支持を維持しているものの、今回の事案はその信頼に影響を及ぼしかねない。
地元メディアの王室担当記者によれば、ホイビー被告が王室の正式な一員ではないこと、今回の事件が個人的な法的問題であるという認識が広がっているという。また、ホーコン皇太子の対応については、「意図的かつ戦略的」であり、被告への愛情を示しつつも法的手続きや公的発言から距離を置いたことで、王室の評判への悪影響を最小限に抑えることに成功したとの見方が強い。実際、皇太子夫妻が法廷に出席しない方針を貫いていることも、その一例である。
王室は裁判期間中も通常通り公務を継続し、審理に関するコメントは控える姿勢を示している。加えて、エプスタイン事件文書の公開によって、メッテ・マリット皇太子妃が過去にエプスタイン氏と親密なやり取りをしていたことが明らかになり、皇太子妃に対する批判も高まっている。皇太子妃自身は声明で「判断ミス」を認め、エプスタイン氏との関係を深く後悔し、恥ずかしさを表明した上で、「被害者の方々に深い同情と連帯を示す」と述べている。
米司法省が公開したメールによれば、エプスタイン氏が未成年者への性的勧誘の罪を認めた後も、両者の間には友好的な関係が続いていたことが示唆されている。2012年のメールでは、皇太子妃がエプスタイン氏を「心の優しい人」と評していたほか、同年の別のやり取りでは、エプスタイン氏が「妻探しをしている」と述べ、「パリは面白いが、スカンジナビア人の方が好みだ」と語ったのに対し、皇太子妃は「パリは不倫には良い場所だが、スカンジナビア人の方が良い妻になる」と返信していた。
皇太子妃は、「エプスタイン氏の行動の責任は彼自身にある」と強調しつつも、自身の過去の判断を悔いている。今回の一連の事態は、ノルウェー王室にとって極めて異例であり、今後の王室の在り方に大きな影響を及ぼす可能性がある。