日本新聞: 国立ハンセン病療養所解剖記録など廃棄のおそれ NHK調査

国立こくりつハンセン病はんせんびょう療養りょうよう所しょ解剖かいぼう記録きろくなど廃棄はいきのおそれ NHK調査ちょうさ

Jun 19, 2021 13:06 1

Furigana

全国ぜんこくの国立こくりつハンセン病はんせんびょう療養りょうよう所しょでかつて入所にゅうしょ者しゃの遺体いたいを解剖かいぼうしていたことなどが記録きろくされた古ふるい資料しりょうついて入所にゅうしょ者しゃの多おおくが将来しょうらいにわたって残のこしていくべきだと考かんがえていることがNHKが行おこなったアンケート調査ちょうさでわかりました。

一方いっぽうでこうした資料しりょうを保存ほぞんするための設備せつびや法律ほうりつは十分じゅうぶんに整備せいびされておらず、専門せんもん家かは「国くには態勢たいせいづくりを急いそぐべきだ」としています。

全国ぜんこくにある国立こくりつハンセン病はんせんびょう療養りょうよう所しょでは去年きょねん以降いこう、入所にゅうしょ者しゃの遺体いたいを解剖かいぼうした記録きろくや不妊ふにん手術しゅじゅつなどに関にかんする資料しりょうが残のこされていることが相次あいついで明あきらかになっていますが、多おおくは作成さくせいされた時期じきが古ふるいことなどから法律ほうりつで保存ほぞんが義務ぎむづけられている「公文こうぶん書しょ」に当あたらず、今後こんご、入所にゅうしょ者しゃが減へって施設しせつが縮小しゅくしょうされるなどした場合ばあい、廃棄はいきされてしまうおそれもあると指摘してきされています。

かつての隔離かくり政策せいさくなどによる被害ひがい者しゃの名誉めいよ回復かいふくと追悼ついとうの日ひと定さだめられている6月つき22日にちを前まえに、こうした資料しりょうをどうしていくべきかNHKが先月せんげつ入所にゅうしょ者しゃでつくる全国ぜんこくの自治じち会かいにアンケート調査ちょうさを行おこなったところ、今いまも活動かつどうしている11の自治じち会かいすべてが「資料しりょうを将来しょうらいにわたって保存ほぞんすべき」だと考かんがえていることがわかりました。

さらに6つの自治じち会かいが、保存ほぞんするための国くにの取り組とりくみに「不足ふそくを感かんじる」と回答かいとうしました。

ハンセン病はんせんびょう問題もんだいに詳くわしい九州きゅうしゅう大学だいがくの内田うちだ博文ひろぶみ名誉めいよ教授きょうじゅは「国くにの誤あやまった強制きょうせい隔離かくり政策せいさくの中なかで入所にゅうしょ者しゃがどのような厳きびしい生活せいかつを送おくっていたかを検証けんしょうしていくために必要ひつよう不可欠ふかけつな資料しりょうで、国くには入所にゅうしょ者しゃの声こえを受け止うけとめ保存ほぞんに向むけた態勢たいせいづくりを急いそぐべきだ」と話はなしていました。

施設しせつ園長えんちょう「保存ほぞんに向むけたルールを」

資料しりょうの保存ほぞんに危機きき感かんを抱だいているのが、岡山おかやま県けん瀬戸内せとうち市しにある長島愛生園ながしまあいせいえんです。

この療養りょうよう所しょでは、去年きょねん、昭和しょうわ初期しょきからおよそ25年ねんにわたって入所にゅうしょ者しゃを解剖かいぼうしていたこと示しめす「解剖かいぼう録ろく」が見みつかり、詳くわしく調しらべたところ1800人にん以上いじょうが解剖かいぼうされていたことがことし3月つきに初はじめて明あきらかになりました。

ほかにも療養りょうよう所しょには90年ねん以上いじょう前まえの開園かいえん以来いらい、すべての入所にゅうしょ者しゃのカルテが残のこされ、一部いちぶには堕胎だたいや不妊ふにん手術しゅじゅつなどに関にかんする記載きさいもあったということです。

入所にゅうしょ者しゃの平均へいきん年齢ねんれいは87歳さいを超こえていて、ことしに入はいって今月こんげつ11日にちまでに6人にんが亡なくなり、施設しせつで暮くらす人ひとの数かずは123人にんと年々ねんねん、減へっています。

山本やまもと典のり良りょう園長えんちょうは、将来しょうらい、さらに入所にゅうしょ者しゃが減へって施設しせつが縮小しゅくしょうされれば、それに伴ともなって資料しりょうも廃棄はいきされてしまうのではないかと危惧きぐしています。

山本やまもと園長えんちょうは「そのときの職員しょくいんの判断はんだんで廃棄はいきするか、しないかが決きまる状態じょうたいになってしまっている。国立こくりつの施設しせつである以上いじょう、全国ぜんこくで統一とういつ的てきに保存ほぞんに向むけたルールを作つくる必要ひつようがある」と話はなしていました。

自治じち会長かいちょう「苦くるしんだ事実じじつ資料しりょうとして残のこしてほしい」

長島ながしま愛生園あいしょうえんの入所にゅうしょ者しゃ自治じち会かいで会長かいちょうを務つとめる中尾なかお伸治しんじさん（86）は、自分じぶんたちの経験けいけんを次つぎの世代せだいに受け継うけついでいくためにも、資料しりょうをいかに保存ほぞんすべきか、議論ぎろんを急いそいでほしいと感かんじています。

中尾なかおさんは「再ふたたび差別さべつが繰り返くりかえされないためにも、臭くさいものにふたをしてきれいなことだけを残のこしても意味いみがない。私わたしたちが苦くるしんだ事実じじつも資料しりょうとして残のこしてほしい」と話はなしていました。