能登のと半島はんとう地震じしん 救助きゅうじょ要請ようせい殺到さっとうの中なか 消防しょうぼう指令しれいシステムに不具合ふぐあい

当時とうじ、消防しょうぼう本部ほんぶで対応たいおうできる件数けんすうを大幅おおはばに超こえる救助きゅうじょ要請ようせいが殺到さっとうしていて、対応たいおうにあたった職員しょくいんは「指令しれいを出だせない状況じょうきょうが続つづき、緊急きんきゅう車両しゃりょうをすぐに向むかわせることができなかった。道路どうろ状況じょうきょうも悪わるく、多おおくの命いのちを助たすけたいのに何なにもできないことが歯はがゆかった」と振り返ふりかえりました。

鳴なりやまない119番ばん通報つうほう 想定そうてい外がいの事態じたいが

奥おく能登のと広域こういき圏けん事務じむ組合くみあい消防しょうぼう本部ほんぶの指令しれいセンターでは、管轄かんかつする輪島わじま市しと珠洲すず市し、能登のと町まち、穴水あなみず町まちの2市し2町まちからの119番ばん通報つうほうを一括いっかつして受け付うけつけ、それぞれの地域ちいきを担当たんとうする9つの消防しょうぼう署しょや分署ぶんしょに消防しょうぼう車しゃや救急きゅうきゅう車しゃを出動しゅつどうするよう指令しれいを出だしています。

1月つき1日にち、地震じしん発生はっせい時じに指令しれいセンターで勤務きんむしていた竹田たけだ正ただし歳とし情報じょうほう指令しれい課長かちょう補佐ほさは、発生はっせい直後ちょくごの状況じょうきょうをこう話はなしました。

奥おく能登のと広域こういき圏けん事務じむ組合くみあい消防しょうぼう本部ほんぶ 竹田たけだ正ただし歳とし情報じょうほう指令しれい課長かちょう補佐ほさ

尋常じんじょうじゃない揺ゆれを感かんじてその数すう分ふん後ごに119番ばん通報つうほうが多数たすう着信ちゃくしんして鳴なりやまない状況じょうきょうになった。

家屋かおくが倒壊とうかいして出でられないとか下敷したじきになって身動みうごきがとれないとか、私わたしたちの消防しょうぼう力りょくでは対応たいおうできない状況じょうきょうで、大だいごとだと感かんじた。

システム不ふ具合ぐあいが発生はっせい 出動しゅつどう指令しれいの操作そうさできず

こうした中なか、想定そうてい外がいの事態じたいが起おきます。

消防しょうぼう本部ほんぶによりますと、震度しんど7を観測かんそくした地震じしんの直後ちょくごに指令しれいセンターにある「高こう機能きのう消防しょうぼう指令しれいシステム」に不ふ具合ぐあいが生しょうじ、パソコンで各かく隊たいに出動しゅつどうの指令しれいを出だす操作そうさができなくなったのです。

具体ぐたい的てきには、大型おおがたのモニター画面がめんが映うつらなくなり、119番ばん通報つうほうした人ひとや消防しょうぼう車しゃなどの位置いちを地図ちず上じょうに表示ひょうじする機能きのうの多おおくが使つかえなくなったほか、消防しょうぼう署しょや分署ぶんしょにパソコンで出動しゅつどうの指令しれいを出だす操作そうさができなくなったということです。

このため通報つうほうを受うけて聞き取ききとった住所じゅうしょや内容ないようを紙かみにメモしたうえで、消防しょうぼう署しょや分署ぶんしょにそのつど電話でんわをかけて指令しれいを出だすなど、業務ぎょうむに支障ししょうが出でたとしています。

また、道路どうろ状況じょうきょうが悪わるく、非番ひばんの職員しょくいんが来こられなかったため、発はつ災わざわいからおよそ5時間じかんは職員しょくいん3人にんで対応たいおうを続つづけました。

大だい規模きぼな災害さいがいでは、通報つうほうが殺到さっとうするため、重症じゅうしょう度どに応おうじて救助きゅうじょの優先ゆうせん順位じゅんいをつける「コールトリアージ」を行おこなうことになっていましたが、次々つぎつぎにかかってくる電話でんわの対応たいおうに追おわれたといいます。

約やく400件けんの通報つうほう“半数はんすうほどしか出でられず”

日付ひづけが変かわるまでに、指令しれいセンターに寄よせられた通報つうほうは確認かくにんできただけで、平常へいじょう時じの1日にちの通報つうほうの20倍ばいにあたるおよそ400件けんに上のぼり、このうち半数はんすうほどしか電話でんわに出でられなかったということです。

消防しょうぼう本部ほんぶによりますと、システムの不ふ具合ぐあいは地震じしんの揺ゆれで指令しれいセンターと消防しょうぼう署しょをつなぐ回線かいせんなどに破断はだんや何なんらかの異常いじょうが生しょうじたことが原因げんいんとみられるとしています。

その後そのご、モニターや一部いちぶの回線かいせんは復旧ふっきゅうしたものの、指令しれいセンターでは現在げんざいも一部いちぶでパソコンでの操作そうさができないことなどから電話でんわで出動しゅつどうの指令しれいを出だす対応たいおうを続つづけています。

「救助きゅうじょ求もとめる人ひとの声こえが忘わすれられない」

奥おく能登のと広域こういき圏けん事務じむ組合くみあい消防しょうぼう本部ほんぶ 竹田たけだ情報じょうほう指令しれい課長かちょう補佐ほさ

消防しょうぼう指令しれいシステムがダウンして指令しれい発出はっしゅつできない状況じょうきょうが続つづき、緊急きんきゅう車両しゃりょうをすぐに向むかわせることができなかった。

緊急きんきゅう車両しゃりょうも倒壊とうかい家屋かおくや道路どうろ状況じょうきょうの影響えいきょうですぐに現場げんばに近ちかづけず、助たすけを求もとめている人ひとがいたが、なかなか近ちかづけない状態じょうたいだったと聞きいている。

救助きゅうじょを求もとめてくる人ひとの声こえが今いまでも忘わすれることができない。

1つでも多おおくの命いのちを助たすけたいのに何なにもできないことがどうしようもなく歯はがゆい、むなしい気持きもちでいっぱいだった。

ダウンしたシステムを何なんとかしたいという気持きもちはあったが、すぐには直なおせなかった。

設備せつび的てきには私わたしたちの想像そうぞうをはるかに超こえる地震じしんだったので、対策たいさくについてはこれから考かんがえていかないといけない。

自宅じたくが倒壊とうかい「閉じ込とじこめられている」

地震じしんで輪島わじま市し河井かわい町まちの自宅じたくが倒壊とうかいし、70代だいの両親りょうしんを亡なくした皆戸みなと秀人ひでとさん（49）です。

自宅じたくでは、父親ちちおやの憲けん邦くにさん（73）と母親ははおやの利子りしさん（75）、それに姉あねの4人にんで暮くらしていました。

1月つき1日にちは、自宅じたく近ちかくのガソリンスタンドで働はたらいていた皆みな戸こさん。

地震じしんの直後ちょくご、姉あねから「自宅じたくが倒壊とうかいして閉じ込とじこめられている」と電話でんわがかかってきたといいます。

地震じしんで自宅じたく倒壊とうかいし両親りょうしんを亡なくす 皆戸みなと秀人ひでとさん

地震じしんは立たっていられないような揺ゆれで逃にげようにも逃にげられない感かんじでした。

姉あねから閉じ込とじこめられていると電話でんわがあり、ガソリンスタンドの安全あんぜん確認かくにんをしてから慌あわてて自宅じたくに向むかいました。

自宅じたくに向むかう道路どうろも被害ひがいを受うけていましたが、なんとかたどりつくと、自宅じたくは1階かい部分ぶぶんが完全かんぜんに崩れ落くずれおち、2階かい部分ぶぶんだけが残のこっているような状態じょうたいでした。

地震じしん発生はっせい時じに玄関げんかん付近ふきんにいたという姉あねは、声こえが聞きこえたため、皆みな戸こさんが周まわりの壁かべなどを蹴けり破やぶって無事ぶじに救出きゅうしゅつしました。

一方いっぽう、1階かいの居間いまにいた両親りょうしんは見みつからず、姉あねが警察けいさつや消防しょうぼうに連絡れんらくしましたが「隊員たいいんが出払ではらっていて今いますぐには行いけない」と言いわれその後そのご、電話でんわがつながらなくなったといいます。

そこで駆かけつけた親戚しんせきなど数すう人にんで懐中かいちゅう電灯でんとうを持もって2階かいの窓まどから入はいり、畳たたみを外はずして床ゆかに穴あなを開あけるなど、無我夢中むがむちゅうで助け出たすけだそうとしました。

皆戸みなと秀人ひでとさん

私わたしが来きた時ときには両親りょうしんの声こえは全まったく聞きこえない状態じょうたいでしたが、生いきているだろうと信しんじながらなんとかして助たすけたいという一心いっしんで救助きゅうじょ活動かつどうを行おこなっていた。

翌日よくじつ、家いえの前まえを通とおりかかった警察けいさつに救助きゅうじょを依頼いらいすると、はりの下敷したじきになって埋うずもれていた両親りょうしんが見みつかりましたが、すでに亡なくなっていたということです。

皆みな戸こさんは倒壊とうかいした自宅じたくから唯一ゆいいつ見みつけることができた母親ははおやのかばんから、母ははが持ち歩もちあるいていた家族かぞくの写真しゃしんを見みつけ、大切たいせつに保管ほかんしています。

皆戸みなと秀人ひでとさん

両親りょうしんは一緒いっしょに抱き合だきあうように横よこたわっていたのを発見はっけんされましたが、2階かいを支ささえているはりが落おちてきていて、救出きゅうしゅつには時間じかんがかかると言いわれました。

生いきていてほしかったですが、家いえの中なかから出だしてくれたので本当ほんとうに警察けいさつには感謝かんしゃしています。

家いえも両親りょうしんも失うしなったことはいまだに実感じっかんがわいていません。

起おこってしまったことはしっかりと受け止うけとめて、この町まちを元もとに戻もどしていきたいですし、何なにとしてでもまた同おなじ場所ばしょに自分じぶんの家いえを建たててやろうと思おもっています。

1階かい部分ぶぶん倒壊とうかいも救出きゅうしゅつ「数すう十じゅうセンチずれていれば…」

倒壊とうかいした建物たてものの1階かいに取り残とりのこされたものの、助たすかったケースもあります。

輪島わじま市し門前もんぜ町まちに住すむ雨池あまいけ正ただし春はるさん（60）は、1月つき1日にちの地震じしん発生はっせい時じ、妻つまと息子むすこの3人にんで築ちく50年ねんの自宅じたくにいました。

1階かいの居間いまでソファーに座すわっていた雨池あまいけさんは立ち上たちあがろうとした瞬間しゅんかんに激はげしい揺ゆれに見舞みまわれ、うつ伏ふせの状態じょうたいで倒れ込たおれこみました。

倒たおれたのは、ソファーと目めの前まえに置おかれていた高たかさ30センチほどのテーブルの間まの隙間すきまでした。

2階かい建だての住宅じゅうたくの1階かい部分ぶぶんが大おおきく崩くずれて倒壊とうかいし、周囲しゅういにははりなどが落おちてきたものの、テーブルなどが支ささえとなって押おしつぶされずに済すんだということです。

また、2階かいにいた息子むすこは窓まどから外そとに出でて、台所だいどころにいた妻つまもテーブルの下したに隠かくれたことで自力じりきで脱出だっしゅつできました。

家いえの中なかに取り残とりのこされた雨池あまいけさんは、息子むすこたちの声こえが聞きこえると、必死ひっしに近ちかくの物ものをたたいて助たすけを呼び続よびつづけたといいます。

その後そのご、近所きんじょの人ひとたちも駆かけつけて、覆おおいかぶさっていたものを取り除とりのぞいて救出きゅうしゅつされたということです。

大おおきなけがはありませんでした。

自宅じたくの1階かい部分ぶぶんが倒壊とうかいも救出きゅうしゅつ 雨池あまいけ正ただし春はるさん

次つぎに余震よしんが来きたら「終おわりかな」と考かんがえましたが、すばやく助たすけが来きてくれたおかげで、九死きゅうしに一生いっしょうを得えました。

ほんの数すう十じゅうセンチずれていれば、はりなどの下敷したじきになっていたと思おもうので、本当ほんとうに良よかったです。

「まだ生いきていなさい」と言いわれたと思おもって、これから頑張がんばりたい。

低ひくい耐震たいしん化か率りつが被害ひがい拡大かくだいに影響えいきょうか

多おおくの建物たてものが倒壊とうかいしたことについて、地震じしんが建物たてものに与あたえる影響えいきょうに詳くわしい金沢かなざわ工業こうぎょう大学だいがくの山岸やまぎし邦くに彰あきら教授きょうじゅは、2020年ねんごろから続つづいている活発かっぱつな地震じしん活動かつどうの影響えいきょうで、地震じしんに耐たえる力ちからが低下ていかしていたと指摘してきしています。

また、比較的ひかくてき古ふるい建物たてものの被害ひがいが多おおくみられ、石川いしかわ県けん輪島わじま市しや珠洲すず市しの住宅じゅうたくの耐震たいしん化か率りつがそれぞれ50％ほどと、全国ぜんこく平均へいきんの87％を大おおきく下回したまわっていたことが被害ひがいの拡大かくだいにつながったとしています。

さらに地震じしんで地盤じばんが液状えきじょう化かし、横よこにずれ動うごく現象げんしょうが起おきたことによる被害ひがいも確認かくにんされていることから、今後こんご、こうした観点かんてんでの詳くわしい調査ちょうさも必要ひつようだとしています。

専門せんもん家か「狭せまいスペースで助たすかることも」

「警察庁けいさつちょう技術ぎじゅつアドバイザー」で、倒壊とうかいした建物たてものからの救助きゅうじょについて研究けんきゅうしている上武大学じょうぶだいがくの加古かこ嘉信よしのぶ教授きょうじゅは、2016年ねんの熊本くまもと地震じしんでも耐震たいしん性せいの低ひくい木造もくぞう住宅じゅうたくが倒壊とうかいし、1階かいにいた人ひとが亡なくなったり、閉じ込とじこめられて救助きゅうじょを必要ひつようとしたりするケースが多おおく発生はっせいしたとして、今回こんかいの地震じしんと類似るいじ点てんがあると指摘してきします。

加古かこ教授きょうじゅによりますと、熊本くまもと地震じしんで倒壊とうかいした建物たてものの下敷したじきになるなどして、警察けいさつが救助きゅうじょを行おこなった60人にんについて調査ちょうさした結果けっか、8割わりは1階かいにいて閉じ込とじこめられたということです。

加古かこ教授きょうじゅは1月つき28日にち、輪島わじま市し門前もんぜ町まちを訪おとずれて近所きんじょの人ひとから助け出たすけだされた雨池あまいけ正ただし春はるさんに聞き取ききとりなどを行おこないました。

木造もくぞう2階かい建だての自宅じたくの1階かいにいた雨池あまいけさんは地震じしんの揺ゆれでソファーとテーブルの間まに倒たおれ、その上うえにはりが落下らっかしましたが、高たかさ30センチほどのテーブルが支ささえとなって隙間すきまができていて助たすかったということです。

倒壊とうかい建物たてものからの救助きゅうじょを研究けんきゅう 上武大学じょうぶだいがく 加古かこ嘉信よしのぶ教授きょうじゅ

熊本くまもと地震じしんの例れいでも高たかさが50センチを下回したまわる狭せまいスペースで助たすかった人ひとがいる。

偶然ぐうぜんが重かさなったように見みえるがベッドやテーブルの直近ちょっきんには小ちいさなスペースができる傾向けいこうにあるので、逃にげられない場合ばあいに緊急きんきゅう避難ひなんとしての選択肢せんたくしになるかもしれない。

「救助きゅうじょの仕組しくみづくり 考かんがえていく必要ひつようがある」

一方いっぽうで、今回こんかいは道路どうろが大おおきな被害ひがいを受うけたことなどから消防しょうぼうや警察けいさつなどの救助きゅうじょ部隊ぶたいがすぐに現場げんばに到着とうちゃくできなかったと指摘してきしています。

上武大学じょうぶだいがく 加古かこ嘉信よしのぶ教授きょうじゅ

熊本くまもと地震じしんのときは、前震ぜんしんのあとに本震ほんしんがあって前震ぜんしんのときに多おおくの部隊ぶたいが入はいっていたので、その部隊ぶたいがただちに救助きゅうじょができる状況じょうきょうで、本震ほんしんでは、翌日よくじつの夕方ゆうがたくらいまでには倒壊とうかいした建物たてものからの救助きゅうじょはひととおり終おわっていた。

時間じかん帯たいも熊本くまもと地震じしんは深夜しんやだったのに対にたいし今回こんかいは元日がんじつの夕方ゆうがたに地震じしんが起おきて、多おおくの人ひとが1階かいにある居間いまなどで過すごしていた可能かのう性せいがあると考かんがえていて、その点てんは、熊本くまもと地震じしんとは違ちがう状況じょうきょうだったと思おもいます。

また、倒壊とうかいした建物たてもの内ないに隙間すきまができて助たすかったとしても、その後そのご、救助きゅうじょに時間じかんがかかれば低てい体温たいおん症しょうなどの危険きけんがあるため、対策たいさくを検討けんとうしていく必要ひつようがあるとしています。

上武大学じょうぶだいがく 加古かこ嘉信よしのぶ教授きょうじゅ

公的こうてき機関きかんでいえば、圧倒的あっとうてき多数たすうの現場げんばが存在そんざいし、そこへのアクセスが制限せいげんされるという状況じょうきょうを踏ふまえると、必かならずしも車両しゃりょうではなく、徒歩とほで持ち歩もちあるけるような資機材しきざいを持もって、2人にんから3人にんの部隊ぶたいが分わかれて活動かつどうするなど、仕組しくみづくりを考かんがえていく必要ひつようがある。

首都しゅと直下ちょっか地震じしんなどを想定そうていすると公的こうてき救助きゅうじょがすべての現場げんばに早はやく到着とうちゃくすることは不可能ふかのうなので、それまでの時間じかんを誰だれがどう埋うめるのかが課題かだいで、住人じゅうにんらによる救助きゅうじょ活動かつどう、共助きょうじょに頼たよらざるを得えない場合ばあい、安全あんぜん性せいを周知しゅうちする訓練くんれんの必要ひつよう性せいなどを社会しゃかい全体ぜんたいで考かんがえる段階だんかいに来きている。