命いのちをつなぐ「福祉ふくし避難ひなん所しょ」 避難ひなん者しゃ受け入うけいれられない施設しせつ相次あいつぐ

災害さいがい弱者じゃくしゃといわれる人ひとたちの命いのちをつなぐ重要じゅうような場所ばしょですが、今回こんかいの能登のと半島はんとう地震じしんでは施設しせつや職員しょくいんが被災ひさいして開設かいせつできなかったり、開設かいせつしても避難ひなん者しゃを受け入うけいれられなかったりする施設しせつが相次あいつぎ、そのあり方ありかたが課題かだいとなっています。

39施設しせつと協定きょうていも開設かいせつは15か所かしょ

石川いしかわ県けんの輪島わじま市しと珠洲すず市し、それに能登のと町まち、穴水あなみず町まちの4つの市しと町まちでは、地震じしんの前まえから、高齢こうれい者しゃ施設しせつや障害しょうがい者しゃ支援しえん施設しせつなど設備せつびが整ととのっているあわせて39か所かしょの施設しせつと協定きょうていを結むすび、福祉ふくし避難ひなん所しょに指定していしていましたが、NHKが取材しゅざいしたところ、2月つき7日にち時点じてんで開設かいせつできたのは15か所かしょと4割わりに届とどいていません。

輪島わじま市しでは福祉ふくし避難ひなん所しょとして老人ろうじんホームなど20か所かしょ以上いじょうと協定きょうていを結むすんでいましたが、建物たてものの被災ひさいや断水だんすい、被災ひさいした職員しょくいんの離職りしょくなどの影響えいきょうで、開設かいせつできたのは8か所かしょにとどまっています。

人手ひとで不足ふそくで運営うんえいできなくなっているケースも

この中なかには、入所にゅうしょ者しゃを市外しがいや県けん外がいの系列けいれつの施設しせつなどに避難ひなんさせ避難ひなん者しゃを受け入うけいれている施設しせつもありますが、避難ひなん所しょは開設かいせつしたものの受け入うけいれ希望きぼうが相次あいつぎ10件けん以上いじょう断ことわったケースや、職員しょくいんの離職りしょくが続つづき深刻しんこくな人手ひとで不足ふそくで事実じじつ上じょう、運営うんえいできなくなっているケースもありました。

輪島わじま市しは急きゅうきょ、かほく市しと七尾ななお市しの施設しせつとも協定きょうていを結むすび受け入うけいれを進すすめる方針ほうしんですが、本来ほんらい、2次じ避難ひなん先さきなどに向むかう前まえに一時いちじ的てきに身みを寄よせる場所ばしょであるはずの福祉ふくし避難ひなん所しょに、避難ひなん者しゃが長ながくとどまることで負担ふたんが大おおきくなっている施設しせつもあり、そのあり方ありかたをめぐって課題かだいが浮き彫うきぼりになっています。

輪島わじま市しの特とく養よう 職員しょくいん約やく120人にん→約やく40人にんに

輪島わじま市しの特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームは地震じしんの直後ちょくごに福祉ふくし避難ひなん所しょを開設かいせつしましたが、長引ながびく断水だんすいや人手ひとで不足ふそくの影響えいきょうで、今いまは避難ひなん者しゃを受け入うけいれられなくなっています。

輪島わじま市し門前もんぜ町まちの特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホーム「ゆきわりそう」は、地震じしんの直後ちょくごに市しとの協定きょうていに基もとづいて福祉ふくし避難ひなん所しょを開設かいせつしました。

しかし、120人にん近ちかくいた職員しょくいんが避難ひなんなどを理由りゆうに相次あいついで離職りしょくし、今いまは40人にんほどで対応たいおうに当あたっています。

臨時りんじ託児たくじ所しょを設もうけるも深刻しんこくな人手ひとで不足ふそく続つづく

子こどものいる職員しょくいんが出勤しゅっきんできるよう、臨時りんじの託児たくじ所しょを設もうけるなどしてなんとか職員しょくいんを確保かくほしていますが、深刻しんこくな人手ひとで不足ふそくが続つづいています。

このため地震じしん直後ちょくごにはおよそ10人にんの避難ひなん者しゃを受け入うけいれましたが、今いまは地震じしん前まえからの入所にゅうしょ者しゃらおよそ90人にんへの対応たいおうだけで精せいいっぱいで、新規しんきの受け入うけいれはできていません

断水だんすいが続つづく中なか、特殊とくしゅな浴槽よくそうを必要ひつようとする寝ねたきりの入所にゅうしょ者しゃが1か月かげつ以上いじょう入浴にゅうよくできず、床とこずれの症状しょうじょうが悪化あっかする懸念けねんがあるため、水みずを使つかわないシャンプーでしのぐなど目めの前まえの対応たいおうに追おわれ、受け入うけいれを再開さいかいできるめどは立たっていないということです。

事務じむ長ちょう「避難ひなん者しゃ受け入うけいれたいが職員しょくいんが潰つぶれてしまう」

施設しせつの事務じむ長ちょうの小泉こいずみ純一じゅんいちさんは「その日ひその日ひの対応たいおうで精せいいっぱいで、今いまは先さきが全まったく見みえない。本当ほんとうは避難ひなん者しゃを受け入うけいれたいが、職員しょくいんが潰つぶれてしまうので今いまは止とめさせてもらっている。次つぎの行き先ゆきさきが決きまらない人ひとが多おおければ新あらたな受け入うけいれは難むずかしく、今いまいる入所にゅうしょ者しゃを今いまいる職員しょくいんで守まもっていきたい」と話はなしていました。

ボランティアに支ささえられ運営うんえい

輪島わじま市しにあるグループホームは、ほかの県けんからのボランティアに支ささえられながら福祉ふくし避難ひなん所しょの運営うんえいを続つづけていますが、新あらたな避難ひなん者しゃを受け入うけいれる余裕よゆうはありません。

施設しせつ側がわは、開設かいせつにあたって福祉ふくし避難ひなん所しょとしての役割やくわりを果はたせる施設しせつなのか見極みきわめられるよう、判断はんだん基準きじゅんを明確めいかくにする必要ひつようがあるとしています。

輪島わじま市し門前もんぜ町まちで福祉ふくし避難ひなん所しょを設もうけているグループホーム「もんぜん楓かえでの家いえ」では、施設しせつの利用りよう者しゃ33人にんに加くわえ、高齢こうれい者しゃなど合あわせて20人にん余あまりが避難ひなん生活せいかつを送おくっています。

避難ひなん所しょの運営うんえいはほかの県けんから交代こうたいで駆かけつけるボランティアなどに支ささえられていて、施設しせつの職員しょくいんと合あわせて20人にん余あまりの態勢たいせいで支援しえんを続つづけています。

ボランティアの介護かいご士し「被災ひさいした職員しょくいんが休息きゅうそくでれば」

大阪おおさかからボランティアで来きた介護かいご士しの男性だんせいは「入所にゅうしょ者しゃが明あかるい気持きもちになれたり、被災ひさいした職員しょくいんが少すこしでも休息きゅうそくできたりすればと、ボランティアに来きました」と話はなしていました。

別べつのボランティアの男性だんせいは「介護かいごの現場げんばは人ひと手不足てぶそくなので1つの施設しせつから何なん人にんも抜ぬけることはできませんが、複数ふくすうの施設しせつで協力きょうりょくし合あって人ひとを出だせば、数すうか月かげつの持続じぞく的てきな支援しえんができると思おもいます」と話はなしていました。

避難ひなん者しゃの受け入うけいれ希望きぼうの電話でんわ 断ことわらざるをえない

一方いっぽう、施設しせつには地域ちいきを見守みまもるケアマネージャーや近隣きんりんの病院びょういんなどからも避難ひなん者しゃの受け入うけいれ希望きぼうの電話でんわがほぼ毎日まいにちかかってきていますが、受け入うけいれは今いまの人数にんずうが限度げんどで、断ことわらざるをえないといいます。

避難ひなん者しゃが2次じ避難ひなん先さきに移うつれば余裕よゆうが生うまれますが、住み慣すみなれた土地とちを離はなれたくないという人ひとも多おおく、中なかには避難ひなん中ちゅうに施設しせつのサービスの利用りようを申し込もうしこんだ人ひともいたということです。

管理かんり者しゃ補佐ほさ「私わたしたちだけではどうにもならない」

施設しせつの管理かんり者しゃ補佐ほさをつとめる山岸やまぎし丈たけ哲あきらさんは「避難ひなん者しゃを待またせていて心苦こころぐるしく、本当ほんとうは受け入うけいれたいが、今いまいる避難ひなん者しゃがこの町まちから離はなれたくないという気持きもちもわかる。私わたしたちだけではどうにもならない」と歯はがゆい思おもいを口くちにしていました。

そのうえで山岸やまぎしさんは福祉ふくし避難ひなん所しょのあり方ありかたについて、「建物たてものが使つかえるのかどうか、電気でんきが通かよっているのかなど、開設かいせつにあたっては明確めいかくな区分くわけが必要ひつようだ。避難ひなん者しゃがどこにいてどんな支援しえんを必要ひつようとしているのか、関係かんけい機関きかんとの情報じょうほう共有きょうゆうも今後こんごさらに必要ひつようになると思おもう」と話はなしていました。