能登のと半島はんとう地震じしん 「自主じしゅ避難ひなん所しょ」珠洲すず市しでは約やく2週間しゅうかん詳細しょうさい把握はあくできず

災害さいがいに備そなえて自治体じちたいは、災害さいがい対策たいさく基本きほん法ほうに基もとづき「指定してい避難ひなん所しょ」を確保かくほしていますが、能登のと半島はんとう地震じしんでは「指定してい避難ひなん所しょ」に大勢たいせいの人ひとが避難ひなんして過すごせるスペースがなかったり、道路どうろが寸断すんだんされてたどりつけなかったりしたため、地域ちいき住民じゅうみんが別べつの場所ばしょに「自主じしゅ避難ひなん所しょ」を立たち上あげました。

石川いしかわ県けんによりますと、被災ひさいした13の市しと町まちには1月つき21日にちの時点じてんで避難ひなん所しょが327か所かしょありましたが、「自主じしゅ避難ひなん所しょ」は175か所かしょと半数はんすう以上いじょうにのぼりました。

「自主じしゅ避難ひなん所しょ」は行政ぎょうせいが想定そうていしていない場所ばしょに設もうけられることもあるため目めが届とどきにくく、珠洲すず市しでは「自主じしゅ避難ひなん所しょ」の場所ばしょや避難ひなん者しゃの数かず、必要ひつような支援しえんなどの情報じょうほうを詳細しょうさいに把握はあくできたのは、地震じしんからおよそ2週間しゅうかん後ごでした。

市しによりますと、地震じしんのあとさまざまな対応たいおうに追おわれる中なかで情報じょうほうをとりまとめる余裕よゆうがなかったということで、支援しえんにあたった医療いりょう関係かんけい者しゃは迅速じんそくな支援しえんにつなげにくかったと話はなしています。

「自主じしゅ避難ひなん所しょ」の把握はあくに時間じかんがかかるケースは過去かこの災害さいがいでも見みられ、どう防ふせぐかが課題かだいとなっています。

被災ひさい地ちで活動かつどうの医師いし 改善かいぜん訴うったえる

被災ひさい地ちで活動かつどうした医師いしは、「自主じしゅ避難ひなん所しょ」への支援しえんが行き届いきとどいていなかったとして改善かいぜんを訴うったえています。

「さいたま赤十字せきじゅうじ病院びょういん高度こうど救命きゅうめい救急きゅうきゅうセンター」の医長いちょうを務つとめる坪井つぼい基はじめ浩ひろし医師いしは、1月つき14日にちから8日間にちかん、被災ひさい地ちの医療いりょう支援しえんをとりまとめる「災害さいがい医療いりょうコーディネーター」として珠洲すず市しで活動かつどうしました。

坪井つぼい医師いしによりますと、「自主じしゅ避難ひなん所しょ」の多おおくは「指定してい避難ひなん所しょ」と異ことなり公的こうてきな支援しえんが行き届いきとどきにくく、地域ちいきの人ひとたちがストーブや畳たたみを持ち寄もちよるなど助け合たすけあいながら運営うんえいしていたということです。

また、「自主じしゅ避難ひなん所しょ」を巡回じゅんかいした医療いりょうチームからは、ガラスやドアが破損はそんしているとか、新型しんがたコロナウイルスやインフルエンザなどがまん延まんえんしているといった報告ほうこくが相次あいついだということです。

坪井つぼい医師いしは「『自主じしゅ避難ひなん所しょ』が生しょうじるのはやむをえないが、速すみやかな支援しえんにつなげていく必要ひつようがあると思おもう。避難ひなん者しゃの健康けんこうや命いのちを守まもるには、『自主じしゅ避難ひなん所しょ』の運営うんえいや支援しえんの枠組わくぐみを作つくる必要ひつようがあると思おもう」と話はなしていました。

岩手いわて県けん岩泉いわいずみ町まち 過去かこの教訓きょうくんから「指定してい避難ひなん所しょ」増ふやす

岩手いわて県けん岩泉いわいずみ町まちでは8年ねん前まえの豪雨ごうう災害さいがいで「自主じしゅ避難ひなん所しょ」が相次あいついで設もうけられ、公的こうてきな支援しえんが遅おくれた教訓きょうくんから、「指定してい避難ひなん所しょ」を増ふやすことで見逃みのがしを防ふせぐ対策たいさくが行おこなわれています。

2016年ねん8月つきの台風たいふう10号ごうに伴ともなう記録きろく的てきな豪雨ごううで、岩泉いわいずみ町まちでは川かわが氾濫はんらんし高齢こうれい者しゃ施設しせつの入居にゅうきょ者しゃ9人にんが亡なくなるなど、甚大じんだいな被害ひがいが出でました。

この豪雨ごうう災害さいがいで町内ちょうないでは道路どうろが寸断すんだんされるなどして「自主じしゅ避難ひなん所しょ」が20か所かしょほど設もうけられましたが、町まちがすべての「自主じしゅ避難ひなん所しょ」を把握はあくするのに1週間しゅうかんかかり、物資ぶっしの支援しえんが遅おくれたということです。

この教訓きょうくんから町まちは対策たいさくに乗り出のりだし、「指定してい避難ひなん所しょ」をそれまでの8か所かしょから51か所かしょに増ふやしました。

当時とうじの「自主じしゅ避難ひなん所しょ」を含ふくめすべて「指定してい避難ひなん所しょ」として町まちが管理かんりするようになり、自家じか発電はつでん機きや暖房だんぼう器具きぐの備蓄びちくのほか、災害さいがい時じに優先ゆうせん的てきに回線かいせんがつながる電話でんわの整備せいびも進すすめられました。

「指定してい避難ひなん所しょ」を増ふやすことで、「自主じしゅ避難ひなん所しょ」が想定そうてい外がいの場所ばしょにできるのを抑おさえ見逃みのがしを防ふせぐ狙ねらいがあるということです。

一方いっぽう、町まちの職員しょくいんが避難ひなん所しょに行いけないことを想定そうていし、町まちは自主じしゅ防災ぼうさい組織そしきに協力きょうりょくを求もとめ、避難ひなん所しょの開設かいせつの手順てじゅんなどについて勉強べんきょう会かいや訓練くんれんを行おこなっているということです。

岩泉いわいずみ町まち危機きき管理かんり課かの佐々木ささき久幸ひさゆき防災ぼうさい対策たいさく室長しつちょうは「当時とうじは各かく地区ちくが孤立こりつし、行政ぎょうせいが何なにもできなかったのが現実げんじつだった。あの時ときを出発しゅっぱつ点てんに災害さいがいへの備そなえを進すすめてきたが、避難ひなん所しょが長期ちょうき間かん孤立こりつした能登のと半島はんとう地震じしんの教訓きょうくんもふまえ、住民じゅうみん主体しゅたいの避難ひなん所しょでも中ちゅう長期ちょうき的てきに運営うんえいできる体制たいせい作づくりを考かんがえていきたい」と話はなしていました。

専門せんもん家か「自主じしゅ避難ひなん所しょを前提ぜんていにした避難ひなん計画けいかくを」

災害さいがい時じの避難ひなん所しょの運営うんえいや支援しえんに詳くわしい帝京ていきょう大学だいがくの坪井つぼい塑太郎たろう教授きょうじゅは、「自主じしゅ避難ひなん所しょ」の支援しえんの課題かだいは東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいや熊本くまもと地震じしんなど過去かこの災害さいがいでも繰り返くりかえされてきたとして、「行政ぎょうせいは法律ほうりつ上じょう、『自主じしゅ避難ひなん所しょ』に避難ひなんした人ひとにも必要ひつような支援しえんを行おこなうとされているが、避難ひなん者しゃがどこにどれだけいるのかなかなか把握はあくできず、医療いりょうや食料しょくりょう品ひんなどが行き届いきとどきにくいのが実情じつじょうだ」と指摘してきしています。

そのうえで、「『自主じしゅ避難ひなん所しょ』にも避難ひなん者しゃが一いち定数ていすう集あつまることを前提ぜんていに避難ひなん計画けいかくなどを見直みなおすべきで、行政ぎょうせいと住民じゅうみんが事前じぜんに『自主じしゅ避難ひなん所しょ』になりそうな場所ばしょを共有きょうゆうし、災害さいがい時じの避難ひなん行動こうどうを把握はあくしやすくできるような取り組とりくみが重要じゅうようだ」と話はなしています。