緊急きんきゅう消防しょうぼう援助えんじょ隊たいの第だい1陣じん 地震じしん発生はっせい後ご24時間じかん以内いないに目的もくてき地ち到着とうちゃく16％

能登のと半島はんとう地震じしんが発生はっせいしたことしの元日がんじつ、北陸ほくりくや東海とうかい、関西かんさいなど13府県ふけんから「緊急きんきゅう消防しょうぼう援助えんじょ隊たい」の第だい1陣じんが、石川いしかわ県けんに向むけて派遣はけんされました。

このうち、現地げんちで救助きゅうじょなどにあたる「大隊だいたい」と呼よばれる陸上りくじょう部隊ぶたいの人員じんいんは、11府県ふけんから合あわせて1945人にん派遣はけんされ、金沢かなざわ市しの拠点きょてんに元日がんじつの深夜しんやから2日にち朝あさにかけて参集さんしゅうし、能登のと地方ちほうに向むかいました。

今回こんかいの地震じしんでは、半島はんとうという地理ちり的てきな条件じょうけんから、被害ひがいが特とくに甚大じんだいな地域ちいきに向むかうには距離きょりがあった上うえ、もともと限かぎられていたルートがいずれも地震じしんによって損壊そんかいしていたことが、部隊ぶたいの活動かつどうに大おおきく影響えいきょうしました。

NHKが「大隊だいたい」を派遣はけんした11府県ふけんの消防しょうぼうに取材しゅざいしたところ、地震じしん発生はっせいから24時間じかんの2日にち午後ごご4時じすぎの時点じてんで目的もくてき地ちに到着とうちゃくしていた人員じんいんは、311人にんと、全体ぜんたいの16％にとどまっていました。

また、発生はっせいから48時間じかんの3日にち午後ごご4時じすぎの時点じてんでは、1026人にんで53％でした。

発生はっせいから72時間じかんの4日にち午後ごご4時じすぎの時点じてんでは、ほとんどの人員じんいんが目的もくてき地ちに到着とうちゃくしていましたが、生存せいぞん率りつが時間じかんとともに低下ていかしていく中なか、移動いどうに時間じかんを取とられ、活動かつどうがままならなかった状況じょうきょうがうかがえます。

関西かんさいから派遣はけんされ、輪島わじま市し中心ちゅうしん部ぶを目指めざした100人にん以上いじょうの大隊だいたいが、隣接りんせつする穴水あなみず町まちまで進すすんだものの、ルートを見みつけられないまま日没にちぼつしたため、金沢かなざわ市しまで引き返ひきかえさざるを得えなかったケースもありました。

消防しょうぼう行政ぎょうせいに詳くわしい関西かんさい大学だいがくの永田ながた尚三しょうぞう 教授きょうじゅは、今回こんかいのような大だい規模きぼ災害さいがいでは、市町村しちょうそんや都道とどう府県ふけん単位たんいの消防しょうぼう力りょくの不足ふそくを、応援おうえん部隊ぶたいで補完ほかんすることを前提ぜんていに体制たいせいや計画けいかくが作つくられているとし「緊急きんきゅう消防しょうぼう援助えんじょ隊たいの到着とうちゃくまでに時間じかんがかかるケースがあると明あきらかになった点てんが、今回こんかいの災害さいがいの大おおきな教訓きょうくんだ。半島はんとうでの地震じしんなどを想定そうていした体制たいせいを強化きょうかし、応援おうえん側がわと受け入うけいれる側がわの計画けいかくを見直みなおしていく必要ひつようがある」と指摘してきしました。

永田ながた教授きょうじゅは、今回こんかい、被災ひさい地ちに派遣はけんされた緊急きんきゅう消防しょうぼう援助えんじょ隊たいの人員じんいんそのものは手厚てあつく、初動しょどうの対応たいおうも比較的ひかくてき早はやかったとしたうえで「災害さいがいの発生はっせいから72時間じかんで生存せいぞん率りつが下さがるとされているが、捜索そうさくや救出きゅうしゅつ活動かつどうにかかる時間じかんを踏ふまえれば、被災ひさい地ちに少すこしでも早はやく入いれるようにすること、24時間じかん、48時間じかん以内いないにどうすれば到着とうちゃくできるのかを考かんがえていく必要ひつようがある」と話はなしています。

珠洲すずでの救助きゅうじょ活動かつどう 主力しゅりょくの到着とうちゃくは発生はっせいから62時間じかん以上いじょう経過けいか

静岡しずおか県けんの「大隊だいたい」239人にんは、珠洲すず市しで救助きゅうじょ活動かつどうに当あたりました。

金沢かなざわ市しの拠点きょてんから東京とうきょう消防庁しょうぼうちょうのヘリコプターで珠洲すず市しに向むかった8人にん、先遣せんけん隊たいとして陸路りくろで現地げんち入いりした4人にんを除のぞく、大隊だいたいの主力しゅりょく227人にんが珠洲すず市しに到着とうちゃくしたのは、地震じしん発生はっせいから62時間じかん以上いじょうがたった1月つき4日にち午前ごぜん6時半じはんごろでした。

大隊だいたいの主力しゅりょくに先立さきだち、1月つき2日にち午後ごご10時じごろ、陸路りくろで珠洲すず市しに入はいった先遣せんけん隊たいの1人にん、三輪みわ大だい祐ゆう 隊員たいいんは、行路こうろの険けわしさについて「いたるところで道みちが隆起りゅうきしたり、陥没かんぼつしたりしていたため、車くるまから降おりて数すう百ひゃくメートル先さきまで歩あるき、通とおることができるか確認かくにんしてから車くるまのある場所ばしょに戻もどり、誘導ゆうどうしながら進すすむということを続つづけなくてはなりませんでした。歩あるいた方ほうが早はやい場合ばあいもあり、後うしろの部隊ぶたいの全員ぜんいんが本当ほんとうにたどりつくだろうかと心配しんぱいになりました」と振り返ふりかえりました。

東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで、福島ふくしま県けんに派遣はけんされた経験けいけんがあり、1月つき2日にちの午後ごご2時半じはんごろヘリコプターで珠洲すず市しに入はいった稲生いのう貴久たかひさ 小しょう隊長たいちょうは「消防しょうぼう車しゃが通とおれないほどの道路どうろの隆起りゅうきや陥没かんぼつは東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいのときよりも厳きびしいと感かんじました。ヘリコプターでは持ち込もちこめる資機材しきざいに制限せいげんがあり、倒壊とうかいした家屋かおくに取り残とりのこされていた人ひとを救出きゅうしゅつしようとしてもそれができなかった。近ちかくまで大隊だいたいの仲間なかまが来きていて、そこには資機材しきざいもあるのに、非常ひじょうにもどかしかった」と悔くやしさをにじませながら語かたりました。

孤立こりつ状態じょうたいとなった地区ちくに向むかった大隊だいたいは

岐阜ぎふ県けんの大隊だいたいは、能登のと町まちの拠点きょてんまで前進ぜんしんしたあと、珠洲すず市しの大谷おおや地区ちくを目指めざし、道路どうろ状況じょうきょうなどを調査ちょうさすることになりました。

大谷おおや地区ちくは、地区ちくにつながる道路どうろが損壊そんかいして通行つうこうできなくなり、地震じしん発生はっせいから2週間しゅうかん以上いじょう、孤立こりつ状態じょうたいとなった場所ばしょです。

能登のと町内ちょうないでも斜面しゃめんが大おおきく崩くずれていたり、道路どうろが陥没かんぼつしたりしている場所ばしょが複数ふくすうあって、大隊だいたいはう回うかいなどをして進すすみました。

しかし、地区ちくにつながる国道こくどうのトンネルの手前てまえでは、大だい規模きぼな土砂崩どしゃくずれが道みちを塞ふさいでいて、それ以上いじょう先さきに進すすむことはできませんでした。

岐阜ぎふ県けん大隊だいたいの大だい隊長たいちょうを務つとめた宗宮むねみや勝治かつじさんは「とても大おおきな土砂崩どしゃくずれだったのでどうしてもこの道みちは無理むりだと感かんじたため、引き返ひきかえしました。隊員たいいんたちは『なんとか早はやく』と思おもって心こころの中なかでもどかしい思おもいをしたと思おもいます」と話はなしていました。

現地げんちでの隊員たいいんの活動かつどうは

愛知あいち県けんの大隊だいたいが、1月つき2日にち午前ごぜん10時じ前まえ、七尾ななお市内しないで撮影さつえいした映像えいぞうでは、2車線しゃせん道路どうろの中央ちゅうおう付近ふきんにある大おおきな亀裂きれつのそばを救急きゅうきゅう車しゃが徐行じょこうしながら進すすむ様子ようすが映うつっています。

同おなじ七なな尾び市内しないで午前ごぜん10時じすぎに撮影さつえいされた映像えいぞうでは、消防しょうぼう隊員たいいんたちが車くるまから降ふり、進路しんろを検討けんとうしているさなかに、緊急きんきゅう地震じしん速報そくほうの警報けいほう音おんが鳴なり、周囲しゅういに「地震じしんです」という音声おんせいが響ひびく様子ようすが映うつっています。

撮影さつえいした隊員たいいんによりますとこの時ときの揺ゆれは、地面じめんの亀裂きれつが数すうセンチずれるほど大おおきく、不安ふあんげな様子ようすで家いえの外そとに出でてくる住民じゅうみんもいたということです。

2日にち午後ごご1時じ前まえ、志賀しか町まちの国道こくどうで撮影さつえいされた映像えいぞうでは、道路どうろ脇わきの斜面しゃめんが崩くずれ、片側かたがわ2車線しゃせんの道路どうろを土砂どしゃが塞ふさいでいる様子ようすが確認かくにんできます。

隊員たいいんが車くるまから降おりて、通行つうこうできるかどうか確認かくにんしましたが、通行つうこうは難むずかしいと判断はんだんし引き返ひきかえしたということです。

また、午後ごご4時じ前まえに同おなじ志賀しか町まちで撮影さつえいされた映像えいぞうでは住宅じゅうたくのブロック塀へいがいたるところで崩くずれ、車道しゃどうにも散乱さんらんしている様子ようすが確認かくにんできます。

2日にち午後ごご5時半じはんごろ、大隊だいたいが目的もくてき地ちとしていた輪島わじま市し門前もんぜ町まちに到着とうちゃく後ご、撮影さつえいされた映像えいぞうには、根元ねもとから折おれた電柱でんちゅうや、倒壊とうかいした家屋かおくなど、地区ちくの甚大じんだいな被害ひがいの状況じょうきょうが映うつっています。

映像えいぞうでは、現場げんばを安全あんぜんに通とおることができるのか、隊員たいいんたちが無線むせんで情報じょうほうを共有きょうゆうしながら慎重しんちょうに進すすむ際さいの音声おんせいも記録きろくされていました。