日本新聞: “インフレ手当” 検討中含め支給は4社に1社民間調査

“インフレ手当てあて” 検討けんとう中ちゅう含ふくめ支給しきゅうは4社しゃに1社しゃ民間みんかん調査ちょうさ

Nov 18, 2022 15:11

Furigana

物価ぶっかの上昇じょうしょうによる実質じっしつ賃金ちんぎんの減少げんしょうが続つづく中なか、「インフレ手当てあて」として一時いちじ金きんや毎月まいつきの手当てあての支給しきゅうを行おこなった企業きぎょうは、予定よていを含ふくめると12％余あまりに上のぼることが民間みんかんの信用しんよう調査ちょうさ会社かいしゃの調査ちょうさで分わかりました。

「検討けんとう中ちゅう」も含ふくめると全体ぜんたいの4社しゃに1社しゃとなっていて、信用しんよう調査ちょうさ会社かいしゃは「手当てあてを支給しきゅうする動うごきが広ひろがっている」としています。

民間みんかんの信用しんよう調査ちょうさ会社かいしゃ「帝国データバンクていこくで-たばんく」は、景況けいきょう感かんの聞きき取とりを定期ていき的てきに行いっている全国ぜんこくの企業きぎょうを対象たいしょうに、今月こんげつ11日にちから15日にちにかけてアンケート調査ちょうさを行おこない、1248社しゃから回答かいとうを得えました。

それによりますと、物価ぶっか高騰こうとうをきっかけに従業じゅうぎょう員いんに対にたいして「インフレ手当てあて」を支給しきゅうしたか尋たずねたところ、

▽「支給しきゅうした」が6.6％、

▽「支給しきゅうを予定よていしている」が5.7％と合あわせて12.3％に上のぼりました。

さらに

▽「支給しきゅうしていないが、検討けんとう中ちゅう」は14.1％と、すでに支給しきゅうを決きめた企業きぎょうと合あわせると26.4％となり、全体ぜんたいの4社しゃに1社しゃとなっています。

支給しきゅうの予定よていや検討けんとう中ちゅうの企業きぎょうも含ふくめて「インフレ手当てあて」の支給しきゅう方法ほうほうを聞きいたところ、「一いち時じ金きん」が多おおく、平均へいきんの支給しきゅう額がくはおよそ5万まん3700円えんでした。

また、期間きかんを限定げんていして毎月まいつきの給与きゅうよに上乗うわのせする「月額げつがく手当てあて」の場合ばあいは、平均へいきんの支給しきゅう額がくはおよそ6500円えんとなっています。

支給しきゅうの理由りゆうとしては、

「食料しょくりょう品ひんなどの値上ねあげラッシュによる実質じっしつ賃金ちんぎんの減少げんしょうを補おぎなうため」、

「従業じゅうぎょう員いんのモチベーション向上こうじょうや人材じんざいの流出りゅうしゅつを防ふせぐため」

などという声こえが聞きかれました。

「帝国データバンクていこくで-たばんく」は「インフレ手当てあてを支給しきゅうする動うごきが広ひろがっているが、本来ほんらいであれば物価ぶっか上昇じょうしょう分ぶんは手当てあてではなく、基本きほん給きゅうを引き上ひきあげるベースアップとして賃金ちんぎんに反映はんえいさせるのが望のぞましいと考かんがえる。ただ、物価ぶっか高だかによる収益しゅうえきの悪化あっかで賃上ちんあげや手当てあての支給しきゅうができない企業きぎょうも多おおいのが現状げんじょうだ。企業きぎょうが販売はんばい価格かかくに転嫁てんかしやすい環境かんきょうの整備せいびや、賃上ちんあげを促うながす支援しえん策さくの充実じゅうじつが求もとめられる」と話はなしていました。

“インフレ手当てあて”支給しきゅうの企業きぎょうは

食料しょくりょう品ひんなどの値上ねあがりが続つづく中なか、従業じゅうぎょう員いんに「インフレ手当てあて」を支給しきゅうする動うごきが広ひろがっています。

愛知あいち県けんにある自動車じどうしゃ部品ぶひんなどの製造せいぞう会社かいしゃは今月こんげつ11日にち、国内こくないのグループ会社かいしゃを含ふくめた従業じゅうぎょう員いんおよそ8800人にんを対象たいしょうに、総額そうがくでおよそ4億おく円えんを一時いちじ金きんとして支給しきゅうしました。

「インフレ手当てあて」の1人にん当あたりの支給しきゅう額がくは、正せい社員しゃいんは5万まん円えん、契約けいやく社員しゃいんやパート社員しゃいんは2万まん円えんで、会社かいしゃとしては初はじめての取り組とりくみです。

この会社かいしゃでは、円えん安やすの影響えいきょうで海外かいがいの売り上うりあげが伸のびたことや新車しんしゃ用ようの部品ぶひんの販売はんばいが好調こうちょうだったことなどから、今年度こんねんど上期かみきの売上うりあげと営業えいぎょう利益りえきは過去かこ最高さいこうを更新こうしんしました。

このため、従業じゅうぎょう員いんに還元かんげんすべきだと考かんがえて「インフレ手当てあて」の支給しきゅうを決きめました。

5万まん円えんの手当てあてを受け取うけとった、正せい社員しゃいんとして働はたらく副島そえじま綾香あやかさん（35）は、請求せいきゅう書しょの管理かんりなど事務じむの仕事しごとを担当たんとうしています。

副島そえじまさんは、共働ともばたらきの34歳さいの夫おっとと13歳さいから5歳さいまでの娘むすめ3人にん、息子むすこ2人にんの7人にん家族かぞくです。

この物価ぶっか高だかで食費しょくひの支出ししゅつが大幅おおはばに増ふえ、家計かけいのやりくりに苦労くろうしているといいます。

今回こんかい受け取うけとった手当てあては、食費しょくひや光熱こうねつ費ひのほか、今月こんげつ、誕生たんじょう日びを迎むかえる子こどものケーキ代だいなどに充あてたいと考かんがえています。

副島そえじまさんは「食たべ盛ざかりの子こどもたちがいるので、節約せつやくしようにも限界げんかいがあり今回こんかいの支給しきゅうにすごく助たすかりました。仕事しごとを頑張がんばろうという気持きもちにもなりました」と話はなしています。

この会社かいしゃでは物価ぶっかの上昇じょうしょうが続つづく中なかで、毎月まいつきの基本きほん給きゅうを引き上ひきあげるベースアップも検討けんとうしたいとしています。

日本にっぽん特殊とくしゅ陶すえ業ぎょうの磯部いそべ謙二けんじ上席じょうせき執行しっこう役員やくいんは「円えん安やすによって会社かいしゃの業績ぎょうせきはかなり上じょう振ふれした一方いっぽう、円えん安やすによる物価ぶっか高だかで従業じゅうぎょう員いんは苦くるしんでいて、少すこしでも還元かんげんしたいという思おもいで支給しきゅうを決定けっていしました。物価ぶっかの上昇じょうしょうを見極みきわめて賃上ちんあげなどを検討けんとうしていきたい」と話はなしています。

消費しょうひ者しゃ物価ぶっか上昇じょうしょう率りつ 40年ねん前まえと同どう水準すいじゅんも異ことなる賃金ちんぎん状況じょうきょう

「値上ねあげラッシュ」となった先月せんげつ・10月つきの消費しょうひ者しゃ物価ぶっか指数しすうの上昇じょうしょう率りつは、40年ねん前まえの1982年ねん2月つきと同おなじ水準すいじゅんとなりましたが、賃金ちんぎんをめぐる状況じょうきょうは異ことなっています。

総務そうむ省しょうによりますと、1982年ねん当時とうじは第だい2次じオイルショックの影響えいきょうが続つづいていて、原油げんゆ価格かかくの高騰こうとうを要因よういんとした光熱こうねつ費ひの値上ねあがりなどが続つづいていました。

ただ、物価ぶっかが上昇じょうしょうしても、働はたらく人ひとの賃上ちんあげの水準すいじゅんはそれを上回うわまわっていました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと、1982年ねん平均へいきんの実質じっしつ賃金ちんぎんは、従業じゅうぎょう員いん30人にん以上いじょうの事業じぎょう所しょを対象たいしょうにした調査ちょうさで、前まえの年としと比くらべてプラス1.4％となっています。

一方いっぽうで、ことし9月つきの実質じっしつ賃金ちんぎんは、従業じゅうぎょう員いん5人にん以上いじょうの事業じぎょう所しょが対象たいしょうと調査ちょうさの方法ほうほうは当時とうじと異ことなりますが、速報そくほう値ちで去年きょねん9月つきを1.3％下回したまわり、6か月かげつ連続れんぞくでマイナスとなっています。

来年らいねんの春闘しゅんとうを前まえに、企業きぎょうの間までは基本きほん給きゅうを引き上ひきあげる「ベースアップ」を実施じっししたり、一時いちじ金きんを支給しきゅうしたりするなどの動うごきが相次あいついでいます。

実質じっしつ賃金ちんぎんのマイナスが続つづくと消費しょうひマインドが冷え込ひえこみ、個人こじん消費しょうひなどへの悪あく影響えいきょうが懸念けねんされるだけに、物価ぶっかの上昇じょうしょうを上回うわまわる賃上ちんあげを実現じつげんして、経済けいざいの好こう循環じゅんかんにつなげることができるのかが課題かだいとなっています。