この作品は、瀬戸内の島を舞台に地元の女子高校生と島に引っ越してきた男子高校生の出会いから始まる物語です。
父親の不倫や母親の恋愛など家族の問題に振り回されながらも自分たちの人生を生きようともがく2人のすれ違いと挫折、そして成長をつぶさに描いていて、ことしの直木賞の候補にも選ばれました。
作者の凪良ゆうさんは京都市在住で、2007年に男性どうしの恋愛、いわゆる「ボーイズラブ」をテーマとした小説でデビューしたあと文芸作品でも人気を集め、このうち「流浪の月」は3年前の「本屋大賞」に選ばれています。
凪良さんは今回が2回目の本屋大賞、受賞となりました。
今回の作品について、「17歳の男女が出会い、15年の長い期間をかけていろんな選択を繰り返しながら成長していくところが共感していただけたのかなと思います。自分らしく生きていくということが私の中ではテーマになっていて、どうやって人生を生きていくための強さを得るのかについてずっと書いていくのだろうと思います」と話していました。 そして、「私自身が子供の頃からすごくよく書店に通って、いつも遊びに行く場所が本屋さんでした。この『本屋大賞』は書店員さんでつくる賞なので、これをきっかけに少しでも多くの書店にみなさんが足を運んでくれるようになればいいと思っています」と話していました。
選考方法は全国の書店員による投票となっていて、ことしは、おととし12月から去年11月までに刊行された日本の小説が対象となりました。 全国471の書店の615人が1人3作品を選んで1次投票を行い、上位10作品がノミネートされました。そして、2次投票では10作品すべてを読んだ書店員が全作品に感想のコメントを書いた上で、ベスト3に順位をつけて投票が行われました。2次投票では全国333書店の422人が投票し、最も高い評価を得た作品が大賞に選ばれました。 今回、受賞した凪良ゆうさんは2度目の受賞となります。 過去に2度受賞したのは恩田陸さんが ▽2005年、第2回の「夜のピクニック」と ▽2017年、第14回の「蜜蜂と遠雷」で受賞して以来、2人目となります。
その上で、「今、東京でも書店が減っているが実際に書店に行くと、自分が読みたいと思って手に取った本の周りに、関連する本が置いてあるなど、リアルの書店でしか味わえない本を発見する喜びがある。『本屋大賞』はそもそものスタートの際のこころざしは書店のお祭りだった。何か本屋さんでおもしろそうなことをやってると思ってもらい、お客さんに本を手に取ってもらうことが一番の望みなので、それがかなえられる賞でありたい」と話していました。
中でも雑誌については、 ▽1996年が1兆5633億円だったのに対し、 ▽2022年は4795億円と大きく減っています。 また、書店の数も減少しています。 書店や出版社、取次会社などでつくる出版文化産業振興財団の調べによりますと、2006年度の全国の書店数は1万4555店でしたが、2020年度は8789店で、およそ15年で40%近く減っているということです。 また、ブックカフェや古書店などを含まない、いわゆる「街の本屋」の数を調べたところ、去年9月時点で本屋がない「無書店」の自治体は、全国で26.2%に上ったということです。 また、「無書店」の自治体と「書店が1つしかない」自治体を合わせた割合は全体の45.4%に上り、半数近くを占めました。 都道府県ごとでは、 ▽沖縄県(56.1%)、 ▽長野県(51.9%)、 ▽奈良県(51.3%)の3つの県で「無書店」の自治体の割合が半数を超えていたということです。 財団では、「『街の本屋』は単に本を販売する場所ではなく書架に並ぶ『未知の本との出会い』が来訪者の視野を広げ、潜在的な関心を呼び起こしている。書店がなくなるということは個人の教養の幅に影響を及ぼすばかりでなく、日本の文化の劣化につながることを意味する」などとしています。
凪良さん「自分らしく生きていくことがテーマ」
「本屋大賞」とは?
「本屋大賞」の実行委員会「こころざしは書店のお祭り」
「無書店」自治体 全国で26.2%