先月31日、イタリアが使用を一時禁止したのに続き、フランスやドイツ、それにアイルランドなどが規制を設けるか検討中だと地元メディアが伝えています。
このうちフランスでは、「個人情報が本人の同意がないのに収集、使用され、公開されている」などとする複数の苦情がこれまでにデータ保護当局に申し立てられ、当局が調査を行っていると伝えられています。
また、フランス南部のモンペリエ市では、市の職員とその家族に対して「ChatGPT」の使用を控えるよう呼びかけることを検討しているということです。
また、ドイツでは今月3日、当局の高官が地元紙に「ドイツでも同じような措置が原則、可能だ」と述べ、使用を一時禁止にしたイタリアと同じような対応をドイツもとることが可能だという内容が伝えられています。
13日には、EU=ヨーロッパ連合の加盟国のデータ保護当局などで作る「ヨーロッパデータ保護会議」が今後の対応を協議するための専門の作業部会を設置しました。
今月29日から群馬県高崎市で開かれるG7デジタル・技術相会合でも、こうした生成AIの技術にどう対応していくか議論される見通しです。
欧米で初めて使用禁止に踏み込んだイタリア。 そのきっかけは、先月20日、外部から寄せられた声でした。 詳細は明らかにされていませんがこのAIソフトの利用者の会話の内容や支払いに関する情報について、データの侵害があったとするものだったということです。 これを受けて当局が調査した結果、収集しているデータの内容を利用者に適切に通知していなかったことや、アクセスする際に年齢を確認する仕組みがないことがわかったとしています。 AIの学習に必要な膨大な個人データを法的根拠がないまま収集していたとみられ、こうした手法が個人情報の保護に関するイタリアの法律に違反している疑いがあるとみられたのです。 イタリアの当局は今月12日、ChatGPTを開発したアメリカの「オープンAI」に対して、今月中に具体的な改善策を講じるよう指示したと発表しました。 改善策としては、▽利用者がデータの修正や消去ができるようにすることや、▽子どもの保護のために年齢確認を厳密にすること、さらに、▽AIの学習のために個人情報を収集し、利用していることをテレビやネットなどを通じて広く啓発することも求めています。 イタリアの当局は、オープンAIが期限とする今月末までにこうした対策を講じたことが確認され、個人情報の扱いをめぐる懸念が解消されれば、使用禁止の措置を解除するとしています。
ロンゴさんは多くのヨーロッパの国々がAIサービスに細心の注意を払っているとし、イタリアの当局が開発したベンチャー企業「オープンAI」に求めた対策は近い将来、ヨーロッパに限らず、世界標準になるはずだとの見方を示しました。 そのうえで、ロンゴさんは2年前に起きたある事故が今回の規制の背景にあると指摘しました。 その事故とは10歳のイタリア人の少女が動画投稿アプリで流行した息を長くとめる遊びで死亡したというものです。 ロンゴさんは、「イタリア人は子どもたちがAIを悪用したり、AIに間違った方向に導かれたりすることをおそれている」と述べ、社会全体でAIのリスクから子どもを守ろうという意識が強いことが「ChatGPT」の一時使用禁止につながったとの認識を示しました。 さらに、「データをよりよく活用し、ヨーロッパの企業のビジネスや経済成長につなげたいという側面もある」とも述べ、個人情報やビッグデータがヨーロッパの外に流出することや、アメリカのIT企業がいまのAIサービスの発展を主導していることに警戒感があると指摘しました。 ロンゴさんは、「AIをどう活用するか、イタリアとして包括的な戦略を持っていないことが最大の問題だ」と述べ、政治レベルで早急に対応すべきだと主張しました。
イタリアでは一時的に使用禁止 オープンAIに対策求める
専門家 “AIの活用 政治レベルで早急に対応を”