また、ゼレンスキー大統領は合意について「ロシア抜きでも続けることはできるし、そうすべきだ」と述べました。
そのうえで、トルコのエルドアン大統領と国連のグテーレス事務総長に書簡を送ったことを明らかにし「トルコと国連、それにウクライナの3者で似たようなものか、いまの合意を継続することを提案した」と述べ、ウクライナ産農産物の輸出継続に向けて仲介役のトルコや国連と連携していく考えを示しました。
その上で「世界の弱い立場の人たちの食料安全保障のためEUは対応している」としてウクライナ産の農産物をEU域内の港から輸出するという支援の取り組みを続ける考えを強調しました。
また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者会見で、「われわれは引き続きウクライナがほかのルートを含め、穀物を必要としている市場に届ける取り組みを支援する」と述べ、同盟国などとともに取り組んでいくと強調しました。 一方、ロシアが欧米側の制裁措置によって農産物の輸出が滞っていると主張していることについて、「ロシアの食料や肥料は制裁対象ではない」と述べ反論するとともに、これまでどおりロシアの農産物の輸出を制限することなどはしないとしています。
エジプトは、主食のパンの原料となる小麦を世界で最も多く輸入していて、その大半をロシアとウクライナからの輸入に頼ってきました。 ロシアによるウクライナ侵攻によって小麦の輸入が滞るなか、エジプトではほかの地域から輸入を増やそうと努めていますが、国内消費に追いつかず、一部の商店では、パンの価格が侵攻前と比べ、5倍以上に跳ね上がっています。 首都カイロの市場で買い物をしていた市民からは今後、パンなどの価格がさらに高騰するのではないかと懸念の声が上がっています。 市場で買い物をしていた男性は「エジプト人にとって、パンは水と同じで生活に不可欠なものだ。これ以上値上がりしたら、パンが買えなくなる。遠い国の戦争で私の生活も厳しくなっている」と話していました。 また、別の女性は「すべての商品が値上がりしていて、生活ができない。元の生活に戻るためにも早く戦争が終わってほしい」と話していました。
17日のシカゴ商品取引所では、ロシア政府の発表を受けて国際的な取り引きの指標となる小麦の先物価格が一時、大きく上昇し、先週末の終値と比べた上昇率は7%を超えました。 ロシア政府が、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意の履行停止を発表したことを受けて世界有数の小麦の輸出国、ウクライナからの供給が滞るとの見方が出たことが主な要因です。 その後、小麦の先物価格は、発表前を下回る水準まで急落するなど、ロシアによる今回の発表がウクライナ産の小麦の輸出にどのような影響を及ぼすかさまざまな見方が交錯し、乱高下しています。 ウクライナは「ヨーロッパの穀倉」とも言われ、FAO=国連食糧農業機関によりますと、2021年の小麦の輸出量は世界第5位となっています。 市場関係者は「ロシアによる合意の履行停止の影響に加え、世界的な気温の上昇が、小麦の収穫に影響して需給が引き締まることも懸念されて小麦の先物価格は上昇しやすい状況にあり、先行きは不透明だ」と話しています。
アメリカ農務省がことし5月にまとめた報告書によりますと、輸出先の国からのデータなどをもとに調べたところ、去年からことしにかけての1年間ではロシアの小麦の輸出量は、前の年に比べて36%増えて4500万トンとなり、過去最多を記録することが予想されるとしています。 輸出先としてはトルコやエジプト、イラン、サウジアラビアのほか、スーダンやアルジェリアといった中東やアフリカの国々が上位を占めているということです。 さらに、ロシアが主導する「ユーラシア経済同盟」の加盟国にも陸上輸送で小麦が輸出され、なかでもカザフスタンへの輸出量が多いということです。 一方、ロシアのインターファクス通信は、6月、ロシアのパトルシェフ農業相が「ことしの農産物の輸出額はおよそ15%から20%、前の同じ時期を上回っている」と述べたと伝えています。 国営のタス通信も今月7日、パトルシェフ農業相の話として「今月から来年6月にかけての1年間で、最大で5500万トンの穀物を輸出する計画だ」という見通しを伝え輸出先としては、ロシアに友好的な国が9割近くを占めるとしています。
そのうえで「世界の食料安全保障を確保していくため、G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しながら、ロシアが合意に基づく穀物輸出の枠組みに復帰し、再開されるよう強く求めていく」と述べました。
そのうえで「国際的な枠組みを継続するため精力的に取り組んできた国連やトルコの努力を評価している。引き続き両者の取り組みを注視し、後押ししていきたい。ロシアが国際的な枠組みに復帰し、ウクライナからの穀物輸出が再開されるように強く求めていく」と述べました。
そのうえで「ウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意は、世界の食料市場の価格低下と安定化に大きく貢献しており、今回の履行停止により小麦やトウモロコシなど穀物の国際価格や世界の食料供給への影響が懸念される。引き続き、緊張感を持って対応していきたい」などと述べ、今後の状況を注視する考えを示しました。
EU委員長「ロシアの身勝手な行動だ」
米 ブリンケン国務長官「許しがたい、あってはならない」
エジプト市民 「パンが買えなくなる」
小麦の先物価格 乱高下も
アメリカ農務省 “ロシアの小麦輸出量はむしろ増加”
松野官房長官「ロシアの決定は極めて遺憾」
林外相「負の影響はロシアが最終的な責任負うことに」
野村農相「穀物の国際価格や食料供給への影響 懸念」