オリンピック復活ふっかつさせた男爵だんしゃく 掲かかげた理想りそう パリはどこまで？

戦禍せんかによる世界せかいの分断ぶんだんが続つづくなかでの開催かいさいとなりました。

「スポーツを通をとおして平和へいわでよりよい世界せかいの実現じつげんに貢献こうけんしよう」とオリンピックを復活ふっかつさせた、“近代きんだいオリンピックの父ちち” クーベルタン男爵だんしゃくの出身しゅっしんの地ち、フランスで開ひらかれた今こん大会たいかいは「平和へいわの祭典さいてん」となりえたのでしょうか。

イスラエルの参加さんかめぐり…

イスラエルによる攻撃こうげきでパレスチナのガザ地区ちくでの住民じゅうみんの犠牲ぎせいが増ふえ続つづける中なか、開ひらかれたパリオリンピック。

大会たいかい前まえ、パレスチナのオリンピック委員いいん会かいは、大会たいかいにあわせて紛争ふんそうの休戦きゅうせんを求もとめる国連こくれん総会そうかいの決議けつぎにイスラエルが違反いはんしているとして、出場しゅつじょうを認みとめないようIOC＝国際こくさいオリンピック委員いいん会かいに要請ようせいしました。

IOCのバッハ会長かいちょうは「イスラエルとパレスチナのオリンピック委員いいん会かいはオリンピック憲章けんしょうに違反いはんする行為こういは行おこなっていない」として、この要請ようせいに応おうじず、フランスのマクロン大統領だいとうりょうもイスラエルの選手せんしゅ団だんを歓迎かんげいする意向いこうを示しめしました。

一方いっぽうで大会たいかいには、ウクライナに軍事ぐんじ侵攻しんこうを続つづけるロシアと、その同盟どうめい国こくのベラルーシは国くにとしての出場しゅつじょうが認みとめられず、両国りょうこくの選手せんしゅは「中立ちゅうりつな立場たちばの個人こじん資格しかくの選手せんしゅ」として参加さんかすることになりました。

「二に重じゅう基準きじゅんだ」抗議こうぎデモも

こうした対応たいおうの違ちがいについて、パリで開ひらかれたイスラエルの大会たいかいへの出場しゅつじょうに抗議こうぎするデモの参加さんか者しゃからは「二に重じゅう基準きじゅんだ」といった批判ひはんの声こえが聞きかれました。

こうした指摘してきについて、IOCのバッハ会長かいちょうは「ロシアは、オリンピック委員いいん会かいがウクライナの領土りょうど内ないで違反いはんを犯おかしている」などと説明せつめいしています。

テロへの警戒けいかいも高たかまる中なか、フランスの治安ちあん当局とうきょくはイスラエルの選手せんしゅ団だんを24時間じかん態勢たいせいで警備けいびする異例いれいの対応たいおうを行おこないました。

競技きょうぎでもイスラエルの国歌こっか斉唱せいしょうや選手せんしゅのプレーにブーイングが起おきることがあったほか、サッカーの試合しあいではスタジアムの外そとでイスラエル、パレスチナ双方そうほうの旗はたを掲かかげたサポーター同士どうしが小競り合こぜりあいになる場面ばめんもありました。

また柔道じゅうどうの試合しあいでは、イスラエルを国家こっか承認しょうにんしていないアルジェリアの選手せんしゅが、イスラエルの選手せんしゅとの対たい戦前せんぜんに計量けいりょう失敗しっぱいで失格しっかくになり、国際こくさい柔道じゅうどう連盟れんめいが、政治せいじ的てきな背景はいけいがなかったか調査ちょうさを行おこなうと発表はっぴょうしました。

さらに、イスラエルの選手せんしゅに対にたいして危害きがいを加くわえると予告よこくするメールが送おくられ、フランスの検察けんさつ当局とうきょくが捜査そうさを始はじめる事態じたいにもなっています。

「近代きんだいオリンピックの父ちち」クーベルタン男爵だんしゃくの末まつえいは

国際こくさい社会しゃかいの分断ぶんだんが大会たいかいに色濃いろこく表あらわれたともいえる今回こんかいのオリンピックをどう見みるのか、フランス出身しゅっしんで「近代きんだいオリンピックの父ちち」と呼よばれる、ピエール・ド・クーベルタン男爵だんしゃくの末まつえいで、クーベルタン男爵だんしゃくの理念りねんを伝つたえる民間みんかん団体だんたいの事務じむ局長きょくちょうを務つとめる、ティボー・ド・ナバセル・ド・クーベルタンさんがNHKの取材しゅざいに応おうじました。

クーベルタン男爵だんしゃくは、スポーツを通をとおして平和へいわでよりよい世界せかいの実現じつげんに貢献こうけんしようと、19世紀せいき末まつにオリンピックを復活ふっかつさせましたが、ティボーさんは国際こくさい政治せいじの対立たいりつが持ち込もちこまれている大会たいかいの現状げんじょうは、当初とうしょの理想りそうとはかけ離かけはなれていると指摘してきします。

ティボー・ド・ナバセル・ド・クーベルタンさん

「いまの大会たいかいは非常ひじょうに難むずかしい状況じょうきょうにあると思おもう。クーベルタンの考え方かんがえかたは政治せいじ的てきなものではなかった。政治せいじとスポーツを切り離きりはなし、スポーツを政治せいじ的てきプロパガンダの道具どうぐにしないことが大事だいじだ。私わたしたちは当初とうしょの理想りそうからは遠とおいところにいる」

そのうえで、過度かどに国家こっか間かんの競争きょうそうが強調きょうちょうされている現状げんじょうに警鐘けいしょうを鳴ならしました。

「当初とうしょの大会たいかいのアイデアは、国家こっか間かんの競争きょうそうではなく、もっと個人こじん間かんの競争きょうそうだった。オリンピズムの根底こんていにある考え方かんがえかたは、スポーツや芸術げいじゅつを通をつうじて個人こじんが競きそうことだ」

“今いまこそオリンピック本来ほんらいの姿すがたを”

「緊張きんちょうは誤解ごかいやコミュニケーションの不足ふそくから生しょうじる。こうしたことを避さけるためにオリンピックは存在そんざいする。オリンピックは平和へいわをもたらすための方法ほうほうとなり得える」

国際こくさい情勢じょうせいが緊迫きんぱくしている今いまこそ「スポーツを通をとおして文化ぶんかや国籍こくせきなどの差異さいを超こえ、お互おたがいを理解し合りかいしあう」というオリンピック本来ほんらいの姿すがたを追求ついきゅうすべきだと訴うったえていました。