2018年2月、大阪 生野区でショベルカーが歩道に突っ込む事故が起き、近くの聴覚支援学校に通っていた井出安優香さん(当時11)が亡くなりました。
遺族は、運転手と勤務先の会社に損害賠償を求める訴えを起こし、裁判では、安優香さんが将来、得られるはずだった収入にあたる「逸失利益」をどう算定するかが争われています。
遺族側は、健常者と同じ基準での算定を求めているのに対し、1審の大阪地方裁判所は2023年、「安優香さんは学習意欲があり、将来さまざまな就労可能性があったが、聴覚障害が労働能力を制限しうる事実は否定できない」として、労働者全体の平均賃金の85%をもとにするのが妥当だと判断しました。
そのうえで、賠償額として3700万円余りの支払いを運転手側に命じました。
遺族側が控訴し、「障害の有無によって収入に差をつけるのは差別的だ」と主張したのに対し、運転手側は控訴を退けるよう求めました。
判決は、20日午後2時から大阪高裁で言い渡される予定で、聴覚障害がある子どもの将来の可能性をどう判断するか注目されます。
遺族 差別のない公正な判決求め署名提出
井出安優香さんは、生まれた時から聴覚障害があり、事故にあったのは、聴覚支援学校からの下校途中でした。
安優香さんは、学校の宿題などに加え、毎日欠かさず自主的に勉強していて、亡くなる前日も、算数のプリントに取り組んでいました。
知らない人とも積極的に交流を図るなど、明るく社交的な性格で、手話だけでなく、補聴器を使って会話によるコミュニケーションもできていたということです。
判決を前にした1月14日、安優香さんの両親は、大阪聴力障害者協会とともに、差別のない公正な判決を求めて、全国から集まったおよそ1万8000人分の署名を大阪高等裁判所に提出しました。
大阪高裁に提出した署名の数は、これまでに合わせて2万8000人分を超えています。
父親の努さんは「娘には全く落ち度はありませんでした。それなのに、娘の将来を否定するようなことを言われ、娘を亡くしたうえに、さらに傷つけられる二次被害を受けてきました。私は逸失利益が100%と判断されるのが当然だと思っています」と話していました。
また、母親のさつ美さんは「障害があってもなくても、わずか11歳の子どもの将来の可能性は同じだと思います。娘のそれまでの努力を見て、将来を信じていたし、楽しみでした。それを奪っておいて、障害者だから逸失利益が100%認められないという主張はおかしいと思います」と話していました。