194キロ死亡しぼう事故じこ 初はつ公判こうはん 弁護べんご側がわ「危険きけん運転うんてん致死ちし罪ざいあたらず」

2021年ねん2月つき、大分おおいた市しの当時とうじ19歳さいの被告ひこくは法定ほうてい速度そくどが時速じそく60キロの市内しないの県道けんどうで車くるまを時速じそく194キロで運転うんてんし、交差点こうさてんを右折うせつしてきた車くるまと衝突しょうとつして、運転うんてんしていた小柳こやなぎ憲けんさん（当時とうじ50）を死亡しぼうさせたとして、危険きけん運転うんてん致死ちしの罪つみに問とわれています。

5日にち開ひらかれた初はつ公判こうはんで、被告ひこくは起訴きそされた内容ないようについて「よくわかりません」と述のべた上うえで、「小柳こやなぎさんと遺族いぞくに心こころより謝罪しゃざいします」と話はなしました。

また、被告ひこくの弁護士べんごしは「危険きけん運転うんてん致死ちし罪ざいにはあたらない」と主張しゅちょうし、争あらそう姿勢しせいを示しめしました。

検察けんさつは冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつで「現場げんばの道路どうろを194キロで走行そうこうした場合ばあい、路面ろめんの状況じょうきょうから車体しゃたいに大おおきな揺ゆれが生しょうじるなどし、ハンドルやブレーキ操作そうさを誤あやまるおそれが高たかまる」として、車くるまの制御せいぎょは困難こんなんだったと述のべました。

また、「この速度そくどで走行そうこうすれば、交差点こうさてんで対向たいこう車線しゃせんから右折うせつしてきた車くるまは、衝突しょうとつするか急きゅうな回避かいひ措置そちをとるしかなく、被告ひこくは安全あんぜんな通行つうこうを妨害ぼうがいすることが確実かくじつだと認識にんしきしていた」として、危険きけん運転うんてん致死ちし罪ざいが成立せいりつすると主張しゅちょうしました。

一方いっぽう、弁護べんご側がわは「被告ひこくは車線しゃせんから逸脱いつだつすることなく直進ちょくしんすることができていた。自分じぶんの生命せいめいや身体しんたいの危険きけんを冒おかしてまで、ほかの車くるまの通行つうこうを妨害ぼうがいする目的もくてきを積極せっきょく的てきに抱いだく動機どうきはない」として、「危険きけん運転うんてん致死ちし罪ざいは適用てきようできず、成立せいりつするのは過失かしつ運転うんてん致死ちし罪ざい」だと反論はんろんしました。

猛もうスピードの車くるまによる事故じこをめぐっては、各地かくちの裁判さいばんで「『制御せいぎょが困難こんなんな高こう速度そくど』という法律ほうりつの要件ようけんを満みたしていない」などとして危険きけん運転うんてん致死ちし罪ざいが適用てきようされない事例じれいが相次あいついでいて、法定ほうてい速度そくどの3倍ばいを超こえる今回こんかいの事故じこに適用てきようされるかどうかが焦点しょうてんとなります。

判決はんけつは11月つき28日にちに言い渡いいわたされる予定よていです。

「危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざい」と事故じこの経緯けいい

「危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざい」は、故意こいに危険きけんな運転うんてんをして死亡しぼう事故じこなどを起おこしたドライバーを処罰しょばつするため、2001年ねんに設もうけられました。

危険きけん運転うんてんにあたる行為こういとして

▽飲酒いんしゅ運転うんてん

▽制御せいぎょが困難こんなんな高こう速度そくどでの走行そうこう

▽通行つうこうを妨害ぼうがいする目的もくてきで車くるまに著いちじるしく接近せっきんする行為こうい

▽赤あか信号しんごうの無視むし

などが処罰しょばつの対象たいしょうとされています。

刑けいの重おもさも、「過失かしつ」の場合ばあいと比くらべて大幅おおはばに重おもくなっていて

▽「過失かしつ運転うんてん致死ちし罪ざい」は最大さいだいで懲役ちょうえき7年ねんなのに対にたいし、

▽「危険きけん運転うんてん致死ちし罪ざい」は最大さいだいで懲役ちょうえき20年ねんとなります。

今回こんかいの事故じこについて、検察けんさつは当初とうしょ、「衝突しょうとつするまでまっすぐ走はしり、走行そうこうを制御せいぎょできていて、危険きけん運転うんてんにはあたらない」と判断はんだんして、2022年ねん7月つき、過失かしつ運転うんてん致死ちしの罪つみで在宅ざいたく起訴きそしました。

これに対にたいし、遺族いぞくは危険きけん運転うんてん致死ちし罪ざいへの変更へんこうを求もとめて署名しょめい活動かつどうを行おこない、2万まん8000人にん余あまりの署名しょめいを検察けんさつに提出ていしゅつしました。

検察けんさつは、当時とうじの状況じょうきょうを再現さいげんして改あらためて詳くわしく調しらべた結果けっか、被告ひこくが車くるまをコントロールできない速度そくどで運転うんてんし、相手あいての車くるまの通行つうこうを妨害ぼうがいする目的もくてきで著いちじるしく接近せっきんさせていたと判断はんだんして、2022年ねん12月つき、起訴きそ内容ないようを危険きけん運転うんてん致死ちしの罪つみに変更へんこうしました。

亡なくなった男性だんせいの姉あね「遺族いぞくに寄り添よりそった判決はんけつを」

今回こんかいの事故じこで亡なくなった男性だんせいの姉あねが初はつ公判こうはんを前まえに取材しゅざいに応おうじ、「遺族いぞくに寄り添よりそった判決はんけつを望のぞんでいる」と心境しんきょうを語かたりました。

NHKのインタビューに応おうじたのは、小柳こやなぎ憲けんさんの姉あねの長ちょう文恵ふみえさん（58）です。

長ちょうさんは弟おとうとが亡なくなった事故じこについて、「今いまでも夢ゆめだったらいいなと思おもう。事故じこが起おきて3年ねん以上いじょう経たつが、気持きもちは変かわらない」と語かたりました。

また、危険きけん運転うんてん致死ちし罪ざいへの変更へんこうを求もとめて署名しょめい活動かつどうを行おこなう中なかで、同おなじように交通こうつう事故じこで家族かぞくを亡なくした各地かくちの遺族いぞくに支ささえられたことを振り返ふりかえり、「弟おとうとの無念むねんを晴はらすためにできることはすべてやりたいという気持きもちが強つよくあった中なかで、多おおくの方々かたがたが自分じぶんの家族かぞくのことでもないのに支援しえんしてくれた」と感謝かんしゃを述のべました。

長ちょうさんは「被害ひがい者しゃ参加さんか制度せいど」を利用りようしてすべての審理しんりに臨のぞむことにしています。

初はつ公判こうはんを前まえにした心境しんきょうについて、長ちょうさんは「危険きけん運転うんてんの罪つみは悪質あくしつな事故じこを厳罰げんばつに処しょするためにつくられたと思おもうので、遺族いぞくに寄り添よりそった判決はんけつを望のぞんでいる。被告ひこくが裁判さいばんまでの時間じかんをどのような気持きもちで過すごしてきたのかを知しりたいし、弟おとうとに対にたいしてどのくらいの気持きもちで反省はんせいしているのかも聞ききたいと思おもう」と話はなしていました。

「危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざい」 各かく裁判所さいばんしょの判断はんだんは

「危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざい」は「過失かしつ」の場合ばあいと比くらべて大幅おおはばに刑けいが重おもくなるため、適用てきように慎重しんちょうな判断はんだんが行おこなわれていて、各地かくちの裁判さいばんでも猛もうスピードの車くるまによる事故じこに適用てきようされない事例じれいが相次あいついでいます。

《福井ふくい市し 時速じそく105キロでの死亡しぼう事故じこ》

2020年ねんに福井ふくい市内しないで酒気しゅき帯おび運転うんてんの車くるまがパトカーから追跡ついせきを受うけた際さいに、時速じそく105キロで軽けい乗用車じょうようしゃに衝突しょうとつし、相手あいての男女だんじょ2人にんを死傷ししょうさせた事故じこでは、ドライバーが危険きけん運転うんてん致死傷ちししょうなどの罪つみに問とわれました。

裁判さいばんで、危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざいを適用てきようするための要件ようけんである「制御せいぎょが困難こんなんな高こう速度そくど」にあたるかどうかが争あらそわれた結果けっか、福井ふくい地方ちほう裁判所さいばんしょは「一貫いっかんして直進ちょくしんしていて大おおきく走路そうろがぶれることはなく、制御せいぎょが困難こんなんな高こう速度そくどで走行そうこうさせたと認定にんていするには合理ごうり的てきな疑うたがいが残のこる」として、過失かしつ運転うんてん致死傷ちししょう罪ざいにあたると判断はんだんし、懲役ちょうえき5年ねん6か月かげつを言い渡いいわたしました。

《津つ市し 時速じそく146キロでの死亡しぼう事故じこ》

2018年ねんに津つ市しの国道こくどうで、時速じそく146キロで車くるまを運転うんてんしてタクシーに衝突しょうとつし、運転うんてん手しゅと乗客じょうきゃくのあわせて4人にんを死亡しぼうさせ、1人にんに大だいけがをさせた事故じこでは、ドライバーが危険きけん運転うんてん致死傷ちししょうなどの罪つみに問とわれました。

裁判さいばんでは1審しんと2審しんともに危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざいを適用てきようせず、過失かしつ運転うんてん致死傷ちししょう罪ざいにあたるとして、懲役ちょうえき7年ねんが言い渡いいわたされました。

2審しんの名古屋なごや高等こうとう裁判所さいばんしょは、判決はんけつで「被告ひこくの車くるまが衝突しょうとつに至いたるまでの間まに進路しんろから逸脱いつだつしたことは証明しょうめいされておらず、『制御せいぎょが困難こんなんな高こう速度そくど』にあたるとは言いい難がたい」と判断はんだんしました。

法務省ほうむしょう 法ほう改正かいせいなど求もとめる声こえに検討けんとう会かい設置せっちも

猛もうスピードの車くるまによる事故じこに危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざいが適用てきようされない事例じれいが相次あいつぐ中なか、交通こうつう事故じこで家族かぞくを亡なくした遺族いぞくからは、法ほう改正かいせいや運用うんようの見直みなおしを求もとめる声こえが上あがっています。

これについて法務省ほうむしょうは、有識ゆうしき者しゃなどが参加さんかする検討けんとう会かいを設置せっちし、ことし2月つきから適用てきようする要件ようけんの見直みなおしが必要ひつようかどうか、議論ぎろんを進すすめています。

検察けんさつが起訴きそ内容ないようを変更へんこうする動うごきも

また、検察けんさつが起訴きその内容ないようを変更へんこうする動うごきも出でています。

2023年ねん2月つき、宇都宮うつのみや市しの国道こくどうで、時速じそく160キロを超こえる速度そくどで車くるまを運転うんてんしてオートバイに追突ついとつし、乗のっていた男性だんせいを死亡しぼうさせたとして過失かしつ運転うんてん致死ちしの罪つみで起訴きそされ、裁判さいばんが進すすめられていたドライバーについて、検察けんさつは10月つき、起訴きその内容ないようを危険きけん運転うんてん致死ちしの罪つみに変更へんこうするよう裁判所さいばんしょに請求せいきゅうしました。