京きょうアニ放火ほうか殺人さつじん事件じけん きょう青葉あおば真司しんじ被告ひこくに判決はんけつ 責任せきにん能力のうりょくが争点そうてん

検察けんさつが死刑しけいを求刑きゅうけいしたのに対にたいし、弁護べんご側がわは精神せいしん障害しょうがいにより責任せきにん能力のうりょくはなかったと無罪むざいを主張しゅちょうしていて、裁判所さいばんしょがどう判断はんだんするかが焦点しょうてんです。

青葉あおば真司しんじ被告ひこく（45）は、2019年ねん7月つき、京都きょうと市し伏見ふしみ区くにある「京都きょうとアニメーション」の第だい1スタジオに火ひをつけ、社員しゃいん36人にんを殺害さつがいし、32人にんに重軽傷じゅうけいしょうを負おわせたなどとして殺人さつじんや放火ほうかなどの罪つみに問とわれています。

殺人さつじん事件じけんとしては記録きろくが残のこる平成へいせい以降いこう、最もっとも多おおくの犠牲ぎせい者しゃを出だしたこの事件じけんの裁判さいばん員いん裁判さいばんは、去年きょねん9月つきから22回かいにわたって審理しんりが行おこなわれ、被告ひこくに事件じけん当時とうじ、物事ものごとの善悪ぜんあくを判断はんだんする責任せきにん能力のうりょくがあったかどうかが最大さいだいの争点そうてんとなりました。

検察けんさつは「京きょうアニに作品さくひんを盗用とうようされたという妄想もうそうが動機どうきの形成けいせいに影響えいきょうしたが、限定げんてい的てきだ」などとして、被告ひこくには完全かんぜんな責任せきにん能力のうりょくがあったと主張しゅちょうし死刑しけいを求刑きゅうけいしています。

一方いっぽう、弁護べんご側がわは「被告ひこくは妄想もうそうの中なかで生いき、妄想もうそうの中なかで今回こんかいの事件じけんを起おこしていた」などとして、重おもい精神せいしん障害しょうがいにより責任せきにん能力のうりょくはなかったと無罪むざいを主張しゅちょうしています。

判決はんけつは、京都きょうと地方ちほう裁判所さいばんしょで25日にち午前ごぜん10時半じはんから言い渡いいわたされる予定よていで、裁判所さいばんしょが責任せきにん能力のうりょくや刑けいの重おもさについてどう判断はんだんするかが焦点しょうてんです。

《裁判さいばんの争点そうてんは》

青葉あおば被告ひこくは起訴きそされた内容ないようを認みとめ、事実じじつ関係かんけいに大おおきな争あらそいはありません。

最大さいだいの争点そうてんは事件じけん当時とうじ、被告ひこくに責任せきにん能力のうりょくがあったかどうかで、検察けんさつと被告ひこくの弁護士べんごしの主張しゅちょうが対立たいりつしました。

検察けんさつの主張しゅちょう

検察けんさつは、被告ひこくは妄想もうそう性せいパーソナリティー障害しょうがいか妄想もうそう性せい障害しょうがいがあるものの、影響えいきょうは限定げんてい的てきだったとしました。

そのうえで「症状しょうじょうとして妄想もうそうがあったが、妄想もうそうに支配しはいされた犯行はんこうではなく、不満ふまんをためて攻撃こうげきするなどの被告ひこくのパーソナリティーによるもので、責任せきにん能力のうりょくが著いちじるしく減退げんたいしていたとは到底とうてい言いえない」と主張しゅちょうしています。

また、事件じけんの前まえの状況じょうきょうとして「被告ひこくは放火ほうか殺人さつじんは重大じゅうだい犯罪はんざいとわかっており、思おもいとどまることが期待きたいできる状態じょうたいだった。下見したみや道具どうぐの準備じゅんびまでの判断はんだんも含ふくめ、首尾しゅび一貫いっかんして妄想もうそうの影響えいきょうはない」と主張しゅちょうしました。

そして、被告ひこくの精神せいしん鑑定かんていを行おこなった医師いし2人にんがいずれも「犯行はんこうが犯罪はんざいにあたると理解りかいできていた」という見解けんかいで一致いっちしているとしたうえで、「被告ひこくには犯行はんこう当時とうじ、よいことと悪わるいことを区別くべつする能力のうりょくがあり、刑事けいじ責任せきにんを追及ついきゅうされることも考慮こうりょに入いれて行動こうどうできていた」と指摘してきし、完全かんぜんな責任せきにん能力のうりょくがあったと主張しゅちょうしました。

そのうえで、「京きょうアニに筋違すじちがいの恨うらみを持もった復ふくしゅうで、日本にっぽん刑事けいじ裁判さいばん史上しじょう、突出とっしゅつして多おおい被害ひがい者しゃの人数にんずうと言いえる。遺族いぞくや被害ひがい者しゃの苦くるしみや悲かなしみはあまりに深ふかく処罰しょばつ感情かんじょうもしゅん烈れつだ」として死刑しけいを求刑きゅうけいしました。

弁護べんご側がわの主張しゅちょう

一方いっぽう、被告ひこくの弁護士べんごしは「被告ひこくは重度じゅうどの妄想もうそう性せい障害しょうがいだった」として、責任せきにん能力のうりょくはないと主張しゅちょうしました。

その理由りゆうについて「検察けんさつの依頼いらいで行おこなわれた精神せいしん鑑定かんていについては、被告ひこくの精神せいしん世界せかいや現実げんじつを大おおきく支配しはいしている『闇やみの組織そしきのナンバー2』の妄想もうそうが抜け落ぬけおちている」としています。

そのうえで、「被告ひこくが事件じけんの4か月かげつ前まえにスマートフォンを解約かいやくしたというのはとても重大じゅうだい。『ナンバー2』からスマートフォンを操あやつられたと考かんがえたためで、インターネットが現実げんじつ世界せかいとの大おおきな接点せってんだったが、それを解約かいやくするというのは妄想もうそうが影響えいきょうしていたという何なによりの証拠しょうこだ」と主張しゅちょうしました。

そして、「被告ひこくは10年ねん以上いじょう、訂正ていせい不能ふのうの妄想もうそうの世界せかいで翻弄ほんろうされ、苦くるしみ続つづけてきた。自分じぶんがやろうとしていることがやってはいけないことと認識にんしきし思おもいとどまる力ちからがなかった」と主張しゅちょうし、▽心神しんしん喪失そうしつで責任せきにん能力のうりょくはなかったとして無罪むざいか、▽心神耗弱しんしんこうじゃくの状態じょうたいで責任せきにん能力のうりょくが十分じゅうぶんではなかったとして刑けいを軽かるくするよう求もとめました。

《判決はんけつを前まえに 遺族いぞくは》

武本たけもと康弘やすひろ監督かんとくの母親ははおや「息子むすこのために見届みとどけたい」

亡なくなった京都きょうとアニメーションの人気にんき監督かんとくだった武本たけもと康弘やすひろさん（当時とうじ47）の母親ははおやの千せん惠子けいこさん（75）は判決はんけつを前まえに、「裁判さいばんでは『小説しょうせつを盗ぬすまれた』という主張しゅちょうが根底こんていにあることが分わかり、本当ほんとうに『悪わるかった』という気持きもちがあるのか疑問ぎもんです。厳きびしい判決はんけつになった場合ばあい、『盗ぬすまれた』という被害ひがい者しゃ意識いしきがある中なかで、本人ほんにんが納得なっとくするかどうかが気きになります。どういう判決はんけつであってもこれで終おわりにしてほしいという思おもいです」と話はなしていました。

千せん惠子けいこさんは夫おっととともに、判決はんけつ当日とうじつ、この裁判さいばんを初はじめて傍聴ぼうちょうすることにしていて、「これまでの裁判さいばんには一いち度ども行いけなかったので、最後さいごぐらいは息子むすこのためにも見届みとどけたいです」と話はなしていました。

石田いしだ奈央なお美よしさんの母親ははおや「重おもい判決はんけつでも娘むすめは帰かえってこない」

京都きょうとアニメーションで色彩しきさい設計せっけいを担当たんとうしていたアニメーターの石田いしだ奈央なお美よしさん（当時とうじ49）を亡なくした母親ははおやは、判決はんけつを前まえに「以前いぜんは被告ひこくについて特別とくべつ何なにか思おもうことはありませんでしたが、裁判さいばんが始はじまってからは、被告ひこくが事件じけんを起おこした理由りゆうについて自身じしんの生い立おいたちや京きょうアニのせいにするような発言はつげんを繰り返くりかえし、次第しだいに腹立はらだたしく思おもうようになりました。どんなに重おもい判決はんけつでも娘むすめは帰かえってこないですし、むなしいだけです」と話はなしています。

奈央なお美よしさんの父親ちちおやは法廷ほうていで被告ひこくに直接ちょくせつ怒いかりをぶつけたいと話はなしていたということですが、裁判さいばんが始はじまる直前ちょくぜんに病気びょうきで亡なくなっていて、母親ははおやは、「判決はんけつ内容ないようは自宅じたくでニュースを確認かくにんします。どんな判決はんけつが出でるかわかりませんが、仏壇ぶつだんの前まえで2人にんに報告ほうこくします」と話はなしていました。

男性だんせいアニメーターの父親ちちおや「裁判さいばんが抑止よくし力りょくになること望のぞむ」

亡なくなった男性だんせいアニメーターの父親ちちおやは、裁判さいばんを2回かい傍聴ぼうちょうしましたが、青葉あおば被告ひこくからは償つぐないの気持きもちが感かんじられなかったといいます。

法廷ほうていでは父親ちちおやの意見いけん陳述ちんじゅつ書しょが読み上よみあげられ、「私わたしたちのように、息子むすこや娘むすめを、夫おっとや妻つまを、子こどもたちはお父おとうさんお母おかあさんを奪うばわれ、悲かなしくてつらい遺族いぞくが出でるような、残虐ざんぎゃくな犯罪はんざいが二度にどと起おきないよう、この裁判さいばんが抑止よくし力りょくになることを望のぞみます」と訴うったえました。

父親ちちおやは多おおくの人ひとが集あつまるとみられる判決はんけつは傍聴ぼうちょうしないことにしていて、判決はんけつを前まえに、「私わたしたち遺族いぞくの悔くやしさ、悲かなしさ、寂さびしさは癒いえることはありません。亡なくなった36人にんは被告ひこくがどんな償つぐないをしても受け取うけとることはできませんが、裁判さいばんの中なかでそれなりの謝罪しゃざいのことばはほしかったです。どのような判決はんけつになっても失うしなわれた命いのちはかえってこず、息子むすこの笑顔えがおや日常にちじょうが取り戻とりもどせるわけではありませんが、判決はんけつをきっかけに悲惨ひさんな事件じけんが起おきないよう社会しゃかいには改あらためてこの事件じけんを振り返ふりかえってもらいたいです」と話はなしていました。

《青葉あおば被告ひこく 問とわれている5つの罪つみ》

今回こんかいの裁判さいばんで青葉あおば被告ひこくは、殺人さつじんや放火ほうかなど5つの罪つみに問とわれています。

1.建造けんぞう物ぶつ侵入しんにゅう

まず、2019年ねん7月つき18日にちの午前ごぜん10時半じはんごろ、京都きょうと市し伏見ふしみ区くにある京都きょうとアニメーション第だい1スタジオに正面しょうめん出入でいり口ぐちから侵入しんにゅうしたとする建造けんぞう物ぶつ侵入しんにゅうの罪つみです。

2.現住げんじゅう建造けんぞう物ぶつ等とう放火ほうか

このあと、1階かい中央ちゅうおうのフロアでバケツに入いれたガソリンを従業じゅうぎょう員いんの体からだやその周辺しゅうへんに浴あびせかけ、ガスライターで火ひをつけ、従業じゅうぎょう員いん70人にんがいるスタジオを全焼ぜんしょうさせたとして放火ほうかの罪つみに問とわれています。

3.殺人さつじんと 4.殺人さつじん未遂みすい

そして、36人にんを殺害さつがいし、32人にんに重軽傷じゅうけいしょうを負おわせたなどとする殺人さつじんと殺人さつじん未遂みすいの罪つみです。

5.銃刀じゅうとう法ほう違反いはん

このほか、この日ひ、正当せいとうな理由りゆうなく包丁ほうちょう6本ほんを持ち歩もちあるいていたとして銃刀じゅうとう法ほう違反いはんの罪つみにも問とわれています。

《裁判さいばんで明あきらかになった新しん事実じじつや当時とうじの状況じょうきょう》

裁判さいばんでは証拠しょうこ調しらべや被告ひこく人じん質問しつもんのなかで新あらたな事実じじつや事件じけん当時とうじの詳くわしい状況じょうきょうが明あきらかになりました。

1.大宮おおみやでテロも計画けいかく

検察けんさつの冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつでは、青葉あおば被告ひこくが事件じけんの1か月かげつ前まえに、埼玉さいたま県けんの大宮おおみや駅前えきまえに行いき、無む差別さべつ殺人さつじんを起おこそうとしたものの断念だんねんしたといういきさつが明あきらかにされました。

これについて被告ひこくは、被告ひこく人じん質問しつもんで「小説しょうせつのアイデアをパクったことがそういう結末けつまつを生うんだと京きょうアニに伝つたえようと思おもった。大宮おおみや駅前えきまえまで行いくと人ひとの密集みっしゅうが低ひくかったため大おおきな事件じけんにはならないと判断はんだんした」と話はなしました。

2.過去かこの事件じけんを参考さんこうに

また、事件じけんをどのように計画けいかくしたのかについては、「かつて消費しょうひ者しゃ金融きんゆうでガソリンがまかれて人ひとが亡なくなった事件じけんやマージャン店ま-じゃんてんの放火ほうか事件じけんを参考さんこうにした。自分じぶんも最後さいごの段階だんかいではそれぐらいやると決きめていた」と被告ひこく人じん質問しつもんで明あかしました。

また、現場げんばに6本ほんの包丁ほうちょうを持もっていった理由りゆうについて、東京とうきょう・秋葉原あきはばらで通行人つうこうにんがはねられたりナイフで刺さされたりして7人にんが死亡しぼうした無む差別さべつ殺傷さっしょう事件じけんに触ふれ、「ガソリンをまいたあと、止とめに入はいられることを想定そうていした」としました。

3.当時とうじの状況じょうきょうを社員しゃいんが証言しょうげん

証人しょうにん尋問じんもんでは被告ひこくが火ひをつける瞬間しゅんかんを建物たてものの中なかで目撃もくげきしたという2人にんの社員しゃいんが当時とうじの状況じょうきょうを証言しょうげんしました。

このうち、1人にんの社員しゃいんは「被告ひこくは、燃料ねんりょうのようなにおいがする液体えきたいを勢いきおいよく頭あたまや体からだにかけてきた。その上うえで、大おおきな声こえで『死しね』と言いいながら火ひをつけていた。火ひは天井てんじょうまで上あがり、自分じぶんはトイレに逃げ込にげこんだ」と話はなしました。

また、別べつの社員しゃいんは「被告ひこくは、短みじかい単語たんごを投なげつけるように叫さけんでいた。室内しつないが真っ白まっしろになるくらいまぶしく光ひかり、鈍にぶい大おおきな音おととともにガソリンのにおいと熱風ねっぷうが押し寄おしよせてきた」と当時とうじの様子ようすを証言しょうげんしました。

《青葉あおば被告ひこく 法廷ほうていでの主張しゅちょうは》

裁判さいばんで青葉あおば被告ひこくは「やりすぎだった」と述のべ、遺族いぞくや被害ひがい者しゃに対にたいし謝罪しゃざいのことばを述のべる場面ばめんもありましたが、一貫いっかんして「京きょうアニに小説しょうせつのアイデアを盗ぬすまれた」と主張しゅちょうしました。

初はつ公判こうはんでは裁判さいばん長ちょうから起訴きそされた内容ないように間違まちがいがないか尋たずねられると、「間違まちがいありません。当時とうじはこうするしかないと思おもっていた。こんなにたくさんの人ひとが亡なくなるとは思おもわずやりすぎだった」と述のべました。

被告ひこく人じん質問しつもんは

被告ひこく人じん質問しつもんでは、京都きょうとアニメーションに応募おうぼした小説しょうせつが落選らくせんしたことをどう受け止うけとめたのかについて述のべました。

被告ひこくは、「がっかりして裏切うらぎられたような気持きもちだった。落選らくせんさせたのは、『ナンバー2』と呼よばれる人物じんぶつで、自分じぶんに発言はつげん力りょくを持もたせたくなかったので圧力あつりょくをかけたのだと考かんがえた。その見返みかえりに、京都きょうとアニメーションにかなりのお金おかねが流ながれたと思おもう」などと話はなしました。

また、小説しょうせつのアイデアが盗ぬすまれたとするいきさつについては、アイデアの一部いちぶは京都きょうとアニメーションに応募おうぼした作品さくひんには載のせていなかったものの、ネット上じょうに流出りゅうしゅつして盗ぬすまれたなどと述のべました。

京都きょうとアニメーションの社長しゃちょうは、裁判さいばんで「ひとさまのアイデアを盗ぬすんだりできる会社かいしゃではない。被告ひこくの思い込おもいこみで事件じけんが起おき、断腸だんちょうの思おもいだ」などと話はなし、盗作とうさくを否定ひていしました。

これについて被告ひこくは「自分じぶんの考かんがえたアイデアに関にかんして京都きょうとアニメーションの監督かんとくがブログで触ふれているので、自分じぶんの作品さくひんを読よんでいないということはない」などと改あらためて主張しゅちょうしました。

スタジオで事務じむ的てきな作業さぎょうをしていた人ひとまで巻き込まきこむ必要ひつようがあったのかと問とわれると、「アニメ制作せいさくは1人にんで完結かんけつするものではないので、何なん人にんかで盗作とうさくのシーンを作つくったと思おもう」としたうえで、「盗作とうさくを知しらなかった人ひとも知しっている人ひとに聞きいてこの会社かいしゃは危あぶないと自分じぶんから退職たいしょく届とどけを出だせば、犠牲ぎせい者しゃになることを回避かいひできたと思おもう」などと話はなしました。

12月つき6日にちに行おこなわれた最後さいごの被告ひこく人じん質問しつもんでは、被告ひこくが「やりすぎた」と述のべた意味いみを検察官けんさつかんから尋たずねられると、「しょく罪しょくざいの気持きもちを含ふくむというか、多大ただいに申し訳もうしわけないという気持きもちはある」と答こたえ、初はじめて遺族いぞくや被害ひがい者しゃに対にたいして謝罪しゃざいのことばを述のべました。

そのうえで遺族いぞくや被害ひがい者しゃが極刑きょっけいを望のぞむとした意見いけん陳述ちんじゅつへの受け止うけとめを聞きかれると、「それで償つぐなうべきだと捉とらえている部分ぶぶんはある」と話はなしました。

一方いっぽうで、京きょうアニに小説しょうせつのアイデアを盗ぬすまれたとする主張しゅちょうについて、「京きょうアニのほうがやってきたという思おもいがある。それは正直しょうじきに申し上もうしあげる。精神せいしん鑑定かんていをした鑑定かんてい人じんからは妄想もうそうだったという話はなしが出でていたが自分じぶんの中なかでは事実じじつとしてとらえている」と改あらためて述のべました。

また、弁護べんご側がわの質問しつもんのなかで、拘置こうち所しょの職員しょくいんに今いまの生活せいかつを支ささえられているとしたうえで、「早はやく大阪おおさか拘置こうち所しょに来きてこんな環境かんきょうに置おかれていたらおそらく事件じけんを起おこさなかったのではないかと思おもう」と話はなしました。

《裁判さいばんの経過けいか》

裁判さいばんは去年きょねん9月つきから始はじまり、あわせて22回かいの審理しんりが行おこなわれ、12月つき7日にちに結審けっしんしました。

2023年ねん9月つき5日にち 初はつ公判こうはん

初はつ公判こうはんで、被告ひこくは起訴きそされた内容ないようを認みとめ、「当時とうじはこうするしかないと思おもって事件じけんを起おこしましたが、こんなにたくさんの人ひとが亡なくなるとは思おもっておらずやりすぎだった」と述のべました。

9月つき6日にち～7日にち 証拠しょうこ調しらべ

2回かい目めの裁判さいばんでは、被告ひこくが取り押とりおさえられた際さいに「小説しょうせつをパクられた」などと叫さけんでいた音声おんせいデータが再生さいせいされました。

さらに、京都きょうとアニメーションの作品さくひんと被告ひこくが書かいたとする小説しょうせつとの比較ひかくも行おこなわれ、アニメで描えがかれた3つのシーンについて、被告ひこくが自分じぶんの小説しょうせつにも同おなじような描写びょうしゃがあると供述きょうじゅつしていたことが明あきらかにされました。

9月つき7日にち～25日にち 被告ひこく人じん質問しつもん

3回かい目めの裁判さいばんからは被告ひこく人じん質問しつもんが行おこなわれ、小説しょうせつを応募おうぼした理由りゆうについて、職場しょくばで過去かこの犯罪はんざい歴れきを知しられたと考かんがえて仕事しごとを続つづけられなくなったとしたうえで、小説しょうせつに全力ぜんりょくを込こめ暮くらしていこうと思おもったと説明せつめいしました。

しかし、7年ねん以上いじょうかけて書き上かきあげたとする応募おうぼ作品さくひんの落選らくせんのショックは大おおきく、その後そのご小説しょうせつのネタ帳ちょうを燃もやしたとし、「つっかえ棒ぼうみたいなものがなくなってしまい、よからぬ事件じけんを起おこす方向ほうこうに向むかった」などと話はなしました。

また、犯行はんこう直前ちょくぜんには実行じっこうするかためらったとしたうえで、「自分じぶんのような悪党あくとうでも良心りょうしんの呵責かしゃく（かしゃく）はあり、悪わるいことだとは思おもっていた」などと話はなしました。

9月つき27日にち～10月つき11日にち 証人しょうにん尋問じんもんなど

10回かい目めからの裁判さいばんでは、証人しょうにん尋問じんもんが行おこなわれ、被告ひこくが火ひをつける瞬間しゅんかんを目撃もくげきしたという社員しゃいんが状況じょうきょうを証言しょうげんしました。

また、京都きょうとアニメーションの八田はった英明ひであき社長しゃちょうが証言しょうげんし、「小説しょうせつのアイデアを盗ぬすまれた」という被告ひこくの主張しゅちょうに対にたいして、「ひとさまのアイデアを盗ぬすんだりできる会社かいしゃではない」と述のべました。

10月つき23日にち～10月つき30日にち 責任せきにん能力のうりょくの審理しんり

13回かい目めからの裁判さいばんでは被告ひこくの責任せきにん能力のうりょくについて集中しゅうちゅう的てきに審理しんりが行おこなわれ、被告ひこくの精神せいしん鑑定かんていを行おこなった2人にんの医師いしが出廷しゅっていし、それぞれ異ことなる見解けんかいを示しめしました。

被告ひこくが起訴きそされる前まえに検察けんさつの依頼いらいで鑑定かんていした医師いしは、「妄想もうそうで京きょうアニに小説しょうせつを盗作とうさくされたと考かんがえたあと犯行はんこうにいたるまでに直接ちょくせつ抗議こうぎするなどの現実げんじつ的てきな行動こうどうは起おこしておらず妄想もうそうは被告ひこくの言動げんどうに著いちじるしい影響えいきょうを及およぼしていない」と述のべました。

一方いっぽう、起訴きそされたあと、弁護べんご側がわの請求せいきゅうで鑑定かんていした医師いしは、「被告ひこくは犯行はんこう以前いぜんも問題もんだいが生しょうじると職場しょくばを退職たいしょくするなど、相手あいてと関係かんけいを絶たつという解決かいけつ方法ほうほうをとってきた。京きょうアニに対にたいしては『盗作とうさくされ続つづける』と妄想もうそうし、関係かんけいを絶たつために犯行はんこうに及およんだ」と述のべ、妄想もうそうが犯行はんこうに影響えいきょうしたとしました。

11月つき6日にち 中間ちゅうかん論告ろんこく・中間ちゅうかん弁論べんろん

16回かい目めの裁判さいばんでは責任せきにん能力のうりょくについて検察けんさつの中間ちゅうかん論告ろんこくと弁護べんご側がわの中間ちゅうかん弁論べんろんが行おこなわれ、その後そのご、裁判さいばん員いんと裁判官さいばんかんは非ひ公開こうかいで中間ちゅうかん評議ひょうぎを行おこないました。

11月つき27日にち～12月つき6日にち 情状じょうじょうの審理しんり

17回かい目めの裁判さいばんからは刑けいの重おもさを決きめる情状じょうじょうに関にかんする審理しんりが行おこなわれ、遺族いぞくや被害ひがい者しゃが直接ちょくせつ、心情しんじょうを述のべました。

遺族いぞくの1人にんは「娘むすめを返かえしてください。せめてそばで、一緒いっしょに死しねたらよかった。甘えん坊あまえんぼうなあの子こに寄り添よりそっていたかった」などと悲痛ひつうな思おもいを訴うったえました。

また別べつの遺族いぞくは亡なくなった娘むすめと対面たいめんした際さい、ほおずりをして子守こもり歌かを歌うたったことを紹介しょうかいしていました。

そのうえで実際じっさいに法廷ほうていでその子守こもり歌かを歌うたい、被告ひこくには死刑しけいを望のぞむと強つよく訴うったえました。

21回かい目めの裁判さいばんでは、最後さいごの被告ひこく人じん質問しつもんが行おこなわれ、遺族いぞくの1人にんから遺族いぞくや被害ひがい者しゃに対にたいしてどう思おもうか直接ちょくせつ問とわれると、被告ひこくは「申し訳もうしわけないと思おもいます」と答こたえ、この裁判さいばんではじめて謝罪しゃざいのことばを述のべました。

12月つき7日にち 最終さいしゅう論告ろんこく・最終さいしゅう弁論べんろん・結審けっしん

そして、22回かい目めの裁判さいばんで検察けんさつが死刑しけいを求刑きゅうけいしたのに対にたいし、弁護べんご側がわが改あらためて無罪むざいを主張しゅちょうし、すべての審理しんりが終おわりました。

「被害ひがい者しゃ参加さんか制度せいど」で遺族いぞくが質問しつもんも

今回こんかいの裁判さいばんでは、殺害さつがいされた36人にんのうち19人にんと、けがをした32人にん全員ぜんいんについて、名前なまえなど個人こじんが特定とくていされる情報じょうほうを伏ふせて審理しんりが進すすめられました。

法廷ほうていで匿名とくめいで審理しんりされる人ひとは、名前なまえは読み上よみあげられず、被害ひがい者しゃの一覧いちらん表ひょうの番号ばんごうで示しめされていました。

そして、遺族いぞくや被害ひがい者しゃなどは「被害ひがい者しゃ参加さんか制度せいど」を利用りようして傍聴ぼうちょう席せきや検察けんさつ側がわの席せきに座すわり、青葉あおば被告ひこくに直接ちょくせつ質問しつもんしたりみずからの心情しんじょうを述のべたりしました。

裁判さいばん員いん裁判さいばんの評議ひょうぎは

今回こんかいの裁判さいばんでは、裁判さいばん員いん6人にんと補充ほじゅう裁判さいばん員いん6人にんが選任せんにんされ、去年きょねん9月つき5日にちの初はつ公判こうはんから12月つき7日にちの結審けっしんまで22回かいの審理しんりに参加さんかしました。

裁判さいばん員いん裁判さいばんの評議ひょうぎは、非ひ公開こうかいで行おこなわれ、3人にんの裁判官さいばんかんとともに6人にんの裁判さいばん員いんが被告ひこくが有罪ゆうざいか無罪むざいか、有罪ゆうざいの場合ばあいはどのくらいの刑けいにするか、検討けんとうを重かさねます。

4か月かげつ余あまりと長期ちょうきにわたった今回こんかいの裁判さいばんは、争点そうてんを整理せいりするため評議ひょうぎが2回かい設もうけられ、去年きょねん11月つきの中間ちゅうかん評議ひょうぎでは、青葉あおば被告ひこくの責任せきにん能力のうりょくについて結論けつろんを出だし、その結果けっかは判決はんけつで初はじめて明あきらかにされます。

結審けっしんしたあとの最終さいしゅう評議ひょうぎでは、刑けいの重おもさなどについて話し合はなしあわれたとみられます。

評議ひょうぎは裁判官さいばんかん3人にんと裁判さいばん員いん6人にんがそれぞれ同おなじ1票ひょうを持もち、意見いけんが分わかれた場合ばあいは原則げんそくとして多数決たすうけつで決きめられます。

しかし、意見いけんが分わかれた際さいに被告ひこくにとって不利ふりな重おもい刑けいにする場合ばあいは、たとえ裁判さいばん員いんが5人にん以上いじょう賛成さんせいして過か半数はんすうを占しめても結論けつろんとはならず、必かならず裁判官さいばんかん1人にん以上いじょうが賛成さんせいすることが必要ひつようとなります。

復帰ふっきできていない社員しゃいんも

京都きょうとアニメーションには、事件じけん当時とうじ、176人にんの社員しゃいんがいましたが、このうち「第だい1スタジオ」で働はたらいていた70人にんが事件じけんに巻き込まきこまれました。

会社かいしゃによりますと、採用さいよう活動かつどうは、事件じけんの影響えいきょうで一時いちじ中断ちゅうだんしていましたが再開さいかいし、現在げんざいの社員しゃいん数すうは今月こんげつの時点じてんで事件じけん前まえとほぼ同おなじ、およそ170人にんとなっています。

事件じけんでけがを負おった社員しゃいんの中なかには、治療ちりょうを経へて復帰ふっきした人ひともいますが、現在げんざいも療養りょうようを続つづけ、復帰ふっきができていない人ひともいるということです。

「第だい1スタジオ」の跡地あとちは

一方いっぽう、現場げんばとなった「京都きょうとアニメーション」の「第だい1スタジオ」の跡地あとちは、建物たてものが解体かいたいされたあと、さら地さらちのままとなっています。

会社かいしゃは、跡地あとちについて、将来しょうらい的てきに慰霊いれい碑ひの設置せっちが想定そうていされることや会社かいしゃの事業じぎょう用地ようちとしての利用りようも考かんがえられるとして一般いっぱんには公開こうかいしない見込みこみです。

また、遺族いぞくや会社かいしゃなどは、事件じけんや犠牲ぎせい者しゃの存在そんざい、それに多おおくの支援しえんへの感謝かんしゃを記憶きおくにとどめる象徴しょうちょうとして、スタジオ跡地あとちとは別べつに、会社かいしゃの本社ほんしゃがある京都きょうと府ふ宇治うじ市内しないで碑いしぶみの設置せっちを検討けんとうしています。

遺族いぞくや社員しゃいんなどが参加さんかする検討けんとう会かいでは、去年きょねん12月つき、候補こうほ地ちを宇治うじ市内しないの駅えき近ちかくの公園こうえんとすることを決きめ、今後こんご、碑いしぶみのデザインを固かためたうえで、事件じけんから5年ねんとなることし7月つきまでの完成かんせいを目指めざすということです。