「トラックから船ふね・鉄道てつどうに」 転換てんかん進すすむか 人手ひとで不足ふそくの長距離ちょうきょり輸送ゆそう

船ふね・鉄道てつどうの輸送ゆそう量りょう 10年ねんで2倍ばいに

政府せいふは先週せんしゅう、「2024年ねん問題もんだい」への緊急きんきゅうの対応たいおう策さくをとりまとめ、運転うんてん手しゅ不足ふそくが懸念けねんされるトラックから船舶せんぱくや鉄道てつどうへと輸送ゆそうを振り替ふりかえる「モーダルシフト」を進すすめるための目標もくひょうを掲かかげました。

今後こんご10年ねん程度ていどで船舶せんぱくの輸送ゆそう量りょうを5000万まんトンから1億おくトンに、鉄道てつどうは1800万まんトンから3600万まんトンにそれぞれ倍増ばいぞうさせるとしています。

「モーダルシフト」進すすむ現場げんばは

「2024年ねん問題もんだい」の要因よういんとされるトラック運転うんてん手しゅの時間じかん外がい労働ろうどう規制きせいの強化きょうかが来年らいねん4月つきに迫せまり、物流ぶつりゅう業界ぎょうかいの中なかでは「モーダルシフト」の動うごきが出でています。

静岡しずおか市しに本社ほんしゃを置おく物流ぶつりゅう会社かいしゃでは、「RORO船せん」と呼よばれる輸送ゆそう船せんの活用かつように力ちからを入いれています。

この船ふねは、トレーラーから運転うんてん席せきを切り離きりはなし貨物かもつの乗のった荷台にだいだけを運搬うんぱんすることができます。

目的もくてきの港みなとに着つくと待ち構まちかまえていた別べつのトレーラーに荷台にだいを連結れんけつします。

関東かんとうと九州きゅうしゅうなど長距離ちょうきょりをトラックだけで輸送ゆそうすると数すう日にちかかりますが、RORO船せんを使つかうと、トラックの運転うんてん手しゅは日帰ひがえりでの勤務きんむも可能かのうになります。

会社かいしゃによりますと船舶せんぱくを使つかった輸送ゆそうは、この1年ねんで1割わり程度ていど増ふえているほか、トラックに比くらべて二に酸化さんか炭素たんその排出はいしゅつ量りょうが抑おさえられるとして、飲料いんりょうや製紙せいしメーカーなど大口おおぐちの荷主にぬしからの問い合といあわせが増ふえているということです。

「鈴すず与あずか」運輸うんゆ事業じぎょう営業えいぎょう部ぶの亀井かめい遊太ふとし部長ぶちょうは「ドライバーの就業しゅうぎょう者しゃが年々ねんねん減少げんしょうし、将来しょうらい的てきに輸送ゆそうができなくなるという事態じたいが課題かだいだと荷主にぬしの企業きぎょうはとらえている。物流ぶつりゅう会社かいしゃとしてもこの大おおきな変化へんかに対応たいおうしていきたい」と話はなしていました。

転換てんかん進すすむか？専門せんもん家かの見解けんかいは

物流ぶつりゅうの2024年ねん問題もんだいについて、立教りっきょう大学だいがく経済けいざい学部がくぶの首藤しゅどう若菜わかな 教授きょうじゅに聞ききました。

Q.政府せいふは、トラック運転うんてん手しゅの不足ふそくを受うけて、今後こんご10年ねん程度ていどで船舶せんぱくや鉄道てつどうの輸送ゆそう量りょうを2020年度ねんどの2倍ばいに増ふやす目標もくひょうを掲かかげました。この動うごきをどう見みますか。

A.これまで何なん日にちもかけてトラックで長距離ちょうきょり運送うんそうをしていたが、その中間ちゅうかんをフェリーや鉄道てつどうが担になうためトラック運転うんてん手しゅの労働ろうどう時間じかんが削減さくげんできる。

長距離ちょうきょり輸送ゆそうで何なん泊はくもするような勤務きんむが減へれば、働はたらき方かたを重視じゅうしする若わかい世代せだいや女性じょせいにとっても働はたらきやすくなるだろう。

さらに、フェリーや鉄道てつどうで荷物にもつを運はこべば、トラックよりも二に酸化さんか炭素たんその排出はいしゅつ量りょうが削減さくげんされ環境かんきょう面めんでもメリットが大おおきい。

Q.一方いっぽうで、目標もくひょうの達成たっせいに向むけた課題かだいはありますか。

A.トラック運転うんてん手しゅの賃金ちんぎんだ。

運転うんてん手しゅの賃上ちんあげが行おこなわれていない会社かいしゃでは、労働ろうどう時間じかんが減へった場合ばあい、賃金ちんぎんの減少げんしょうにつながる。

物価ぶっか高だかで社会しゃかい全体ぜんたいで賃上ちんあげが求もとめられているが、運送うんそう業界ぎょうかいではガソリンなど燃料ねんりょうコストが増ふえる中なか、運転うんてん手しゅの人件じんけん費ひを削減さくげんしている会社かいしゃもある。

運送うんそう業者ぎょうしゃに依頼いらいする荷主にぬしは「安やすくて早はやい」業者ぎょうしゃを選えらびたいと思おもうだろうが、運送うんそう業者ぎょうしゃが燃料ねんりょうコストの上昇じょうしょう分ぶんを請け負うけおい価格かかくに転嫁てんかした場合ばあいに荷主にぬし側がわは、それを了承りょうしょうする姿勢しせいが求もとめられる。

Q.長距離ちょうきょり輸送ゆそうではトラックが主流しゅりゅうとなる中なか、船舶せんぱくや鉄道てつどうにスムーズに切り替きりかえられますか。

A.現在げんざいはフェリーや鉄道てつどうが荷物にもつを受け入うけいれられる量りょうが十分じゅうぶんではない。

現場げんばからは、フェリーや貨物かもつ列車れっしゃが荷物にもつを受け入うけいれる余力よりょくはすでに少すくなくなっている状況じょうきょうだと聞きいている。

便数びんすうを増ふやそうにも、フェリーや貨物かもつ列車れっしゃのスタッフも人手ひとで不足ふそくとなっていて増便ぞうびんは容易よういではない。

Q.国こくの対策たいさくでは宅配たくはい便びんの再さい配達はいたつを減へらすため、いわゆる「置おき配はい」を選えらんだり、ゆとりのある配送はいそう日びを指定していしたりした利用りよう者しゃにポイントを付与ふよするサービスの実証じっしょう事業じぎょうを行おこなうことも盛り込もりこまれました。

A.国民こくみんの行動こうどう変容へんようを促うながすという点てんで、ポイント付与ふよという経済けいざい的てきな動機どうきづけは効果こうか的てきだ。

これまで通とおりの早はやさで配達はいたつを希望きぼうする場合ばあいと数すう日にち遅おくれを認みとめる場合ばあいとでポイントを付つけたり価格かかく差さをつけたりする仕組しくみができれば、トラック運転うんてん手しゅの労働ろうどう時間じかんを平準へいじゅん化かすることにつながる。

再さい配達はいたつを希望きぼうする人ひとには追加ついか料金りょうきんを求もとめるなど、相応そうおうの負担ふたんがかかることを利用りよう者しゃも理解りかいしていくべきだ。

物流ぶつりゅうの2024年ねん問題もんだいは、物流ぶつりゅう業界ぎょうかいだけでなく、荷主にぬしや利用りよう者しゃの協力きょうりょくも欠かかせない。