일본어 뉴스: 【詳しく】なぜテロの脅威は減らないのか？米同時多発テロ20年

20年ねん前まえのアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんがきっかけで「テロとの戦たたかい」が始はじまりました。しかし、この20年間ねんかんのデータによれば、テロの犠牲ぎせい者しゃは減へるどころかむしろ増ふえています。

「テロとの戦たたかい」は失敗しっぱいだったのでしょうか？そして、テロを防ふせぐには何なにが必要ひつようなのでしょうか？

（解説かいせつワシントン支局しきょく長ちょう高木たかぎ優ゆう）

Q 「テロとの戦たたかい」とは何なにか？

20年ねん前まえの2001年ねん9月つき11日にちに起おきたアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんを受うけて、当時とうじのブッシュ政権せいけんが始はじめた軍事ぐんじ作戦さくせんです。

事件じけんでは、日本人にっぽんじん24人にんを含ふくむ合あわせて2977人にんが亡なくなり、「テロリストに報復ほうふくすべきだ」という機運きうんが国内こくないで急速きゅうそくに高たかまりました。

アメリカは、国際こくさいテロ組織そしきアルカイダを率ひきいていたオサマ・ビンラディン容疑ようぎ者しゃを事件じけんの首謀しゅぼう者しゃと断定だんていし、事件じけんの1か月かげつ後ごにビンラディン容疑ようぎ者しゃの引き渡ひきわたしを拒否きょひした、アフガニスタンの当時とうじのタリバン政権せいけんに対にたいし武力ぶりょく行使こうしに踏み切ふみきりました。

そして、2年ねん後ごの2003年ねんにはイラクに対にたいし、「大量たいりょう破壊はかい兵器へいきを隠し持かくしもっている」として軍事ぐんじ攻撃こうげきを開始かいししました。

しかし、結局けっきょく、大量たいりょう破壊はかい兵器へいきは見みつかりませんでした。

Q なぜ「テロとの戦たたかい」が20年ねんも続つづいたのか？

新あらたな脅威きょういが生うまれ、作戦さくせんを終おえることができなかったからです。

アフガニスタンでの軍事ぐんじ作戦さくせんでは、2011年ねんにアメリカの特殊とくしゅ部隊ぶたいがパキスタン側がわで、ビンラディン容疑ようぎ者しゃを殺害さつがいし、大おおきな節目ふしめを迎むかえました。

ところがアフガニスタンでは武装ぶそう勢力せいりょくタリバンが勢力せいりょくを盛り返もりかえし、イラクでは過激かげき派は組織そしきIS＝イスラミックステートが、一時いちじは、シリアとイラクにまたがる広ひろい地域ちいきにまで勢力せいりょくを拡大かくだい。

ヨーロッパなどでも大だい規模きぼなテロを起おこし、泥沼どろぬまの戦たたかいが続つづくことになったのです。

Q テロで犠牲ぎせいになる人ひとは減へったのか？

減へるどころか、むしろ増ふえています。

国際こくさい的てきなシンクタンク・IEP＝経済けいざい平和へいわ研究所けんきゅうじょの報告ほうこく書しょによりますと、世界せかいで2000年ねんから2009年ねんまでの10年間ねんかんに、テロによって死亡しぼうした人ひとは7万まん1862人にん。

ところがその後そのごの2010年ねんから2019年ねんまでの10年間ねんかんに死亡しぼうした人ひとは18万まん2060人にんと、2.5倍ばいに上のぼりました。

ここでいうテロとは、戦争せんそうに伴ともなう戦闘せんとう行為こういとは異ことなり、政治せいじ的てき、宗教しゅうきょう的てき、社会しゃかい的てきな目的もくてきなどから、一般いっぱん市民しみんをねらって起おこす暴力ぼうりょくを指さします。

また、アメリカ国務省こくむしょうが指定していした国外こくがいのテロ組織そしきの数かずも、同時どうじ多発たはつテロ事件じけんの前まえは29だったのが現在げんざいは72と、この20年間ねんかんで2.5倍ばいに増ふえています。

世界せかい各地かくちにテロの脅威きょういは残のこったままです。

Q なぜ犠牲ぎせい者しゃは増ふえたのか？

新あらたな組織そしきがうまれ、脅威きょういが拡散かくさんしているからです。

IEPの報告ほうこく書しょによれば最初さいしょの10年ねん、テロはイラクとアフガニスタンに集中しゅうちゅうしていました。

その後そのご、2011年ねんに「アラブの春はる」と呼よばれる民主みんしゅ化か運動うんどうが中東ちゅうとう各地かくちに広ひろがり混乱こんらんの中ちゅう登場とうじょうした過激かげき派は組織そしきIS＝イスラミックステートが活動かつどうを活発かっぱつ化か。

犠牲ぎせい者しゃが急増きゅうぞうしました。

さらにアフリカのナイジェリアで、イスラム過激かげき派は組織そしきボコ・ハラムの活動かつどうが活発かっぱつ化かするなど、2014年ねんには世界せかいで3万まん3000人にん以上いじょうがテロで死亡しぼうしました。

その後そのご、ISは支配しはい地域ちいきのほとんどを失うしなうものの、イデオロギーでつながったISの地域ちいき組織そしきがアフリカのサハラ砂漠さはらさばく南側みなみがわのサヘル地域ちいき、南西なんせいアジア、インド太平洋たいへいようなど世界せかい各地かくちに生うまれ、活動かつどうを活発かっぱつ化かさせるようになっています。

また、CFR＝アメリカ外交がいこう問題もんだい評議ひょうぎ会かいの報告ほうこく書しょによりますと、2002年ねんから2018年ねんのあいだに世界せかいでテロにより犠牲ぎせいになった人ひとの実じつに53％が、4つの組織そしきによるテロで亡なくなりました。

その4つの組織そしきと犠牲ぎせい者しゃの数かずは、

▼アフガニスタンの武装ぶそう勢力せいりょくタリバン。

犠牲ぎせい者しゃ2万まん9900人にん。

▼過激かげき派は組織そしきIS＝イスラミックステート。

犠牲ぎせい者しゃ2万まん9438人にん。

▼アフリカのナイジェリアを中心ちゅうしんに活動かつどうするイスラム過激かげき派は組織そしきボコ・ハラム。

犠牲ぎせい者しゃ1万まん8641人にん。

▼ソマリアに拠点きょてんを置おくイスラム過激かげき派は組織そしきアッシャバーブ。

犠牲ぎせい者しゃ6237人にん。

Q なぜテロとの戦たたかいによってもテロはなくならなかったのか？

テロ組織そしきの動向どうこうを研究けんきゅうする専門せんもん家かはアメリカが始はじめたアフガニスタンとイラクでの2つの戦争せんそうが、かえってテロ組織そしきの活動かつどうを勢いきおいづけたと、指摘してきします。

メリーランド大学だいがく、ウィリアム・ブラニフ教授きょうじゅ

「イラクとアフガニスタンでの長期ちょうきにわたる戦争せんそうが無なければ、それらの紛争ふんそう地ちに見みられるような暴力ぼうりょくの活性かっせい化かはなかっただろう。紛争ふんそうは、テロリストが、戦闘せんとう員いんや武器ぶきを獲得かくとくし、戦闘せんとうを理由りゆうにしたプロパガンダを展開てんかいすることを手助てだすけする。紛争ふんそうは、テロという火ひに酸素さんそを送り込おくりこむようなものなのだ」

Q アメリカが始はじめた「テロとの戦たたかい」は、失敗しっぱいだったのか？

世界せかいでテロ組織そしきや過激かげき派はの活動かつどうは活発かっぱつ化かしており、「失敗しっぱいだった」という指摘してきが多おおくあります。

一方いっぽうで、アメリカ国内こくないでは同時どうじ多発たはつテロ事件じけんのようなテロはその後そのご、起おきておらず、アメリカ本土ほんどをテロから守まもるという目的もくてきは果はたしたという主張しゅちょうもあります。

イラクとアフガニスタンの両方りょうほうでアメリカ軍ぐんの現地げんち司令しれい官かんを務つとめたペトレアス氏しは、重要じゅうような成果せいかをあげたと強調きょうちょうしました。

ペトレアス元もと司令しれい官かん

「過去かこ20年間ねんかん、同時どうじ多発たはつテロのような攻撃こうげきは起おきていないし、アメリカの地ちにおいてイスラム過激かげき派はによる大だい規模きぼな攻撃こうげきも起おきていない。さらに、アルカイダが、活動かつどうの聖域せいいきを築きづけない状態じょうたいをつくりあげたことに加くわえ、対たいテロ作戦さくせんによって、事件じけんの首謀しゅぼう者しゃのオサマ・ビンラディンに裁さばきを下くだした」

Q テロを防ふせぐための鍵かぎは何なにか？

テロ組織そしきはその形態けいたいや活動かつどう地域ちいきを変かえながら、地球ちきゅうのどこかに「住すみか」を見つけ出みつけだします。

そうした組織そしき・個人こじんへの監視かんしや圧力あつりょく強化きょうかとともに、テロの原因げんいんとなっている、「憎悪ぞうお」や「怒いかり」を摘み取つみとっていく取り組とりくみが必要ひつようであることは間違まちがいありません。

インタビューした2人にんはこう指摘してきしました。

ペトレアス元もと司令しれい官かん

「過激かげき派はの脅威きょういは、場所ばしょを変かえて生いき続つづけることに疑うたがいの余地よちはない。これは深刻しんこくな問題もんだいであり、10年ねんの単位たんい、さらには幾いく世代せだいにもまたがる戦たたかいとなる。常つねに圧力あつりょくをかけ、監視かんししていくことが大切たいせつだ」

メリーランド大学だいがく、ウィリアム・ブラニフ教授きょうじゅ

「紛争ふんそうを拡大かくだいさせるのではなく最小さいしょう化かすることだ。そのことこそが、テロ組織そしきが次つぎの世代せだいの戦闘せんとう員いんを集あつめるために必要ひつような資源しげんを枯渇こかつさせることにつながる。必要ひつようなのは、イスラム社会しゃかいを力ちからづけ、テロ組織そしきの魅力みりょくをけずりとっていく長期ちょうきにわたる総合そうごう的てきな政治せいじ戦略せんりゃくだ」

Q 日本にっぽんを含ふくむ国際こくさい社会しゃかいは、どうすればよいか？

この20年ねん、軍事ぐんじ力りょく中心ちゅうしんの「テロとの戦たたかい」の結果けっかとして、世界せかいからテロはなくならず、アフガニスタンにはタリバンが復活ふっかつしました。

アメリカは、いわゆる「世界せかいの警察官けいさつかん」を務つとめることをやめ、台頭たいとうする中国ちゅうごくへの対抗たいこうに力ちからを注そそぐ構かまえです。

時代じだいが大おおきな転換てんかん点てんにあるいま、国際こくさい社会しゃかいがテロを抑え込おさえこんでいくためには、軍事ぐんじ力りょくに依存いぞんするだけではなく、若者わかものたちが過激かげき思想しそうに染そまり、テロへと走はしらないような社会しゃかいを作つくるという息いきの長ながい取り組とりくみが求もとめられています。