グリーンランドを巡る米国とデンマークの対立激化
ドナルド・トランプ前大統領がデンマーク領グリーンランドの取得に強い意欲を示していることを背景に、米国市場ではS&P500種株価指数が1月20日の取引開始直後から大幅に下落し、わずか数日間で約7500億ドル(約118兆5千億円、1ドル=158円換算)もの時価総額が失われた。
ミシガン大学の経済学者ジャスティン・ウルファーズ氏によれば、この損失額はグリーンランドの推定価値に匹敵するという。実際、S&P500は20日朝の時点で1,2%下落し、取引開始直後には一時1,5%近くまで下落幅を拡大した。過去5日間の下落率は1,7%に及び、特にエヌビディアが約3%安となって指数全体を牽引し、アップル(1,6%安)、マイクロソフト(1,3%安)、アマゾン(2%安)、アルファベット(1,7%安)、ブロードコム(3%安)、メタ(1,8%安)、テスラ(2,6%安)といった主要企業も軒並み下落した。これらの企業はS&P500全体の時価総額の約26%を占めていることから、市場全体への影響は極めて大きいと言わざるを得ない。
一方で、NBCニュースは事情に精通した関係者の話として、トランプ政権がグリーンランドの購入に踏み切った場合、その価格は最大で7000億ドル(約110兆6千億円)に達する可能性があると報じている。匿名のホワイトハウス当局者によれば、デンマークおよびグリーンランド当局がトランプの提案を一貫して拒否しているにもかかわらず、マルコ・ルビオ国務長官には購入案の策定が指示されたという。なお、米国によるグリーンランド取得の検討は今回が初めてではなく、1860年代のアンドリュー・ジョンソン政権下や1946年にも買収案が浮上していた経緯がある。
また、今後1カ月間のS&P500の変動予想をもとに算出される「ウォール街の恐怖指数」とも呼ばれるシカゴ・オプション取引所ボラティリティ指数(VIX指数)は、1月20日に急上昇し、2025年11月以来の高水準を記録した。
この指数は通常、S&P500と逆相関の動きを示すが、2025年4月にはトランプ氏が「解放の日」関税を発表した際にも急騰しており、市場の不安心理が高まっていることがうかがえる。
トランプ氏は第1期政権時からグリーンランド取得への意欲を示していたものの、第2期政権初期に入りその姿勢を一層強めており、ここ数週間は関連発言が顕著に増加している。トランプ氏は国家安全保障上の観点から米国によるグリーンランド支配の必要性を主張し、近年では中国やロシアも同地域への影響力拡大を狙っていると警告している。
しかし、デンマークおよびグリーンランド当局は過去1年にわたり、こうした提案を繰り返し拒否してきた。2025年3月にはデンマーク外相ラース・ラスムセン氏が「親密な同盟国に対する発言としては不適切である」と非難し、2026年1月にはデンマーク首相メッテ・フレデリクセン氏が「グリーンランドは売り物ではない」と明言、米国がグリーンランドを攻撃した場合にはNATO同盟の存続や戦後の安全保障体制そのものが崩壊しかねないと強く警告している。