일본어 뉴스: ようやく出た判決天国の妻へ

旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうのもとで不妊ふにん手術しゅじゅつを強制きょうせいされたとして兵庫ひょうご県けんの5人にんが、国くにに賠償ばいしょうを求もとめた裁判さいばんで、2審しんの大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょは、賠償ばいしょう請求せいきゅうできる期間きかんが過すぎているとして訴うったえを退しりぞけた1審しんの神戸こうべ地方ちほう裁判所さいばんしょの判決はんけつとは逆ぎゃくに、国くにに賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつを言い渡いいわたしました。

提訴ていそから4年ねん半はん、手術しゅじゅつから50年ねん以上いじょうたつなか、原告げんこくの1人にん、小林こばやし寳たから二にさん（91）は、妻つまの喜美子きみこさんとともに提訴ていそしていましたが、喜美子きみこさんは去年きょねん亡なくなりました。

寳たから二にさんは判決はんけつ後ご、「ようやく出でた判決はんけつを妻つまに『よかったね、ありがとう』と伝つたえたい」と語かたりました。

（大阪おおさか放送ほうそう局きょく記者きしゃ竹内たけうち宗そう昭あきら神戸こうべ放送ほうそう局きょく記者きしゃ大畠おおはた舜しゅん）

夢ゆめだった “たくさんの子こどもにぎやかで楽たのしい家庭かてい”

訴うったえを起おこしている兵庫ひょうご県けん明石あかし市しの小林こばやし寳たから二にさん（91）と、去年きょねん89歳さいで亡なくなった妻つまの喜美子きみこさんは、たくさんの子こどもをもうけ、にぎやかで楽たのしい家庭かていを築きずくことが夢ゆめだったといいます。

1960年ねん、ともに聴覚ちょうかく障害しょうがいがあった2人にんはお見合みあいで出会であい、まもなくして結婚けっこん。

およそ3か月かげつがたったころ、喜美子きみこさんの妊娠にんしんが分わかりました。

突然とつぜんの中絶ちゅうぜつ手術しゅじゅつ

しかし、直後ちょくごに喜美子きみこさんは病院びょういんに連つれて行いかれ、母親ははおやから「赤あかちゃんが腐くさっている」と言いわれました。

そして、詳くわしい説明せつめいがないまま突然とつぜん、中絶ちゅうぜつ手術しゅじゅつを受うけさせられたと言いいます。

妊娠にんしんを知しった寳たから二にさんの母親ははおやが、喜美子きみこさんの母親ははおやと相談そうだんして手術しゅじゅつを受うけさせていたのです。

小林こばやし寳たから二にさん

「喜美子きみこが家いえに帰かえってきて、『どうしたんだ』と聞きくと、『よくわからない』。お腹おなかを見みてみると、15センチほどの傷きずがあった。『これは何なにだ？』と言いっても、よく分わからなかったんです。その後そのご、母ははと会あうと、『子こどもを産うんではいけない』と言いわれて、とても腹立はらだたしく思おもいました。『何なんで産うんではいけないんだ』と言いっても、母ははは何なにも答こたえてくれませんでした。喜美子きみこはただただ泣ないていました」

“強制きょうせい的てきな不妊ふにん手術しゅじゅつ” 理由りゆうを知しったのは58年ねん後ご

なぜ、喜美子きみこさんは手術しゅじゅつを受うけさせられたのか。

詳くわしい理由りゆうがわかったきっかけは、2018年ねんに宮城みやぎ県けんの60代だいの女性じょせいが旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうのもとで不妊ふにん手術しゅじゅつを受うけさせられ子こどもを産うみ育そだてる権利けんりを奪うばわれたとして、国くにに損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめる全国ぜんこくで初はじめての訴うったえを仙台せんだい地方ちほう裁判所さいばんしょに起おこしたことでした。

喜美子きみこさんは自分じぶんも被害ひがいを受うけたのではないかと思おもい、専門せんもんの医師いしに調しらべてもらったところ、不妊ふにん手術しゅじゅつを受うけさせられたとみられることがわかりました。

そしてその年とし、国くにに損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを神戸こうべ地方ちほう裁判所さいばんしょに起おこしました。

当時とうじ、喜美子きみこさんは、決意けついを述のべていました。

小林こばやし喜美子きみこさん

「裁判さいばんを通をつうじて、社会しゃかいが変かわっていくことが大切たいせつです。訴うったえを起おこした私わたしたちだけの問題もんだいではない。障害しょうがい者しゃ全体ぜんたいの問題もんだいだとして、考かんがえてもらえるように活動かつどうしていきたい」

意見いけん陳述ちんじゅつでは寳たから二にさんも思おもい語かたりました。

寳たから二にさん

「手術しゅじゅつからおよそ60年ねんが経たちましたが、悲かなしみは今いまも続つづいています。友人ゆうじんや知人ちじんに子こどもがいるのを見みると、悲かなしくて、寂さびしくて、歯はがゆい思おもいをします。こんな苦くるしみを与あたえる差別さべつは許ゆるせません」

1審しんでは「除じょ斥期間きかん」の経過けいかで訴うったえを棄却ききゃく

しかし、おととし、1審しんの神戸こうべ地裁ちさいは、旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうを憲法けんぽう違反いはんとしたうえで、不妊ふにん手術しゅじゅつから20年ねん以上いじょうがたっていて賠償ばいしょうを求もとめる権利けんりのある期間きかんの「除じょ斥期間きかん」が過すぎているとして訴うったえを退しりぞけました。

小林こばやしさん夫婦ふうふは控訴こうそし、2審しんで改あらためて、国くにの賠償ばいしょう責任せきにんを認みとめてほしいと求もとめていましたが、去年きょねん6月つき、喜美子きみこさんは病気びょうきのため亡なくなりました。

“裁判官さいばんかん、私わたしの声こえは聞きこえていますか”

その5か月かげつ後ご、2審しんの大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょで行おこなわれた意見いけん陳述ちんじゅつで、寳たから二にさんが訴うったえたことばです。

寳たから二にさんの意見いけん陳述ちんじゅつ

「妻つまとともに60年間ねんかん、子こどもを持もてない悲かなしみと寂さびしさを抱かかえて過すごしてきたが、その妻つまも病気びょうきで亡なくなり、深ふかい悲かなしみに暮くれている。裁判官さいばんかんの方ほう、私わたしの声こえは聞きこえていますか。私わたしの気持きもちを理解りかいして正ただしい判決はんけつをお願おねがいします」

提訴ていそからおよそ4年ねん半はんが経たち、原告げんこく5人にんのうち、喜美子きみこさんを含ふくめ2人にんが亡なくなっています。

寳たから二にさんも最近さいきん、体調たいちょうを崩くずすことが増ふえているということで、一刻いっこくも早はやく、国くには賠償ばいしょう責任せきにんを認みとめてほしいと願ねがっています。

2審しんは国くにの賠償ばいしょうを認みとめる逆転ぎゃくてん勝訴しょうそ

そして迎むかえた2審しん判決はんけつ。

大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょは、旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうについて「特定とくていの障害しょうがいや疾患しっかんのある人ひとを『不良ふりょう』とみなし、生殖せいしょく機能きのうを回復かいふく不可能ふかのうにする手術しゅじゅつによって子こどもを産うみ育そだてる意思いし決定けっていの機会きかいを奪うばうもので、極きわめて非ひ人道的じんどうてきだ」として、明あきらかに憲法けんぽう違反いはんだと指摘してきしました。

その上うえで、「国くにが、差別さべつや偏見へんけんを助長じょちょうし、原告げんこくらがこの法律ほうりつに基もとづく手術しゅじゅつであり、権利けんりを違法いほうに侵害しんがいするものだと認識にんしきするのを、著いちじるしく困難こんなんにする状況じょうきょうを作り出つくりだした。正義まさよし・公平こうへいの理念りねんに著いちじるしく反はんする事情じじょうがあり、賠償ばいしょうを求もとめる権利けんりが消滅しょうめつする『除じょ斥期間きかん』の適用てきようを制限せいげんすべきだ」などとして、1審しんの判決はんけつを変更へんこうし、国くにに対にたいして小林こばやしさんら夫婦ふうふ2組くみと女性じょせい1人にんに、それぞれ1650万まん円えん、あわせて4950万まん円えんを支払しはらうよう命めいじました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは「国くにの主張しゅちょうが認みとめられなかったものと認識にんしきしている。今後こんご、判決はんけつの内容ないようを精査せいさし、関係かんけい省庁しょうちょうと協議きょうぎしたうえで適切てきせつに対応たいおうしたい」とコメントしています。

“亡なくなった妻つまにも伝つたえたい”

判決はんけつを受うけて寳たから二にさんたちは会見かいけんを開ひらきました。

寳たから二にさん

「この日ひを待まっていた。正ただしい判決はんけつを出だしていただいて本当ほんとうにうれしい。これで気持きもちが落ち着おちついた」

その上うえで、ともに裁判さいばんを起おこし、去年きょねん6月つきに亡なくなった妻つまの喜美子きみこさんに結果けっかを伝つたえ、一緒いっしょに喜よろこび合あいたいと話はなしていました。

また、同おなじく原告げんこくの1人にんで、先天せんてん性せいの脳性のうせいまひによる障害しょうがいがある神戸こうべ市しの鈴木すずき由美ゆみさん（67）も喜よろこびを語かたりました。

鈴木すずき由美ゆみさん

「いい判決はんけつで本当ほんとうにうれしかった。私わたしは普通ふつうに暮くらしたいだけだったのに、障害しょうがいがあるから子こどもが産うめないようになった。体からだの傷きずは消きえても、心こころの傷きずは消きえない。国くには早はやく謝罪しゃざいして、悪わるかったと言いってほしい」

これまでの司法しほう判断はんだんは

旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうをめぐる一連いちれんの裁判さいばんでは、これまでに、14件けんの判決はんけつが言い渡いいわたされ、去年きょねん2月つき以降いこうは、国くにに賠償ばいしょうを命めいじる司法しほう判断はんだんが、今回こんかいも含ふくめて7件けん続つづいています。

一連いちれんの裁判さいばんでは、司法しほうによる救済きゅうさいを求もとめる旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうの被害ひがい者しゃたちに大おおきく立たちはだかってきたのが「時間じかんの壁かべ」です。

不法ふほう行為こういから20年ねんが過すぎると賠償ばいしょうを求もとめる権利けんりが失うしなわれるという「除じょ斥期間きかん」を適用てきようするかが争あらそわれてきました。

4年ねん前まえ、全国ぜんこくで初はじめての判決はんけつで、仙台せんだい地方ちほう裁判所さいばんしょは、旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうは憲法けんぽう違反いはんだったという判断はんだんを示しめしましたが、賠償ばいしょうを求もとめられる期間きかんが過すぎているとして訴うったえを退しりぞけました。

その後そのご、「除じょ斥期間きかん」が経過けいかしていることなどを理由りゆうに全国ぜんこく各地かくちで相次あいついで原告げんこくの訴うったえが退しりぞけられました。

去年きょねん初はじめて国くにに賠償ばいしょう命令めいれい「除じょ斥期間きかん」適用てきようしない流ながれに

こうした中なか、去年きょねん2月つき、1審しんの大阪おおさか地裁ちさいが同様どうように訴うったえを退しりぞけていた裁判さいばんの2審しんで、大阪おおさか高裁こうさいが旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうを憲法けんぽうに違反いはんすると判断はんだんした上うえで、国くにに賠償ばいしょうを命めいじる初はじめての判決はんけつを言い渡いいわたしました。

判決はんけつでは、「国くにが障害しょうがい者しゃに対にたいする差別さべつ・偏見へんけんを正当せいとう化かし、助長じょちょうしてきたとみられる」と指摘してきし、原告げんこくたちが長年ながねん、裁判さいばんを起おこすのが困難こんなんな環境かんきょうに置おかれていたとして「除じょ斥期間きかんの適用てきようをそのまま認みとめることは著いちじるしく正義まさよし・公平こうへいの理念りねんに反はんする」と判断はんだんしました。

これ以降いこう、国くにに賠償ばいしょうを命めいじる司法しほう判断はんだんが、今月こんげつ16日にちの札幌さっぽろ高裁こうさいなど全国ぜんこくで相次あいつぎ今回こんかいで7件けん目めとなり、2審しんの高裁こうさい段階だんかいではすべて訴うったえを認みとめています。

いずれの判決はんけつも国くにの救済きゅうさい策さくの手術しゅじゅつを受うけた人ひとに対にたいして支給しきゅうされる一いち時じ金きん320万まん円えんを大おおきく上回うわまわる額がくの賠償ばいしょうを命めいじていて、救済きゅうさい制度せいどの見直みなおしを求もとめる声こえが高たかまることも予想よそうされます。

時間じかんの壁かべに新あらたな判断はんだん　“より多おおくの人ひと救済きゅうさいへ”

さらに今回こんかいの大阪おおさか高裁こうさいの判決はんけつでは、「除じょ斥期間きかん」について新あらたな判断はんだんが示しめされました。

「国くにが、旧きゅう優生ゆうせい保護ほご法ほうが憲法けんぽうに違反いはんしていたと認みとめた時とき、または、最高さいこう裁判所さいばんしょの判決はんけつで憲法けんぽう違反いはんだと確定かくていしたときのどちらか早はやいほうの時期じきから6か月かげつを経過けいかするまでは、『除じょ斥期間きかん』の経過けいかの効果こうかが発生はっせいしない」と示しめしました。

この判断はんだんについて原告げんこくの弁護べんご団だんは、今いまも、原告げんこくらの賠償ばいしょうを求もとめる権利けんりは消滅しょうめつしておらず、「除じょ斥期間きかん」の効果こうかが発生はっせいする時期じきは将来しょうらい的てきに決きまるとするもので、今後こんご、より多おおくの人ひとが救済きゅうさいされると評価ひょうかしています。

原告げんこく弁護べんご団だんの団長だんちょう藤原ふじわら精きよし吾われ弁護士べんごし

「国くには争あらそいをやめ、被害ひがい者しゃとちゃんと面会めんかいして謝あやまることが出発しゅっぱつ点てんだ。被害ひがいは手術しゅじゅつを受うけた人ひとだけではない。国くには障害しょうがいをもった人ひとが負い目おいめを持もって生いきる社会しゃかいをつくってきた。優生ゆうせい保護ほごの問題もんだいは終おわっていない」