日本新聞: オミクロン株水際対策当面継続も段階的見直し含め検討へ

オミクロン株かぶへの水際みずぎわ対策たいさくについて、政府せいふは当面とうめん継続けいぞくする方針ほうしんです。ただ、国内こくないでの市中しちゅう感染かんせんが相次あいつぎ効果こうかは限定げんてい的てきになりつつあるという指摘してきもあり、今後こんごの感染かんせん状況じょうきょうも見極みきわめながら段階だんかい的てきな見直みなおしも含ふくめ検討けんとうしていく方針ほうしんです。

オミクロン株かぶの世界せかい的てきな拡大かくだいを受うけて、政府せいふはおよそ1か月かげつ前まえから水際みずぎわ対策たいさくを強化きょうかしていて、外国がいこく人じんの新規しんき入国にゅうこくを原則げんそく停止ていしし、日本人にっぽんじんの帰国きこく者しゃなどは滞在たいざい先さきの感染かんせん状況じょうきょうに応おうじて検疫けんえき所しょが指定していする宿泊しゅくはく施設しせつに3日間にちかんから10日間にちかんとどめる措置そちをとっています。

また、感染かんせんが確認かくにんされた人ひとの濃厚のうこう接触せっしょく者しゃには、14日間にちかん、自治体じちたいが確保かくほした宿泊しゅくはく施設しせつなどに待機たいきするよう求もとめています。

これによって、政府せいふはオミクロン株かぶの国内こくないへの侵入しんにゅうを一定いってい程度ていど遅おくらせることができたとしていて、当面とうめん継続けいぞくする方針ほうしんです。

一方いっぽう、検疫けんえきでの感染かんせん確認かくにんが増ふえ続つづけ、待機たいきなどに必要ひつような施設しせつを確保かくほするのが難むずかしくなる中なか、政府せいふは28日にちから感染かんせん者しゃと同おなじ飛行機ひこうきに乗のっていた人ひとの「濃厚のうこう接触せっしょく者しゃ」の定義ていぎを見直みなおしました。

これまでは「乗客じょうきゃく全員ぜんいん」を濃厚のうこう接触せっしょく者しゃとしていましたが、「感染かんせん者しゃと同おなじ列れつと、前後ぜんご2列れつの乗客じょうきゃくなど」に限定げんていされました。

専門せんもん家かなどからは、国内こくないで市中しちゅう感染かんせんが相次あいつぎ水際みずぎわ対策たいさくの効果こうかは限定げんてい的てきになりつつあるとして、国内こくないでの感染かんせん対策たいさくに重点じゅうてんを移うつすべきだという指摘してきも出でています。

このため政府せいふは、年末ねんまつ年始ねんしの感染かんせん状況じょうきょうも見極みきわめながら水際みずぎわ対策たいさくの段階だんかい的てきな見直みなおしも含ふくめ対応たいおうを検討けんとうしていく方針ほうしんです。

現在げんざいの水際みずぎわ対策たいさくは？

新型しんがたコロナの変異へんいウイルス、オミクロン株かぶの世界せかい的てきな拡大かくだいを受うけて、政府せいふは先月せんげつ末まつから当面とうめんの措置そちとして水際みずぎわ対策たいさくを強化きょうかしました。

具体ぐたい的てきには、人道じんどう上じょうの配慮はいりょが必要ひつような場合ばあいなどを除のぞいて、世界せかいのすべての国くにや地域ちいきからの外国がいこく人じんの新規しんき入国にゅうこくを原則げんそく、停止ていししました。

また、オミクロン株かぶの感染かんせんが確認かくにんされた国くにや地域ちいきから帰国きこくした日本人にっぽんじんなどは入国にゅうこく後ご、滞在たいざい先さきの感染かんせん状況じょうきょうに応おうじて3日間にちかんから10日間にちかん、検疫けんえき所しょが指定していする宿泊しゅくはく施設しせつにとどめる措置そちをとってきました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうなどによりますと、こうした措置そちの対象たいしょうは29日にち現在げんざいでおよそ60の国くにと地域ちいきに広ひろがっています。

▽オミクロン株かぶが最初さいしょに確認かくにんされた南アフリカみなみあふりかやジンバブエ、アンゴラなど、アフリカの11か国かこくは10日間にちかん、▽イギリス、イタリア、韓国かんこくなど14の国くにと地域ちいきは6日間にちかん、▽アメリカの大半たいはんの州しゅう、カナダ、ロシアなど38の国くにと地域ちいきは3日間にちかんとなっています。

さらに、検疫けんえきで確認かくにんされた感染かんせん者しゃの濃厚のうこう接触せっしょく者しゃについても、14日間にちかん、自治体じちたいが確保かくほした宿泊しゅくはく施設しせつなどに待機たいきするよう求もとめています。

こうした中なかで、水際みずぎわでの感染かんせん確認かくにんや濃厚のうこう接触せっしょく者しゃが増ふえ続つづけ、施設しせつが確保かくほしにくくなっていることなどもあり、濃厚のうこう接触せっしょく者しゃの定義ていぎが見直みなおされました。

これまでは感染かんせん者しゃと同おなじ飛行機ひこうきに乗のっていた「乗客じょうきゃく全員ぜんいん」でしたが28日にちから「感染かんせん者しゃと同おなじ列れつと、前後ぜんご2列れつの乗客じょうきゃくなど」となりました。

これは従来じゅうらいの新型しんがたコロナのウイルスと同様どうようの対応たいおうです。

専門せんもん家か「方針ほうしん転換てんかんが求もとめられる時期じき」

政府せいふのオミクロン株かぶの水際みずぎわ対策たいさくについて、厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうのメンバーで国際こくさい医療いりょう福祉ふくし大学だいがくの和田わだ耕治こうじ教授きょうじゅは「当初とうしょ、オミクロン株かぶの感染かんせんが非常ひじょうに広ひろがりやすいことが海外かいがいのデータで示しめされ、水際みずぎわ対策たいさくとしてできることはやろうという方針ほうしんで、入国にゅうこく者しゃの制限せいげんや一定いってい期間きかんの待機たいきなどが行おこなわれてきた。また濃厚のうこう接触せっしょく者しゃを広ひろめに捉とらえて検査けんさなども追加ついかで行おこなってきたことで、ある程度あるていどの時間じかん稼かせぎができて、オミクロン株かぶの病原びょうげん性せいや今後こんごの戦略せんりゃくを検討けんとうすることができた。しかしながら、国内こくないで徐々じょじょに市中しちゅう感染かんせんが見みえている中なかで、今後こんごはできるだけ国内こくない対策たいさくを重視じゅうししていくような方針ほうしん転換てんかんがちょうど求もとめられている時期じきだ」と指摘してきしました。

その上うえで、医療いりょう体制たいせいについて「医療いりょう機関きかんは、特とくに軽症けいしょうのオミクロン株かぶの感染かんせん者しゃが増ふえてくることを想定そうていして受診じゅしん体制たいせいなどを構築こうちくしていく必要ひつようがある。特とくに冬場ふゆばは新型しんがたコロナウイルスだけでなく心筋しんきん梗塞こうそくや脳のう梗塞こうそくなど循環じゅんかん器き系けいの疾患しっかんが多おおい時期じきなので、通常つうじょうの医療いりょうと両立りょうりつするには限かぎられた医療いりょう資源しげんを有効ゆうこうに使つかい、徐々じょじょにシフトしながら乗り越のりこえていくことになる。今後こんご、都市とし部ぶで市中しちゅう感染かんせんが増ふえてくるという想定そうていで、病床びょうしょうを少すこしずつ国内こくないの対応たいおうに使つかい、特とくに軽症けいしょうの患者かんじゃは自宅じたくでも待機たいきできるようにするなどして感染かんせん者しゃの急増きゅうぞうに備そなえていく必要ひつようがある」と述のべました。

そして、感染かんせん対策たいさくについて「やはり急いそがれるのは3回かい目めのワクチン接種せっしゅで、どれだけ早はやく進すすめられるかがその後そのごの感染かんせんをどの程度ていど抑おさえられるかにもつながっていく。また、市民しみんの方ほうは基本きほん的てきな感染かんせん対策たいさくを継続けいぞくし、かぜのような症状しょうじょうがあれば正月しょうがつの間ま、ほかの人ひとに会あわないようにして場合ばあいによっては帰省きせいも諦あきらめていただきたい。今いま、検査けんさもいろいろなところで受うけられるようになってきているので、そういったことも活用かつようして海外かいがいのような急激きゅうげきな感染かんせん者しゃの増加ぞうかをみんなで食い止くいとめていくことが、この冬場ふゆばの日本にっぽんに求もとめられている」と指摘してきしました。

感染かんせん者しゃ入院にゅういんの医師いし「急増きゅうぞう時じの対応たいおうできるだけ早はやく示しめして」

新型しんがたコロナウイルスのオミクロン株かぶに感染かんせんした人ひとが入院にゅういんしている東京とうきょう都内とないの医療いりょう機関きかんの医師いしが、NHKの取材しゅざいに応おうじました。病床びょうしょうや医療いりょう従事じゅうじ者しゃの数かずは限かぎられていて、国くにに対にたいして感染かんせん者しゃが今後こんご急増きゅうぞうした場合ばあいの対応たいおうをできるだけ早はやく示しめしてほしいとしています。

東京とうきょう大田おおた区くの荏原えばら病院びょういんは新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんした患者かんじゃを受け入うけいれる専門せんもん病院びょういんで国内こくないで、最大さいだい規模きぼの240の病床びょうしょうがあります。

東京とうきょう都とからの要請ようせいを受うけて今月こんげつ18日にちからオミクロン株かぶに感染かんせんした人ひとやその疑うたがいがある人ひとを受け入うけいれていて、28日にちの時点じてんで26人にんが入院にゅういんしています。

診察しんさつなどを行おこなっている吉利よしとし賢治けんじ医師いしによりますと、26人にん全員ぜんいんが今月こんげつ海外かいがいから帰国きこくした人ひとで、せきなどの症状しょうじょうのある人ひとがいるものの軽症けいしょうの人ひとがほとんどで、症状しょうじょうがないケースも多おおいということです。

重症じゅうしょう化かした人ひとは今いまのところいないということです。

吉利よしとし医師いしは「オミクロン株かぶに感染かんせんした人ひとは『元気げんきなのになぜ入院にゅういんする必要ひつようがあるのか』という思おもいが強つよく、説明せつめいや不満ふまんを聞きくなどの対応たいおうをしているが、医療いりょう従事じゅうじ者しゃの精神せいしん的てきな負担ふたんが大おおきいと感かんじる」と話はなしています。

現在げんざいは病床びょうしょうにまだ余裕よゆうはあるとした上うえで「オミクロン株かぶに感染かんせんする人ひとがさらに増ふえると、対応たいおうできる病床びょうしょうの数かずはそれほど多おおくはないので、感染かんせんした人ひと全員ぜんいんが入院にゅういんする今いまの対応たいおうを続つづけることは難むずかしい」と述のべて、国くにに対にたいして、オミクロン株かぶの感染かんせん者しゃが急増きゅうぞうした場合ばあいの対応たいおうをできるだけ早はやく示しめしてほしいとしています。

吉利よしとし医師いしは「オミクロン株かぶの感染かんせん拡大かくだいが防ふせげるのであれば、きちんと対策たいさくをとった上うえで感染かんせんした人ひとを病院びょういんではない施設しせつで受け入うけいれるなどの対応たいおうが考かんがえられるのではないかと、現場げんばで対応たいおうする医師いしとして思おもっている」と話はなしています。

検査けんさ機器きき備そなえた「移動いどう病院びょういん」の活用かつよう検討けんとう

東京とうきょう墨田すみだ区くは、オミクロン株かぶによる第だい6波はの感染かんせん拡大かくだいに備そなえて、ある車両しゃりょうの活用かつようを検討けんとうしています。

それは検査けんさ機器ききを備そなえた「移動いどう病院びょういん」ともいえる医療いりょう用ようの大型おおがた車両しゃりょうで、感染かんせんが拡大かくだいしている地域ちいきに駆かけつけ、臨時りんじの医療いりょうの拠点きょてんとして活用かつようを検討けんとうしています。

この「移動いどう病院びょういん」は医療いりょう用ようの大型おおがた車両しゃりょうで、車内しゃないにPCR検査けんさや超ちょう音波おんぱ検査けんさ、さらに肺炎はいえんの状態じょうたいを確認かくにんするCT撮影さつえいができる機器ききが設置せっちされていて、どこにでも移動いどうさせて臨時りんじの医療いりょうの拠点きょてんとして使つかうことができます。

墨田すみだ区くは、東京とうきょう曳舟ふね病院びょういんが災害さいがい対応たいおうのためにこの車くるまを導入どうにゅうしたことを受うけて、第だい6波はでは臨時りんじのPCR検査けんさセンターなどとして活用かつようしようと、今週こんしゅう、病院びょういんと合同ごうどうで訓練くんれんを行おこないました。

訓練くんれんは車くるまのそばに設置せっちされたウイルスを飛散ひさんさせない「陰かげ圧テント」の中なかで患者かんじゃの検体けんたいを採取さいしゅしたあと、すぐに車内しゃないでPCR検査けんさを行おこない、患者かんじゃのCT画像がぞうを撮影さつえいするまでの手順てじゅんを確たしかめました。

区くによりますと、PCR検査けんさは15分ふんほどで結果けっかが出でて迅速じんそくに陽性ようせいか判断はんだんできるうえ、CT画像がぞうを人工じんこう知能ちのう＝AIが解析かいせきし、肺炎はいえんの状態じょうたいも確認かくにんできるということです。

墨田すみだ区くは、介護かいご施設しせつなどで大勢たいせいの発熱はつねつ者しゃが出でた場合ばあい、車くるまで現地げんちに駆かけつけ感染かんせんの有無うむや症状しょうじょうの重おもさをその場ばで確認かくにんし、緊急きんきゅう度どの高たかい患者かんじゃを速すみやかに入院にゅういんにつなげたいと、活用かつようの検討けんとうを進すすめています。

墨田すみだ区く保健所ほけんじょの西塚にしづか至いたる所長しょちょうは「コンパクトで車くるまを停とめる場所ばしょさえあれば、総合そうごう病院びょういんがすぐ来きてくれるようなもの。重症じゅうしょう者しゃをできるだけ早はやく入院にゅういんさせていくトリアージの拠点きょてんとしても大おおきな力ちからを発揮はっきすると思おもう。感染かんせん力りょくが高たかいとされるオミクロン株かぶで、1人にんの重症じゅうしょう者しゃ、死者ししゃも出ださないように、どう活用かつようするか検討けんとうしていきたい」と話はなしています。